第13話「白い闇!! 鬼女がうたう子守歌」(1974年7月16日)
冒頭、「おー牧場はみどりー」と、ベタな歌を歌いながら、ハイキングをしている4人の若者……って、これ、歌は違うけど、10話の冒頭と全く同じ滑り出しだねーっ!
上原先生も、さすがに少々お疲れだったのだろうか。

ジーンズにボーダーのシャツ、チューリップハットという、時代の最先端を行くファッションで決めた若者たち。
鬼ヶ原峰と言う、たくさんのお墓が並ぶ斜面に差し掛かると、どこからか、不気味な子守唄が聞こえてくる。
さらに、日食にでもなったように、あたりが急に暗くなる。

そして、一陣の突風と共にあらわれたのが、般若の面をつけ、マサカリを手にした、伝説に出てくる鬼女のような姿をした人間だった。
鬼女「ヒッヒヒヒヒッ……」
若者たちは脱兎のごとく逃げ出すが、鬼女の投げたマサカリによって、4人揃ってあの世行きとなる。
もっとも、後の展開から、彼らが殺されなければならない理由はまったくなく、ただのデモンストレーションだったことが分かり、ますますお気の毒な話であった。
しかも、わざわざそんな事件を起こしたせいで、渡五郎が早くも現場近くの団地に調査に訪れると言う、絵に書いたようなヤブ蛇となる。

五郎「鬼ヶ原に行くにはどう行ったらいいんですか?」
五郎、歩道をベビーカーを突いて歩いていたミニスカ主婦に尋ねるが、

夏子「鬼ヶ原?」
五郎「ええ」
夏子「知りません、あたし、何も知りません」
主婦はそう言ってさっさと立ち去ってしまう。
ちなみに今回レビューして初めて気付いたのだが、この女性、誰かと思えば「ファイヤーマン」の棒読み美形女優として有名な栗原啓子さんだった。
ま、以前紹介した時は、まだ「ファイヤーマン」自体知らなかったので、気付かなくて当然だったのだが。
五郎「おかしい、鬼ヶ原のことを聞くとみんな逃げてしまう」
と、若者たちの時と同じく、何処からか子守唄が聞こえてきて、辺りが薄暗くなったかと思うと、今別れたばかりの主婦・夏子の悲鳴が聞こえ、見れば、面をつけた着物姿の人間にその赤ん坊が連れ去られていくところだった。
砂塵(一応、霧のつもりらしいが)の中、五郎が鬼女を追いかけるが、鬼女はパッと空に舞い上がって、どういう仕組みか、空中に吸い込まれるように消えてしまう。
そこへ荒井も駆けつける。

五郎「何か手掛かりがつかめましたか」
荒井「犯人は鬼婆の悪霊ではないかと言うんだ」
五郎「鬼婆?」
荒井「鬼ヶ原と言う地名からも分かるとおり、昔、この辺りに鬼婆が住んでいたと伝えられてるんだ」
五郎「じゃあ、その鬼婆の亡霊が? まさか」
サイボーグの割りに迷信じみたことを言う荒井だったが、五郎は無論、そんな話は信じない。

荒井「いや、この団地の辺りに昔、鬼塚があったそうだ。今ではブルドーザーでならしてご覧の通りだが、そこで鬼婆の悪霊が、団地の子供たちを次々と……」
五郎「しかし、攫われてるのは子供たちだけでしょう? ……って言うか、荒井さん、
こんなところでショットガン出さないで下さいよ!」
途中から嘘だが、いくらインターポールだからって、さすがに団地でショットガンはまずいと思う。
五郎「もし祟りなら、大人たちにも降りかかって良い筈だ」
荒井「うん、確かに子供たちだけを攫うというのはおかしいな」
などと話していると、再び子供を攫われた女性の悲鳴が聞こえ、鬼女が子供を抱いて目の前を猛スピードで走って行くのが見えた。
荒井「止まらないと撃つぞ!」(バキュン! バキュン!)
五郎「……って、荒井さん、赤ん坊ーっ!」 荒井「え? ああ、そうか」
途中から嘘だが、赤ん坊を抱いて走ってる人間を、ショットガンで撃つのはまずいと思う。
深追いした荒井、結局デスパー基地の落とし穴に落ちてしまう。
続いて、イナズマンに変身した五郎が、鬼女の前に立ちはだかる。

イナズマン「鬼婆伝説を利用して、一体何を企むのだ? お前はデスパーだろう?」
鬼女「ヒッヒッヒッ、鬼婆じゃ、ワシに逆らうと生き胆を抜かれるぞ。それでもよいかー?」
しかし、真っ昼間の、こんな開けたところに出ても、あまり威厳がないよね、鬼婆も。
そこへ、「太郎を返して下さい!」と叫びながら、夏子が走ってくる。
でも、今までの流れで見ると、現在、鬼女が抱いているのは太郎ではなく、別の女性の赤ん坊の筈なんだけどね。既に赤ん坊を攫われた夏子が、もう一度悲鳴を上げるというのもおかしな話で。
それとも、夏子は、それが太郎とか関係なく、鬼女に、「子供を返せ」と訴えているのだろうか。

イナズマン「来ちゃいかん、来るんじゃない!」
イナズマン、身をもって夏子を止めると、

イナズマン「さあ、早く」
夏子「……」
で、ここがなんか妙なのだが、つい今し方、半狂乱になったような感じで「返して」とか言ってたのに、イナズマンに軽く促されると、夏子、「ぶにっ」とした顔をして、さっさと言われたとおり走り去ってしまうのである。
うーん、結局、栗原さんが壮絶に演技がヘタクソだと言うことなのだろうか?
「ファイヤーマン」の時と比べれば、幾分マシになっているが、我が子に心を残しつつ、やむなくその場を離れる……みたいな細かい演技を彼女に求めるのは、しょせん無理な話だったろう。
イナズマン「他の人は騙されても、イナズマンの目は騙されん。太陽を暗くしたのはサデスパーの念力、子守唄は催眠音波と見た。貴様の正体を見せろ!」
イナズマン、そう言って飛び掛かり、相手のマサカリを奪ってその面を真っ二つに割る。

果たして、その下からあらわれたのは、マサカリデスパーと言う、そのまんまのネーミングの怪人だった。
イナズマン「子供だけ攫って何をしようと言うのだ?」
怪人「ニューブラッド計画! デスパーの画期的計画、ぬぅははははははっ」
二人が対峙していると、

そこへ、何事もなかったかのように、夏子が戻ってくる。
夏子「太郎、太郎を返して下さい!」
イナズマン「うるっっっせえっ! だから、あっち行け言うとんじゃーっ!」 怪人「……」
さすがに笑うしかない、夏子のトンチンカンな行動。
これは、栗原さんが悪いんじゃなくて、監督or脚本が悪いのである。
マサカリデスパーのマサカリがその夏子の腕を傷付け、

イナズマン「しまったーっ」
夏子「太郎……」
イナズマン、夏子の負傷に気を取られた隙に、マサカリデスパーに逃げられてしまう。
ま、それは良いのだが、

イナズマンが夏子に駆け寄ったその後ろに、小さく走っていくマサカリデスパーの体が見切れていると言うのは、ちょっとどうかと思う。キャプでは分かりにくいけどね。
別にほんとに逃げる必要はないのだから、カメラの視界から消えたら、そこで止まってれば良いのでは?
一方、荒井は、アジトの中を進んで、攫われた子供たちが何か実験のようなことをされているのを発見する。
荒井「一体、何をするつもりだ?」
ウデスパーα「知りたいのか?」
荒井の問い掛けに、突然あらわれたウデスパー兄弟が応じる。

ウデスパーβ「ニューブラッド計画」
ウデスパーα「ふふふふ、つまり、デスパーが発明した新しい血液で新人類を飼育する計画なのだ。それには子供が一番実験に適している」
荒井「なんとむごいことを……子供はモルモットではないぞ!」
正直、「F」になると、新人類やミュータントなどの存在自体、希薄になっているのだが、要するに、デスパーの意のままになる、超能力者を人工的に作り出そうということなのだろう。
果敢にもウデスパー兄弟に立ち向かう荒井であったが、無論、彼らの敵ではなく、あっさりぶちのめされて独房に叩き込まれる。
だが、続いてガイゼルの前に呼ばれたマサカリデスパーも、ウデスパー兄弟によって問答無用でボコボコにされるのだった。
なんか、最近のデスパー軍団って、体育会系と言うか、ほとんど暴力団みたいな殺伐とした世界になってて、ちょっとイヤだなぁ。

怪人「何をするんだ、ガイゼル総統、これはどういうことですか。ニューブラッド計画は予定通り進んでいるというのに……うっ」
不当な仕打ちに当然ながら抗議するマサカリデスパーだったが、ウデスパー兄弟はなおも執拗に暴行を加える。

怪人「総統!」
ガイゼル「……」
怪人の必死の呼びかけにも応じず、無表情でじっとその様子を見下ろしているガイゼル。

怪人「総統! これ、相当きついっす!」
ガイゼル「……よし、合格!」
……と言うのは嘘だが、ガイゼルが全く無言のままというのが、部下として、めちゃくちゃしんどいのは事実であった。
ガイゼルのアップでCMへ。
CM後、なおもウデスパー兄弟に殴られ続けているマサやん。
いくら悪人同士とは言え、さすがにこの一方的な鉄拳制裁は、ちょっと引く。
怒りんぼのゴルゴスの率いるゲドンも就職先としてはかなりイヤな「悪の組織」だったが、何を考えているのか分からないガイゼル総統以下、ウデスパー兄弟にサデスパーと、ゴリゴリの体育会系幹部が三人もいるデスパーの方が、もっとイヤだなぁ。

殴られてぶっ倒れたマサカリデスパーの胸を、なおもぐりぐり踏みつけるウデスパーα。
ここまでガイゼルの激しい怒りを買うとは、ひょっとして、ガイゼルが三時のおやつに食べようとしていたプリンを勝手に食べてしまったのだろうか。
だが、そうではなかった。

怪人「理由をお聞かせください。何故俺がこんな拷問を?」
サデスパー「まだわからんのか、たわけっ」
怪人「わかりませんっ」
サデスパー「ガイゼル総統はお前がイナズマンに素顔を見られたことを怒っていらっしゃるのだ」
……
え、ええ~? そんな理由でかい~?(マスオ風)
ウデスパーα「お前は鬼婆のままで通すべきだった。そのほうがニューブラッド計画をスムーズに運ぶこと出来たのだっ! イナズマンに気付かれたとなれば、いくつかの困難を覚悟せねばならぬ」
しかし、五郎は、鬼婆出現の知らせを受けて鬼ヶ原にやってきたのだから、どっちにしろ大した違いはなかっただろう。現に、五郎は最初から鬼婆をデスパーの一味だと見抜いていたのだから、この、制裁と言うより拷問としか言いようがない執拗な暴行に、妥当性があったとは到底思えない。
だから、単に、ガイゼルが前からマサカリデスパーのことが嫌いだったので、口実を設けていじめてるだけじゃないかという気がするのである。
これが人間だったら、とっととこんな軍団に見切りをつけて裏切るか、逃亡するかするところだが、ロボットの悲しさ、マサカリデスパーは「私にはイナズマンを倒す為の秘策があります!」と、ワンモアチャンスを所望するのだった。
怪人「本当です、必ずイナズマンを倒して見せます」
ガイゼル「……」
ガイゼル、マサカリの必死の訴えにも何の反応も示さず、それとは全く関係のない科学者を呼び寄せ、再びウデスパー兄弟の合体手術を行わせようとする。
二人が出て行った後、
怪人「お願いがあります。イナズマンを倒した暁には、私を参謀に昇格させてください」
ガイゼル「倒せたらな」
やっとマサカリデスパーに口を利いてくれたガイゼル総統であった。

一方、ウデスパー兄弟は、仲良く向かい合わせの形で手術台に乗せられ、手術室に入れられる。
なんとなく、火葬場に放り込まれるような感じがしてイヤだが、

科学者「電圧2000ボルト」
戦闘員「電圧2000ボルト」
手術と言っても、二人を手術室に入れて、内部の電圧を上げるだけと言う、まるっきり火葬方式なのが、ますますイヤな感じなのだった。
つーか、電子レンジで冷凍食品温めるんじゃないんだから、さすがにこんなお手軽な方法で合体させるのは無理なのでは?

科学者「一時間後に合体ウデスパー誕生だ」
ドアから漏れる高圧電流の光を受けつつ、恍惚の表情を浮かべる科学者。
一方、五郎は夏子を病院に連れて行き、ベッドに寝かせていたが、

夏子「太郎を探しに行かなければなりません。行かせて下さい」
夏子、唐突に……と言うか、いかにもカチコンが鳴ったのを合図に、急にベッドから起き上がろうとする。
五郎「安静にしていなければなりません」
が、五郎に体を押さえられて言いつけられると、

夏子「……」
まるで照明のオン・オフスイッチを入れたかのように、急に静かになる夏子だった。
しかし、まあ、これだけ演技が下手な単体女優さん(単体言うな)も珍しいよね。
五郎「太郎君のことは僕に任せてください。必ず助け出してみせます」

夏子「……」
五郎の頼もしい言葉に、じっとその顔を見上げる夏子。
演技さえさせなけりゃ、なかなか良い女優さんなのだが……。
再び手術室の前。
そこへあらわれたマサカリデスパー、合体ウデスパーが誕生すれば、自分が参謀になるのが難しくなると、よく分からないことを言い出し、わざと電圧を下げて手術を遅延させようとする。
結局、そのセコい行為が、自分の首を縮めることになるとも知らず。
でも、ガイゼルは一応、イナズマンを倒したら参謀にしてやると言ってるのだから、まだイナズマンを倒してもいない段階で、わざわざライバルを蹴落とす必要はなかっただろう。
だいたい、合体を阻止するのではなく、遅延させるだけでは、あまり意味がないような……。
その後、イナズマンとマサカリデスパーの戦いとなるが、マサカリデスパーは自分の分身を幾つも作り出してイナズマンを幻惑し、有利に戦いを進める。
草刈、いや、マサカリの言ってた「秘策」とは、このことだったのだ。
同じ頃、そろそろ仕上がる頃だと、手術室の前にガイゼルがやってくるが、
科学者「おかしい、まだ合体しきっておらん」
ガイゼル「……」
科学者の「私の計算に間違いは……」
ガイゼルの恐ろしさはイヤと言うほど知っている科学者、たちまち恐慌を来すが、

科学者「バカモノ、2000ボルトと言った筈だぞ! 1500しかないではないか」
ダイヤルが1500ボルトに下がってるのを見て、急いで部下に責任をなすりつけようとする。
部下は部下で、ガイゼルの恐ろしさはイヤと言うほど知っているので、
戦闘員「私は2000にしました。本当です」
慌てて潔白を主張する。
そこで、サデスパーが監視カメラの映像を再生すると、マサカリデスパーのセコい行為がばっちり映っていた。
ガイゼルは即座にサデスパーに命じて、マサカリデスパーの分身を作り出している機械を止めさせる。
ま、ガイゼルの気持ちは分からないではないが、今、マサカリデスパーがイナズマンを追い詰めているのだから、その決着がつくまで待つべきだったろう。
マサカリデスパーが勝てば、それこそ万々歳で、その後でマサカリデスパーを処刑するなり、あるいは功績に免じて赦してやるなりすればよく、マサカリデスパーが負ければ、処刑する手間が省けたであろう。
どうも、最近のガイゼル、組織全体の利益より、私情を優先させた判断が目立ち、優れた統率者とは言えそうもない。

ともあれ、機械が止まった為、マサカリデスパーの幻影が突然消えてしまう。
怪人「映像が消えた。誰がフィルムを止めたんだ?」

イナズマン「霧をスクリーンにしていたのか、虚像さえなければこっちのものだ。ゆくぞっ」
こうなればもう書くことはない。
味方に足を引っ張られたマサカリデスパー、自業自得ではあるのだが、イナズマンに倒され、不運な死を遂げる。
子供たちも全員助け出され、ニューブラッド計画はあっけなく頓挫する。
子供たちはそれぞれの親と歓喜の再会を果たし、

夏子「太郎、太郎!」
太郎も、無事、夏子の胸に戻ってくるのだった。
涙ながらに赤ん坊の体を抱き締める夏子だったが、

太郎「……」
その赤ん坊が、明らかに迷惑そうな顔をしているのが割りとツボなのだった。
ラスト、時間は掛かったが、遂に合体ウデスパーが誕生したところで「つづく」のだった。
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