第28話「見よ!Xライダーの大変身!!」(1974年8月24日)
前回に引き続き、V3風見志郎こと宮内さんが客演した回であると同時に、いささか唐突だが、Xライダーがパワーアップを遂げた回でもある。
冒頭、一見中条静夫みたいな顔をした科学者が自宅で図面を引いていると、突然、毒クモに首筋を噛みつかれる。

悶絶して床に倒れ、ピクピク痙攣していたが、あえなく絶命し、

その顔の上に次々とクモが張り付き、

最後は肌も見えないほどにびっしりと埋め尽くす。
以前のレビューでも書いたが、冗談抜きで気持ち悪いです。
しかも、ゴム製のクモの足がプルプル震えているのが実にリアル(註1)で、クモが苦手な人が見たらトラウマになりそうなエグさである。
でも、これ、どうやって動かしてるんだろう?
註1……本物のクモはこんな動きはしないけどね。

と、なんとなく語呂が良いからと言う理由だけで作られた、クモと英雄ナポレオンとの合体怪人クモナポレオンが、壁に飾ってあった絵の中から出て来て、得体の知れない笑い声を上げながら満足そうに死体を見下ろす。

で、ちゃんと絵の中のナポレオンが消えていると言うのが「仮面ライダー」にしては芸が細かい。
もっとも、全く何の説明もないので、この科学者が誰で、何のためにGODに殺されたのか、皆目見当がつかないのは、いかにも「仮面ライダー」らしいテキトーさである。
続く被害者については、「沖生物学研究所」と言う看板がチラッと見えるので、少なくとも沖と言う生物学者だということは分かるが、こちらも殺害動機については一切不明である。
沖博士(?)、あれこれ実験動物のデータを取っていたが、ふと机の上のコーヒーカップに目をやると、

その中に、毒グモが漬かっていると言うのが、これまた虫嫌いのひとにはトラウマ級の気持ち悪さ。
余談だが、管理人も先日、これと似たような、だがこれ以上に不愉快な体験をしたので他人事ではないのだが、読者の皆さんを不快な気持ちにさせてはいけないのでその詳細を述べることは控えたい。
その男性も最初の被害者と同じような目に遭い、

ついで、毎度お馴染み、新聞を印刷している輪転機の映像になったので、

そこに事件の見出しがデーン!! と出るんだろうなぁと思っていたら、
出んのかいっっっ!!! 出ないまま、喫茶店コルの映像に切り替わったので、思わず後ろにひっくり返りながら全力でツッコミを入れる管理人であった。
いやぁ、これだけ強烈な脱力映像には、なかなかお目に掛かれないよなぁ。
たぶんスタッフが面倒臭くてテロップを入れるのを嫌がったのだろうが、これじゃ、ただの社会見学の映像である。
それならせめて、紙面を読んでるおやっさんの口から言わせればいいのに、
立花「くそ、これで13人目だ。このままほっといたら、日本中の科学者みんなGODに殺されちまうぞ!!」
忌々しそうに新聞をカウンターに叩き付けたおやっさんの台詞で、ほかにもたくさん科学者が殺されていることが分かるだけ。
ほんと、これだけ「悪の組織」の意図が不明な作戦も珍しい。
それこそ、RS装置の設計図を求めて、手当たり次第に科学者を襲っている……と言うのならまだその動機も理解できるのだが、前述の二人については、全くそんな形跡は見えず、ただ殺すために殺しているようにしか見えなかったからね。
そこへ敬介があの肖像画を手に入ってくる。

敬介「おやっさん、これを見てください」
立花「これが例のナポレオンの肖像画か?」
敬介「そうなんです、犯行が行われる数日前、必ずこれが被害者のところへ届けられてるんです」
立花「うーん」
犯行現場に必ずナポレオンの絵が飾ってあることは新聞にも出ていたようで、敬介たちもそのことを知っていた。
でも、敬介、その絵を何処から手に入れたんだ?
まさか、犯行現場のひとつから黙って持ってきたんじゃあるまいな?
続いて、野中陽一郎と言う表札が出ている屋敷の外観が映し出されるが、

何故かその一室に、我らがチコとマコが同じベッドですやすや寝ているので、一瞬混乱する管理人であった。
それにしても、女子大生にもなって、友達と仲良く同じベッドで寝ているというのが、めっちゃ萌える!!
と、窓の外を稲光が走り、ついでに別の部屋に飾ってあるナポレオンの肖像画の目が光るのだが、
マコ「チコ、ちょっと起きて、泥棒よ」
チコ「泥棒?」
それに対してマコが目を覚ましてチコを揺り起こすのだが、これもなんかピントの外れたシーンである。
稲光を見て、「泥棒よ」なんて判断する奴はいないので、それとは無関係に、人の気配or物音を聞いてマコが目を覚ましたらしいのだが、はっきり言って分かりにくい。
二人は燭台を手に書斎を見に行くのだが、怪しいものはいない。

マコ「変ね、誰もいないわ」
と、別の扉が開いて眩しい光が流れ込んで来たので、ドキッとする二人だったが、

洋子「なんだ、あんたたちか」
それはこの野中家の住人たちであった。

マコ「あんたたちか、じゃないわよ!! これがお客様に対する態度なの?」
チコ「そうよ、私たちは度胸試しに来たんじゃないのよう、避暑に来たのよ」
肝を冷やしたマコたちは、膨れっ面で抗議するが、彼らの台詞で、どうやら二人は野中家の長女・洋子(仮名)と友人同士で、その縁でこの屋敷に泊りがけで遊びに来ているらしいことが分かる。
でも、いくら長女と親しくても、その母親がいる前で、しかも人の家にタダで泊まってる癖に、こんなにずけずけと文句を言ったりできるだろうかと言う疑問が湧く。
洋子「だって、変な音がしたからさ」
チコ「ヨッコたちも聞いたの?」
洋子「じゃあんたたちも?」
ちなみに、最初に屋敷に近付く不気味な足音が聞こえているから、彼らが聞いたのはそれだったのかもしれない。
ただ、その間に雷鳴のSEが入るので、紛らわしいんだよね。

マコ「あ、あれを見てーっ!!」
と、ふと視線を横に向けたマコが、何かを発見して、どんなに太くて熱くて硬くて赤黒い石焼き芋でも余裕で頬張れそうなほど大きく口を開けて叫ぶ。

見れば、絵の中のナポレオンの足元にいつの間にか水溜りが出来ているではないか。

マコ「靴が汚れてる」
チコ「うう」
マコ「洋服もびっしょりよ」
ちなみに下書きでは、ここで「おしっこ漏らしてる」系のギャグを入れていたのだが、カットした。
もっとも、本気でそんな幼稚なギャグを書きたいのではなく、それを見た二人が「雨で濡れている」と即座に思い込むのが、不自然に感じられることを表現したい為のギャグなのだった。
何故なら、確かにさきほど雷鳴が轟いていたが、最初の屋外の映像を見る限り、ぜんっぜん雨など降るような天候ではなかったからである。
だから、雨の中をナポレオンが歩いてきて絵の中に入り込んだ……と言うイメージが咄嗟には思い浮かばないのである。
どうでもいいが、チコのパジャマ、「魔女先生」で良くひかるが着ていたのと似てるな。
さて、真夏の怪奇現象を前にその場に凍りつく5人、その5人ひとりひとりの恐怖に引き攣った顔がアップになって、いやがうえにも緊張感が高まるが、

ここで、ぬぼーっと立っていた野中一家の後ろで扉が開き、

三人「うわーっ」
三人がそれに突き飛ばされるのが、ドリフ顔負けの「緊張と緩和」ギャグになっております。
と言って、誰かが入ってきたわけではなく、ひとりで開いただけらしい。
不穏な空気の中、5人が部屋の真ん中に集まって身を寄せ合っていると、絵の中のナポレオンの顔が徐々にクモの化け物に変わっていき、最後は完全に怪人の姿に変わってしまう。
なお、クモナポが実際に絵の中から出てくる前に、敬介が家の前までバイクを飛ばして来るカットが入るのだが、雨は全く降っておらず、路面も全然濡れていない……
なんか、自分で自分の首を絞めているような編集である。

クモ「野中博士は何処だ?」
夫人「主人はアメリカ行ってて留守です、あなたは……」
震える声で野中夫人が答えるのを見たクモナポレオンは、急に言葉遣いを改め、
クモ「これは失礼しました、私はGODの悪人軍団の一人、クモナポレオンと申します、お見知りおきのほどを……」
いかにもフランスの英雄ナポレオンの化身らしく、貴婦人に対するような極めて慇懃な態度で接する。
どうでもいいが、ナポレオンって悪人だったの?
まあ、独裁者として数々の戦争を引き起こし、あまたの人命を損ねたのは事実だが、だからと言ってヒトラーと同列に扱うのは、さすがになんか違う気がする。
クモ「ではマダム、ドクトル南原から来た設計図を頂きましょう」
夫人「そ、そんなもの知りません」
クモ「おおマダム、私はジェントルマンです、レディーには手荒な真似はしたくないのですがね……」
クモナポ、そう言うと、やにわに巨大な毒グモをひょいと掴み上げ、

後ろに立っていた戦闘員に投げつける。
戦闘員「なんでだよっ!!」 なんか、昨日も似たようなギャグを書いた記憶が……
毒グモに噛まれた戦闘員、床にどうっと倒れると、みるみるうちに萎んでしまう。
しかし、家族だけならともかく、今回はチコとマコという、願ってもないイケニエがいるというのに、そちらには目もくれずに貴重な部下を血祭りに上げるクモナポ、端的に言ってバカである。

チコ「……」
実際、チコなんかは「バッカじゃないの?」とでも言いたげな、氷のように冷たい軽蔑の眼差しを向けていた。

クモ「マダム、如何です? 私の可愛いベビーはお美しいレディーが大好きです。どうやらマダムのことが気に入ったようですな」
夫人「ああっ……」
その巨大なクモが顔の上を這い回るおぞましい感触に、生きた心地のしない野中夫人。
今までまるっきりノーマークだったが、こうして見ると、なかなかヒワイなシーンである。
至「放せーっ!! ママを放せ、設計図なら僕が……」
と、そばにいた息子の至、母親の苦しむ姿に我慢できず、何か言いかけるが、
夫人「設計図ならここに……」
夫人が慌てて設計図らしき紙切れを取り出し、クモナポに渡す。
そこへ颯爽と駆けつけたのが敬介だったが、
敬介「もう大丈夫だ、おやっさんから君たちがここへ来てると聞いて飛んで来たんだ」
クモ「お前が神敬介か、会いたかったぜ」
なんでチコとマコがお泊りに来てると聞いたから飛んでこなければならなかったのか、その辺が良く分からないのである。
せっかく、ナポレオンの肖像画と言う小道具があるんだから、おやっさんに電話して来たマコたちから、その家にも同じ絵が飾られていることを知り、その家も狙われると睨んでやってきた……とか、いくらでも説明の余地があると思うんだけどね。

クモ「俺は必ずお前を殺す、俺の辞書には不可能と言う文字はないのだ、設計図はもらっとく」
クモナポ、定番の台詞を吐いてから、さっさと逃げ出す。
敬介が外へ出た時も、ゴロゴロと雷鳴が鳴っているが、相変わらず雨は一滴たりとも降ってきません。
また、その時点で深夜だったのに、次のシーンでは翌日の午前中に飛んでいて、なおも敬介が追跡中と言うのは、さすがに乱暴な話である。
それはともかく、一晩中探し続けて疲れていたのか、敬介、油断して足元から伸びて来たクモの糸に気付かず、右足を絡め取られてしまう。

倒れたところに、大小無数の吸血グモを顔に乗せられ、ひどい有様になる。
これ、わざわざ耳の穴にまでクモを入れているが、ここまで来ると、そこはかとないスタッフの悪意を感じるなぁ。

敬介、気絶したまま海に転げ落ちるが、速水さんの体当たり演技が素晴らしい。
もっとも、その程度で敬介が死ぬ筈もなく、海に落ちると同時にXライダーに変身して水中から飛び出し、クモナポの眼前に舞い降りる。
クモ「待っていたぞ、Xライダー」
だが、クモナポは動じる色も見せず、でかい口を叩く。
てっきりただの強がりかと思いきや、そうではなかった。
ライダー、次々と技を繰り出すが、クモナポはまるでダメージを受けず、

ライダー「くそう、これはどういうことだ? 体が痺れる」
逆にライダーのエネルギーがどんどん失われ、遂には敵の目の前に這い蹲ると言う屈辱的な姿を晒す。
クモ「わかったか、Xライダー、お前の足に絡んでいるその糸は、お前の体からすべてのエネルギーを吸収してしまうのだ、ライダーキックはもう役に立たん」
ここでクモナポの口から、突然の変調の理由が明かされる。
これこそ、キングダークが、前回得たライダーたちのデータを元に編み出した必殺戦法だったのである。
つーか、これ、戦法と言うより、新素材の勝利だよね。

クモナポ、さらにクモの巣ジャングルと言うネットを広げて、ライダーの体を完全に封じ込める。
GODが、いや、歴代「悪の組織」が夢にまで見た、対ライダーの奇跡的な完全勝利であった。
完全に意識を失ったライダーに、トドメを刺そうとサーベルを振り上げるクモナポレオンであったが、
ナポ「死ねい!!」
V3「待てい!!」

そうはさせじとあらわれたのが、我らがV3であった。
クモ「貴様、なにもんだ」
V3「俺の名を知らんとは、お前もたいした奴じゃないな」
クモ「な、なにぃ」
V3「俺の名は、仮面ライダーV3!!」
どうでもいいが、ナポさん、「待て」って言われたからって「待つ」必要ないですよ~。
気にせずブスッといっちゃいましょう。
なんだったら、V3と会話しながら刺すのもありですよ。
クモ「ようし、相手にとって不足はない、行くぞ!!」
Xライダーを倒す絶好の機会だったのだが、チコが睨んだとおり、やっぱりクモナポ、頭が気の毒な人だったようで、面白いように挑発に乗り、Xライダーを放置してV3のいるところまでジャンプする。

クモ「ふ、何処へ行った? V3め」
だが、それと同時にV3は一瞬でいなくなり、クモナポがきょろきょろ周囲を見回すと、

これまた神業的な早業で、Xライダーの姿が忽然と消えていた。
GODにとって、千載一遇、いや、万載一遇とも言うべき大チャンスを逃してしまったクモナポだが、
クモ「怖気づいて逃げたか、出て来い、V3!!」 クモナポさん、まったく、これっぽっちも、1ミリたりとも気にしておられないのでした。チーン。
V3の声「はっはっはっ、そう力むなクモナポレオン、今はお前と戦ってる時ではない、この勝負、お預けだ」
クモ「出て来い、V3~!!」
後編に続く。
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