第21回「牢獄で知った婚約」(1985年9月10日)
前回のラストの続きから、とうとう強盗犯の一味として警察に逮捕されてしまった千鶴子。
財閥の令嬢としての威光も、今と違っておっかない刑事たちには通用せず、連日過酷な尋問を受ける。
刑事たちは千鶴子が自分の意志で強盗を働いたと言うストーリーを描き、その線に沿って千鶴子に自白を迫るが、逮捕直前、剛造に言われていたこともあり、千鶴子はプライドを捨てて、猛たちに銃で脅されていたのでやむなく強盗に加担したのだと主張するが、刑事たちは証拠がないと取り合ってくれない。
おまけに、一緒に逮捕された猛の部下たちは、自分たちの罪を軽くしようと、猛が死んでいるのを良いことに、強盗しようと言い出したのは千鶴子だと証言し、ますます千鶴子の立場が悪くなる。
でも、千鶴子の言うことは信じないで、猛の部下たちの言うことは信じるって、ダブルスタンダードの最たるものだよね。
ともあれ、昼夜を問わず行われる取調べに千鶴子は心身ともに参るが、雅人からの差し入れに添えられていた手紙が、挫けそうな心を支えてくれる。
雅人の声「君は一人ではない、しのぶさん、お父さん、耐子さん、若山先生、エリカさん、そして静子お母さん、みんな、君が決して望んで銀行強盗などしたのではないと信じ、君を案じてる。その人たちのためにも、君も挫けるな、挫けそうになったら、人間にとって一番素晴らしい言葉を思い出すんだ……
それは
キャッシュバックの8文字だ!」
間違えました。
雅人の声「それは希望の二文字だ」
手紙を読んだ後、留置所の鉄格子の嵌まった窓から星空を見上げる千鶴子。
その目には、頼もしい正人の姿がはっきり見えていた。

千鶴子「雅人さん、もし再びあなたに会えたなら、
今度こそ立ち直ります。その日まで耐え抜きます。どんなつらいことがあっても……」
涙ぐみながら、雅人の幻に向かって誓う千鶴子であったが、既に数え切れないほど同じような決意表明しているものだから、まったく視聴者の心に響かないのであった。
CM後、東京地検に送られ、何度も事情聴取される千鶴子。
親族とも面会できず、弁護士の助言も得られず、たったひとりで大人たちの厳しい追及に立ち向かうのは、気丈な千鶴子にとってもしんどいことであった。
一方、マスコミの取材を受けた剛造は、娘のやったことを謝罪する必要はないと言い切り、千鶴子はあくまで猛たちに脅されてやむなく犯罪に手を染めさせられていたのだと、千鶴子を全力で庇う。
もっとも、被害を受けた銀行や客たちに見舞金を払うことは約束したが、暇を持て余した世間はそれを許さず、連日のように大丸家に抗議やいやがらせの電話がかかってくるようになる。
直接被害を受けた人間ならともかく、何の関係もない人間がそんなクレームを入れようと言う、その発想が管理人には理解できない。
剛造が謝罪しないことで、一体お前らにどんな不利益が生じると言うのだ?
ま、それはそれとして、電話を受ける則子が赤の他人から連日罵声を浴びせられ、心底うんざりしたのは言うまでもない。
そう言えば、さっきの雅人の手紙には則子の名前だけなかったが、それだけ、則子の千鶴子への愛情が冷め切っているということなのだろう。

雅人「またいやがらせですか」
則子「私、もう耐えられませんわ。手紙だってこんなに来てるんですのよ」
則子は悲鳴のような声を上げると、たくさんの手紙や葉書をテーブルの上にぶちまける。

抗議や謝罪要求の文字が躍る文面に、チラと目をやる剛造。
剛造(これ、明らかに同じ奴が書いてるだろ……) まぁ、ネット社会に溢れる剥き出しの悪意にくらべれば、実に可愛らしいものであったが、セレブの則子にとっては、十分耐え難いものであった。

則子「あなた、ひとこと世間に詫びてください、そうすれば少しは世間の風あたりも和らぎますわ」
則子が、剛造に世間と和解してくれ……言い換えれば「もっと大人になれよ」と勧めるが、
剛造「そんなことはわかっておる。だが私が頭を下げて詫びれば、千鶴子はなんと思う? それはとりもなおさず、千鶴子が脅迫されずに強盗を働いたことを私が認めることになる。そんなことは出来ん」
千鶴子にああ言った手前、剛造も頑なな態度を崩そうとしない。
頼りになり過ぎる手島は、南部開発の経営するホテルなどに対するボイコット運動まで起きていると事業の面からも説得するが、
剛造「千鶴子の為なら、南部開発など潰れても構わん!」 などと無茶苦茶なことを言い出す剛造であった。
まぁ、今度こそ千鶴子を最後まで信じ、支えてやろうと言う心構えは立派だが、少し前までは、「お前なんか娘じゃない!」などと言ってたことを思えば、どうにも極端な態度に見えてしまう。
それに、「脅されてやった」と言う父親としての信念を留保した上で、世間に対して千鶴子の行為を謝罪することは可能なのだから、南部開発の従業員たちのためにも、ここは我を張らずに頭を下げるのが会長としての取るべき道だったろう。

雅人「ちょっと待ってください、みんな何のために集まったんですか、弁護士さんを囲んでどうしたら千鶴ちゃんを救えるか、それを話し合うためじゃありませんか」
雅人が剛造たちの不毛な口論を見兼ねて、異議を唱えるが、
則子「弁護だなんて、千鶴子みたいな不良は早く大丸家から縁を切ってくれて少年院でも何処へでも行けばいいんです!」
かつて、あれほど千鶴子のことを可愛がり、逆にしのぶのことを追い出したがっていた人間とは思えぬ酷薄な言葉を放つ。
これも、まぁ、気持ちは分からなくもないが、18年も手塩にかけて育ててきた娘に対する母親の言葉とは到底思えない。
剛造「なにを言うんだ! それが18年も娘を育ててきた母親の言う言葉かっ」
剛造も、全く同じ論法で妻を責めるが、
則子「
よりによってあんな不良を育てたなんて、私、後悔しております」
則子は反省の色を見せるどころか、もっと酷い言い草でその場にいない千鶴子を貶める。

剛造「ばかっ!」
視聴者の予想通り、剛造はカッとなってその頬を引っ叩く。
剛造「口が過ぎるぞ、ことと次第によっては、私はお前と別れる!」
則子「それほどまでに千鶴子のことを……」
剛造の覚悟の程を知って、強いショックを受ける則子。
千鶴子の問題が、夫婦の危機にまで発展しかねない状況になってくる。
則子、剛造の目を見返しながら、改まった口調で、

則子「わたくし……
出て行きません!」
一同「行かんのかーい!」(ズドドドドドド!)
てっきり、則子が「実家に帰らせていただきます!」系の台詞を言うのかと思っていた一同、まさかの居残り宣言に思いっきりコケる。
耐えられなくなって則子が部屋から出ると、すかさず影のように手島が寄り添う。

則子「このままでは千鶴子一人のために大丸家も南部開発も崩壊してしまう……どうしたらいいかしら」
手島「私も憂慮しております」
これが普通のメロドラマなら、二人が道ならぬ恋に落ちてもおかしくないところだが、ぶっ飛んだ展開の多い大映ドラマは、こういう点については時代錯誤的なまでに潔癖なので、決してそういう流れにはならないのだった。
まぁ、ドラマには出てこないけど、手島は既に鶴間エリ似の女性と結婚して小林彩子似の娘もいるんだろうから、そもそもありえない話なんだけどね。
則子に相談された手島は、以前にも登場した、竹岡と言う財界の大物に縋って、剛造を説得してもらうしかないと自分の考えを述べる。

弁護士「千鶴子さんに対する容疑は、単に銀行強盗ばかりではなく銃刀法違反、建造物不法侵入、銀行に対する営業妨害等が絡んでおります、それも二度にわたってですからねえ。それが脅迫によるものだと証明するのは容易ではありません」
雅人「一流の弁護士のあなたをもってしてもですか」
一方、あれこれ善後策を協議している剛造たち。
初登場となる(だよね?)大丸家の顧問弁護士を演じるのは、塚本信夫さん。
と、剛造がその場で(肉体的な)胸苦しさを訴え、体調が万全でないことが分かる。
で、雅人としのぶが千鶴子の裁判に関する煩雑な仕事をすべて引き受け、剛造は会社の建て直しに専任することになる。
雅人としのぶは、弁護士と打ち合わせをしたり、家庭裁判所から派遣された職員と面談したりする一方、千鶴子の刑を軽減してもらうための嘆願書の署名集めなど、目が回るような忙しい日々を送る。
久しぶりに二人が通っていた高校が登場し、クラスメイトたちに署名をお願いするが、

生徒「私たちこれから図書館に行くの」
生徒「大学受験で忙しいの」
しのぶ「でも、千鶴子さん、元の同級生よ」
かつてあれほどちやほやしていたクラスメイトも、手の平を返すように冷たい態度を示す。
それでも、二人に重ねて頼まれると、しぶしぶ署名してくれたのだが。
それはそれとして、左側の女の子がちょっと奇麗だと思いました。
そう言えば、例の取り巻き三人衆って、いつの間にかいなくなっちゃったね。
また、千鶴子は勿論、どうやらしのぶも高校には行ってないらしい。
千鶴子はさすがに退学処分になったのだろうが、しのぶは忙しくて学校に行く余裕などないのだろう。
よって、プリケツ男谷先生の出番はなし! 一切なし! 金輪際なし!
二人は、さらに、銀行強盗の際に居合わせた人たちに聞いて回り、実際に、千鶴子が仲間から銃で脅されているところを見た人がいないか、目撃者探しも行う。
目撃者探しは難航するものの、雅人と一緒にあれこれ活動しているうちに、しのぶの雅人に対する秘めた愛情が、ますますその胸の中で大きくなっていったのは無理からぬことであった。
そんな二人の前に、バイクに乗った路男があらわれる。

路男「おい、目撃者探しなんかしても無駄だぜ」
しのぶ「えっ」
路男「そいつは俺もとっくに当たってみたがな、千鶴子が脅迫されたのを見たって奴は誰一人いやしねえんだ」
雅人「どうして君はそう余計なことに関わりあうんだ」
路男「お前にゃ任せておけねえからよ。お前は当てにならねえからな」
雅人「なんだと?」
路男「いつかお前は千鶴子がシャブ中になったときに、一度見捨てかけた。一度裏切った奴は二度裏切る、俺の経験ではな」
雅人「千鶴ちゃんは僕の婚約者だ、二度と裏切らないと誓っている」
路男は「そうならないことを祈ってる」と笑って言うと、憮然とした表情の二人を残して走り去る。
要するに、暇なんだね、路男。
夜、紅葉坂教会まで雅人に送ってもらったしのぶは、教会に入る前に、エリカから雅人に恋をしていることを指摘され、雅人のことは諦めるよう忠告される。
教会に駆け込んだしのぶは、真っ直ぐマリア像の前まで行くと、跪いて手を合わせ、千鶴子が帰ることを願いつつ、一方では永久に千鶴子が帰って来なければ良いと考えている自分の矛盾した心情を吐露し、
しのぶ「ああ、このまま、雅人さんを奪ってしまいたい!」
偽らざる本音を割りと大きな声でぶちまける。
そこへふらりと入ってきたのが、説教が三度のメシより好きな若山であった。

しのぶ「こともあろうに、千鶴子さんの恋人の雅人さんを好きでたまらなくなってしまうなんて……私、恐ろしい女です。よこしまな女です」
若山「よこしまな女は自分のよこしまさに気付きはしないよ」
若山はそう言ってしのぶを慰め、雅人を好きになる気持ちは十分理解できるとした上で、

若山「千鶴子さんが牢獄で呻吟している今この時に、雅人君を奪おうとするのは悪魔の囁きに負けた背徳の行為だ」
しのぶ「悪魔の囁き……」
若山「恋の苦しみに耐えられなくなったら、もっと苦しんでいる千鶴子さんの身に思いを馳せて祈りなさい」
若山に言われ、もう一度手を合わせ、マリア像に祈るしのぶであったが……
翌日、二人はやっと千鶴子との接見を許される。
何故か、今まで正当な理由もなく、千鶴子との接見が禁止されていたのだ。
こういうのを、人権後進国と言う。

千鶴子「私、自発的に強盗やったんじゃないかしら?」
雅人「え?」
千鶴子「やったんだろうって、朝から晩まで責められるとなんだか自分でもそんな気がしてくるの……」
ぼんやりした表情でそんなことをつぶやく千鶴子。
心理的な拷問部屋と化した取調室で当然起きるこのような現象が、今まで数々の冤罪事件を生んできたわけである。
それにしても、今日の管理人は妙に真面目だなぁ。
弱気なことを言う千鶴子を、雅人が叱り付けるような声で励ます。

雅人「何を言ってるんだ! 君はやがて家庭裁判所の審判を受けることになるんだ。たいていはただ一度の審判で処遇が決定されてしまう、やってもいないことをやったなどと言おうものなら、君はおしまいだぞ。
少年院行きは間違いなしだ!」
千鶴子「え、またぁ?」 雅人「いや、またって……」
じゃなくて、
千鶴子「それでもいいわ、私、もう疲れた」
雅人「千鶴ちゃん!」
千鶴子「少年院に行けば、お父様だってきっと私を見放すわ。その方が大丸家のためにも良いのよ!」
雅人「千鶴ちゃん、僕が付いてる、ヤケを起こしちゃダメだ」
心身とも疲れ果て、自暴自棄になっている千鶴子を必死に元気付けようとする雅人だったが、千鶴子はすっかり諦めた様子で、
千鶴子「どうせ私は少年院行きよ。しのぶさん、そうなったら、あなたが雅人さんと結婚してね」
しのぶ「千鶴子さん……」
千鶴子「分かってるのよ、あなたがどんなに雅人さんのことを好きだか」
しのぶ「何を言ってるの、雅人さんはあなた以外には……」

千鶴子「私に遠慮は要らないわ、どうか、雅人さんを幸せにしてあげて」
しのぶ「……」
雅人「……」
涙ながらに千鶴子から頼まれ、反射的に
「はい、よろこんで!」と叫びそうになるしのぶだったが、なんとか堪え、心の中でガッツポーズを取るにとどめる。

その夜、管理人が思う、世の中で一番くだらない人種が大丸家の門の前に群れ集まり、自分たちとは何の関係もないのに、剛造に謝罪を要求したり、罵声を浴びせたりする。
アホ「大丸を出せーっ!」
バカ「南部開発なんか潰れちまえっ」
まぬけ「おめえ、強盗娘をいつまで庇うつもりなんだよーっ!」
思わずマシンガンで皆殺しにしたくなったのは管理人だけではあるまい。
大声を出すだけではなく、石を投げて家の窓ガラスを割ったりする。
……って、お前らのほうこそ犯罪者じゃねえか。
その癖、家から出てきた剛造が、安岡力也みたいな人だったら、ピューッて逃げ出すんだよ、こいつら。
翌日、例の竹岡が南部開発を訪れ、剛造に、いっそのこと千鶴子の籍を抜いたらどうかと、とんでもないことを言い出す。
だが、竹岡に対しても剛造は頑なな態度を崩さず、きっぱり断るが、興奮したのがいけなかったのか、再び心臓に痛みを覚えて苦しみ出し、そのまま病院へ担ぎ込まれる騒ぎとなる。
病名は心臓神経症であった。

剛造の入院した病院の建物が映し出されるのだが、「東京女子医大病院」って聞くと、つい、
「この病院には若い女医さんと若い看護婦さんと若い女性の患者さんしかいないの? ぐふふ」などと思ってしまう人は多いと思う。
え? 俺だけ? おっかしいなぁ……
さいわい、剛造の症状は軽かった。

剛造「起こしてくれ、私は仕事があるんだ」
若山「何を言ってるんだ、お前は働き過ぎなんだ、何も考えないで少し休め」
しのぶ「そうよ、お医者様もそう仰ってたわ、当分安静にしてなきゃダメだって」
しのぶ、若山に頼んで、しばらく剛造に付き添わせて欲しいと頼み、若山も快諾する。
さすが付き添いのプロを自任する静子の育てた娘である。
ちなみに、しのぶは現在教会に住み込んでいて、農作業をしたり、家出少年たちの世話をしたりしているのだ。
と、則子が雅人を病室の外へ呼び出す。
則子は手島と一緒になって、精神的ストレスによっては、いつ剛造が心筋梗塞や心不全を引き起こすか知れないと物騒なことを言って雅人を精神的に揺さぶる。
雅人「手島さん、お父さんの病気の治療法はないんですか?」
手島「ただ、ひとつだけあります。医者が言ったんじゃありません、竹岡さんがそう仰ったんです」
雅人「竹岡さんが?」
手島「その件について、ぜひとも雅人さんと話がしたいそうで、今日の午後、屋敷のほうにお見えになるそうです」
雅人「わかりました」
その後、しのぶがひとりで剛造に付き添って世話していると、いきなり路男が入ってくる。

路男「邪魔するぜ」
しのぶ「邪魔するんやったら帰ってや」
路男「へーい」
じゃなくて、
路男「邪魔するぜ」
しのぶ「お父さんに何するつもりなの?」

路男「俺は病人に手を出すほどセコイ男じゃねえ。大丸サンよ、あんたがぶっ倒れたって聞いたんで、復讐する前に死なれちゃかなわねえと思って見に来たんだ。どうやら今は大丈夫そうで安心したぜ」
路男、この前、剛造を狙撃する絶好の機会をみすみす逃したくせに、まだ剛造への復讐を諦めていないらしい。
と言っても、自分を鼓舞する為にそう言ってるだけとしか思えず、どう見ても本気で剛造を殺そうとしているようには見えないのだが。
すぐ帰ろうとした路男を、病床の剛造が慌てて止める。

剛造「君、ちょっと待ってくれ」
路男「なんだい」
剛造「君にものを頼めた義理じゃないか、千鶴子に会ってきてくれないだろうか?」
路男「千鶴子にぃ?」
剛造「どうしても伝えてもらいたいことがあるんだ」
路男「あんた会長職だけあって人使いが荒いぜ、ちょうど来た仇の俺までメッセンジャーに使おうってのか? そういうことなら雅人に頼みな」
しのぶ「雅人さん、今、竹岡さんに呼ばれてお屋敷に帰ってるし、路男さん、お願い」
しのぶも一緒になって頼むが、路男は警察に行くのはゴメンだと、メッセージも聞かずに出て行ってしまう。だが、やはり気になるのか、立ち去らず、病室の前に立って聞き耳を立てる。
しのぶ「お父さん、今、何を頼もうとしたの?」
剛造「私が倒れたのを知ったら千鶴子はなんと思う? 自分のせいだと責任を感じて、絶望のあまり、警察の言いなりになってあらぬ罪を受け入れかねない。しのぶ、お前でもいい、千鶴子に会って、伝えてくれないか、私のために信念を曲げてはならんと」
しのぶ「でも、私、お父さんをひとりにしていくわけには……」
だが、また気持ちが高ぶってきたのか、再び剛造が発作を起こして苦しみ出したので、しのぶは離れるに離れられなくなる。
路男「千鶴子の為か……」
同じ頃、雅人は家で、則子や手島とともに、竹岡から「治療法」についてお伺いを立てていた。

雅人「それで、父の治療法と仰いますのは?」
竹岡「いやぁ、実に簡単なことだ、お父さんに喜びを与えてあげることだよ」
雅人「喜び? 看護婦さんがエッチなサービスをしてくれるとか、そういうことですか?」
竹岡「ちゃうわ!」 じゃなくて、
手島「竹岡様が仰いますには、それは雅人さんがしのぶさんと婚約なさる以外にないとのことです」
雅人「なんだって?」
竹岡「お父さんの心の中で、君が血のつながったしのぶさんと一緒になってほしいと言う願いに変わりはない筈だ。その願いを実現してあげることだけが、お父さんを救えるんだよ」
勿論、雅人は千鶴子と言う婚約者がいると拒絶するが、

則子「でも、このままでは、お父様はいつ万一ってことも……あなたそれでも構わないって言うの?」
手島「会長を見殺しにするか、しのぶさんと婚約してくださるか、道は二つに一つしかないんです」
雅人「……」
剛造の健康のことを持ち出されると、きっぱり断ることが出来ず、果てしなく迷いの淵に落ち込んでしまうあたり、路男が言っていた雅人の「頼りなさ」なのだろう。
要するに決断力に欠けているのだ。
こうして、周囲の余計なちょっかいのお陰で、立ち直りかけていた千鶴子(の性格)が、またしても捻じ曲がってしまうことになる。
視聴者からしたら、正直、もうどうにでも好きなようにしろって感じですが。
後編に続く。
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