第10話「燃える太陽」(1984年12月8日)
前回のラストで、練習中、突然イソップが頭を抱えて苦しみ出したと言う、エマージェンシーなシーンから始まる第10話です。
すぐに救急車が呼ばれ、イソップは病院へ運ばれる。
ICUの前で、付き添いの滝沢と大木が不安そうに結果が出るのを待っていると、

柳先生が、イソップの母親を連れてやってくる。
柳「奥寺君のお母さんです」
滝沢「滝沢です」
イソップのちょっと色っぽい母親を演じるのは久保田民絵さん。そう言えば同じ時期に、「星雲仮面マシンマン」でも美佐と言う女の子の母親を演じてるんだよね。あと、ギャバンのお母さんも。
しかし、あのポップな「マシンマン」とこんな泥臭いコテコテの大映ドラマが同時期に放送されていたかと思うと、ちょっと不思議な感じがする。
やがて、看護婦がドアを開けて、母親を呼ぶ。
大木「まさか、あいつこのまま……」
柳「馬鹿なこと言うもんじゃないわよ」
結局、イソップが倒れた原因ははっきりせず、更に詳しい検査が必要とのことで、滝沢たちは一旦学校へ戻ってくる。

加代「先生、今入っちゃダメ!」
2週間ぶりに登場の加代が、門のところで滝沢たちを待っていて、両手を広げて通せんぼする。
柳「どうしたの」
加代「それが……」
加代が言いよどんでいると、向こうからどやどやと部員たちが押し寄せてくる。
見れば、知らないスポーツ刈りの男性をみんなで力尽くで追い払おうとしている様子だった。

木村「滝沢先生ですね、こういうもんです」
男の差し出した名刺には、東亜日報の記者・木村とある。演じるのは名脇役・辻萬長(つじ かずなが)さん。

光男「帰れよ! だってこいつ先生が俺たちのことしごいたって……」
滝沢「しごいた?」
木村「違いますか、その為に今日、部員の一人が救急車で入院したんでしょ? あんた以前にも生徒たちに暴力を振るったことがあるそうですなぁ。今時そんなやり方が通用するとでも……」
大木「分かったようなこと言ってんじゃねえよ! なんだよこれはぁ……」
木村が持っているテープレコーダーを掴み、大木が激しく木村の言葉に反発する。
大木「俺たち誰一人しごかれたなんて思ってる奴いねえ! みんな好きで自分から練習してるんだ!」
木村「しかし現実に今日、一人……」
大木「やかましいーっ!」 激怒した大木はその場で木村をぶん殴りかねない勢いだったが、滝沢が引き離す。
……部員たちは口をそろえて「シゴキはありません」と断言しているのだが、つい前回、自分を見失った滝沢によって、めちゃくちゃしごかれて、部そのものが空中分解しかけたことは奇麗に忘れている模様。
因って正しくは「過去にしごかれたこともありますが、今は問題ないです」と言うべきだ。
勿論、相模一高戦での「滝沢先生からの愛の鉄拳の贈り物事件」については、ナレーターまで一緒になって
「これは暴力ではない! 断じてない! ないったらない!」と番組が保証しているので、あれは暴力にはカウントされないのである。

滝沢「確かに部員の一人が倒れたのは事実です、私が日頃から部員たちに体力の限界まで、いや時には
限界を超えるほどの練習をさせてることも事実です。それをシゴキと呼ぶか呼ばないかはあなたの判断ひとつですが、私は自分のやり方がいわゆるシゴキだとは思いません」
いや、「限界を超えたら」さすがにあかんやろ……。
で、9話で教育長にも言っていた、滝沢の必殺論法
「殴ったけど殴ってません」攻撃が炸裂する。
滝沢「私はラグビーが好きです。同じように子供たちもみんなラグビーが好きです。好きなもの同士が強くなる為にお互い努力する、それがシゴキでしょうか?」
木村「じゃあ聞きますがねえ、今日倒れた部員にもし万一のことがあっても、あんた、何の責任も感じないんですか? え? 好きなものが好きなことやったんだからって、平気でいられるんですか」
畳み掛ける木村の舌鋒に、滝沢は何も答えられない。
代わりに舎弟の(舎弟じゃないです)大木が「てめこのー」と再び掴み掛かろうとする。

木村「呆れたもんだー、教師も教師なら生徒も生徒だー、さしずめ、美しき庇いあいってとこかな。いや、よくぞここまで飼い慣らされたって言うべきかな」
とめどなく放言を続ける木村に、今度は滝沢がブチッとなって、「なんだとー」と、その襟首を掴む。
滝沢「飼い慣らしただー? 今の言葉撤回しろ、オイ!」 ……ま、公平に見て、
暴力団事務所みたいですね、ここ。

そのうち、校長と甘利先生が(またかよ……)と言うような顔で飛んできて、なんとかバーサーカーモードの滝沢をなだめる。
滝沢「生徒たちは犬や猫じゃないんだ。飼い慣らされたとは何だ! 子供たちの目を見ろ、これが飼い慣らされた人間の目かーっ!」
それにしても、滝沢の後ろにぬぼーっ立ってるマルモのたるみ切った肉体……ほんとに厳しいトレーニングに明け暮れているのかと疑いたくなる。
その夜、滝沢が帰宅すると、既に昼間の一件を聞きつけた内田が訪ねて来ていた。
市会議員でもある内田は、「泣く子とマスコミには巻かれろだ」と、自分が手を回してこの件が大事にならないよう善処しようと申し出る。
予想されたごとく、愚直かつ自信過剰な滝沢は「余計なことはなさらないでください。あの新聞記者が何を書こうと私に身に疚しいことは何もありませんから!」と、きっぱり謝絶する。

内田「あんたの気持ちは分かるよ。それにしてもそう喧嘩早くちゃ困るよ」
と、台所で話を聞いていた節子が内田にお茶を出しながら、「あのーよろしくお願いします」と頭を下げる。
滝沢「節子」
節子「内田さんの仰るとおりよ、そりゃあなたとしては納得できないかもしれないけど、今問題をこじらせたら、結局あなたの夢が潰れることになるよ」
自分より大人で現実的な節子に説かれ、気が進まない様子であったが、滝沢は内田の申し出を受けることにする。具体的に、内田がどんなことをしたのかは不明だが。
内田は帰り際、今度の東都体育大学への遠征の費用にと、幾許かのお金を置いていく。
川浜は、滝沢の恩師が監督をしている東都体育大学の4軍との練習試合を予定しているのだ。

翌朝、珍しく早起きした光男が、ドキドキしながら朝刊を広げるが、川浜ラグビー部に関する記事は載っていなかった。

同じ頃、滝沢も朝食の席で新聞を広げ、記事がないことを確かめていた。
節子「出てないの?」
滝沢「ああ」
節子「やっぱり内田さんが何か手を打ってくださったのかしら?」
滝沢「……」
安堵したものの、なんとなく釈然としない滝沢であった。
うん、それ、ひょっとして、
新聞が違うんじゃないの? そもそも、滝沢家も下田家も、東亜日報と言う名前からしていかにも超ローカルな新聞を取っていたと言うのが、ちょっと嘘臭いのである。

それはともかく、出掛けたようとした滝沢に、節子が「あなた、これ、内田さんの……私の分も」と、内田から預かった封筒と、自分の財布から出した紙幣をまとめてカンパとして差し出す。
滝沢「え、いいのか?」
節子「うん!」

「スマン」と言いながら、札を受け取った滝沢は、
(つーか、これ元々俺が稼いだ金じゃねえか)と内心思いつつ、それを口にしたら今日がおのれの命日になりそうな気がしたので、余計なことは言わずにさっさと出掛けるのだった。

滝沢が、出勤前にイソップの病院に立ち寄ると、病院の前でタバコをくわえた木村が待っていた。
木村「新聞見ましたか?」
滝沢「……」
木村「安心したかね? 断っとくけどねえ、俺は誰に強制された訳でもないし、誰に丸め込まれた訳でもない。自分の判断で記事を書くことをやめたんだ」
滝沢「何故ですか、あなた暴力教師として私を叩くつもりだったんでしょう?」
木村は、イソップに会って、その口から「ぼかぁラグビーが好きです! 滝沢先生が好きです! 女が好きです! だからラグビーは死んでもやめません」と言う言葉を聞いて、考えを変えたらしい。
木村「あんた、思ったより良い先生だね、昨日言ったこと撤回する。悪かった」
滝沢「いえ、私のほうこそ失礼しました……」
手の平を返したように、謙虚な態度を見せる木村に、滝沢も穏やかに応じる。
毎度のことだが、
このドラマに出てくる人、みんな態度が豹変し過ぎ! それに、滝沢が出勤前にイソップを見舞いに来るなんてことがどうして木村に予測できたのか?

さらに木村は、「お詫びのしるしって訳じゃないんだけど、何かの足しにしてよ」と、遠征のカンパまでしてくれるのだった。
木村「俺も川浜育ちの人間だから強くなって欲しいんだ」
滝沢「ありがとうございます!」
心温まるシーンと言えばシーンだけど、昨日……と言うより、ほんの十数時間前に、あれだけ滝沢たちを侮辱する言葉を並べておいてから、急にこんなこと言われても、いかにも白々しく聞こえるのだった。
このシーンを挟むのなら、もう少し冷却期間を置くべきだったのではないかと思う。
その後、滝沢は病室のイソップを見舞うが、イソップはベッドに半身を起こしてスケッチブックに何やら絵を描いていた。イソップは血色も良く、いたって元気そうであった。滝沢はホッとして、病院を後にする。

職員室では、柳先生が募金箱を抱えて、他の教師たちに遠征費のカンパをお願いしている。
無論、みんな快く協力してくれる。

同じような光景は当のラグビー部でも見られた。加代が、部員一人一人からお金を巻き上げ……いや、徴収しているのだ。
部員「あのー、僕これだけしか」
加代「いいのよ、みんな出来る範囲内で良いんだから」
部員の中には、それはもう気の毒なくらいビンボーでビンボーで、毎日のように父親が一家心中を目論んでいるような奴もいて(註・管理人の妄想です)、おずおずと申し訳なさそうに小額紙幣を差し出すのだった。
加代は、「どうもありがとう」と、そんな部員のヨレヨレの札を、汚いものでも触るようにつまんでポイと捨て(註・くどいようですが、管理人の妄想です)、
加代「ほんと、ビンボーって嫌よねー」 と、領収書を渡しながら、にこやかに付け加えるのだった(註・しつこいようですが……以下略)。
対照的に、「釣りは要らないよ」と、ポンと5000円札(註・今の5000万円ほど……嘘です)を出して、御大尽を気取って良い気持ちになっている光男とか言う厭味ったらしい男もいたりする。

その頃、新楽では、夕子は財布の中の金を数えていた。
その中には、500円札と言う懐かしいお札もあったりする。肖像は岩倉具視だっけ?
500円玉が登場するのはもう少し後だよね。
夕子「はぁー、ちょっと多かったかな。けど、恥かかせられんからなぁ」
無論その5000円札は、夕子が気前良く渡したものだった。

加代「18000円か、ケッ、どいつもこいつも、しけてやがんな……」
じゃなくて、
加代「18000円か、いまいちだなぁ……」
と、みんなから集めた金を勘定した加代が溜息をついていると、真打である朝男、いや大木がふらっとやってきて、無言で数枚の紙幣を差し出す。はっきり見えないが、3000円くらいか。
加代「良いのよ、無理しなくて」
大木「どういう意味だぁ?」

加代「だって、あなたのお母さん病気で……
笑っちゃうほどビンボーなんでしょ?」
大木「うるせえ、俺は人に同情されんのは真っ平なんだ。いいからさっさと領収書寄越せ」
大木、一秒でも早くその場を立ち去りたいとでも言うように、加代が書き終わる前に領収書を破り取り、さっさと部室を出て行く。
その大木と入れ替わりに、滝沢が顔を出す。
滝沢、内田や節子、同僚たちから寄せられたお金を封筒に入れて加代に渡す。

加代「えっ、わっ、すごーい、45000円」
こんなに何度もお札が画面に映るというのも、珍しいよね。
ちなみに当時の5000円札の肖像は聖徳太子である。みんなも勉強になったね(うるせえ)。

滝沢「色んな人の厚意だ、感謝しなくちゃな」
加代「これでバス代が出ます!」
滝沢「そうか……」
滝沢はここで、コロンブス滝沢(第4話参照)の名に恥じない、画期的なアイディアを思いつく。
「バスなんか使わずに東都体育大まで走っていけば、その金を全部自分の懐に入れることが出来るのではないか」と……。
が、実行に移すとみんなからフクロ叩きにされることに気付いたので、この計画は取りやめになる。
同じ日の、4時間目の授業の後、他の生徒たちが競って弁当やパンを机の上に広げているのを尻目に、

そそくさと教室を出て行く大木の後ろ姿があった。
それにしてもこの後ろ姿、まるでモデルのように美しいシルエットである。

大木は校舎から出ると、校庭の水道の水をがぶ飲みして、空腹を紛らわせていた。
ドラマと知りつつ、見るたびに涙ぐましくなる姿であったが、恐らく、自分の昼食代を全部遠征費として差し出してしまったのだろう。

大木「チェッ、ダボダボ言ってら……」
建物の隅に腰を落とし、昼休みの終わるのをやるせない気持ちで待つ大木。
そしてそんな姿を遠くからじっと見詰める滝沢であった。
その後、滝沢は、ラグビー部をやめたいという(と言うより、両親がやめさせたい)マルモの自宅へ出向き、マルモやその両親を、なんとかラグビーを続けるように説得する。
その説得の甲斐あって、翌日、マルモは自ら職員室を訪れ、ラグビーを続けることを表明するのだった。

放課後、滝沢とマルモが少し遅れてグラウンドに行くと、制服姿のイソップを部員たちが囲んでいた。
滝沢「イソップ、お前……」
イソップ「やだなぁ、幽霊じゃありませんよ」
加代「あなた、もういいの?」
イソップ「ええ、精密検査も終わりました。結果が出るまで少しかかりますけど、もう普通にやって良いそうです」
イソップの復帰を、みんなが口々に祝福する。大映ドラマの悪魔のようなスタッフの陰謀とも知らず……。
大木「先生、良いことって重なるもんだなぁ」
滝沢「そうだな」
大木が横からそう言うのだが、イソップの復帰以外の「良いこと」と言うのが、なにを指しているのか、いまひとつはっきりしない。
マルモの復帰か、遠征費が捻出できたことか? しかしマルモの件は他の部員たちは全然知らなかったようだから、遠征費のことかなぁ? どっちにしてもイソップの復帰と並べて語るにはやや不適当な気もする。
次の場面で早くも、土手の上を、マイクロバスで東都体育大学へ向かって走る、川浜高校ラグビー部様ご一行の姿が映し出される。

が、部員たちは初めての遠征と言うことで妙に浮かれ、お菓子を食べたり、大木がリクエストを真に受けて「風はひとりで吹いている~」とお得意の歌を披露したり、車内は完全な遠足気分に包まれていた。

ほどよいところで、滝沢が「おいおいお前たち、遊びに行く訳じゃないだろう」と、たしなめる。
ちなみにこのシーンのマルモの顔、サンドウィッチマンの伊達みきおにしか見えない……。
いや、ひょっとしたら
伊達みきお本人じゃないのか? と一瞬思ってしまった管理人であった。
だが、大木に「今日はイソップの全快祝いみたいなもんじゃないか」とまぜっかえされ、滝沢も大目に見ることにする。
ちょうどその時、バスが相模一高のグラウンドの前を通りがかる。
滝沢「すいません、ちょっと止めてください」
運転手「イヤです!」(反抗期)
じゃなくて、バスは言われたとおり停まります。ドラマですから。
一方の窓から顔を出して、興味津々の様子でその練習風景を見る部員たち。
ちなみに、ナレーションによって、相模一高が全国大会では、準決勝で敗退したことが分かる。
やがて、監督の勝又も気付いて親しげに滝沢に声をかける。

滝沢「ご無沙汰しております」
勝又「頑張ってるそうですね」
滝沢「いや、おたくの練習に比べたらまだまだです」
勝又「こんなのまだまだ序の口ですよ」
話している間にも、わざとらしく、部員を叱咤する厳しさを見せ付ける勝又。
勝又「こらーっ、田中ーっ、なんだそのハンドリングは? グラウンド10周!」 田中「うるせー、お前が走れ!」 勝又「……」
川浜の部員たち(気の毒に……)
……はい、嘘です。

勝又「ところでおたくの合言葉は打倒・相模一高だそうですね。目標にされるのは光栄ですが、うちはちょっとやそっとじゃ負けませんよ」
滝沢「……」
滝沢も、それは十分しており、俄かに厳しい顔付きになって頷く。
バスは再び走り出すが、

部員たちはさっきとは打って変わって、お通夜のように静まり返っていた。チーン。
相変わらず、分かりやすい奴らだ……。
さっきのはしゃぎぶりと比べると、まるっきり、使用前・使用後だよね。

滝沢「オイ、どうしたんだ。急に歌が出なくなったな」
大木「先生、今日の相手は大学の4軍だってな、どれくらい強いんだ?」
滝沢「そうだなぁ、4軍と言っても高校時代みんな鳴らした選手だからなぁ」
滝沢は、ほんとか嘘か、東都体育大学の4軍は、相模一高と同等以上の力があるだらふと分析する。
光男「じゃあ相手は相模一高だと思っていいんですね?」
滝沢「そうだ、はっきり言って今のお前たちでは勝負にならないだろうが、胸を借りるつもりで思いっきりぶつかるんだ」
部員たちは改めて気合を入れ直すが、

滝沢の「向こうに着いたら昼飯だ」と言う言葉に、大木は急に浮かない顔になって俯くのだった。
そう、今回も弁当を持ってきてないのだ……って、さすがに試合の日くらい、用意しとけっての。
やがてバスは無事、東都体育大学のキャンパスに到着する。
マルモ「マネージャー、飯にしましょう」
加代「はい、それじゃここで食事休憩にします」
加代、ほとんど引率の先生みたいな口ぶりである。ま、彼らの中では一番年上と言う設定だからね。

当然、大木はそのままバスに残り、最後部の座席にふんぞり返って腕組みをしている。
滝沢、それを見て微笑み、近付いて話しかける。

滝沢「降りないのか」
大木「ええ、俺はちょっと」
滝沢「弁当ならあるぞ。女房がなぁ、試合に出るのはお前のほうだからって俺よりもでかい握り飯作りやがった。ほら……」
滝沢、あらかじめ、大木の分の弁当も用意していたのだ。
大木「先生」
滝沢「遠慮しないで食えよ。そのほうが女房も喜ぶ」
滝沢、くどくどしたことは言わず、弁当を置いてすぐにバスから出て行く。

大木がすぐ包みを開くと、おかずの入ったタッパーの外に、アルミホイルに包まれた握り飯が三つ……、実にリアルで、かつ人の愛情がこもった弁当だった。
このお握り、本当に岡田奈々さんが握ったものだったら、管理人、1万円出しても良いから食べたいです。
大木、その握り飯をこぼれそうになる涙を堪えつつ、頬張るのだった。
管理人、このシーン、大好き。
だから、食べてる途中で滝沢が戻ってきて
「あ、金はあとで良いからな!」とほざくとか、そういうしょうもないギャグを書く気にもなれない(書いてるけど……)。
その後、いよいよ試合が始まる。

光男がふとグラウンドの端に目をやると、なんと、愛する圭子が立ってこちらを見ているではないか。
滝沢が事前に、圭子に試合のことを伝えていたのだ。
で、試合開始のホイッスルが鳴り響くのだが、何度も言っているように管理人はラグビーそのものにはあまり興味がないので、試合の模様は詳しく書かない。
前半、川浜は0対19で折り返す。それでも、相模一高との試合に比べれば大健闘と言える。なにより、選手たちは骨惜しみせず全力で相手にぶつかっている。
後半、マルモが他の選手たちの下敷きになり、ユニフォームが裂けると言うアクシデントが発生する。
で、その場で替えのジャージに着替える為、上半身裸になるのだが、

さっきも書いたけど、これがとてもラグビー部員とは思えないほど油断した体なのだった。
肉が波打ってるんだぜぇ……。
いくらドラマとは言え、さすがに説得力がないよね。
さて、試合は東都体育大学の一方的なリートで終盤になるが、ここで大木がペナルティキックを獲得し、チーム一のキッカーである光男が見事に決め、滝沢が監督になってから初めての得点を上げるのだった。
で、試合は52対3と言う大差での敗北であったが、帰りのバスの中で、滝沢は心から選手たちの健闘を称える。
滝沢「技術の差こそあれ、みんなが力をあわせて必死に頑張ればこれだけの試合が出来るんだ、だが、こんなことで満足するな、我々の目標は相模一高を倒して全国大会に出場することだ。そして高校ラグビーのメッカ、花園ラグビー場の土を踏むことだ」

その頃、光男はひとりバスに乗らないで、圭子と浜辺でのデートを楽しんでいた。
圭子「素敵だったわ、今日の光男さん
ねえ、蹴る時なに考えてた?」
光男「なにも……悪いけどあの一瞬は君のことも忘れてた。ただボールを見詰め、蹴ることだけしか考えてなかったんだ。……怒った?」
圭子「ううん、立派よ、あたし、良くわかんないけど、あの時ほかのこと考えてたらボール入んなかったんじゃない? 無心よ、無心になれたからきっと入ったんだわ」
その後も、どうでも良い会話が長々と続くが、面倒臭いので省略する。

で、なんとなく良いムードになって、遂にふたりは初めての口付けを交わすのだった。
キャーッ! これ、どう見てもほんとにキスしてるよね。
管理人としては、心の底から興味のないシーンであるが。
だが、今回は、そんなほのぼのしたシーンから一挙に滝沢たちを奈落の底へ突き落とす、悪魔のような展開が待っていた。

ある日、イソップの両親、奥寺夫妻が学校にやってくる。
イソップの父親役は、北村総一朗さん。
校長「奥寺君の精密検査の結果が出たそうなんだ」
滝沢「は、それで、どうなんですか?」
奥寺「脳腫瘍です」 
滝沢「は?」
奥寺「浩は脳腫瘍なんです」
滝沢「そんな、そんな馬鹿な、浩君はあんなに元気になったじゃないですか」
奥寺「私どもも、はじめはとても信じられませんでした……しかし、事実なんです」
奥寺夫人は耐え切れなくなったように泣き伏す。
一応、手術はするらしいのだが、奥寺は既に諦めきったような顔つきだった。
そして夫妻は、このままイソップにラグビーを続けさせて欲しいと頼みに来たのだ。
滝沢「ラグビー、無茶ですよ、そんな……」
奥寺「いや、構いません。医者は五分五分と言いますが、ま、口ぶりからして九分どおり絶望と思います。でなかったら、脳腫瘍の患者に普通に生活しろなんて言う筈ありませんからね」
夫妻はふたりで話し合って、せめてイソップが元気な間は、好きなラグビーを思いっきりやらせてやろうと結論したのだと言う。

その後、滝沢がなんとか平静を装ってグラウンドへ赴くと、部員たちがイソップを囲んでなにやら騒いでいる。
加代「先生、どうしたんですか、顔色真っ青ですよ」
滝沢「いや、なんでもない」
イソップ「先生、ちょっとこれ見てくれますか?」

そう言ってイソップが差し出したスケッチブックには、
缶詰会社のロゴマークのようなデザインが描かれていた。
加代「ジャージにつけるマークですって」
滝沢「お前がデザインしたのか」
イソップ「僕んち、海の近くでしょう。毎朝、海から昇る太陽を見ているうちに思い付いたんです。僕らもこの太陽のように真っ赤に燃えて昇って行きたいと思って……」
滝沢「ライジングサンか!」
イソップ「ダメですか」
滝沢「……」

本人は知らないが、既に近いうちの死を約束されたイソップがそんなことを言うものだから、滝沢は思わず泣きそうになってしまい、慌てて顔を横に向けて隠す。
大木「俺は悪くねえと思うけどな」
加代「良いわよ」
光男「先生、これで決めようぜ」
衆議一決し、イソップの描いたデザインがユニフォームに採用されることになる。

ラスト、制服のまま練習に参加するイソップとランパスをしながら、
ナレ「これが最後のランパスになるかもしれない。いや、決して最後にしてはいけないのだ。賢治はこの少年のラグビーかける情熱が恐るべき病魔をも克服することを祈りつつ、走り続けていた……」
しかし、一度狙った獲物は逃がさない、大映ドラマのスタッフの魔手から、イソップを救うことはほとんど絶望的に思えた……。
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