第23話「ロンリー・カンバック」(1984年9月18日)
哲也のインフィニティラブの力によって背中を押され、遂に酒井の手から笙子と一緒に逃げ出した恭子さん。
後ろからは酒井の車、前方からは敵か味方か分からない謎の5人組が現れるという緊迫の状況から23話が幕を開ける。
で、気になるその5人の正体だが、悪竜会時代の笙子の仲間でも、「超電子バイオマン」でもなく、ただの酒井の部下たちなのだった。てやんでえ。

バラエティ番組でお馴染みの叩くとパンパン軽い音が出る棒を持つ男たちと、激しく戦う笙子。
笙子「私のことはいいから、早く逃げて!」
笙子に言われ、さっさとその場から全速離脱する恭子さん。
だが、ちょうどそこへやってきた酒井に捕まり、車に引っ張り込まれてしまう。
急発進する酒井の車を追いかけようとした笙子を、ここぞとばかりに酒井の部下がどつき回す。

路上にうつ伏せに倒れる笙子であったが、一瞬、膝に白い物が巻いてあるのが見える。
最初は「なんで包帯しているのだろう?」と思ったが、これはアクションシーンの為のサポーターだったようだ。

絶体絶命の笙子であったが、この時、何処からか「お待ち!」と凛とした女の声が飛んでくる。
で、こういう場合、ワルモノと言うのは素直に待つようにしつけられているものなのである。

見れば、二人の女が、黒いシルエットとなってこちらに向かってくるところだった。
その正体は、わざわざ焦らす必要もなかったと思うが、おアキとモナリザであった。

今度は、その二人と男たちの戦いが繰り広げられる。
その最中、女の手の中のカミソリがきらめき、男の頬に鋭利な赤い線を描く。

その顔がアップになるが、依然として顔は真っ黒である。
さすがに不自然だよなぁ……。

男たちは情けなくも逃亡。

彼らが消えると同時に、横道から哲也がひょいと出てくるので、まるでチンピラたちの中に哲也が混じっていて、ひとり戻ってきたようにも見えてしまう。

このタイミングでやっと、二人の顔が笙子や視聴者にも分かる。
哲也の姿を見て、今度は二人が慌てたように向こうへ走り去って行く。

哲也「笙子さん、だいじょぶかい? どうしたんだい?」
笙子「ああ、哲也さん、済みませんでした。恭子さん、酒井に奪われました」
哲也「今の二人は?」
笙子「葉子さんにおアキママです。私を助けてくれました」
哲也「葉子が……?」
哲也、二人が消え去った無人の夜道を見詰めながらつぶやくのだった。
少しは恭子さんこのとも心配してあげてーっ! おアキたちは現場とそれほど離れていない花屋に駆け込むと、急いでシャッターを下ろす。
おアキ「マコ、あれは確かに笙子ちゃんだったよ。私たちが
偶然通り掛からなかったら……」
モナリザ「笙子の奴、哲也兄さんと民間舞楽を始めたと聞いてたから今頃幸せにやってると思ってたのに」
恐ろしいことに、スタッフはどうやらさっきのシーンを「偶然」で押し通してしまうみたいです。
せめて近くのコンビニに買い物に行った帰りとか、そう言う言い訳が欲しかったところだ。
ちなみに、おアキはモナリザのことをマコと呼ぶのだ。
つまり、伊藤かずえさんが演じているこのキャラは、
・久樹葉子
・モナリザ
・長沢真琴
・マコ
と言う、四つの呼び名を持っていることになる。
とにかく、二人が話しながら店の奥へ進むと、
ちゃっかり朝男がお待ちかね。 吹いた。

朝男「笙子は舞楽を学ぶ為に葉山家に住み込んでいる。恐らく酒井から恭子さんを救う為に……」
モナリザ「酒井?」
朝男「少刑に8年いた根っからの性悪だぁ、今夜はそいつのことをあんたたちに伝える為にやってきた」
おアキ「朝男、酒が過ぎるんじゃないのかい?」
朝男「こ、こんなもんで酔いやしねえよ、しゃしゃ酒に酔うだけの人生なんて最低だぁ……うぃ~ひっくっ」
おアキ「思いっきり酔っ払ってんじゃねえか!」 嘘はともかく、朝男、いつもながら愛しの笙子のことは下着の色まで把握している様子。

朝男「俺はいっぱしの実業家になってやろうと目一杯頑張ってみた。ビル経営も順調だ。高級麻雀荘経営も、進学塾も軌道に乗り、金はジャンジャン入ってくる。今の俺には何でも思いのままだ、最高に乗ってていいはずじゃねえか、それなのに心が虚しいんだ。どうしようもなく心が虚しいんだ。おっかしいぜ、おれってどうしようもねえよっ」
モナリザ「朝男……」
夜中に、勝手に人ン家に上がり込んで酒飲んだ挙句、人生相談までされたらモナリザだって困るのである。
(ただし、この店の所有者は朝男である)
朝男「哲也さんの本物の優しさに触れて一度は笙子を諦めようと決意した俺だ、今でも二人の幸せを願う気持ちに嘘はねえ」

朝男「それなのに笙子の名前を聞いただけで血が騒ぐ。笙子が危ない目に遭ってると知ると居ても立ってもいられねえ……ちくしょう、俺って奴は根っからの不良だぜ」
(いいから早く帰ってくれないかな)と、全力で祈るおアキとモナリザであった。
モナリザ、「だったら笙子を奪っちゃえば?」と軽く提案するが、
朝男「バカヤロウ! 悲しいこと言うんじゃねえよ、自分の好きな人間の不幸を願うなんざ最低だぜ!」 と、一蹴される。
朝男「哲也さんは悲しい男だぁ、恭子さんのことなど放っておいて笙子と幸せになっちまえばいいものを……馬鹿だぜ、本物の馬鹿だぜ!」
……まぁ、男谷に執拗に迫られて、渋々、腰を上げたんですけどね。

一方、渦中の人、恭子さん、結局酒井たちが根城にしているホテルへ連れ戻されていた。
酒井「バカな真似はしないで下さいよ、今度、あんたを殺すことになる」

恭子「私を殺してください、私は、もう生きていたって仕方がない。家族や親しい人たちにこれ以上悲しい思いをさせたくない。殺してください、殺して!」
恭子さん、酒井の脅し文句に逆に食って掛かるが、
酒井「生意気言うんじゃねえ!」 恭子「あっ、あっ!」
お嬢様育ちの白い頬を、酒井に殴られる。
常に丁寧な物腰の酒井、ここに来て、ようやくその悪魔のような本性を垣間見せる。

さらに「あんたまだいたの?」的な鬼母がしゃしゃり出てきて、
「お前に死なれちゃ、私が困るんだよ、私の子供殺しといてなんだいっ、一生かかっても償いしろ!」と、激しく責める。
正直、その話題、もう古くないですか?
恭子さん、それでもまだ「私を殺して!」と叫び続ける。
心底、こんな惨めな生活がイヤになったらしい。

酒井「あんただけは殺しゃしないよ、あんたの親も皆殺しにしてやる」
恭子「なんですって、父と母も?」
酒井「それだけじゃないぜ、あんたの親しい人たち、たとえば、久樹哲也も殺してやる!」
恭子「やめて下さい、哲也さんは関係ないじゃありませんか! やめて下さい、私は哲也さんなんか好きじゃない、だから哲也さんを殺そうだなんて、そんな恐ろしいことはやめて下さい!」
酒井「それから、あの男谷って言う弁護士さんもな!」
恭子「あ、それは別に……」 ……
すいません、嘘をつく誘惑に勝てませんでした。

酒井、やや語調を和らげて、「だったら自分と結婚して欲しい」と兼ねてからの願望を口にする。
恭子「それだけは許して下さい」
酒井「だったら哲也を殺してやる!」
恭子「……!」
酒井「私と結婚してくれますね?」
恭子「はい……」
酒井「ありがとう、恭子さん、私はあなたを大切にしますよ。今夜はゆっくり休んでください」
管理人、このシーンで、
「哲也を殺す」→「だめーっ」→「じゃあ結婚しろ」→「やだーっ」→「哲也を殺す!」→「だめーっ!」→「じゃあ結婚……」と言う風に、無限にやり取りが続くのではないかと、
顔に絆創膏を貼って立っている部下の為にも、心配になりました。

酒井が出て行った後、恭子さんは大粒の涙を落とす。
愛する哲也(と、ついでに両親)を守る為に、酒井のような男と結婚しなくてはならない……
不幸を呼ぶ女・恭子さん、ある意味、絶頂の瞬間であった。

同じ夜、哲也は久しぶりに師匠である葉山の前に座っていた。
さすがにこうなっては「出入り禁止になってる」などと悠長なことを言ってられなくなったのだろう。
葉山「恭子は今何処に?」
哲也「それが分からないんです」
笙子「酒井が何処かに閉じ込めてるんだと思います」

そこへ、男谷と多賀子も顔を出す。
……あれ、男谷、ついさっき(数時間前)まで廃人同然だったのに、すっかりシャンとしてるなぁ。
まぁ、放送では一週間経過してるから、それほど不自然な感じはしないけどね。
男谷「葉山さん、恭子さんを救えるのは哲也しかいません。明日にでも酒井の会社に哲也と一緒に行って下さい」
葉山「何をバカな、恭子を捨てた男に今更そんなことを頼めるか」
男谷「葉山さん、そんなことを言ってる場合じゃないんです!」
男谷、口を酸っぱくして、このままでは恭子さんが廃人になったり命を落としたりしかねないと訴えるが、葉山はそれでも動こうとしない。

男谷「哲也、笙子さんの前でこんなことを言うのはどんなにむごいことか承知であえて言う、恭子さんに会って、結婚すると言ってくれ」
哲也「男谷!」
男谷「恭子さんを救えるのはお前だけだっ」
男谷、今度は哲也にそんなことを言い出す。
いや、問題は、既に恭子さんの気持ち云々を超えているのだから、この段階で男谷がそんなことを言い出すのはちょっと変だけどね。
それに、現時点では、恭子さんの居場所すら分かってないのだから、物理的に不可能なことだし。
多賀子「哲也さん、恭子を助けて下さい、結婚すると言ってください」
哲也「……」
多賀子もそう口添えするが、さすがに哲也も、重苦しく口を閉ざしたまま、俯いている。
葉山、不意に口を開き、「哲也君!」と呼びかける。
哲也「はい」

葉山「……」
哲也「なんでしょう?」
葉山、一瞬目を泳がせるが、

次にはもう厳格な楽人としての葉山に戻っていた。
葉山「恭子のことはもういい。今の私にとって大切なことは娘の為に舞楽界を汚すことは出来んと言うことだ。私は舞楽を守らねばならん」
立ち上がると、「笙子君、稽古を始める」と突然、笙子に宣言する。
葉山「何を愚図愚図している。君は私から舞楽を学ぶ為にここに来たんだろう?」
笙子「は、はいっ」

OP後、そんなことしてる場合じゃないと思うのだが、稽古場で、初めて笙子に本格的に指導をしている葉山。
哲也、男谷、多賀子もぞろぞろやってきて、その様子を見守る。

葉山、ビシバシと笙子の舞の欠点を指摘し、その隣でお手本を見せる。

が、「余計なことを考えるな」と言う葉山自身が、途中で何かに心を奪われたように動きを止めてしまう。

笙子「先生」
葉山「今日はこれまで」
笙子「ありがとうございました」
葉山「そんな舞では10年やっても一人前になるのは無理だっ、やめてしまえ!」

きついことを言われ、さすがの笙子も泣きそうになる。それをグッと堪え、
笙子「……先生、どんな厳しい稽古でも厭いません。これからも稽古をお願い致します」
葉山「笙子君、舞楽の道をきやめようとするならたとえ冷酷な人間といわれようとエゴイストといわれようと他のことを全て見捨てるだけの覚悟がなくてはならん。情熱の全てを舞楽だけに注がねばならんのだ。それが君に出来るか?」
笙子「先生の厳しいお覚悟、私も自分の物としたいと思います。でも先生、舞楽の心はたおやかな心と教わりました。たおやかな心とは、人、自然を愛する心で満ち溢れると言うことではないでしょうか?」
葉山「君は私に舞楽の心を垂れるつもりか?」
笙子「いえ、そんなつもりは……ただ、私は先生が、恭子さんをご自分の娘であるために、ことさら厳しくしているように思えるんです。恭子さんを見捨てることが、舞楽の心にかなうとは思えません……失礼ですが、先生の今の舞には、恭子さんへの想いが溢れていたと思います」
葉山「バカなっ」
笙子「先生、恭子さんをお救い下さい。先生だってそう願ってるじゃありませんか!」
葉山、不愉快そうに笙子の切々とした訴えを聞いていたが、最後には、そっぽを向いたまま「明日、酒井の会社へ行って恭子を連れ戻す」と、誰に言うともなく言い、さっさと稽古場を後にするのだった。
哲也「笙子さん……」
笙子「はいっ」
哲也、何か笙子に言いかけようとするが、そのまま背中を向けて出て行ってしまう。

このまま哲也が恭子のもとへ行ってしまうのではないかと、強烈な喪失感に襲われる笙子、虚脱したようにその場に座り続けるのだった。
その2へ続く。