第39話「仮面が踊る聖歌隊」(1984年12月21日)
あまりこんなことは言いたくないが、今回のエピソード、はっきり言って駄作である。それもワースト級の。
今までも、駄作、凡作はあったが、それでもギャルのコスプレやアニーのパン チラなど、なにかしらひとつくらいは見所があったのだが、この39話はそれすらない。バンクシーンもやたら多いし。
内容的には、第1話のラジオを使って子供たちを催眠術にかけて非行に走らせると言う作戦の焼き直しに、クリスマスの雰囲気を付け足しただけである。
山田風太郎氏のエッセイに、夏目漱石や吉川英治のような文豪・大作家の作品の中にも、箸にも棒にもかからぬ駄作があるのだから、それらを集めて、作品を徹底的にこき下ろした解説を付けて売れば売れるだろうというユニークな文章が出て来るが、もし、特撮番組版の
「駄作全集」を作ったとしたら、さしずめ、この39話などは真っ先にその候補に挙げられるだろう。
スルーするのが最良の選択だとは思うが、折角今まで全話レビューしてきたのに、この1話だけ外すと言うのは精神衛生上よろしくないという消極的な理由であえてレビューすることにした次第である。
いらぬ前置きが長くなった。
不思議宮殿で新たな不思議獣誕生の儀式が行われている。
久しぶりにギャルとミラクラーたちの「底引き網」踊りが見られるが、バンクシーンなので意味はない。
そして生まれたのが、ヤギの頭を持つ悪魔(バフォメット)をイメージした不思議獣サタサタであった。
ポー「不思議獣サタサタよ、聖なるクリスマスに邪悪なプレゼントを贈り、子供の心を汚すサタンクロース作戦を実行するのです」
サンタクロースならぬ、サタンクロース作戦の開始を宣言するポー様。

と、サタサタはその場で黒いサンタクロースの姿に変わる。
そしてヒイラギの葉の形をした誘導灯のような扇を手に、珍獣たちの前を横切っていくと、珍獣たちがパッパッと姿を消して、黒いサンタの下げた袋の中に入っていく。
この辺の演出も、第2話で、珍獣たちが道化師に変身していくシーンの焼き直しのようである。
そう言えば、「仮面ライダーV3」にも、黒いサンタの出てくる話があったな。

一方、珍しく本業のペットショップで忙しく働いている小次郎さんと陽子。
陽子「二丁目の吉田さんは子犬、四丁目の武藤さんは子猫ね」
小次郎「はい、子猫、子猫」

大「忙しそうだねー」
小次郎「ウハウハだよ、大ちゃん、プレゼント作戦大当たりだ」
大「なるほど」
小次郎「このように包み込んで届けるのよ、子供たちは大喜びだ」
そう、小次郎さんは生意気にも、子供たちへサンタクロースの衣装を着て子犬や子猫を届けるというキャッチーなサービスを考案して、大儲けしていたのだった。
陽子「平井さんとこ、どうする? 真夜中に届けて欲しいって、ジュウシマツ」
小次郎「平井さんとこはキビシーッ! 本物のサンタが届けたように見せかけて欲しいって言うんだよ」
陽子「無理よね」
小次郎「いや、無理でねえ、大ちゃんなら登れる! あのベランダ」
大「ええっ」
と言う訳で、ちょうどその場に来合わせた大ちゃん、深夜、サンタの格好をしてその平井と言う家に忍び込むと言う仕事を仰せつかる。

大「二階のあそこだな」
ちゃんと白いひげまで付けて、割とノリノリの大ちゃん。

鮮やかに二階のベランダに(スタントが)飛び上がり、あらかじめ鍵が開けてあった子供部屋に入り込む。
一応両親の依頼とは言え、傍目には完全な変質者である。
大ちゃんは、綺麗にラッピングされたジュウシマツの鳥篭をテーブルに置き、二人の子供の寝顔を見てから、静かに窓から飛び降りる。
……子供たちに気付かれないように届けるのなら、別にサンタの格好する必要なかったよね。
つーか、普通に両親が置けばいいことじゃないの?
それはさておき、これ見よがしにひと仕事終えてきたぜ感を漂わせつつバビロスに帰ってきた大ちゃんを、アニーがとびきりの笑顔で迎えてくれる。

アニー「どう、うまくいった、サンタさん?」
大「うん、大喜びすると思うよ。朝起きてね」
アニー「クリスマスって夢が実現する日なのね、望んだり願ったりしたことが目の前に形となって現われる」
目をキラキラさせて語るアニー。
しかし、「夢が実現する」と言うより、単に「欲しいものが手に入る」だけじゃないのかなぁ、と。
少なくとも、クリスマスの習慣を知らないマウント星人のアニーはそう捉えているらしい。
大「僕なんか、星空を探したもんだ。サンタさんの星はどこかってね」 サンタクロース(の持ってくるプレゼント)を夢見てすやすや眠っている子供たちを見てコーフン(性的な意味ではなく)したせいか、大ちゃんも童心に返ってそんなことを口にする。
アニー「え? あ、ごめん、聞いてなかった」 大「……」
じゃなくて、
アニー「夢を見てたのね」
大「そうだ。明日、清君と美代ちゃんの顔、見に行ってみようか」
アニー「ええ、喜ぶ顔をね」
さて、読者のみんなもだいぶ飽きてきただろうが、書いてる本人はそれ以上に飽きているので心配御無用。
だが、二人がそんな和やかな会話を交わしている頃、あの子供部屋では不思議な現象が起きていた。
不意に窓の外から雷光のようなまばゆい光が差し込んだかと思うと、あの黒いサンタがどこからともなく現われ、ベッドごと宙に浮いている子供たちの周囲を行ったり来たりする。

サンタが悠然と立ち去ると、いつの間にか子供部屋は元通りになっていた。
ただし、プレゼントのカラフルな包装紙が真っ黒なものに変わっていて、子供たちが急いでそれを取ると、鳥篭の中にはジュウシマツではなく、三体の小さな珍獣がかしこまっているではないか。
珍獣はたちまち大きくなっていつものサイズになるが、その後、子供たちに何をしたのかは描かれない。

翌朝、大ちゃんとアニーが平井家の門をくぐると、家の中からしょんぼりして出て来た小次郎さんと行き会う。
大「小次郎さん!」
小次郎「叱られてきただよ」

大「叱られた?」
小次郎「ああ、ジュウシマツが怪物に化けたんだと」
大「そんな馬鹿な、僕はちゃんと届けたよ」
小次郎「ジュウシマツだけじゃないんだよ、子犬も子猫も、みぃぃんな怪物に」
アニー「じゃあ配達した全部の家で?」
小次郎「ああ、あっちゃこっちゃ弁償しなきゃなんねえ、破産だ、破産だよぉ」
小次郎さん、心ここにあらずといった風情で、とぼとぼ行ってしまう。
しかし、小次郎さんのペットショップ、だいぶ前に店内をめちゃくちゃにされて弱ってたけど、なんとなく元通りになって営業再開してるんだよね。小次郎さんの実家って、かなりの資産家なのだろうか。
その後、家を飛び出した清と美代の兄弟、そしてレギュラー子役たちの前に、

あの黒いサンタと、松明を持った黒一色の衣装をまとった従者たちが忽然と現われ、賛美歌のように「不思議ソング」を歌いながら近付いてくる。

平井家の子供もレギュラー子役たちも、みんな黒いサンタから珍獣のプレゼントをされて既に催眠術にかけられていたのか、怖がることなくその列の後ろについて、一緒に踊り歌いながら歩き出す。
それにしても、どうして、こう言うシーンにサンタコスプレをしたギャルたちを参加させようと言う基本的なことすら思い付かなかったのか。
1話からひとりで脚本を手掛けていた上原氏同様、スタッフもハードスケジュールの連続で、そんな余裕がなくなっていたとしか考えられない。

子供たちは森の中の、サンタを逆さまにして十字架にかけた、なかなか背徳的なオブジェの前で完全に洗脳され、姿も黒一色の異様なものに変わる。
黒いサンタ「不思議ソングを歌え、そして踊れ!」
もっとも、子供たちが集団で消えたと知った大ちゃんとアニーの活躍で、CMに入る前に、子供たちは全員フーマの手から救出される。
二人は平井家の子供たちを家に送り届け、両親に感謝されながら立ち去るが、

母親「さ、中に入りましょ」

美代「誰、あんた?」

母親「……!」
娘の言葉に思わずギョッとする母親。
そう、フーマの洗脳はまだ解けていなかったのだ。
ちなみに、クレジットを見るまで気付かなかったが、この母親を演じているのは監物(けんもつ)房子さんだった。「あぶない刑事」の交通課の河野良美役ね。
美代「知ってる、この人?」
清「知らないよ」
父親「忘れちゃったのか、お父さんとお母さんを?」
両親が思わず子供の肩をゆさぶるが、子供は一瞬であの黒衣の仮面姿に変わり、子供とは思えない力で両親を突き飛ばし、そのまま柵を乗り越えて何処かへ行ってしまう。

他の子供たちも同様にあの姿になって、金属バットを持って「不思議ソング」を歌いながら町中を走り回る。
そして自動車や石膏像を破壊しまくるのだった。

ポー「サタンクロースの洗礼を受けた子供たちは、親の愛を拒否し、美しい心豊かなものをことごとま拒否します。いまや、破壊集団となって町中を暴れまわっております」
クビライ「黒仮面聖歌隊、フーマの主義を忠実に実行する精鋭部隊だ。もっと凶暴化させろ、もっと破壊させろ」
(上半身のモンクを除く)珍獣たちがいないので、いつもよりがらんとした宮殿で、作戦の首尾を語り合う祖父と孫。
結局、今回の作戦も、青少年の心を荒廃させて暴力行為に走らせるという、フーマお得意のものだった。

少年少女合唱団の歌う「不思議ソング」をバックに、町中を跳梁跋扈する黒仮面聖歌隊。
一応、幻想的なムードで撮ってるつもりなんだろうが、いまひとつ印象に残らない。
だが、フーマ苦心の作戦も、大ちゃんとアニーによってあっさり粉砕され、いつもの戦闘ルーティンを経て事件は解決する。
ラスト、教会の前の階段に並んだ白衣の子供たちのクリスマスソングを聴く大ちゃんとアニーであった。
以上、最初に書いたように面白くもなんともないエピソードであった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト