第17話「恐怖の帝王 アンドロメダ来る!」(1972年1月23日)
自分の中では、「魔女先生」の実質的な最終回である。
何故なら、次の18話から最終26話まで、特撮ヒーロー史上、管理人のもっとも嫌いな悪役クモンデスが登場し、ひかると退屈なバトルを繰り広げる、凡百のヒーロー番組に堕してしまうからである。
路線変更後の14話やこの17話などは、初期のテイストをいくらか残していたのでまだ見れるのだが、18話以降はまるで別の番組のような感じになってしまい、面白くもなんともなくなる。ま、それでも20話など、辻真先さんが書いた話は、そんな悪条件の中でもそこそこ見られる内容になってるんだけどね。
で、今回のストーリーは、タイトルからも分かるように、ひかるの苦手な父親がやってきて、ひかるを無理矢理アルファ星へ連れて帰ろうとすると言うものだが、実際、路線変更がなければ、この話が本来の最終回になる筈だったのではないかと言うのが私の考えである。
つまり、モチーフになっている「竹取物語」同様、ひかるが月ならぬアルファ星へ帰らねばならなくなり、それを子供たちや旗野先生が必死に引き止めると言う……
だから、26話の最後にひかるが言う感動的な台詞も、ほんとは、今回、地球にとどまることが出来るようになった後、ひかるが言うべき台詞ではなかったのではないだろうか。
前置きが長くなった。
冒頭、ひかるが自宅で寝ていると、彼女がこの世で唯一苦手な存在、父・アンドロメダ帝王の怒鳴り声が降ってくる。
帝王「姫、起きんか、朝寝坊め、ワシだ、ワシだ」
ひかる「お父様?」

ひかるがベッドから出て、窓から空を見上げると、仮面とマントを付けたアンドロメダ帝王の姿があった。
帝王「上級監視員に抜擢されてめでたいなぁ、姫」
ひかる「お父様! 今何処に?」
帝王「地球を去る2300光年じゃ!」
ひかる(いちいちポーズつけんとしゃべれんのか、このオヤジは……) それでも久しぶりに腋毛を全開にした父親の顔を見て笑顔になるひかるだったが、上級監視員を地球に置いておくのは勿体無いと、一方的にアンドロメダ(アルファ星?)への帰還を命じられて青褪める。
ひかる、このまま地球にとどまりたいと訴えるが、前回ひかるが暴君と称したように、帝王は娘の言うことなど全く聞く耳を持たず、すぐ迎えに行くと言って通信(?)を打ち切る。
ひかるはすぐバルを叩き起こして事情を話し助けを求めるが、さしものバルにもアンドロメダ星雲の支配者・アンドロメダ帝王の決定を覆すことは出来ないのだった。
ひたすらおろおろするひかるだったが、既に路線変更に伴って性格も大幅に大人しくなったのか、今までだったら、「なんとかお父様を諦めさせてアンドロメダに帰らせよう」などと言って、何か突飛な作戦を仕掛けて対抗しそうなものだが、まるっきり唯々諾々なのが物足りない。
たとえば、逆に自分がいかに監視員として無能かをアピールして、帝王を呆れさせるとかね。
でも、そうなったら上級監視員の資格を剥奪されるだろうから、設定上、それは無理か。
今更だけど、ほんと、クソ忌々しい路線変更である。
翌朝、東西学園に、アンドロメダ帝王が凄まじい衝撃波とともに飛来する。

帝王「うううーっりゃっ! 姫のうちへ着く筈であったが、誤差を生じた。ハーッ! 2300光年をひと飛びすれば、やもえん!」
いちいちポーズを取って雄叫びを上げて腋を全開にしないとしゃべれない帝王。
ひかるが父親のことを嫌うのも、分かるような気がする……
その声に、衝撃で眼鏡が割れてキョロキョロしていた大伴教頭が気付き、近付いてしげしげと帝王の衣装を見詰めながら、

教頭「どなたですかな。PTAのかたにしては服装が……」
帝王「服装? 気になるなら代わってやる、はっ!」
帝王が手にした杖をかざして気合を発すると、

一瞬で二人の服が入れ替わる。
教頭「ははははっ、いや、よく見たら普通の背広でした。あ、いや、どちらかのご父兄の方?」
帝王「月ひかるの父だが」
教頭「ほっ、月先生の? それはそれは」
教頭、眼鏡がないので自分の格好が変わったことに気付かず、嬉しそうに校長室へひかるの父親の来訪を伝えに行く。
言い忘れたが、帝王を演じるのは当時26才(!)の堀田真三さん。
26才にして、21才のひかるの父親を演じてもさほど違和感のないのが凄い。もっとも、声は、怪人ソクラテスの声の大宮悌二さんが吹き替えしている。

教頭「校長先生! 月先生の御父上がご見学でございます」
で、自分の格好に気付かず、教頭がうきうきと小躍りするような足取りで校長室に入ってくるのが、かなりのツボなのだった。
校長「ほう、月先生の、ふんふん、それはそれは……ああっ、なんですか、その格好は?」
教頭「はぁ?」
そのうち子供たちも登校してくるが、

由美と手をつないで歩いていたハルコちゃんが、

ハルコ「きゃあーっ!」
正夫たちが、「この服大安売り」と書かれた大きな紙を手にして走ってくるのを見て、慌てて逃げ出すのがめっちゃ可愛いのである。
こういうところは、普通の女の子だったんだなぁと意う感じで微笑ましい。まぁ、普通の女の子だから当たり前なんだけど。
正夫、教頭の背広を見付けて「おはようございます」と言いながら、その紙をそっと背中に貼り付ける。

帝王「無礼者!」
正夫「うわっ、違ったぁ……どうしよう」
相手が別人だと知ってうろたえる正夫、紙を取ろうかどうしようかと迷っていたが、結局そのまま謝りもせずに走り去ってしまう。

謝るどころか、「やーいやーい」と帝王を囃し立てながら行く正夫や他の子供たち。

帝王「この服大安売り?」
子供たちが行ってから、漸く帝王も紙に気付いて引き剥がすと、

帝王「カァーッ、こぉのぉおおおーっ!」
怒りの雄叫びを上げつつ、カメラに向かって紙を突き出す。

と、カメラが何故か帝王の手の部分にクローズし、

再び引くと、紙に下から火がついてメラメラ燃えているのだった。
無論、これは、紙の下部が画面から隠れた隙に、スタッフが急いで点火しているのである。
こうすれば、フィルムをつなぎかえる手間が省けると言う、主婦も大喜びの節約撮影術なのである。
帝王「まさにクズどもが住んでおる!」 正夫たちのくだらない悪戯が、ひかるを連れ戻そうと言う帝王の意思をますます強固にさせてしまう。
その後、校長からひかるの父親が来ていると知らされた旗野先生、学校の近くの人気のない場所に行き、ひとりであれこれ悩んでいる。

旗野「お父さんに会ったら何を言うかが問題だ。
お嬢さんを僕のお嫁さんに下さい!」
いきなりプロポーズ同然の思い切った台詞を放つ旗野先生。
前回も、ひかると結婚したらどんな夫になるかシミュレーションしていたが、すっかりひかると結婚する腹を固めたらしい。
ま、その気持ちは管理人も痛いほど分かる。
こんな素敵な女性は、そう滅多にいるものではないからである。

旗野「……と言うのは早過ぎるから、こっちへ置いとくとして」
が、実際に「こっちへ置いておく」ポーズを取りながら、その台詞を保留する意気地なしの旗野先生。
しかし、フィクションの世界でも、なかなか見られないよね、このポーズ。

旗野「必要なのは僕と言う人間に好意を持たせることだ。それにはまず、月先生を褒める、褒めて褒めて褒めちぎる!」
帝王「……」
ひかるの父親への挨拶を夢中で考えている旗野先生、夢中過ぎて、背後にその父親が瞬間移動して自分を睨み付けていることに全く気付かない。
ちなみに、俳優の年齢では、旗野先生のほうが二つ年上なんだけどね。とてもそうは見えないが。

旗野「子供を褒められりゃ、誰だって喜ぶ。いわゆる親バカちゃんりんチャンチキおけさと言う奴だ。こいつ話せると(父親が)思ったところで、すかさず第二弾」

旗野「お父さん、男前ですね、と、ゴマを擂る、擂って擂って擂りまくる! しかるのち、遠回しにだ、月ひかると言う名前より、旗野ひかるのほうが似合います……」

旗野「と、ここで意外に月先生が入っちゃって、まぁ、旗野先生、奇遇ですわ、私もそう思ってたんですよ! なぁーんつことに……」
とめどなく身勝手な妄想をめぐらして、ひとり悦に入る旗野先生。
旗野「おー、なる訳ないわなぁ」
急に冷静になって改めて考えようとするが、

その眼前に、アンドロメダ帝王があらわれる。
旗野「うんにゃあ……ありゃっ、なんですか、あなた、トランプの王様みたいな格好して?」
帝王「月ひかるの父じゃが……さっさとゴマとやらを擂ってみい!」
旗野「あっ……あ、そうですか。はぁー、それはどうもすいませんでした」
旗野先生、うつろな愛想笑いを浮かべてとりあえず謝るが、怒り心頭に発した帝王は、物凄い目付きで旗野先生に迫ってくる。
帝王「クズめっ!」
旗野「あ、月先生!」
超能力で旗野先生を銀河の彼方へふっ飛ばしかねない剣幕の帝王だったが、そこへひかるがやってくる。
ひかる「お父様」
帝王「ちょうど良かった。地球に愛想を尽かしたところだ、さぁ、すぐ行こう」
その後、学校の屋上で話している父と娘。

ひかる「いくらお父様の言いつけでも、地球には地球の規則があります」
帝王「野蛮な星の規則など構わん!」

ひかる「それでは私たちのほうが野蛮になってしまいます。お願い、どうせやめるなら、きちんとけじめをつけたいの。みんなにお別れを言う間、待ってください」
前述したように、ひかるがいつものキャラとは懸け離れて従順でおしとやかで、父親の言いつけに背こうとしないのが、いかにも歯痒いと言うか、違和感がある。
それに、そんなに過保護で専制的な父親なら、ひかるが最初に平和監視員に任命された時点で、その様子を見に地球に来るか、あるいは、最初からそんな仕事など認めようとしなかったのではないだろうか。

それはともかく、なんとか猶予を貰って、しょんぼりと肩を落として教室へ向かうひかるの後ろ姿が、実に寂しくて物悲しい。

正夫「いやだっ、先生、何処にも行くな!」
さて、ひかるから学校を辞めると知らされた正夫は、我を忘れて反対を叫ぶ。
普段は生意気なことを言っても、心の底ではひかるのことを慕っていることが伝わり、ジンと来るシーンである。

タケシ「そうだよ、先生がいなくなったら、俺また遅刻しちゃう!」
進「僕だって意気地なしになります!」
無論、その気持ちは他の生徒たちも同様だった。
ちなみに今回も、川口英樹さんが多忙の為か、タケシの声は高野さんが吹き替えている。
なお、このシーン、タケシの後ろの席に座っている女の子に注目頂きたい。
そう、以前にも何度か登場した、「仮面ライダー」44話でカビビンガに襲われた双子である。
ここで、場面に似つかわしくない笑いを浮かべているが、

正夫「ようし、俺なんか物凄い不良になってやるからな!」
ひかる「そんなこと言うもんじゃないわ、うちの都合で仕方がないのよ。先生だって悲しい」
正夫の駄々っ子のような言葉を優しくたしなめるひかるのアップの後、

由美「私たちで先生のお父さんにお願いします。かぐや姫先生にいつまでも東西学園にいて下さい!」
再び子供たちの映像となるが、いつの間にか、タケシの後ろにいた女の子がいなくなっているのがお分かり頂けるだろうか?
たぶん、まだ明らかに正夫たちより幼くて聞き分けのない彼女が、スタッフの言うことを聞かずに笑っているので、最初のシーンの後、どかされたのではないだろうか?
ま、単にトイレにでも行ったのかも知れないが……
子供たちは、ならばひかるの父親にじかに訴えてやると声を揃えて叫ぶが、
ひかる「私の父はとても気難しくて恐ろしいの、会わせる訳には行きません!」
ひかる、ついで、校長室を訪ね、辞表を提出する。

校長「辞職願……もう一度、考え直してくださらんか」
かつてはひかるを魔女と疑って学校から追い出そうとしたこともある校長だったが、今ではすっかりひかるを信頼しているのか、渋い顔で辞表を突き返して慰留する。
ひかる「ありがとうございます。ですが、これ以上ここにいるとかえってご迷惑をおかけしますので」
校長「ふむ、それはどういう意味ですか?」
ひかる「父が、万一この学園に乱暴を働いたら大変ですもの」
校長「乱暴?」
ひかるの説明に首を傾げる校長に、教頭が「暴力団の組長かも」と耳打ちする。
校長「まさか」
後編に続く。
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