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「帰ってきたウルトラマン」傑作選 第31話「悪魔と天使の間に....」

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 第31話「悪魔と天使の間に....」(1971年11月5日)

 ……と言う訳で、「新マン」のレビューをするのです。

 記念すべき第1回目は、名作と名高い31話を取り上げてみた。脚本は市川森一さん。

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 MATの作戦室を、突然、二人の子供が訪れる。

 南「隊長……」
 伊吹「いやー、現われたな、はっはっはっ」

 伊吹隊長、いつも怪獣や宇宙人を相手にしているので、つい、実の娘の来訪を「現われたな」と表現してしまう。

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 伊吹「娘なんだよ」
 郷「へーっ」
 岸田「隊長のお嬢さん!」
 丘「かわいっ!」

 伊吹が、照れ臭さと誇らしさを綯い交ぜにして紹介すると、初めて会った隊員たちは口々に好意的な嘆声を放つ。

 愛しの丘ユリ子隊員などは、美奈子の頭をナデナデしちゃう。

 上司の娘を誉めちぎって、万が一にも不利益はないのである!

 美奈子「伊吹美奈子です、はじめまして! それから、風間輝男君です」
 伊吹「娘が通ってる教会で友達になったんだそうだ」

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 郷「こんにちは」
 輝男「……」

 郷、にこやかに声を掛けるが、輝男は妙に冷たい、まるで人形のような眼差しを向ける。

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 郷も思わず頬を強張らせるが、他の者は全く気付かない。

 もっとも、郷も顔を見ただけでそれがゼラン星人だとは分からない。

 今回の訪問は、MATのファンだという輝男が基地を見学させて欲しいと美奈子に頼み、それを親バカの伊吹隊長が許可したものらしい。

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 岸田「おとなしい子ですね」
 上野「そう言えば一言も口を利かなかった」
 伊吹「あの少年は聾学校の生徒なんだよ。娘はあの少年と友達になるために、簡単な身振りを本など買って覚えてたよ」
 郷「優しいお嬢さんなんですね!」

 くどいようだが、上司の娘を誉めちぎって、万が一にも不利益はないのである!

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 さて、案内役を仰せ付かった郷、二人をMATジャイロの管制室に連れて行く。

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 郷「あれがこれから調査に出るMATジャイロです」
 美奈子「輝男君、分かった?」
 輝男(無言で頷く)

 郷、何気なく輝男の顔を見る。

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 と、早くも輝男は不気味に目を光らせて、テレパシーで郷に語りかけてくる。

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 ゼラン星人(郷秀樹、いや、ウルトラマン、私は今、テレパシーでお前に話しかけている。だから、私の声はお前にしか聞こえない。私の使命はお前を殺すことだ)
 郷(貴様は誰だ?)
 ゼラン星人(我々ゼラン星人はお前を葬った後、この地球を侵略する。私はプルーマと言う怪獣を連れてきている。しかしこれは単なるおとりだ。お前はこの怪獣に勝つだろう、そしてウルトラマン、その時がお前の最期だ。わかるか、プルーマに勝った時、お前は死ぬのだ)

 何食わぬ顔で美奈子と見学を楽しみながら、テレパシーで郷に恐ろしい言葉を囁きかけるゼラン星人。

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 郷「待て! 貴様ーっ! お嬢さん、こいつは……」
 ゼラン星人(私が宇宙人だとでも言うつもりかね、やめたほうがいい。キチガイ扱いされるだけだ)
 郷「黙れ!」

 我を忘れた郷は、物凄い剣幕で輝男に掴みかかり、思わず暴力を振るってしまう。

 当然、ゼラン星人の忠告どおり、郷はキチガイ扱いされてたちまち隊員たちに取り押さえられる。

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 騒動の後、地下室のようながらんとした部屋の片隅で、壁にもたれて座り込んでいる郷。

 ドアが開いて、伊吹隊長が階段を降りてくる。

 ここは、そうは見えないが監獄で、郷は一時的にここに押し込められているということなのだろうか?

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 伊吹「子供たちは帰したよ。正直驚いた、一体何が起こったのかと思ってね」
 郷「申し訳ありません」

 伊吹隊長は案外穏やかな口調で郷に事情を問う。

 郷「話しても信じていただけないと思います」
 伊吹「私はいつも君を信じている」
 郷「ではお話します。お嬢さんが連れてこられたあの少年は人間ではありません。人間の姿を借りた宇宙人です」

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 郷「奴の目的はウルトラマンを抹殺することです」
 伊吹「彼が自分の口からそう言ったのか。あの少年は口が利けないんだ」
 郷「ですから、それは、テレパシーです」

 郷は率直に打ち明けるが、伊吹隊長は容易に信じてくれない。

 郷「しかし隊長、これだけは聞き入れて下さい、お嬢さんをあの少年に近付けておくことは危険です」
 伊吹「まだ分からんようだな、美奈子は君が言ってくれたとおり、優しい娘なんだ、娘はあの少年の友達になってやろうと努めてるんだ。親として娘の善意を踏みにじるような真似は出来ない」
 郷「でも、お嬢さんが! 危険な現実に晒されているとしたら?」
 伊吹「現実? 何者にも汚されない美しい友情、それが子供たちの現実だよ」

 それにしても、とても子供向け特撮ドラマとは思えない重厚な台詞の応酬である。

 同時期の「仮面ライダー」などと比べると、まるで月とすっぽん黒酢だ(無論、ライダーにはライダーの良さがあるんだけどね)。

 それでも、いささか投げやりな態度ながら、伊吹隊長は郷の現場復帰を認めてくれる。

 郷(ひとりで戦うしかない……)

 その後、ゼラン星人の予告どおり、K地区の小学校の地下から、怪獣プルーマが出現する。

 直ちにMATが出撃するが、輝男はわざとプルーマの持つアドバルーンにぶら下がって、攻撃を妨害しようとする。そうやって、郷をウルトラマンに変身せざるを得ない状況に追い込もうとしたが、郷も警戒してなかなか変身しようとしない。

 そうこうしているうちに、偶然か故意にか、プルーマがアドバルーンを放して地下に潜ってしまったので、ひとまず騒ぎは静まる。

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 郷「MATの隊員です」
 看護婦「どうぞ、今安定剤を飲んだところですから」

 病院のベッドに横たわる輝男のもとへ郷が訪れる。

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 ゼラン星人(はははは、どうした、郷、ウルトラマンになるのが怖くなったのか。明日はこの病院の鼻先に出してやるぞ)
 郷「やめろ、この病院には何十人という重病患者がいるんだぞ!」
 ゼラン星人(病人を助けたいならウルトラマンになることだな)
 郷「ウルトラマンになる前に、貴様を殺してやる!」

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 いささか芸がないが、郷はまたすぐ挑発に乗って輝男に掴みかかり、医者や看護婦に止められる。

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 美奈子「パパ! この人に出て貰って」
 郷「お嬢さん!」
 伊吹「郷隊員、出て行きたまえ! 命令だ。私が許可するまで基地を出ることは許さん」

 しかもその現場を、ちょうど輝男の見舞いに来た伊吹親子に見られてしまい、郷の評判はガタ落ちとなる。

 まさに「団の面目丸つぶれ」である!

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 さすがに伊吹隊長も腹に据えかねて、廊下まで郷を追ってきて強くなじる。

 伊吹「いい加減にするんだな。子供の首など絞めてどうするつもりなんだ」
 郷「子供ではありません。あいつは宇宙人です」
 伊吹「宇宙人か、宇宙人だってことを強引に白状させようとしたわけか」
 郷「白状などさせる気などありません。殺すつもりでした!」
 伊吹「……」

 郷、衝撃的な言葉を叩きつけると、そのまま立ち去ってしまう。

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 作戦室に戻った伊吹隊長は郷の精神鑑定依頼書を用意する。それを見た南隊員が思わず声を張り上げる。

 南「隊長は、まさか? 郷の神経は正常です!」
 伊吹「そんなことは分かっておる」

 思い思いのポーズで重苦しく沈黙する隊員たち。

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 そこへ問題の郷が入ってくる。郷は真っ直ぐ伊吹隊長のデスクにやってきて、

 郷「お嬢さんは?」
 伊吹「病院へ残してきたよ」
 郷「……」
 伊吹「何処へ行く?」
 郷「お嬢さんを連れ戻します」
 伊吹「余計なことはしないでくれ、美奈子は私の娘だ」
 郷「だったら僕を信じて下さい、お嬢さんは利用されてるんです」

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 伊吹「私はあの子を、何かの偏見で人を騙したり、疑ったり、差別したりするような娘には育てたくないんだ!」
 郷「……」

 伊吹隊長の親としての痛切な叫びに、郷も隊員たちも押し黙る。

 こういう、教科書に載ってもおかしくない台詞が至るところに出てくるのが、昭和ウルトラシリーズの偉大なところなのである。

 郷は力なくデスクから離れ、伊吹隊長に背を向けたまま、

 郷「明日、あの病院の近くに怪獣が出てくる筈です。もしこの予言どおりに怪獣が現われたら、僕の言ってることを信じて頂けますか」
 伊吹「正直言って、私はあの少年よりむしろ君の方が宇宙人じゃないのかと言う気になってるよ」
 郷「どう思おうと隊長の勝手です、あの宇宙人はウルトラマンを抹殺するのが目的なんです。ウルトラマンがピンチになったらあの少年を捕まえてください」

 郷、覇気のない声でつぶやくように言うと、作戦室から出て行く。

 これで、翌日、怪獣が出なかったらますますMATにおける郷の立場が悪くなると思うのだが、ゼラン星人もそこまで深く考えておらず、予告どおり病院のそばにプルーマを登場させる。

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 岸田「この病院を守るんだ、一歩も引くな」
 郷「はいっ」

 なんだかんだで、普通に出撃している郷。それこそ予言が的中したので、伊吹隊長も禁足命令を解いたのだろう。

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 上野「おい、郷、俺はお前を信じるぜ!」
 郷「ありがとう!」

 去り際、ありがたい言葉を掛けてくれる上野隊員。こういう男っぽい信頼関係、良いよね。

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 空と地上から、MATが総攻撃をかけるが、プルーマは涼しい顔をして暴れまわっている。

 郷(やはりウルトラマンになるしか防ぎようがないのか……)

 ま、どうせ今までもMATだけで怪獣倒したことは一度もないからね。

 郷、ゼラン星人の謎めいた言葉が気になったが、「ええい、ままよ……ところで、ままよって何?」と思いつつ、自分から罠に飛び込むつもりでウルトラマンに変身する。

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 プルーマは、最初から捨て駒とされつつも、なかなかタフな怪獣で、スペシウム光線をまともに浴びてもピンピンしている。

 ウルトラマン、ならばと、必殺のウルトラブレスレットを飛ばし、その頭を刈り取る。

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 首を失ったプルーマはお寺の敷地にめりこむように倒れ、発光して液状になり、地面に吸われて消える。

 手前のちっちゃなお墓の作り込みとか、相変わらず特撮スタッフの職人芸が堪能できる。

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 ウルトラマン、いつものようにブレスレットを受け止めようとするが、

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 光の刃となったブレスレットは、手首に嵌まらずに逆にウルトラマンに襲い掛かってくる。

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 空中で回転しながら、無数の光の矢を放つブレスレット。

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 ウルトラマン(しまった、ブレスレットがコントロールされている)

 ウルトラマン、バリアでそれを防ぎつつ、初めてゼラン星人の真の狙いを悟る。

 そう、ゼラン星人はウルトラマンのブレスレットを操って、それでウルトラマンを倒そうという奇抜な作戦を立てていたのだ。

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 岸田「誰かが強力な磁力であのブレスレットを誘導しているとしか思えません」
 伊吹「誰かが?」

 病院の前にやってきた伊吹隊長、岸田の言葉にふと病院を振り仰ぐ。

 同時に「ウルトラマンがピンチに陥ったら、あの少年を捕まえてください」と言う郷の言葉を思い出す。

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 伊吹隊長は、単身病院の中へ入り、輝男の行方を探す。

 そして、遂に霊安室の祭壇の後ろで怪しげな機械をいじっていた輝男を発見する。

 伊吹「輝男君、こんなところで何をしてるんだ!」

 ゼラン星人、目から怪光線を発して伊吹隊長を消そうとするが、

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 逆に撃ち返されて、機械を壊され、自身も喉を貫通される。

 宇宙人とはいえ、子供が喉から血を溢れさせながら死んでいくという、今ではまず無理なハードな描写。

 で、この子役の瀕死の演技がまたうまいのである。

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 輝男はばったり倒れ、伊吹隊長がその体を起こすと、その顔は不気味なゼラン星人のそれになっていた。

 一方、機械が壊されると共に、ブレスレットも正常になり、無事ウルトラマンの手首に収まり、ウルトラマンは飛び去っていく。

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 教会の十字架のシルエットに、鐘の音が鳴り響く。十字架の向こうに、眩しい太陽が輝いている。

 それを、伊吹隊長と郷が見上げている。

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 やがて、教会から子供たちが押し出されてくる。

 美奈子「パパーッ!」

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 郷「僕なら、あの少年は遠い外国に行ったといいますね。お嬢さんの心を傷付けない為にも」
 伊吹「いや、君がそう言ってくれるのはありがたいが、やはり事実を話すつもりだ。人間の子は人間の子さ、天使を夢見させてはいかんよ」

 伊吹隊長はそう言うと、ゆっくり娘に向かって歩き出す。

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 伊吹隊長の言葉とは裏腹に、天使そのもののような無邪気な美奈子の顔を映しつつ、幕。

 ちなみに「新マン」と「魔女先生」は、同時期に放送されていただけあって、川口英樹氏をはじめ、どちらにも出ている子役がたくさんいて、この美奈子の大木智子さんも「魔女先生」の18話に出演しておられる。
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コメント

改めて視ると子供の姿を借りて郷を苦しめてMAT(特に伊吹隊長)との間にヒビを入れた事は良かったですね😅テレパシーを使用したのも郷に対して精神的に揺さぶりをかけていたようですね。伊吹隊長の“人間の子は人間の子だ。天使を夢見るようなことをさせてはいかんよ”は、このシリーズの中でも名言になるのではないかと私は思いますね

Re: タイトルなし

長文コメントありがとうございます。色々と考えさせられる奥の深い作品ですよね。

No title

「11月の傑作群」の第1弾です。でも本当は、その「11月の傑作群」が、サブタイトルの副題に入れて欲しかったです。そう思いますか?

Re: No title

思いません。

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