第5話「宝石強盗犯の妹を救え!」(1992年5月12日)
冒頭、とある宝石店で若い男が宝石強盗を働き、逃げる途中、電話ボックスに駆け込み、

鷲尾「俺だ、やったぞ、あかね、もう金の心配なんてしなくていいからな……大丈夫だからな、あかね」
息を弾ませながら、あかねという妹に電話する。
ちなみに、すぐ死んでしまうのだが、演じるのは声優の宮本充さんである。

あかね「お金って……お兄ちゃん、また悪いことを?」
鷲尾「二時間後に駅前の公園で待ってる、その時に金を渡すから……二時間後だぞ」
あかね「待って、お兄ちゃん! お兄ちゃん?」
そして、今回のヒロインあかねを演じているのが、デビュー間もない水野美紀さんなのである!
あかね、一体何のことか分からず、戸惑いを隠せなかったが、とにかく待ち合わせ場所に向かう。
鷲尾の方は、山の中でいかにも柄の悪そうなスーツ姿の男たちと会い、
鷲尾「成功だ、早く金……早くブツ、金に換えてくれよ」

だが、男は懐から消音器つきのピストルを取り出すと、鷲尾に向ける。
鷲尾「何の真似だい? 約束が違うじゃねえかよ!」
鷲尾が抗議するが、男は容赦なく引き金を引き、用済みとなった鷲尾を殺す。
鷲尾「あかね……あかね……」
兄がそんな目に遭っているとも知らず、公園のベンチに座って兄の来るのを待っているあかね。
なんとなく、不吉な胸騒ぎを覚えながら……
鷲尾の死から半年後、いつもの診察室で、雅子が仕事について岩城に概略を説明している。

雅子「鷲尾茂32才、半年前ジュエリー吉崎から3億円相当の宝石を強奪、逃亡していた男です。死亡推定日時は半年前、つまり事件直後に殺されていたと言う訳……結局、奪われた宝石は出てきませんでした。問題は、この鷲尾と同様に殺されたと思われる死体がこの二年間で三体もでていると言うことです」
相変わらずソバージュヘアが素敵な雅子さん、こともなげに言うのだが、半年間も放置されていた(註・死体の発見状況が良く分からないのだが、犯人たちに埋められていたのが、何かの拍子に地上に出てきて登山客に発見されたのだろう)死体の死亡推定日時が、そんなにはっきり鑑定できるものだろうか?
岩城「その一連の宝石強盗の裏を暴き、潰すべき存在があれば潰す……」
雅子「それが、今回の指令」
と、ノックの音がして、香織が顔を出す。
雅子は香織と入れ違いに去って行く。

岩城「おい、精密検査じゃないんだろうなぁ?」
香織「いいえ、血圧だけよ、この調子だと私の役目が終わるのも近そうだし」
岩城「厄介払いが出来るってわけだ」
香織「……前言撤回」
岩城「うん?」
香織「その憎まれ口を縫い合わせる手術がまだ残ってたわ」
岩城「……」
にこやかな顔で強烈なジョークを飛ばして、百戦錬磨の岩城を黙らせると、「ほら早く」と、乱暴にその体を突き倒す。

岩城「……」
香織「さっさと上着を取って」
香織のドSぶりに、さすがの岩城もかたなしであった。
さて、とある高級クラブにて、

小夜子「小夜子です、よろしくおねがいします」
そこでホステスをしている小夜子が、いかにも、おら上流だど! と言う感じのオヤジの接客をしていた。
小夜子「あら、それ何のバッジですか?」
君塚「知らないのかい?
ドラえもんだよ」
じゃなくて、
君塚「弁護士のバッジだよ」
小夜子「まあ弁護士の先生ですか、素敵!」
てっきり、単に小夜子はそこでバイトをしているのかと思ったが、

三枝「小夜ちゃん!」
小夜子「……」
三枝「あーら、またその顔だ、僕が来たらいつもそんな顔になって……おや、いや、どうも、お久しぶりです」
そこへタイミングよくあらわれた三枝によって、それが、君塚と言う男に近付くための裏刑事の仕事だったことが分かる。
三枝「お忘れですか、私、三枝です。ほら、ご同業だった」
君塚「ああ、君か……」
三枝「今は弁護士やめちゃいましてね、こんなことやってるんですよ」
三枝、いつものインチキ芸能プロダクションの名刺を差し出す。
その上で、
三枝「ね、考えてくれた?」
小夜子「……」
三枝「いえね、この子芸能界にスカウトしようとしてるんですが、なかなかうんと言ってくれないんです」
小夜子「私はきちんとお断りしたはずです」
小夜子、いかにも三枝につきまとわれて迷惑しているという芝居をすると、三枝を無視して君塚をチークダンスに誘う。
取り残された三枝、小夜子の座っていた席に腰を下ろして深い息を吐くと、

三枝「しかし驚いたね、判事上がりで公正を持って知られるあの君塚弁護士が、裏ビジネスとくっついていたとはなぁ」
最初から後ろの席に陣取っていた岩城に背中を向けたまま話しかける。

岩城「鷲尾を含めてな、腐乱死体で発見された4人のホトケを洗い直してみたんだよ。全員前科持ちで、しかも、裁判の時の担当弁護士は、共通してあの男だった。どう考えたって偶然過ぎるだろ」
三枝「問題はあの先生がこの事件とどう関わっているのか、どんな役割を担っているのか、そいつを調べることだな」
三枝はそう言うと、ホールで小夜子と楽しそうに踊っている君塚の顔を見遣る。
さっきまで夜だったのに、君塚が小夜子を連れて店から出てくると昼間になってるのでちょっと驚くが、たぶん、君塚はあれから何度も店に通い、小夜子を店外デートに誘い出すまでの仲になったのだろう。
と、車に乗ろうとした君塚をつかまえて、ひとりの男が話しかけてくる。

根岸「ちょっとお願いがあるんすけど」
君塚「なんだ?」
根岸「ちょっといいっすか?」
で、その根岸と言う男を演じているのが、毎度おなじみ、小悪党をやらせたら右に出るもののない深見博さんなのだった。クレジットは深見亮介。
君塚「先に乗ってて」
君塚、小夜子にキーを渡すと、しぶしぶ根岸についていく。
どうやら金の無心に来たらしいその男に、君塚は数枚の札を渡して追い払う。
女スパイ小夜子は、抜かりなく根岸の写真を小型カメラで撮っていた。
プロダクションの事務所で、小夜子の撮った根岸の写真を見ながら「こいつが次の犠牲者か……」とつぶやいている三枝。

三枝の目の前には、盛装したマリコがそわそわとした様子で立っていて、三枝から声が掛かるのを待ち侘びていたが、

三枝「マリちゃん、もう帰っていいよ」
マリコ「えーっ」

マリコ「だってお食事に連れてってくれるって……」
三枝「あれ、そんなこと言ったっけ、俺?」

マリコ「これだ」
落胆するマリコだったが、いつものことで慣れているのだろう、大して気分を害した様子もなくバッグを肩にかけて帰ろうとするが、

三枝「マリちゃん! 帰る前に……」
マリコ「コーヒー?」
三枝「ブラックで」
マリコ「はーっ」
これまた毎度のことなのだろう、マリコ、溜息をつくが、むしろ嬉しそうに三枝の我儘を聞いてやるのだった。
思わず5枚も貼ってしまったが、マリコちゃん、可愛いよね。
沢口靖子はゴジラ顔で有名だが、マリコちゃんもなんとなく怪獣っぽい顔立ちをしている。
見たとおり性格も良く、いかにも良い奥さんになりそうな女の子である。
一方、小夜子は君塚のマンションで二人きりになって、ワインで乾杯していた。
君塚「やっと私の部屋に来てくれたね、何故急にその気になったんだい?」
小夜子「うふふ」

小夜子「スリー」
君塚「どうしてなんだい」
小夜子「ツー」
君塚「ええ、君?」
小夜子「ワン」
君塚「君、こっちを向いて」
小夜子「ゼロ!」
君塚「……」
君塚に背中を向けてこっそりカウントダウンをしていた小夜子であったが、ワインに入れた睡眠薬の効果は抜群で、君塚は僅か数秒で眠りに落ちてしまう。
しかし、やってることは「水戸黄門」の由美かおると同じだよなぁ。
でも、「水戸黄門」だったら、全然いやらしくない由美かおるの入浴シーンがせいぜいだろうが、こっちは小夜子におっぱい鷲掴みにされろとまでは言わないが、せめてシャワーシーンか、下着姿ぐらいは披露して貰いたいところである。
全般的にこの手のドラマにしては妙にお上品なのも、このドラマの欠点のひとつと言えるだろう。
あと、マリコと小夜子が似たような色の服着てるのも、衣装さんのやる気のなさがうかがえて、ちょっと萎えます。
それはともかく、小夜子はすぐに玄関のドアを開けて、外で待機していた岩城を招き入れると、自分はさっさと退散する。
岩城が家の中を調べると、

割と簡単に、強盗たちと君塚のつながりを示すファイルが出てくる。
つまり、強盗たちの履歴書のようなものであり、その中には、まだ生きている根岸のものもあった。
と、誰かが窓の外から入ってくる気配に、岩城はそっと姿を隠す。

入ってきたのは、全身黒ずくめの、実に可愛らしい泥棒さんであった。
岩城は知る由もなかったが、鷲尾の妹・あかねである。
しかし、明かりがついているマンションに、こんなカタギの女の子が堂々と窓から入ってくるだろうか?
君塚がぐーすか寝てたから良いようなものの、君塚と鉢合わせしたらどうするつもりだったのだろう?
それはともかく、あかねは岩城と同じようにキャビネットを調べて、あのファイルを探し出す。
その中に自分の兄の書類があるのを見て、悔しそうに唇を噛むあかねを、クローゼットの中から岩城が背後霊のように見詰めていた。
CM後、あの根岸が、とある宝石店のまわりを仔細ありげにうろついている。

根岸「午前11時ジャスト開店、店員が二名、防犯カメラが二台……よし」
どうやら強盗の下見をしているらしい、大変分かりやすい言動の根岸さんであった。
って、そんなこと口に出して言う強盗はいねえよっ!
南が尾行しているとも知らず、根岸はそのまま自宅アパートに帰るが、

ここでも大変分かりやすい言動を見せる根岸さんであった。
根岸さん、何でも子供の頃は、電光掲示板のように思ってることが額に表示されると言う、大変分かりやすい体質の持ち主だったそうであるが、嘘である。
ラビリンスに戻って根岸のことを岩城に報告している南たち。

南「バクチ好きが祟って、サラ金にかなりの借金を作ってる男なんですが……強盗、傷害など前科4犯、先月まで武蔵野刑務所に服役していた、いわゆるプロの強盗犯です」
南、さすが元刑事だけあって、その手の調査はお手の物であった。
大津「鷲尾茂ほか、腐乱死体で発見された4人の男らと、まったくおんなじですわ」
小夜子「勿論、裁判ではあの君塚が弁護を担当しています」
岩城「……」
大津「どうやらまた宝石店が狙われる可能性が高いですね」
小夜子「君塚がそれをやらせてるのかしら?」
岩城「いや、君塚が関わってるのは間違いないけど、所詮は一介の弁護士だよ、それだけのブツをそう簡単に捌けるとは俺は思えないな」
岩城、君塚のバックには別の大物がいるのではないかと推理してから、引き続き根岸をマークするよう三人に頼む。
南「岩城さんは?」
岩城「俺は少し別の方法で君塚をプッシュしてみるか」
次のシーンでは、岩城が鷲尾の知り合いだと偽って、正面から君塚弁護士事務所を訪ねている。

で、岩城にお茶を出した女性秘書こそ、岩城が君塚の部屋で見たあの可愛らしい泥棒さんなのだった。
いやぁ、今見てもふるいつきたくなるような美貌である!

君塚「で、私に何か用かね」
岩城「実はね、鷲尾が死ぬ前に面白い話聞いてね」
君塚「面白い話?」
岩城、あかねが部屋を出て行くのを見てから、
岩城「宝石強盗の話だよ」
単刀直入に切り込む。
一瞬分かりやすくドキッとした君塚だったが、すぐに「何のことか分からんね」と、分かりやすくしらばっくれる。
基本的に、この手のドラマに出てくる悪人は、みんな分かりやすい人たちばっかりなのである!
岩城「へっへっ、とぼけるなよ、車にハジキにブツを捌くルートさ……俺にも面倒見てくれよ」
君塚「……」
岩城、いかにも悪党っぽい下卑た笑いを浮かべながら、君塚に顔を近付けてお願いする。
でも、この時点では、君塚たちが強盗に車まで与えているとは分からない筈だから、ハッタリにしては岩城の推測は事実に符合し過ぎていて、やや違和感がある。
ま、それこそ元ベテラン刑事の勘と言う奴であろうか。

岩城「ただし、仲間は要らん、鷲尾みたいに仲間割れで殺されちゃ、たまらんからなぁっ! ははははっ」
君塚「帰りたまえ!」
岩城「なんだ?」
君塚「そんな話はデタラメだ」
岩城「なんだ?」
岩城、まるっきりヤクザのように君塚に顔を近付けて同じ言葉を繰り返すが、君塚がそこにあった電話で110番したので、ひとまず引き揚げることにする。
その後、岩城がつまらなそうな顔で歩道橋を上がっていくと、

目の前に、大変分かりやすい、ゴリポン系の顔をしたチンピラたちがあらわれる。
おそらく、君塚の……と言うより、君塚から知らせを受けた黒幕の差し金であろう。
で、岩城が反射的に後ろを見ると、
そこにゴルゴ松本が立っていた。 完全に油断していた管理人が、盛大に吹き出したのは言うまでもあるまい。
そう、ゴルゴ、当時は松本政彦と言う名前で役者を目指していたんだね。
三人は何も言わずに岩城に殴りかかってくる。
岩城の敵ではないのだが、ここでぶちのめしてしまうと黒幕に辿り着けないおそれがあるし、黒幕を警戒させてしまうことになるので、ほどほどに抵抗したあと、一転して逃げ出す。
と、近くに潜んでいた南が、通行人を装って警官を呼ぶ声を上げたので、三人はスタコラサッサと逃げていく。
三人は車に乗って走り出し、それを南が追跡する。
車は新興住宅地を抜けて、丘陵のてっぺんにある豪邸に入っていく。

そして、首領格と思われる初老の男と、その腹心の中年男性にかしこまって何やら報告する。
襲撃に失敗した後、まっすぐ雇い主のところに帰ると言う、まるっきり時代劇の下っ端のような分かりやすい行動をする相手に、南さんも大助かり。
しかも、彼らのいるところは全面ガラス張りで、外にいる南にも、望遠カメラで写真が撮り放題と言う、ここまで親切でいいのかしらんと心配になるほどの至れり尽くせりぶりであった。
一方、君塚の事務所に潜り込んでいるあかねは、そこでも君塚の机などを引っ掻き回して兄の死の真相につながる手掛かりを探していたが、その様子を君塚に見られてしまう。
だが、自分の部下への対応も自分で決められないヘタレの君塚は、何もせずに黒幕のところに電話を入れて指示を仰ぐのだった。

高品「社長、君塚から電話がありまして、どうも女事務員の動きがおかしいそうです」
氷室「女事務員? へっへっ、どうせ虫けらどもの片割れだろ、正体を調べて捻り潰してやろう」
自宅で飼っているニワトリたちにエサをやっていた中光物産社長・氷室(今回の黒幕)は、部下の報告を受けると、こともなげに言ってのける。
ちなみにこの部下の名前が分からないので、とりあえず、演じている高品剛さんの名前で呼ぶことにする。
夜、帰宅中のあかねの前に、岩城がふらっと現れる。

岩城「君とは、君塚先生のところで会ったろう、覚えてるか?」
あかね「……」
あかね、いかにもおっとりした顔に薄い笑みを浮かべて頷く。
岩城「俺は鷲尾の、君の亡くなった兄の友達だ」
あかね「……」
兄の友人と言われてあかねが驚くのを見て、

岩城「ああ、やっぱりそうか、いや、鷲尾からいつも君のことを聞かされてたから……もしやと思ったんだけれど、あんたあかねさんだろ?」
あかね「……」
岩城「あんなところで一体何してるんだい?」
あかね「……」
岩城「ひょっとしたら、お兄さんがなんで死んだか調べてるんじゃないか?」
あかね「……」
岩城「なんか言えよぉおおっ!」 と言うのは嘘だが、管理人がそう思ったのは事実である。
実際、兄の友人だと言う人からあれこれ話しかけられていると言うのに、これだけ長時間無言をキープすると言うのはさすがに不自然であるが、水野さんの演技力がまだ頼りないので、監督が、極力彼女に喋らせないようにしているのだろうか。
岩城「気持ちは分かるよ、たった二人の兄妹だったんだからな」
あかね「……」
岩城「だが今のうちだ、すぐ手ぇ引きなさい。偽名を使ってるようだが、そんなものはいずれバレちまうんだ」
あかね「……」
岩城「相手はな、あかねさんが考えてるほど甘くはないんだ、たとえ君塚ひとりをどうこうしたって、それで兄さんの仇を討ったことにはならん」
ひょっとして、ドラマのダイアローグにおける、沈黙の世界記録にでも挑戦しているのかと思ったが、

あかね「どういうことですか、あの君塚がお兄ちゃんそそのかして、強盗させたんじゃないの?」
ここでやっと、あかねが口を開いて反問する。
で、それが、OLというより女子高生みたいな喋り方なのが、とても可愛いのであった。
あかね「宝石をお金に換えてやるって騙してそれで殺したんでしょう? 宝石とりあげて、仲間割れに見せかけて……」
岩城「よく調べたな」
あかね「お兄ちゃんは更生しようとしてたんです、二度と悪いことはしないって約束してくれたんです。それをあの君塚につけこまれて……」
岩城「なんだい、それはどういう意味だ?」
あかね「……」
岩城「まあいいや、とにかく後は俺に任せろ」
岩城、あかねに手を引くようにくどいほど念を押してから、何かあったらここに連絡しろと、ラビリンスのマッチを渡して別れるのだった。
しかし、岩城、なんで彼女の正体が分かったのだろう?
確かにその前に岩城が鷲尾のファイルを見て、彼にあかねという妹がいることを知るシーンがあるのだが、それだけでは彼女があかねだとは断定できないだろう。
事務所では別の名前を使っていたのだから、むしろ、鷲尾の恋人だと考えるのが普通ではないか。
それはともかく、翌日、南の撮った写真を見ながら話している岩城と三枝。

三枝「中光物産社長・氷室巌(いわお)、48才」
ちょろっと恐ろしいこと言うなぁ。
あれで48ぃ? さっきうっかり初老って書いちゃったぞ。
ちなみに演じている江角英明さんは当時57歳くらいなので、10ほどサバを読んでいることになる。
まあ、日本のドラマでは、登場人物の年齢は、演じる俳優の実年齢より若く設定されるのが不文律らしいが。
三枝「元々東南アジアから民芸品を輸入してたんだが、三年前、税関と北水上署の立ち入り捜査を受けた。容疑はずばり、宝石と貴金属の密輸……だが、証拠は何も上がらず、捜査は空振り。しかし氷室が黒幕であることは間違いないなぁ。奴は君塚弁護士を通じて金に困りまた犯罪を犯しそうな前科モノを探し出す。そいつを言葉巧みに誘いこんで強盗を働かせその上で殺す。宝石は密輸ルートに乗せて換金する」
岩城「問題はそれをどうやって証明するかだ」
……と言う訳で、事件の全体像はぼ掴めたが、まだ氷室を黒幕だと断定できるだけの証拠がないので、引き続き調査を行うことになる。
ところで、このドラマのもうひとつの欠点は、この絵面を見てもわかると思うが、ツートップの岩城と三枝のコンビが、
あまりに頼りになり過ぎることにあるのではないかと思う。
だって、藤竜也と近藤正臣だぜ? 少々の悪党が相手では最初から勝負にならないのは目に見えている。
言い換えれば、主人公たちに比べて、毎回出てくる悪人たちが貫禄負けしていると言うことなのである。
あるいは、三枝があくまで局外にいて岩城が裏刑事であることも知らず(薄々勘付いている?)、たまに捜査に協力する……くらいの関係にしておくとかね。
だが、岩城はあかね本人にはあれだけ忠告していたのに、肝心のあかねのガードを度忘れしていた。
あかねが自分のアパートでぼんやりしていると、

声「書留です」
あかね「あ、はい」
どんな悲劇のどん底にあろうといそいそと出てしまう、「書留です」と言うマジックワードに引っ掛かり、うっかりドアを開けてしまったのが運の尽き。
相手は郵便屋さんではなく、氷室の部下の、鷲尾を殺したあの男だった。
どうでもいいが、なんか、夢もチボーもないスカート丈である。
ちょっと前屈みになるだけでパンツが見えていた70年代は遥か遠くなりにけり。
ともあれ、男は素早くあかねの腕を取って背後から抱きすくめ、その口を塞ぐと、

男「そんなに兄貴が恋しいなら送ってやるよ」
白いブラウスに包まれた控え目な胸が実にエロティックで、ここからとてもここでは書けないようなスケベなことをされるのかと心配、いや、期待したが(正直者)、前述したように、このドラマはそっち方面の描写はいたって大人しく、ましてや相手は花も恥らう新人女優であり、そんな都合のいい展開になる筈もなく、

男「兄貴のところへなぁ」
もったいないことに、何も「おいた」をしないまま、その背中をサイレンサー付きの銃で撃ってしまう。
ただし、ちょうどそこへアパートの別の住人が訪ねてきたので、男はトドメを刺さずに部屋から逃げ出さなくてはならなかった。
瀕死のあかねは、前夜の岩城のことが頭にこびりついていたのか、救急車ではなくラビリンスに電話をして助けを求める。
CM後、岩城が通院している例の病院の一室で、意識不明の重体に陥っているあかねの傷ましい姿。

香織「弾丸の摘出は何とか成功したわ、ただ、衰弱が激し過ぎて極めて危険な状態よ」
岩城「……」
その後、ラビリンスに三枝を除く4人が集まって、あれから全く調査が進展しないことをぼやいている。
次に強盗をすると思われる根岸もあれ以来部屋に閉じ篭りっきりだと知らされた岩城は、やや苛立ったような声で、

岩城「いぶりだせ、いぶりだして宝石強盗やらせるんだよ!」
南「そうか、そうすりゃ」
大津「金とブツの交換のために」
小夜子「イヤでも敵が姿を見せる!」
さすが裏刑事の面々、たちどころに岩城の意図を見抜いて興奮した声を上げる。
岩城「だから横からブツを掻っ攫う。黒幕との取引は俺がやる」
岩城、それ以上の詳しい説明はせず、タバコを灰皿に強く押し付けると店を出て行く。
んで、「裏刑事」ではよくあることだが、次のシーンでは、部屋で競馬の予想をしていた根岸のところにチンピラに扮した南と大津が押し掛け、

根岸「あんたら、サラ金から頼まれて?」
大津「わかっとったらガタガタ抜かすなぁーっ!」
根岸「ああーっ! やめろーっ!」
大津「おい、生命保険の証書にサインさしたろかー?」
根岸「……」
大津「それがいややったら、はや払ったれや。ええなーっ?」
根岸「あ、は、はい……」
散々根岸の肝を冷やしてから引き揚げるのだった。
大変分かりやすい性格の根岸は、案の定、二人が出て行くや否や、君塚に電話する。
根岸にとって、そして岩城たちにとっても好都合なことに、しばらく鳴りを潜めていた氷室たちが、海の向こうの取引相手の要求もだしがたく、新たな宝石強盗を決行しようとしていた。
君塚経由で高品からの指示を受けた根岸は、南に尾行されているとも知らず、指定された場所に停めてあった車に乗り込む。
ダッシュボードには、ちゃんと拳銃と連絡用の携帯電話まで用意されていた。

高品「打ち合わせどおり、防犯カメラとベルの配線は直前に切ってある。店内の様子や逃走ルートについては前以て渡した資料のとおりだ」
根岸「分かりました」

高品「よし、行動終了後、1時間以内に地図の場所に来い。ブツを換金してやる。パスポートも用意してある」
ごらんの通り、事前・事後のお膳立てがすべて整った、まるで全自動食洗機のような初めてでも安心の宝石強盗であった。
……
つーか、そこまでやれるんだったら、強盗も部下にやらせれば良いのでは?
そのほうが、君塚を噛ませて実行犯を探し、いちいち殺す手間も省けるから、そっちの方がよほど効率が良く、低リスクだったろう。
まあ、万が一強盗に失敗した時のことを考えてのことだろうが、その場合、君塚とのつながりが明るみになるのだから、結局は同じことではないかと……
ここはせめて、防犯装置の対処くらいは根岸本人にやらせたほうがドラマとしては納得できただろう。
ともあれ、根岸は見事に強盗を成功させ、取引場所に急いでいたが、南から連絡を受けた岩城に待ち伏せされ、あえなく身柄を拘束されてしまう。

高品「なにぃ、宝石を奪われた?」
根岸「はい……」
岩城「そう言う訳でな、取引の相手が変わった。よろしく頼むぞ」
高品「貴様、誰だ? 名前を名乗れ」
岩城「ご挨拶だなぁ、俺のことなら君塚が良く知ってる筈だ。ところでこのブツ、いくらで引き取るつもりだ?」

氷室「まあいい、売り手が変わっただけだ、買ってやろう」
高品がお伺いを立てると、氷室もあっさり商談に乗ってくれる。
ちなみにここでは牛乳を飲んでいるが、最初のニワトリ(新鮮な卵を得るため?)と言い、握力を鍛えているところと言い、出てくるたびに氷室が何かしら健康に良いことをしているのが今回のちょっとした隠し味になっている。
まあ、実際、健康ブームだったからねえ。
若い人は知らないだろうが、当時、「飲尿健康法」とか言って、自分の出したおしっこを飲むと言う、アホみたいな健康法があったのだよ。
ほんと、今考えてもバッカじゃなかろうかと思う。
同じ飲むにしても、田山真美子さんのような美少女のおしっこなら大歓迎だが……って、管理人の知り合いが言ってました。
閑話休題、岩城はボスと直接取り引きするのが条件だと念を押してから、電話を切る。
だが、氷室がそんな危ない橋を割る筈がなく、根岸のような男を推薦した君塚の責任だと言って、彼に交渉および岩城の始末を任せる。
でも、ただの弁護士である君塚にそんな仕事をさせると言うのも、考えたら無茶である。
さて、岩城が造成地の丘で待っていると、君塚が車でやってきて、金の入ったアタッシェケースを岩城の足元に放り投げる。

岩城「……」
君塚「どうした、受け取らんのか?」
岩城「気に入らんな、取り引きは直接ボスとする、こいつが条件だった筈だ……今日の取り引きはご破算だ、機会を改めよう」
君塚「待て!」
岩城が金には……と言っても、その中にほんとに金が入っていたのかは不明だが……目もくれずに立ち去ろうとすると、君塚が氷室から渡されたピストルを取り出して岩城に向ける。
岩城「へへっ、先生、拳銃が似合いませんな」
君塚「動くな、動かんでくれ」
岩城「ボスは誰だ? そのボスに俺をやれといわれてきたんだろう」
君塚「動くなと言ってんだ」
岩城が平然と近付いてくるのに、かえって君塚の方が恐れてずるずる後退していく。
しかし、

岩城「先生、撃って見ろよ。死んでやるよ、その代わり(ボスの)名前を教えてくれ。どうせ死ぬんだから構わんだろ、撃ってみろ、ほれ! 撃ってみろ!」
君塚「えいっ」
(バキューン!) 岩城「あれ?」
……などと言うことには絶対ならないようになっているのだが、岩城のやってることは明らかに自殺行為に等しいだろう。
相手が素人だから見くびってのことだろうが、素人だからこそビビッて引き金を引いちゃう可能性もある訳だし、ひっょとしたら君塚が、
元シールズの隊員だと言う可能性だってない訳じゃないのだから。
ドラマでは、結局最後は岩城が至近距離まで近付いてそのピストルを蹴り飛ばして事なきを得ているのだが、実はちゃんと防弾チョッキを着ていた……みたいな描写があれば、「おお、さすがはプロだ」と言う風に見てる方も感心出来たのだが。
と、ここでまたまた、このドラマの欠点が見付かってしまった。
さっきの欠点と矛盾するようだが、裏刑事、特に岩城が、あんまりプロフェッショナルに見えないということである。
それはさておき、岩城がピストルを突きつけてなんとか君塚に喋らせようするが、その前に、君塚は現場に来ていた氷室に狙撃されて死んでしまう。

氷室「虫けらめ……へっへっ」
……
いや、だったら最初から岩城を撃てば良かったのでは?
時代劇でもよくあるけど、善玉に口を割らされそうになっている仲間を遠くから狙い撃ちできるのなら、仲間より先に善玉を殺せって話だよね。
ともあれ、そこへ別の車が飛び込んできたので、氷室は一発撃ってすぐに退散する。
三枝が応援に駆けつけたのである。
岩城「三枝、だいじょぶか?」
三枝「今のは氷室だ、間違いない。それからもうひとつ……あかねさんの容態が急変した」
岩城が急いで病院へ取って返したのは言うまでもない。

香織「ここまで持ってるのは奇跡としか言いようがないわ……あなたにどうしても言いたいことがあるって……」
残念ながら、名医の香織にも、もう手の施しようがない状態だった。
岩城、枕元に屈み込むと、意識が混濁しているあかねに呼びかける。

あかね「岩城さん、お兄ちゃんは……」
岩城「なに、何が言いたいの?」
あかね「お兄ちゃんは私のために強盗したんです」
岩城「君のために?」
あかね「悪いことばかりしてどうしようもないお兄ちゃんだった。そのくせ、私にはうるさいぐらいの親代わりで、私、反発して飛び出したもののバカな男に引っ掛かっちゃって……勤めてた会社のお金に手を出してしまったんです」
鷲尾が宝石強盗を働いたのは、あかねの使い込んだ金を補填するためだったのだ。
もっとも、あかねから頼んだのではなく、兄には使い込みのことは秘密にしていたらしいのだが、

あかね「何処でどう調べたのか、あの君塚が……お兄ちゃんの耳に入れてしまったんです」
演技はたどたどしいけど、やっぱり奇麗だなぁ。

あかね「自業自得だったんです。お兄ちゃんも、私も……」
岩城「……」
汚れのない瞳から、透明な涙を一筋流しながら自嘲的につぶやくあかねに、岩城はなんと応えてやれば良いか分からなかった。
しかし、鷲尾はあくまで妹のためにそんなことをしたのだから、そのあかねが、自分はともかく兄のことまで「自業自得だ」と切り捨てるのは、なんとなく釈然としない。
ここは、「全部私のせいだったんです……」と、潔く自分ひとりで責任を背負った方が彼女らしいし、好感度もアップすると思うのだが。
だが、あかねはその場では死なず、部屋に戻って沈んでいた岩城に、珍しく雅子が訪ねてくる。
ちなみに玄関のインターフォンやロックを、岩城が座ったままリモコンで操作しているのが、いかにも90年代だど! と言う感じがして微笑ましい。
雅子が持って来たのは、報酬と銃、そして凶報だった。

雅子「あかねさんがついさっき亡くなったわ」
岩城「……」
そう、サブタイトルに「救え」とありながら、あかねはあっけなく死んでしまったのである。
うーん、後味が悪いと言うか、救いが無さ過ぎる結末である。
ここで、またまたまたこのドラマの欠点を挙げるとすれば、アンハッピーエンドが多いと言うことだろうか。
勿論、毎回こんな感じじゃないけど、死ななくもて良いような人が殺されるケースが多い気がする。
最終回における、この雅子だってそうなのだが、まあ、岩城が無抵抗の相手を有無を言わさず射殺するためには、相手もそれなりの悪事を働いてないと釣り合いが取れない……とスタッフが考えて、過度な殺戮に走っていると言うことはあるかも知れない。
それにしても、れっきとしたゲストヒロインが死が、こうやって間接的に描かれると言うのは、かなりのレアケースではないかと思う。
これも、水野さんの演技力を考慮しての措置かもしれないが、さすがにそれはないよなぁ……
さて、いよいよここからハンギング……じゃない、射殺タイムとなるのだが、早朝、健康マニアの氷室がひとりでジョギングに出た後、三枝が高品の前にあらわれ、得意のダーツで脅して氷室のジョギングコースがいつもと同じかどうか確認する。
うーん、正直、なくても良いシーンだと思うが、そうすると三枝の出番がなくなるからね。
つーか、この際だから、高品も一緒に撃ち殺しても良かったと思うが……
確かに高品自身は手を汚してないとは言え、その罪は氷室たちと変わらないのだから。
と、管理人が油断していたら、
再びゴルゴ参上! いやぁ、シリアスなドラマのクライマックスで、この顔はほとんど凶器攻撃に近い。
彼らは社長のジョギングコースに立って警護をしていたのだが、

そこへショートパンツ姿のジョギング美女があらわれ、彼らを通り過ぎたところで立ち止まり、ソックスの位置を直そうとする。

んで、それを、ゴルゴ目線で捉えた悩殺ショットが炸裂!
ぶっちゃけ、管理人が「裏刑事」の厳選レビューをやろうと思い立ったのは、この画像をもう一度貼りたいからなのだった。
ま、欲を言えば、もうちょっとパンツを尻に食い込ませて欲しかったところだが、贅沢は言うまい。
二人はニヤニヤしながら彼女の背後に回り、

ゴルゴ「お手伝いしましょうか」
ゴリポン「奇麗な足だねえ」
スケベ心を丸出しにしてその足に手を伸ばすが、小夜子はその手をピシャリと叩くと、振り返っていきなりゴルゴの顔をぶん殴り、ゴリポンを投げ飛ばす。
続いて、近くに隠れていた南が出てきて、ゴルゴを気絶させ、小夜子もゴリポンをぶちのめす。
小夜子、最終回で明かされるが、元々婦警なので、護身術は得意なのである。
ちなみにその後、小夜子が何事もなかったように氷室とすれ違い、にこやかに挨拶するのだが、
小夜子「こんにちは」
氷室「あ、は、はい……」
悪党の氷室が、妙に小市民っぽい反応を示すのが、これまたちょっとした笑いどころとなっている。
さて、ここから仕置きの時間となる。
岩城、車で氷室の横につけると、銃で脅しながら並走し、トンネルに入る。

岩城「足を洗おうとする人間を唆し、騙して強盗を働かせて上前をはねる。そのやり口で今までいくら稼いだ?」
氷室「……」
真ん中あたりまで来たところで、岩城は氷室を止めさせ、自分も停車する。
岩城「君塚の代わりはどうせすぐ見付かる。新しい窓口でまた荒稼ぎって言う訳か」
氷室「君塚は昨日付けで解任した。何か喋ったのならそれはすべて奴自身がやったことだ」
ひたすら往生際の悪い氷室であったが、岩城が近くに潜んでいたもうひとりの護衛……あかねを殺した背の高い男を撃ち殺すと、
氷室「虫けらどもが二、三人死んだだけじゃないか、いくら欲しい? いくらでも出す!」 あえなくその醜い本性を露わにする。
それに対して岩城は、
(バギューンッ!) 問答無用で射殺! うーむ、カタルシスは全然ないけど、ある意味凄い殺し方ではある。
ただ、これもまたドラマに共通する欠点のひとつに数えられると思うが、こんな芸のない方法なら、別に岩城じゃなくても出来ることなので、いまひとつ裏刑事が出張ってくる必然性が感じられないのである。
まあ、それを言えば、今回の事件そのものが、最初から裏刑事が関わるような案件ではなかったのではないかと言う気もするのだが……
前回やったレイプ魔のような事件なら、裏刑事でなければ解決できないと納得できるんだけどね。
ともあれ事件は、岩城の胸に苦いしこりを残して解決する。
ラスト、派手な紫色のジャンパーを着た岩城が、香織の診察室へあらわれる。

香織「どうしたの?」
岩城「今日は精密検査じゃないんだろ、終わったら遠出のドライブでもしようかと思ってさ」
香織「それは良いけど無理はダメよ。もう若くないんだから」
岩城「それは主治医が同伴だから心配ないよ」
そう言うと、岩城は背中に隠していた花束を香織の目の前に突き出す。

岩城「約束するよ、退屈はさせない」
香織「……」
香織、しげしげと岩城の顔を見詰めていたが、立ち上がって岩城の体をベッドに押し倒し、

香織「やっぱり精密検査したほうが良さそうだわ、だいぶ熱があるみたいだから」
岩城「……手強い」
ニコリともせずに岩城の胸に聴診器を当てる香織に、「参った」とでも言いたげな岩城のおとぼけ顔でエンドクレジットとなる。
以上、もっと短くまとめるつもりだったのに、終わってみれば前回と大して変わらない長さになってしまった第5話でした。
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