第35話「6番目の男」(1984年9月29日)
冒頭、根暗(ねくれ?)山と言う、あまりキャンプの行き先にしたくない名前の山で、メイスンと戦闘員たちが何やら発掘作業をしている。やがて、巨大な銀色の楕円形の塊がいくつも出てくる。
それは、かつて宇宙から飛来したマグネ隕石と言う、強力な磁性体であった。
ドクターマンはそれを採掘してマグネメガスの磁力砲に利用するとともに、対人用の強力な戦闘スーツを開発しようと目論んでいた。
バイオマンも、ギアの暗躍を察知して根暗山に行き、独自に調査を開始する。
彼らが地面を掘り繰り返していると、突然、サルのように身のこなしの軽い若者が現れ、史朗たちに襲い掛かってくる。

正太「遂に見つけたぞ、お前たちだな、最近、この山を荒らしまわってるのは?」
史朗「いや、違う、俺たちはある調査をしてるんだ」
正太「そのあたりはな、狸の一家が住んでたんだ。可愛い子供も生まれた、狸の一家が住んでたんだぞ、ほら、見ろ!」
正太が指差すほうを見ると、地面に枝で作った二つの十字架が突き立ててあった。そのたぬたぬの親子の墓なのだろう。
正太は再び崖から飛び降りると、問答無用で殴りかかってくる。
変身前とはいえ、常人より遥かに身体能力の高いバイオマンだったが、

正太は史朗たち三人を相手に、互角以上の戦いを見せる。

ひかる「凄い人がいるものね!」
ジュン「郷さんたちを相手にあそこまでやるなんて、信じられない」
戦いには加わらず傍観していた女子たちも、若者の人間とは思えぬ俊敏さに目を丸くしていた。
と、そこへハト連絡員002号と史朗が勝手に名付けているハトが飛んできて、「ギアを発見」と知らせてくれる。無論、あくまで史朗の妄想である。
5人は正太を打ち捨てて、002号の向かった方向へ走り出す。

が、しつこい上に素早い正太は、森の中で先回りをして5人の前に立ちはだかる。
竜太「山猿!」
真吾「またかよぉ」
正太「お前、ハトを操るようだが、動物扱うのなら俺のほうが上だぜ」
変なところで対抗意識を燃やしている正太が指笛を吹くと、どこからともなく、二匹の子猫と三匹のウサギが集まってくる。
しかし、ウサギはともかく、こんな山奥に子猫はいないのでは?
さらに、草むらをピョンピョン飛び跳ねながら、あまり見たことのない動物が駆けて来る。

竜太「うわーっ、いたちだーっ!」
咄嗟に、かねてから開発していた新技「W鼻くそほじほじ」を披露する竜太。
じゃなくて、いたちの屁を警戒して鼻の穴に栓をしているのである。

正太「へっ、この山の動物は全部俺の友達だ」
正太、恐れ気もなくそのいたち……フェレットにしか見えんが……を抱き上げ、ナデナデしてやる。
史朗(いったい、こいつはどういう男なんだ? もしや……
ただのバカ?)
内心、不思議な若者の正体について思いを巡らす史朗であったが、途中から嘘である。
正解は、(俺たちと同じバイオの血が流れているのか?)でした。
実際、ジュンも、初代イエローフォーのミカがトンズラ、いや、殉職した後、急遽探し出されたバイオ戦士だったのだから、他にバイオ粒子を受け継いでいる人間がいたとしてもおかしくない訳である。
と言うより、いないとおかしいのだが……。
史朗、正太のことは気になったが、今はギアの陰謀を暴くのが先だと、再び正太を放置して行こうとする。正太はなおも追いすがって、最後尾にいたジュンの体に触れるが、

ジュン「何すんのよ!」
正太「あたたたっいててっ」
ジュン「えーいっ!」
正太「あーああーっ!」
ジュン、その腕を捩じ上げると、強烈な裏拳をその顔にお見舞いして吹っ飛ばす。
ジュン「急いでんの、ごめんね!」
正太「女に負けるなんて、かっこ悪いとこ見せちまったなぁ」
誰に見せたの?
その後、5人はメイスンたちの採掘現場を見付けるが、そこへまたまたまた正太が割り込んでくる。
三連発は、さすがに見てるこっちもうんざりする。
正太、メイスンたちが発破を仕掛けて山を切り崩しているのを見てカッとなり、ジュンが止めるのも聞かず、無謀にもギアに喧嘩を吹っかける。

正太「あたたたた……」
が、当然、メイスンやメッツラーにかなう筈もなく、殺されそうになるが、ジュンや他の4人が飛び込んで正太を守る。
場合が場合なので、5人は正太に見られるのを覚悟で、バイオマンに変身する。
メイスンたちとの戦いの途中、グリーンツーは彼らが集めていたと思われる鉱石を発見して拾い上げるが、

触った途端、その体に強力な磁力が走り、その電子頭脳を狂わせられる。
……しかし、その地中にはたくさんのマグネ隕石が眠っているのだから、触らずともその上に立っただけで、5人のスーツに影響が出ると思うんだけどね。
メイスンたちが平気なのは、ドクターマンがしっかり防磁処理を施しているからだろう。

メイスンのミサイルを受けて、思い思いの姿勢で吹っ飛ばされるバイオマン。

正太「うわっ、かっこいい、なんで出来てんの?」
イエローフォー「よしてよーっ、もうっ」
落ちてきたイエローフォーの胸を豪快にタッチする正太。
変身前の女性ヒーローにセクハラする奴はたまにいるけど、変身後の女性ヒーローにセクハラした奴は、この正太が空前にして絶後ではないだろうか。
ま、これでイエローフォーの中身が女性だったらなお良かったのだが、贅沢は言うまい。

正太「はー、イエローフォーがあの子とは、あー」
物陰から、イエローフォーの華麗な戦いぶりを感心して見守っている正太。
言い忘れたが、正太を演じるのは少し後の「ジャスピオン」で主役を務めることになる黒崎輝さん。
正太「女の癖になんてつええんだ、あんなつええ女、初めて見たぜ」
さっき、ジュンにぶん殴られたときの感触を思い出し、幸せそうにニヤニヤする正太。どうやら、ジュンに惚れてしまったらしい。
その後、森の中の、正太の住んでいる山小屋に招待されている5人。

正太「いやぁ、俺、ほんと言うと、初めて会ったときから悪い人じゃないって思ってたんだよ」
竜太「調子良いこと言うなよ」
正太「俺の作った玄米のおかゆだ、さ、どんどん食ってくれ」
正太、白々しい言葉を並べつつ、おかゆを茶碗に山盛りにしてジュンに差し出す。
が、正太、他の4人には茶碗と箸を押し付けて勝手によそえと言い、

正太「ジュンさん、これ、君だけに」
ジュン「あ、ありがと」
ジュンにだけブドウなどを上げて、露骨に贔屓する。

ひかる「あっ、まぁ!」
「絶対、自分のほうが可愛いのに!」と、不満の色を浮かべるひかる。
正太「俺、山守正太ってんだ、この山で生まれ育ったんだよ」

正太「僕にとって、この自然が荒らされるのは手足がもぎ取られるほどつらいことなんです。山を守ることが僕の使命なんです」
ジュン「へーっ、いまどき偉いのねー」
正太「いえいえ、あなたの耳の垢を煎じて、飲みたいぐらいですよ」

ひかる「うっ!」
正太の場所をわきまえない表現に、思わず食べていたものを吐き出しそうになる4人だった。
と、正太は急に態度を改めて、自分をバイオマンの仲間に入れてくれと言い出す。
真吾「駄目駄目、バイオマンて、誰でもなれるもんじゃないんだ!」
正太「どうしてだよ、俺だって本気出しゃあ、君たちにだって負けやしないぜ」
真吾は頭から拒否するが、史朗の心の中には、依然、正太もバイオマンになる資格を持った人間なのではないかと言う疑念がくすぶっていた。
一方、ドクターマンから別命を受けたファラは、秘密工場で、マグネ隕石を精製して新たな素材を作り、それを使った戦闘スーツの開発に取り組んでいた。
試作スーツは既に完成し、それを着用した戦闘員は、メイスンのバルカン砲を食らっても、平気な顔をしていた。

メイスン「素晴らしいマグネ強化スーツだ」
ファラ「実験の第一段階は成功よ。後はこれを着る人間がいるかどうかが問題だわ」
メイスン「もし成功すれば、人間どもを我がギアの軍団に組み込むことが出来る」
いや、別に人間じゃなくても、メカクローンに着せれば済むことじゃないの?
そこへファラキャットが来て、

ファラキャット「バイオマンがこちらへ向かっております」
ファラ「なんですって」
レギュラーの中で唯一強化改造されていないファラキャットだが、そんなことにも不平を唱えず、がんばってお仕事している姿が可愛いのである!
以前書いたように、ファラキャットだけ手を加えなかったのは、ドクターマンがファラキャットの顔やデザインに特別な思い入れがあるからではないかと思うのだが、その代わり、語尾がすべて「ニャン」になるよう、言語回路をいじって欲しかったと思う。
そうすれば、上記の会話も、
ファラキャット「バイオマンがこちらへ向かっておりますニャン」
ファラ「なんですって……って、もう、食べちゃいたいくらい可愛いーっ!」
こうなる訳で……あ、悪の職場が萌えまくりで仕事にならないのでやっぱり駄目か。
バイオマン、工場目指して森の道なき道を進んでいたが、メッツラーが、渓谷に幻の吊り橋を作り出し、彼らを谷底へ転落させようとするが、またまたまたまた彼らの先回りをしていた正太に教えられ、あやうく助かる。

正太「山守正太、バイオマン第6番目の戦士だぁ」
メッツラー「なんだと?」
木の上からパチンコを手に、勝手にバイオマンだと名乗る正太。
ここでラス殺陣となるが、正太も、バイオマンに混じって、手製の弓矢やナイフを駆使して、戦闘員たちと互角に戦ってみせる。
5人がメッツラーを撃退した後、

1億ガウスと言う、巨大な磁力を発する磁力砲を両手に備えた、いかにも強そうなネオメカジャイガン、マグネメガスとの巨大ロボットバトルとなる。
磁力砲の凄まじい威力の前に、手も足も出ないバイオロボだったが、

正太「バイオマン、待ってろーっ!」
戦場を見下ろす崖の上に正太が現れ、

正太「バイオマンの為なら、えんやこーらー、と」
大きな岩の下に丸太を噛ませ、梃子の原理で全体重をかけてその岩を落とし、マグネメガスのひかがみにぶつける。
バランスを崩したマグネメガスは、そのまま斜面を滑り落ちていく。

レッドワン「あいつ、ほんとに俺たちと同じバイオの血を引いているのかもしれない」
正太の超人的な活躍に、そんな憶測をもらすレッドワン。

正太「バイオマーン、やったぜー、バイオマン、第6番目の戦士、山守正太、誕生ぉおおおおっ!」

レッドワン「……」
ピンクファイブ「……」
レッドワン「えいっ!」
正太「ぐわあああーっ!」
が、なんとなくムカついたので、衝動的にスーパーメーザーで正太をぶった斬ってしまうレッドだった。
イエローピンク「ちょっと、郷さん、何やってるのよ!」
レッドワン「いや、つい……」
イエローピンク「ま、気持ちは分かるけど、さすがに殺したらまずいんじゃない?」
レッドワン「大丈夫だ。スーパーメーザーの高熱で跡形もなく消し飛んだから、証拠は残らない」
こうして、バイオマン6番目の戦士・山守正太は、誕生した直後、華々しい殉職を遂げるのだった。
……嘘である。
ま、バイオマンがなんとなく正太にムカついたのは事実かもしれないが。

ファラ「あれこそ捜していた男だ、マグネ強化スーツの実験台にはもってこいだわ」
一方、ファラたちも、違う興味を持って正太の決めポーズを見詰めていた。
こうして、正太が本当にバイオ戦士なのかどうかと言う謎を残しつつ、次回に続くのだった。
ちなみに、正太の黒崎さんとファラの飛鳥さんが、この番組の共演をきっかけに交際を始め、後にめでたく結婚されたと言うのは有名な話である。
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