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「湖底の美女」~江戸川乱歩の「湖畔亭事件」(リライト版) その3


 「湖底の美女」の続きです。

 その頃、ゆかりは自分の部屋でバスを使っていたが、松原千明さんのおっぱいは勿論のこと、脱ぎ女優のおっぱいも見られない。これだけ「真面目」な美女シリーズも珍しく、同じ年の「天国と地獄の美女」、翌年の「天使と悪魔の美女」では、ガンガン主演女優が脱いでいたことを考えると、かなり物足りない。

 
 それはさておき、ゆかりがバスルームから出てベッドに腰掛けると、いつの間にか、陽子に送られたのと同じドクロのコケシが置いてあった。

 それを見たゆかりが泣きそうな顔になるのだが、これはミステリーとしてはアンフェアな描写である。

 
 文代「先生、ゆかりさんの部屋にこれが」
 ゆかり「お風呂から出てきたら、ベッドの中に」
 明智「これは陽子さんの部屋にあったものと同じものですね」

 文代がもう一度ゆかりの部屋を調べに行った後、明智はさっきの人物相関図を見ながら、

 
 明智「まず、河野画伯とあなたとの関係を話して頂けますか」
 ゆかり「ただの画家とモデルの関係、それだけです」
 明智「河野画伯はあなたに相当関心がおありのように思いますが」
 ゆかり「それは薄々感じています。でもどうしてこんな脅迫めいたものが送られてきたのか……」
 明智「モデルの仕事はいつ頃から?」
 ゆかり「高校2年のときからです。収入が良かったものですから」

 
 明智「ご両親は?」
 ゆかり「いません。父は数年前に亡くなりましたし、母は私が4つのときに……」
 明智「河野画伯のモデルになったのは?」
 ゆかり「2年ほど前からです」

 明智は、同じコケシが送られてきた陽子とゆかりに共通点はないかとゆかりに聞いてみるが、

 ゆかり「さあ、強いて言うなら、母を早く亡くしたことでしょうか?」
 明智「お母さんを早くねえ……」

 ゆかりの返事を受けて、明智、コケシを見詰めながら、

 明智(二人とも早く母を亡くした。このことが事件とどう関係があるのか、私には皆目見当がつかなかった)

 相変わらず、終盤ぎりぎりまで、「あかん、犯人も動機もトリックもさっぱりわかりまへん、わてはほんとにダメな探偵だす」とでも言いたげに、弱音を吐く明智さん。

 でも、普通、探偵にこんなモノローグを言わせたら、そこに何か重要な手掛かりがあると思うじゃない?

 ところが、実は全く関係がなかったのである!

 だから、明智に分からないのは当然なのである。

 まぁ、ゆかりの母親の死が、重要な意味を持っていることは確かなのだが……

 その日の深夜、マキが懐中電灯片手に地下室にやってくる。誰かとそこで待ち合わせをしていたらしいのだが、

 
 その背後にあらわれたドクロの仮面をつけた男に首を絞められ、あえなく殺される。

 翌朝、湖のほとりに警察車両がサイレン鳴らして集まってくる。

 
 湖面に斜めに張り出した細い木に、マキの全裸死体がぶら下がっているのが発見されたのだ。

 無論、これは人形なのだが、

 

 
 ちゃんと女優本人が逆さ吊りになっているカットもある。

 二枚目の画像では、頭に血が昇っていかにもつらそうなのが分かると思う。

 だが、せっかくの全裸死体だというのに、今度もおっぱいは見せてくれない。

 おっぱいの出て来ない美女シリーズなんて、中身のない香典袋のようなものである。

 明智は、マキが200万の借金を抱えていたことを知ると、「彼女は借金の返済のために、陽子殺しの犯人を知っていて、金を強請ろうとした。それで逆に殺された」と、一瞬で正解に辿り着く。

 エスパーか、お前は?

 
 文代「加賀が臭いですねえ。二人の間には肉体関係以外の何かがありますよ、きっと」

 名探偵の助手のたしなみとして、見当違いの人物に目星をつける文代さん。

 そこへ三造から電話がかかってきて、明智に内密に事件のことで話したいことがあるから地下室へ来て欲しいと言ってくる。

 明智と文代さんがすぐに管理人室に行くと、三造はお茶をすすめながら、

 
 三造「私、警察が好きでねえもんだで、先生の胸に収めていただいて、犯人逮捕の手掛かりにしてもらいてえと思って」
 明智「で、どういうことでしょう?」
 三造「ええ……」

 三造が言いかけると、上がビキニで下がスカートと言う、大変好ましいスタイルのゆかりが入ってくる。

 
 ゆかり「マキさんの代わりにお魚にエサをやるの」
 文代「餌付けできるのぉ?」
 ゆかり「二、三回手伝ってる間にね、すっかりお魚と友達になっちゃったの! 見ててね、テレビ」

 
 三造「あ、モニターテレビつけるの忘れとった」

 ゆかりの言葉に気付いたように、三造が、ややわざとらしくモニターテレビのスイッチを入れる。

 三造「気をつけなさいよ」
 ゆかり「はい、じゃあ、後でね、文代さん」

 ゆかりは水槽に入る為に部屋を出て行く。

 肝心の三造の話だが、死亡推定時刻の昨夜12時ごろ、地下室で何か呻き声のような音を聞いたと言う、わざわざ人を呼びつけてするほどの話ではなかった。そうこうしているうちに、モニターに、魚にエサをやっているビキニのゆかりの姿が映し出さされる。

 
 文代「あっ、ゆかりさんだわ。すっかり慣れてるわねえ」
 三造「マキちゃんの代わりに水中レビューやったらと、冗談言ってたくらいですから」
 文代「ねえ、私にも出来るかしら?」
 三造「ああ、やってごらんなさい」
 明智「どうせ、水着NGの癖に」(ボソッ)
 文代「先生、何か言った?」
 明智「いや、何も」

 途中から嘘であるが、これは、「青春オーロラ・スピン」で、五十嵐さんがシンクロの元名選手&名コーチと言う設定なのに、劇中で一度も水着姿を披露しなかったことを踏まえたマニアックなギャグである。

 
 だが、和気藹々とした空気も、水槽から出たゆかりを、あのドクロ面の男が襲って首を絞めている様子がモニター画面に映し出されたことで、一挙に吹っ飛ぶ。

 三人は慌てて助けに行こうとするが、いつの間にかドアノブに外側からチェーンが巻かれていて、それを引き千切るのに若干のタイムロスが生じてしまう。

 
 三人が水槽の前に行くと、ドクロ面の姿は既になく、ゆかりがぐったりして床に座り込んでいるだけだった。

 三造「今の奴、どこに行った?」
 ゆかり「分からない」

 明智と文代さんはその周辺をくまなく捜すが、犯人らしき姿は何処にも見えなかった。その代わり、上村弁護士がボイラー室の物陰で苦しそうに呻いているのが発見される。

 介抱された上村は、部屋で昼寝をしていたら、いつの間にかボイラー室へ運び込まれていたと説明する。

 
 波越「どういうことなんです、一体」
 上村「昼寝の最中に、誰かが私に麻酔薬を嗅がしたに違いないんだ」

 例によって「冤罪量産マシーン」の波越は、ゆかりを殺そうとした上村が被害者を装って倒れていたのではないかと勘繰るが、ホテルのような開放的な建物の中でわざわざそんな芝居をする必要はどこにもなく、明らかに見当違いの推理であった。

 文代さんは、ひとまず管理人室で休んでいるゆかりを見舞う。

 
 文代「どうしてゆかりさんが狙われたのかしらねえ?」
 ゆかり「河野先生と私が結婚するって思い込んでる人の仕業かもしれない」
 文代「そうか、奥さんは離婚されたんだし、陽子さんは亡くなったんだし、あなたが画伯と結婚すれば遺産は全部あなたのものになるわけですもんね」
 ゆかり「私は、先生とは結婚しません! 親子ほど年が違うし……」

 文代の仮定に、ゆかりは改めてその気はないと否定する。

 明智と波越は地下室に降りてくる。

 
 波越「見たかったなぁ、ゆかりさんの餌付けを。いい体してるもんねえ」
 明智「……」

 相変わらず欲望丸出しの波越警部を尻目に、明智は色んな魚が舞い踊る巨大な水槽の前に立っていたが、

 
 ボコボコと泡を立てている三本の空気の柱を見ているうちに、さっきの襲撃事件の映像を思い出し、あることに気付く。

 一方、引き続き療養していた河野は、ゆかりの殺人未遂のことを聞いて再び心臓発作を起こし、今度は意識不明の重体に陥る。

 
 と、旧友の加賀がしみじみとした口調で、

 加賀「昔はこんなに弱い奴じゃなかったんだ。若い時分には山歩きを良くしたもんだ。二人でよく山に登ったもんだ。今は人物しか描かんが、昔はこの風景、特に山の絵が得意でね。そうそう山で遭難し掛けたことがあったなぁ」

 
 だが、明智がすかさず「それは何処の山ですか?」と尋ねると、

 加賀「あ……何処だったっけなぁ? すっかり忘れてしまったなぁ」

 分かりやすく空っ惚け、口を滑らせてしまったことを悔やむような顔になる。

 
 明智さん、助手たちの存在も忘れて、没我の状態で事件のこと……あの、水槽の泡の柱のことを考えていたが、

 明智「文代君、ゆうべ君が言っていたね。三造さんが水槽の泡のポンプを修理していたって……」
 文代「はい、一本止まっていたのを直してました」

 明智は何を思ったか、小林少年に、日本の山の写真集と河野の画集を買ってくるよう指示する。

 ほどなく、小林少年が二冊の本を抱えて戻ってくる。

 
 明智はまず、山の写真集をめくって、三造の部屋に飾ってあった山の写真と同じ山を探して、それが「霧ヶ岳」だと突き止める。

 さらに、河野の画集の中に、まるでその写真をなぞったようなクリソツの絵を発見する。

 その絵「冬の霧ヶ岳」(文代さんの台詞では「雪の霧ヶ岳」)に解説文がついていて、それを文代さんが音読する。

 文代「昭和36年、この年から突然山の絵をやめて、人物画に専念。理由は不明。なお、陽水の最後の風景画となった『春の霧ヶ岳』は展覧会において何者かにナイフで切り裂かれたが補修され、現在、長野県原村八ヶ岳美術館に保存されている……」

 明智は何を考えているのか、ひとりで車を飛ばしてその「八ヶ岳美術館」へ行く。

 ちなみに、文代さんは「春の~」と言っているが、チラッと映る解説文には「冬の~」とはっきり書いてある。この年で風景画をやめた点から見ても、「冬の~」が正しく、明智が美術館で見た絵も、「冬の霧ヶ岳」であった。

 美女シリーズで、こういう凡ミスは珍しい。

 ともあれ、その絵をじっと見詰めていた明智さんは、

 
 明智(来る必要なかったな……)

 ちょっぴり後悔していた。

 ……と言うのは嘘だが、実際のところ、わざわざ往復2時間もかけて美術館にやってきた意味があまりないように見えるのは事実である。

 せめて、その切り裂き事件について美術館の人に聞くとかしないと……

 
 再び白樺湖に戻ってきた明智、ゆかりと夕暮れの湖畔を歩く。

 ゆかり「今度の事件、どんな風にお考えですか」
 明智「まだ何も分かりませんね」
 ゆかり「明智さんにも解けない謎があるんですか?」
 明智「はっはっはっ、私に分かるのはどんな恐ろしい事件の裏にも、深い人間の悲しみが秘められていると言うことです」
 ゆかり「深い悲しみ?」
 明智「そう、人間の憎しみが長い間かかって膨らんでいくと、思いがけないことが起こります。その憎しみと言うのはたいていの場合、深い愛から発していることが多い。そう言うのを見るのはつらいものです」

 抽象的ながら、明智の言葉は、今度の事件の動機を鋭く見抜いていた。

 ゆかりは感に堪えたように、

 ゆかり「探偵さんって、怖い方ばっかりだと思ってましたけど、明智さんて人の心が分かる方なんですね」

 
 明智「はっはっはっ、お口が上手ですね、ゆかりさんは……」
 ゆかり「……」

 念の為、これはセクハラ発言ではありません。

 明智「明日、私は、山に登ってみようと思ってるんです」
 ゆかり「山へ?」
 明智「三造さんの部屋で見た霧ヶ岳の写真、あれを見てすっかり気に入りましてね、明日、あの山へ登ってみるつもりです」

 明智は自分の予定を話すが、それが真犯人をおびき出すためにわざと言ったのか、ただの世間話のつもりだったのか、良く分からない。

 
 翌日、明智は、事件の謎を解く鍵を求めて、霧ヶ岳へひとりやってくる。山小屋のオヤジに、昭和36年ごろ、ここで働いていた古田と言う男のことを訊ねると、オヤジは別の山小屋のオヤジなら知ってるかも知れないと、明智を案内して山道を登って行く。

 
 だが、その途中、何者かが、崖の上に積んでおいた岩を崩して明智の頭上に落としてくる。

 体を回転させて、華麗に岩をよける明智さん。

 ただし、これは、平らなところで横になって転がっている天知茂先生を、カメラを斜めにして撮影しているのだ。

 それが証拠に、背後に生えている木が、水平方向に伸びてるでしょ。

 それはともかく、オヤジは無事だったが、明智はそのまま谷底へ落っこちて行方不明となってしまう。

 
 知らせを聞いて、波越警部や文代さんが現場へ飛んでくるが、少し遅れて到着したゆかりが、白いユリの花束を持参してきたのは、いくらなんでも気が早いし、失礼と言うもので、

 文代「ゆかりさん、やめて、先生は亡くなっちゃいないわ、先生は不死身よ。道に迷ってるだけだわ」
 ゆかり「そうね、ごめんなさい」

 文代さんが、投げようとしたゆかりの手からそれをもぎとったのも当然であろう。

 そう言いつつ、しゃくりあげながら、「先生、何処にいるの? 戻ってきて!」と、谷底に向かって叫ぶ文代さんであった。

 夜、ホテルのロビーに集まって、落ち着かない様子で捜索の結果を待っている関係者。

 
 上村「こりゃ、遭難確実ってことだなぁ」
 小林「先生……」
 文代「泣かないでよ、何よ男の癖に!」

 そう叱り付けた文代さんも、小林少年の背中に顔をくっつけて泣き出す。

 そこへ支配人がやって来て、何の甲斐もなく、捜索が打ち切られたと告げる。
 
 
 波越「やっぱりダメか……」
 文代「そんな……どうして? 先生は生きてるって言ったじゃない、なんとかしてよ、警部ぅ~」

 波越警部の体に縋りついて、駄々っ子のように泣き喚く文代さんの姿に、

 
 小林(いい加減、慣れろよぉ……)

 明智が死ぬたび、毎回新鮮な気持ちで号泣する文代さんに、心の中でツッコミを入れる呆れ顔の小林少年であった。

 ちなみに、急いで数えたところ、明智さんが「死んだ」(文代さんがあらかじめ知っていた場合は除く)のは、これで通算5回目である。

 ゆかりが来ると、今度はゆかりに抱き付いて嗚咽する文代さん。今回の文代さんは妙に泣虫だ。まあ、五十嵐さんにとっては、これが最後の「泣き」なので、心残りのないよう思いっきり泣こうと言うことだったのかもしれない。

 
 波越「明智君、代わりに僕がきっと真犯人を挙げて見せるからね! ぷーっ!」

 明智が死んだものと決め付け、恒例の思いっきり鼻を噛むギャグをかます波越。

 今回の「死亡」に関しては、波越も何も知らされていなかったようなのだが、とても長年の親友が不慮の死を遂げたようには見えない落ち着きぶりであった。

 と、そこへ看護婦さんがやってきて、陽水の容態が急変したと告げる。全員、慌てて陽水の枕頭に集まるが、医者によれば、あと1時間持つかどうかの危篤状態だという。

 波越、ドクロのコケシがテーブルに置いてあるのを見て、

 
 波越「あれ、これがどうしてここに?」
 看護婦「患者の布団の上に置いてあったんです」
 波越「これがここにあるということは、これは殺人だぞ」
 医者「かもしれませんね、誰かが酸素ボンベの栓を閉じたんです」

 しかも、付き添っていた看護婦が睡眠薬を盛られて眠っている間の出来事で、明らかに計画的な殺人行為であった。

 さらに、医者からこんなものが落ちていたとイニシャル入りのハンカチを見せられた波越は、いつになく厳然と、

 波越「私には犯人が分かりました。全員ロビーに集合して頂きます」

 亡き明智さんにかわって、名探偵お決まりの台詞を放つのだった。

 その4へ続く。
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コメント

美人がいるのに

確かに美人がいるのに裸もおっぱいも無いのはなんとも残念ですね😅何となく物足りないと思うのは小生だけではない筈ですね

Re: 美人がいるのに

残念です。

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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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