第24話「悪魔の三姉妹編 最終回 サキよ永遠に」(1985年10月24日)
いよいよ最終回である!
最終回であるが、元々このドラマはHPで一度みっちりレビューしている作品なので、内容をあまり覚えていない序盤はともかく、終盤はどうしても記憶が濃くなるので、記事を作成していると、同じことを繰り返しているような一種の「ダレ」が生じてしまい、これで最後か……と言う寂寥感より、これで最後だ! と言う解放感の方が優っていることは否めない。
まあ、3回も4回も同じ話を繰り返し書き直していた「セーラー服反逆同盟」に比べれば、全然楽だけどね。
冒頭、意味もなく雷鳴が轟く書斎で、ワイングラスを手の中で弄びながら、恥ずかしげもなく「ワルキューレの騎行」を流しつつ、サキへの殺意を滾らせている中二病真っ盛りの麗巳タン。

麗巳(麻宮サキ、もう我慢できない。最後の決着をつけてやる)
こんなこと言いたくないけど、まだ若くて、才能もお金もたんまり持ってるんだから、サキのことなど忘れ、新しい人生を歩んだ方が良いと思う。
それはともかく、学校からの帰り道、三平が突然得体の知れない男たちに捕まり、車に押し込められて何処かへ連れ去られるという事件がすべての発端だった。
夜、木村家から自宅に戻ったサキが勉強していると、

ナツ「サキ、三平さんがいらしたわよ」
サキ「えっ、こんな時間に?」
サキが驚いて振り向くと、
ナツ「キャアアアーッ!! もろ好みのタイプーっ!!」 じゃなくて、
ナツ「キャアアアーッ!」
三平がいきなりナイフを取り出したので、悲鳴を上げるナッちゃん。
三平、問答無用でサキに切りつけ、勉強部屋での乱闘となる。

何とか三平を取り押さえようとおろおろするナツであったが、残念ながら、このシーンが清水まゆみさんの最後のシーンとなってしまう。
OPタイトル後、なんとかサキによって病院へ担ぎ込まれた三平の下へ、神がいそいそと駆けつける。

サキ「神……」
神「鎮静剤で眠っているのか……」
その後、階段を降りてきたサキが、診察室の方から歩いてきた神と鉢合わせする。

神「医者からカルテを見せてもらった、症状から見てP3Yに間違いない」
サキ「P3Y?」
神「近代ゲリラ戦争で使われた洗脳薬だ」
前回、サキと神の組み合わせならさほど違和感はないと言ったけど、あくまで程度の問題で、こうして並ぶと、やっぱり中さんが桁外れの大きさだということが良く分かる。
神「打たれると思考形態が麻痺してロボットのように相手の命令どおり動いてしまう」
サキ「……」
神の説明にしばらく考えていたサキは、
サキ「じゃあ、こっちも命令すれば良いのでは?」 神「それだっ!!」 じゃなくて、
サキ「そんな」
神「あまりに人間性を無視した薬品兵器だとして、製造禁止になった筈だが」
サキ「麗巳の仕業だわ。私を殺そうとして……三平まで」
だが、事態はもっと深刻で、

神「開放剤はあるが、24時間以内に注射しないと麻痺した思考形態が永久に元に戻らず、遂には死に至ってしまうということだ」
と、衝撃の事実を告げられる。
神「三平が打たれのが今日の夕方だとすれば……タイムリミットは明日の夕方」
サキ(そりゃそうだろ) わざわざ溜めてから当たり前の台詞を放つ神に、こんな状況ながら心の中でツッコミをいれずにはいられないサキであったが、嘘である。
サキは、ピザでも頼むような気軽な口調で「早く開放剤を持ってきて」と言うが、製造禁止になった薬品の開放剤は、さすがの神にも容易には入手できないアイテムであった。
それにしても、
「思考形態」とか
「薬品兵器」とか
「開放剤」とか、他ではあまり聞いたことのない単語が飛び交うこの会話、今見ると、ちょっと恥ずかしい。
ま、言いたいことは分かるが。
神「とにかく、お前は一旦家に帰ってお母さんを本部へ連れて行け。万が一でも危険があってはいかんからな」
神はそのまま病院に残り、廊下のソファに座って見張りを続けていたが、深夜、三平が突如暴れ出して病院を抜け出し、再び麗巳の手に落ちてしまう。
神がそのことを知らせにサキの家を訪ねると、麗巳から電話が掛かってくる。

麗巳「どう、サキ、親友の三平に殺されそうになった感想は?」
サキ「てめえ……三平は何処だ?」
麗巳「だいじょうぶ、ピンピンしてるわよ」

麗巳の背後には、三平と、二人の部下が立っていた。
麗巳「ところで三平に使用した洗脳薬P3Yだけど、打ったのが昨日の午後3時、だから開放剤のタイムリミットは……今日の午後3時」
サキ(そりゃそうだろ) 神と同じく芸のない台詞を放つ麗巳に、心の中で毒づくサキであったが、嘘である。
ま、続けて「あと5時間だということを知らせておいて上げるわ」って言ってるんだけどね。

それはそれとして、珍しくシリアス顔をしている三平が、改めて見るとなかなかの美男子であることに気付いた管理人であった。
神のせいで目立たないが、実は結構背も高いのである。
それはともかく、麗巳の言葉にサキが思わず掛け時計に目をやると、時刻は午前10時過ぎだった。
……
いや、深夜に三平が逃げ出してから、今まで神は何をしてたの?
なんですぐサキに知らせに来なかったの?
※追記 シナリオでは、神はそのことを知らせに来たのではなく、三平の行方を探しているがまだ見付からないのだと報告に来たことになっている。
麗巳「開放剤を必死になって探してるんでしょ? でもあなたたちの力じゃまず無理ね。持ってるのよ、この私が……今この手に」
サキ「なにっ」
開放剤のアンプルを手に優越感に浸る麗巳は、開放剤が欲しければ、イースト製薬の城北工場に午後1時に来いとサキに命じる。
電話の後、麗巳は何を思ったか、そのアンプルを床に落として靴で踏みにじってしまう。
……いや、そのアンプルは、サキに対するいざと言うときの切り札になるのだから、率先して廃棄しちゃうのは、さすがにアホのすることでは?
だいたい、三平の生死など、麗巳にとっては二義的な問題の筈である。
無論、サキは即座に指定された場所へ向かおうとするが、

神「待て」
サキ「止めないでよ、神」
神「バカッ! そんなに急いで約束の時間より大幅に早く着いたら、3時までどうやって時間を潰すつもりなんだ?」 サキ「あっ……」
神「さ、これを持っていけ、
ゲームボーイだ」
サキ「ありがとう、神……」
神の周到さに舌を巻いて感謝するサキであったが、途中から全部嘘じゃい。
神「これは罠だ、お前を誘い出して殺すのが狙いなんだぞ。開放剤があるというのも嘘に決まってる」
サキ「でも行かなければ三平が……」

神、その大きな体でサキの行く手を塞ぐように回り込むと、
神「諦めろ」
サキ「なんだってえ」
神「こうして誘い出すからには麗巳は完璧な準備をして待ち受けている筈だ、行けば必ず殺される! 仮に三平を救い出せても三平が助かる確率はほとんどゼロだ」
サキ「それがなんだって言うんだよ、三平、仲間じゃないか、仲間を見殺しにすることなんて出来ないよっ! 三平に命を助けられたことだってあるのよ!」
サキの叫びに合わせて、サキが亜悠巳に撃たれて死に掛けていたところを三平が助けた時のシーンが回想される。

サキ「信じられないよ、神! 人間は確率だけで動くのかよ? 今まで私や三平のこと一体どう思ってきたんだよ?」
今まで築き上げてきた信頼関係は砂上の楼閣だったのかと、神に開き直った質問をぶつけるサキ。
どうでもいいが、このサキの顔、煽り画像として使えそうだな……

神「感情に流されるな、サキ!」
だが、神はサキの問い掛けには直接答えず、ひたすらクールダウンを唱えるのみ。

サキ「……」
しばらく無言で睨み合っていたサキ、神の横を抜けて行こうとするが、すかさず神が当身を食らわせ、

あえなく失神したサキを、最初で最後のお姫様抱っこでベッドまで運ぶ神サマであった。
キャーッ、神サマーッ! 私もお姫様抱っこしてーっ!(うるせえ)
無論、神は単身敵地に乗り込むつもりなのだが、正直なところ、普通にサキと一緒に行っていれば、余裕で麗巳に勝てたんじゃないかと言う気がする。
CM後、イースト製薬城北工場のコンクリート打ちっぱなしのがらんとした地下室で、数名の部下と三平と一緒に、約束の1時になるのを待ち詫びている麗巳。
やがて1時前になったので、麗巳がみんなを引き連れ歩き出すが、

麗巳「神恭一郎!」
その途中、いきなり天井から日本版スパイダーマンのように両手を広げて神サマが降ってくる。
神、素早く麗巳の体を盾にすると、柱を背にして部下たちの動きを牽制する。

神「開放剤は何処だ?」
麗巳「あっははっ、しょんにゃものがあるとおもっちぇるの?」 神のおっきな手で顔を掴まれ、ちょっと可愛い発音になる麗巳であったが、嘘である。
麗巳「あっははっ、そんなものがあると思ってるの? 三平、やりなさい!」
だか、悲しいかな、今週の麗巳の運勢は最悪だったようで、鉄砲玉のように突っ込んで来た三平のナイフが、
麗巳「きゃあああーっ!」 神が咄嗟に体の向きを変えたため、あやまって、麗巳の腹部を深々と抉ってしまう。
さすが豪胆な麗巳も、これには思わず感情を露わにして絶叫する。
なおも神に襲い掛かる三平の攻撃をかわすと、神は三平に当身を食らわせてその場から連れ出す。
部下は全員銃器で武装しているので、神もひたすら逃げるだけであった。
ま、正直、神サマが本気を出せば、銃弾もぜんぶ手で払い落として、一気に全員をぶちのめすことも可能だったのではないかと思うが……
ともあれ、人形のようにぐったりして動かない三平の割と大きな体を、ゴルフバックでも抱えるように悠々と持ち上げて土手の上に上がると、

これまた最初にして最後のお姫様抱っこで三平の体を抱きかかえて、斜面を降りる神サマ。
キャーッ、神サマーッ! 私もお姫様抱っこしてーっ!(うるせえ)

さすがに荒い息をつきながら三平を助手席に座らせ、安堵の笑みを浮かべる。
ここで、
神「ふふっ、三平はもう俺だけのもの! 誰にも渡さん!」 などと言う腐女子的な妄想をしてしまった方は、早急にお引取り願いたい。
だが……

運転席側のドアを開けようとしたその時、神の背中に凄まじい衝撃が走る。
神「……」
その場に凍りついたように固まる神。
カメラがその背後にズームすると、しぶとくも生きていた麗巳が、屋上からライフルを構えているのが見えた。

麗巳「……」
そう、亜悠巳と同じく射撃の名手だった麗巳が、その凶弾で神の運命を……サキの愛を撃ち砕いてしまったのだ!
少し後、ようやく目を覚ましたサキが、バイクに乗って現場に到着する。
川を跨ぐ橋の上から見覚えのあるポルシェを目にしたサキ、バイクを捨てて橋から飛び降り、ポルシェに駆け寄る。
車の中には意識のない三平がいるだけで、周りにも神の姿はなかった。

サキ、ふと、視線を水の枯れた川のほうへ向けると、そこから150メートルほど離れたコンクリート製の太い橋脚に、黒くて長い影が凭れているのが見えた。
しかし、そこまで歩いていける気力があるのなら、なんでそのままポルシェを運転して病院へ行こうとしなかったのだろう?
サキは急いで神のところへ走る。

サキ「神、私の代わりに三平を?」
まだ神の異変に気付かないサキ、笑みを浮かべるが、

神、いかにもつらそうな表情でサキを一瞥すると、

内ポケットからタバコの箱を取り出し、一振りして直接口に咥えようとするが、その箱が、手からするりと抜け落ちる。

それを拾い上げようと前屈みになって右手を伸ばすが、そのまま、糸を切られた操り人形のように、だらしなく手足を伸ばして崩れ落ちる。
神が凭れていた柱に、大量の血が付着しているのを見て、やっと神が撃たれていることに気付くサキ。

サキ「神……」
神「残念だが、麗巳は開放剤を持っていなかった。あとは本部に希望を繋ぐだけだ……きっと入手できる。きっと……」
サキ「喋っちゃダメ、神、医者呼んでくる!」
ひどく苦しそうに途切れ途切れに話す神の様子にただならぬものを感じ、慌てて走り出そうとするサキだったが、その手を神が掴み、

神「サキ、お前たちのこと……俺がどう思ってるか聞いたな?」

サキ「……」
神、無言で見詰め返すサキに、なんとなく晴れ晴れとした表情で、

神「俺は前から……妹と、弟のように……」

サキ「そんなこと……」
神の言葉に再び神のそばにしゃがみ、震える声でつぶやくサキ。
たぶん、「そんなこと言わなくても分かってる」みたいなことが言いたかったのだろう。
サキ「私のせい、私のせいでこんな……」
目に涙を浮かべ、取り返しのつかない事態を招いた自分の軽率さを激しく責めていたが、
サキ「死なないで、神、死なないで!」 最後に、ほぼ愛の告白に等しい叫びを迸らせる。

神「サキ……」
神、苦しそうに微笑むと、その大きな右手を伸ばし、ガラス細工でも扱うように優しくサキの顔に触れていたが、

目を閉じ、がっくりと頭を垂れ、絶命する。
実にあっけない、まるで夢でも見ているかのような、突然のお別れであった。
サキ「神……汚いよ、私を残して行っちゃうなんて……汚いよーっ!」 その広い胸に縋りつき、悲しみよりむしろ悔しさを爆発させて号泣するサキ。
いやぁ、ほんと、何度見ても胸が熱くなる名シーンで、結局、この悲壮感こそが、この作品を2や3の遥か及ばない至高の位置まで押し上げている最大の要因であろう。
恭志郎が死ぬ2はまだしも、3なんか、死んだと思ってたら全員生きてました!! だもんね。
そう言えば、恭志郎って、名前からして神がモデルなんだろうなぁ。
※追記 記事を書いた後、シナリオを読むと、最後のやりとりがだいぶ違うことに気付いたので、その部分だけ採録しておく。
神「お前は自分の任務を遂行しただけだ、サキ、お前にはまだお前の任務が残っている」
サキ「でも私のために」
神「感情に流されるなと言った筈だ、スケバン刑事・麻宮サキ、お前のその優しさがお前の最大の弱点だ!!」
サキ「……」
神「そうして、それがお前の魅力だ」
サキ「死なないで、神、死なないで!!」
神「サキ、お前が普通の高校生に戻れる日を見たかった」
サキ「神、神!!」
うーん、まあ、感動的といえば感動的だが、死ぬ間際にしてはちょっと喋り過ぎかなと言う感じがする。
その後、なんのことはなく、本部から(ナレーターの声で)開放剤が入手できたとの知らせが入る。
涙を振り払い、神と三平のことは本部に任せ、ライダースーツを脱いでセーラー服姿になって、いよいよ最後の戦いに赴くサキ。
かけがえのない人を失った悲しみを怒りに変えて……
で、ここから麗巳との最終決戦になるのだが、これがどうにも盛り上がらないんだよねえ。
まあ、どっちもアクションが苦手(そう)な女優さんだから、仕方のない面もあるが。
サキが工場の裏手に進むと、向こうからシャッターが開いて麗巳が堂々と待ち受けていた。
ちなみに麗巳の部下の人たちは、定時になったのか、いつの間にか全員いなくなっている。
麗巳、傷の痛みに耐えながら走り、サキを地下室に誘い込む。

麗巳「もっとも魅力的な宝が最後に残ったわ、サキ、お前よ!」
ドスの利いた声で、なおも宿命のライバルを気取る麗巳であったが、
サキ「黙れっ!」 麗巳(だ、黙れて……)
神サマを奪われた今のサキに、そんなお遊びに付き合う余裕はなく、渾身の力で一喝する。
サキ「貴様の野望のせいで、いったい何人の人間が犠牲になったことか」
麗巳「ふふふ、お前の大切な仲間もね! 神恭一郎、彼には楽しませてもらったわ」
だが、麗巳も、良い根性してると言おうか、怖いもの知らずと言おうか、あえてサキの怒りに高温の天ぷら油を注ぐようなことを言う。

サキ「許さない、私の全てをかけて、貴様を倒す!」
麗巳、亜悠巳譲りの笑い声を響かせながら、なおも地下室の奥へ奥へと逃げ込み、遂に、あらかじめ用意していた脱出不能のエリアにサキを引き入れることに成功する。
麗巳「サキ、もう何処にも逃げられないわ、私とお前はここで一緒に地獄に落ちるのよ」
サキ「貴様を倒すためなら、何処へでも付き合うぜ」
麗巳って、実はサキのことが好きだったんじゃないかなぁと、このシーンを見ててふと思った。
正直、いくらゴリゴリの粘着気質と言っても、野望を潰された恨みや憎しみだけでここまでサキに執着するのは不自然であり、同性愛というほどではないが、サキに一種の愛着のようなものを抱いていたのであるまいか。
愛と憎しみは紙一重と言うからね。
さて、本来ならサキと互角に戦える身体能力を持つ麗巳であったが、三平に刺された傷のせいでまともに戦えず、素早く背後の計器盤に駆け寄ってレバーを下げ、部屋のあちこちのパイプから、黄色いガスを噴出させると言う奇策に出る。
麗巳「毒ガスよ、吸い込んだらものの5分で死ぬわ、うふっ、はっはっはっはっ、あっははははっ……あっはっはっはっはっ……うっ、げふっ、げほっ! ぎょふっ、げふっ、おえーっ!」
サキ「……」
ひょっとして、この人、
バカなのかな? と思うサキであったが、嘘である。
だが、ここで、本日二度目の不運が麗巳を襲う。

麗巳「そろそろガスが回ってきたようね」
麗巳がサキにトドメを刺しに近付こうとした瞬間、

麗巳「うっ」
足元から、スカンクの屁のような強烈なガスが噴射して、その顔を直撃する。
麗巳「うっ、げほっ、あと少しで、うっ、うほっ、あと少しで楽になるわ」
サキ「麗巳、たとえ地獄に落ちようが貴様だけは許さない!」
サキ、ヨーヨーを投げて、麗巳の体を吹っ飛ばす。
麗巳、それでもなんとか立ち上がると、
麗巳「私一人を倒して、全ての悪が滅びるとでも思ってるの?」
【悲報】麗巳さん、自分が悪だと認めてしまう。 ま、常習的な犯罪者ならともかく、日本を支配してよりよい国にしようと考えていた麗巳が、そんなことを自ら認める訳がないんだけどね。
うっかり口が滑ったと言う奴だろう。

サキ「思っちゃいねえよ! だがな、うっ、貴様のせいで学校を追い出された仲間たち、犠牲になった学生のひとりひとりが……あふっ……」

サキ「……私の体で叫んでるんだっ! 海槌麗巳を倒せってね!」
四方から降り注ぐ毒ガスに咳き込み、倒れそうになりながらも必死で言葉を搾り出すサキ。
ヨーヨーを握り締めて雄々しく立ち上がると、
サキ「私は学生刑事、このヨーヨーがある限り、スケバン刑事・麻宮サキ、必ず貴様を倒す!」

麗巳「サキ、私は今、人生に感謝してるわ、お前と言う、一生に一度で会えるかどうかの相手に巡り合えて!」
ヘロヘロになりながらも、なおも負け惜しみを口にする麗巳。

サキ「海槌麗巳、人間として、デカとして、決して貴様を許せねえ!」
なんか、さっきから同じような台詞繰り返してるような気が……
サキ、ここで決め顔を作ってから、いよいよ生涯最後のヨーヨーの投擲を行う。
ヨーヨーは見事に麗巳に命中し、麗巳は情けない声を上げながら再度吹っ飛ばされて計器盤に叩きつけられる。
つーか、麗巳、さっきのライフルか、部下が待っていたマシンガンを持っていれば、余裕でサキに勝てたのでは?
なんでこの肝心な勝負の場で、丸腰をチョイスしたのだろう?
やっぱり、バカなのかな……
だが、用意周到な麗巳は、最後の仕掛けを用意していた。
ちょうど叩きつけられたところにあった大きなレバーを引き上げると、

計器盤や周囲の床から、一斉に火花が走る。
22話の焼き直しのような感じもするが、麗巳、自爆装置のスイッチを入れたのだ。

麗巳「あっははははは、あっははははっ……」
吹き上がる炎と黒煙の向こうで、右手を口のそばに添えて、腹を抱えて哄笑する麗巳。
なんかこのポーズが、「オースティンパワーズ」のドクター・イーブルみたいである(分かる奴だけ分かれ)

ゆらめく炎の間に垣間見えるサキの険しい顔が、劇中でのサキのラストショットとなる。

続いて、工場の前で激しい爆発が起き、建物全体が木っ端微塵に砕け飛ぶ。
無論、「西部警察」と違って、実際に吹っ飛んでいる訳ではなく、爆発の映像は、宇宙刑事シリーズの「ギャバンダイナミック」などの必殺技で怪人が爆破する時のショットが流用されている。
こうして、サキは、宿敵と一緒に壮絶な死を遂げてしまった……ように見えた。
常識的に考えても、建物が爆発する前にあの地下室から抜け出すことは不可能だろうし、サキもかなり毒ガスを吸っていたから、オンエアの時点では、やはりサキは死んだものとして描かれていたのではあるまいか。
一応、遥か後年のリメイク映画で、サキが生きていてアメリカにいることが判明するが、リメイクはあくまでリメイクなので、やはり、このドラマの中で、その生存を仄めかすようなカットを入れておいて欲しかった。
あるいは、ストレートに、心配して見守る三平の目の前で、瓦礫の中からサキが出てきて、しっかり抱き合う……みたいなね。
直前の神の死が衝撃的だっただけに、せめてドラマの最後ぐらいはハッピーエンドにして欲しかったというのが正直な気持ちである。
それはさておき、サキが死んだものとして、その机の上に飾られた白い花を悲しそうな目で見詰めている沼先生や美也子たち。

美也子「サキが死んじゃうなんて、信じられない!」
かつてはあれほどサキのことを目の仇にしていた美也子が、サキの机にしがみついて号泣すれば、子分たちも啜り泣きを始める。
美也子「最後まで格好つけやがって! バカヤロウ!」

沼「泣くな、サキは死んではいない。あぁんな淋しがり屋がひとりでいられるわけがないんだ。お前たちのいるこの学園に、きっと帰ってくる。そうじゃないのか、みんな? そうだろう?」
美也子「先生……」
沼先生が、いかにも沼先生らしい、勢いだけの、根拠のない楽観論を吐いてみんなを励ます。
三平、そこから初めてサキの姿を見た窓際に立つと、
三平(サキ、お前は本当に死んじまったのか? いや必ず生きてる。いつかどこかでまた会える日が来ると俺は信じてるよ、サキ! それまで、さよなら、サキ……) 頬に一筋の涙を流しながら、心の中でサキに向かって語りかけ、その面影にかりそめの別れを告げるのだった。
さて、エンディングタイトルバックは、いつもと違って過去の名場面シーンと、新撮の、サキがカメラに向かって笑顔で走ってくるイメージシーンが交互に映し出されるもの。

ラスト、制服の中で胸をゆさゆささせながら駆けて来るサキのバストショットで、「おわり」です。
……
遂に終わったか……最初、あんなことを書いたけど、それでもやっぱり感慨深いものがあるなぁ。
ほんとは、25話としてメイキング映像やインタビューで構成された特別編があるのだが、さすがにそれまできっちりレビューする気力はないので、ちょっと気になったところだけ紹介しておく。

印象深い、三平を助けに行こうとするサキを神が止めるシーン。
リハーサルなので、上着を脱いで演じている神サマ。

カメラがずれると、その横に監督をはじめたくさんのスタッフがいるのが見え、俳優ってこんな状況で演技しなきゃいけないのだから、大変だなぁと改めて思ったことである。

ここでは、NGシーンなどもあって、昔のフジテレビのNG集(註1)みたいな演出が施されており、懐かしさと恥ずかしさがない交ぜになった気分を味わえる。
この画像の神サマが、ちょっとだけ笑っているのが確認できると思うが、貴重な、中康次さんの「素」の表情である。
ただ、メイキングは完全にアイドルのPVのノリで撮られているので、カメラはひたすら斉藤さんの顔を追っかけるだけで、中さんの映像はほとんどなく、インタビューすらされてないのがとても悲しい。
25話とは別に発売されたメイキングビデオもあるが、あっちにはあったかなぁ?
そっちまでチェックする気力が、今の私にはない。
註1……よくよく考えたら、NGシーンだけの特番を堂々とゴールデンタイムで流していたのだから、視聴者を舐めた話ではある。
以上、「スケバン刑事」全話レビュー、これにて終了です!
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
と、同時に長きに渡って行ってきた「スケバン刑事」シリーズレビューもこれで完結となります。
ま、最初にやった「2」なんかは今となってはお粗末な内容なので、書き直したい気もあるんですが、他に書きたい作品がたくさんあるのでやめておきます。
※追記 これも記事を書いた後、ほんとは18話として放送される予定だった
「特別篇 麻宮サキ名場面集」というのをファミリー劇場で初めて見た。
まだ自分の知らない映像があったのは嬉しかったが、内容的には特に書くことはなく、海槌家に支配された鷹の羽学園の中を怪しい影を追って走り回るサキの新撮映像と、それまでの総集編的な映像とが交互に映し出されるもので、結局怪しい影の正体は学校に迷い込んだワンコだったという他愛ないオチで終わるのだった。
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