第22話「レオ兄弟対怪獣兄弟」(1974年9月6日)
冒頭、いかにも楽しそうにカオルが百子の手を引っ張って、ゲンの部屋まで連れて来る。

カオル「お姉ちゃん、早くったらぁ」
百子「ええ、どうしたのよ、なぁに?」
カオル「いいから、いいから」
戸惑う百子に構わずカオルがドアを開けると、

百子「あら……」
カオル「ほら」
百子「わあ」
暗かった部屋がパッと明るくなり、同時に、バースデーケーキを囲んで立っているゲンたちの拍手が沸き起こる。
ゲン&猛&トオル「おめでとう」
そう、百子タンの誕生日を祝う、ちょっとしたサプライズパーティーだったのである。
カオルはいそいそと百子の手を引いてケーキの前に移動する

百子「ありがとう、私のお誕生日をこんなにお祝いしてくれて」
カオル「ゲン兄ちゃんが言い出したのよ」
どうでもいいが、猛の着ているTシャツの柄、なんか、メールソフトにメールが届いた時のように見える。
百子「ありがとう」
カオルの口添えに、百子が改めてゲンに礼を言うと、

だらしなく笑み崩れて頭を掻くゲン。
しかし、我々オールド特撮ファンは見慣れているからそうでもないが、イケメンばっかり出てくる昨今の特撮しか知らない若年層が見たら、とてもこれが特撮ヒーロー番組の主演俳優とは思うまい。

トオル「あ、赤くなった、赤くなった」
照れるゲンを見て、嬉しそうに囃し立てるトオル。
うーむ、まさに絵に描いたような「幸せ」で、こんなアットホームな雰囲気を情け容赦なく踏み潰してしまえるスタッフの冷血さに、改めて背筋が凍る管理人であった。
猛「ほんと、ほんと」
ゲン「いや、ただ、僕はだね……みんなの気持ちを代表して」
トオル「照れない、照れない」
あれこれ言い訳するゲンの胸を叩いてこまっちゃくれたことを言うトオル。
ゲン「こいつ!!」
トオル「はははは」
ゲン「そろそろ始めようか」
ゲン、蝋燭に火をつけようとするが、その手を猛が掴む。
猛「ちょっと待った、大村さんがいないじゃない」
ゲン「そうか」
百子「何処行っちゃったのかしら」
カオル「あたし、知ってるわ」
ゲン「何処行ったの?」

カオル「また、これ」
そう言って、両手を独楽鼠のようにクルクル回すカオルがめっちゃ可愛いのである!!
ゲン「これって自転車? 参っちゃうなぁ」
大村、最近サイクリングに凝っているらしい。
ゲン「肝心な時にいつもいないんだから」
トオル「まあ、いいじゃない、お姉ちゃんは……いればいんだもんねー」
大仰に憤慨して見せるゲンに対し、トオルは意味ありげな視線を百子とゲンに向けて二人の仲を冷やかす。

百子「あ……トオルちゃん!!」
困ったような、世にも切なそうな顔でトオルをたしなめる百子が可愛いのである!!
それはそうと、丘野さんの唇に口内炎のようなものが見えるが、ちゃんと栄養摂ってるのかと心配になる。
猛「ま、そういうこと、そういうこと」
ゲン「そろそろ始めようか」
きりがないのでゲンが今度こそ本当に火をつけようとするが、折悪しく、そこでMACから怪獣出現の知らせが入る。
ゲン「百子さん、わりぃわりぃ、仕事が出来ちゃったんだ、ごめんね」
ゲン、そう言ってさっさと出て行く。

百子「あ……」
唖然としてゲンを見送った百子は、

百子「うん、もうっ!! おおとりさんだってそうじゃない!!」

百子「ふんっ!!」
ゲンの身勝手さを非難し、不満そうに鼻を鳴らすのだった。
何を考えているのか分からないが、工場地帯で暴れまくっている怪獣。
迎撃に出たMACの戦闘機は面白いように次々撃ち落とされていく。
ゲン「このままで行くと全滅です」
ダン「ゲン、行くんだ!!」
ゲン「はいっ」
MACでは逆立ちしても勝てないと見たダンは、ゲンにレオに変身して戦えと命じる。
だが、ゲンが怪獣に向かって走っている途中、避難民の中にスポーツサイクルに乗った大村を見付ける。

ゲン「大村さん、こんなところで何をしてるんですか」
大村「この中でな、悲鳴が聞こえたような気がするんだよ」
ゲン「この中で? 分かりました、僕が調べてみます、さ、早く逃げて」

大村「おい、あの怪獣、名前なんて言うんだ?」
ゲン「ガロンです!!」
大村の質問に、即答するゲン。
この後、ダンから
「何勝手に名前付けてんだよ」と、杖で肩をぐりぐりされたそうです。
ゲン、とにかくレオに変身して戦うべきだったが、塀の向こうから聞こえてきた「助けて、レオ兄ちゃん」「アスカ、頑張れ」と言う子供たちの声に、何を考える余裕もなく走り出していた。

アスカ「熱いよ、お兄ちゃん、助けて!!」
塀の中では、子供がコンクリートの塊の下敷きになり、右腕を伸ばして助けを求めていた。
昔の特撮は子供にも容赦なく、子供の周りで実際にガンガン火を燃やしている。

そのコンクリートを必死で持ち上げようとしている兄のレオ。
一瞬、マサルの神谷さんかと思ったが、全然別の人だった。
駆けつけたゲンはコンクリートを持ち上げようとするのだが、

ゲン「もっと力を入れて!!」
子供の力を当てにすると言うのは、MAC隊員として、ヒーローとしてあまりに情けない心構えであった。
普通は、
ゲン「僕に任せるんだ!!」
だよね。
ともあれ、ゲンは何とか子供を助け出すが、何時まで経ってもレオが出て来ないのでダンは苛々して本部に被害状況を問い合わせる。

白川「MACの被害はこれまでの最大のものです、死者3名、負傷者16名、マッキー2号機2機破壊、3号機4機破壊……」
ダン「ガロンは我々に勝って自信を深めている、なんとしてでも倒さねばならん、全員出動態勢に入れ!!」
延々と続く白川隊員の報告を遮ると、ダンは悲壮な覚悟で命令を下す。
しかし、既にその弱さが全宇宙に知れ渡っているMACに勝ったからって自信を深めるかなぁ?
一方、ゲンは子供を病院に連れて行き、兄のレオ少年と共に手術室の前まで弟アスカ少年に付き添う。
「手術中」と言う赤ランプを見詰めながら、がらんとした薄暗い廊下に唇を噛んで立ち尽くしているレオに、ゲンが努めて明るい声で話し掛ける。

ゲン「僕はMACのおおとりって言うんだけど、君は確かレオ君だったよね」
レオ「岡村レオです。あれが弟のアスカです」
ゲン「アスカ君か……」
ゲン、おそらく、アスカのことをアストラと聞き間違えたのだろう。
ゲン「君たちはどうしてあんなところに?」
レオ「お父さんの会社です。今日はアスカの誕生日で、どっかで一緒に食事しようって……そしたら、怪獣が」
ゲン「じゃあ、お父さんとお母さんは?」
レオ「……」
で、この子役がかなりの美少年なのである。
女の子だったらなぁ……

レオ「アスカが死んだら、僕は、僕は……」
両親を一度に亡くし、今また弟まで失おうとしているレオ少年は、悲しみと絶望のあまり、ソファに座り込んで泣き出すが、
ゲン「だいじょぶ、アスカ君はきっと助かるさ、
元気を出せよ、僕は君の気持ちは誰よりも分かるつもりだよ、僕にも弟がいたんだ。でも怪獣のために炎の海の中で行方不明になってしまったんだ。両親も一緒にね」
アスカ「え……おおとりさんも」
ゲン「君にはまだアスカ君がいる、君の力で助けたんじゃないか、
頑張れよ!! アスカ君のためにも!!」
ゲンの得意技「自分の不幸で相手の不幸にマウントをとる」攻撃が炸裂する。
しかし、「元気を出せ」とか「頑張れよ」とか、弟のことは別にしても、両親を一度に殺されたばかりの子供に言うべき言葉じゃないよね。
特に「頑張れよ」は、とりあえず言って見た感がデミグラスソースのように濃厚である。
ゲンが戦場に戻ろうと廊下を走っていると、ダンがあらわれる。

ゲン「隊長」
ダン「ゲン、何故変身しなかった」
ゲン「あの子達を助けるために」
ダン「どうして知らせなかったんだ? 子供たちは我々に任せるべきだ。お前の今の使命はレオに変身することではなかったのか?」
ゲン「……」
ダン「お前以外に奴を倒すことの出来るものはいない。それはお前自身が一番よく知ってるはずだ」
ゲン「すいませんでした」
ゲンの正論チェーンコンボにぐうの音もなく、しおしおと頭を下げるゲン。
言い換えれば、MACには子守くらいしか出来ないってことなんだけどね。
ただ、連絡もしてないのにダンはどうやってゲンの居場所を知ったのだろう?
ダン「勿論、子供の命も大切だ、しかしそのためにより大きな犠牲が生まれている……」

ダン「私はMACの隊長としてレオなどに頼りたくはない、だが、同じ宇宙人としてはお前だけを信頼してるんだ」
ゲン「隊長……
要するに、MACにはこれっぽっちも期待してないってことですね?」
ダン「まあ、そうだ」
途中から嘘だが、隊員たちが聞いたらショックだろうなぁ。
ま、「だろうなー」と納得するかもしれないが。
ダンは、ガロンの強さを見定めて、「お前なら一発で倒せる相手だ」と太鼓判を押してゲンを送り出す。
実際、前回のノースサタンのときのように、必殺・胴体貫通正拳突きをかませば一瞬でカタがついていたと思うが、これはもうそう言う習性なのか、意味もなくガロンとプロレスごっこをしてしまい、いたずらに時間を費やしてしまうレオ。
CM後、レオが決め手に欠ける攻撃で戦いを長引かせている間に、ガロンとそっくりの兄弟怪獣リットルがあらわれ、レオとアスカのいる病院に攻撃を始める。
ダン「やめろレオ、先にガロンを倒すんだ!!」
ダンの忠告も空しく、ガロンを放置してリットルを止めようとしたレオは、絵に描いたような虻蜂取らずを演じ、

兄弟怪獣の連係プレーに翻弄され、人間サンドバッグ状態となる。

腹ばいに倒れたところを、ガロンとリットルによってたかってゲシゲシ踏みつけられるレオ。
いくら二対一とは言え、あまりに不甲斐ない姿である。
つーか、なんで頑なにビーム系の技を使おうとしないの?
使用料金とか掛かるの?
ダン「でゅうっ!!」
ダン、忌々しそうに杖を地面に突き刺すと、困ったときのウルトラ念力を発動させる。
ここで、
ナレ「遂にたまりかねたダンは……」
と、ナレーターが解説するのだが、そう言われても仕方のないレオの醜態であった。
だが、いくら怪獣の動きを封じても、レオには立ち上がる力もなく、結局、怪獣には逃げられてしまう。
ダン「お前にはがっかりだよ!!!」 と、叫びたかったのではないかと思うが、ウルトラ念力恒例の病人メイクのダンに、そんな余力は残されていなかった。
その後、川岸に座って水面をぼんやり眺めていたゲンであったが、

その脳裏に、かつて、名前忘れたけど、星人の襲撃を受けた際、さっきのアスカ少年と同様、弟アストラが瓦礫の下敷きになったときの光景がありありと蘇る。
レオ「アストラ、今助けるからな」
アストラ「兄さん、ぼかぁもうダメだーっ!!」
レオ「アストラ、なにを言うんだ、
お前は森田健作かっ!!」
だが、さっきのゲンのような救世主はあらわれず、二人は爆発に巻き込まれてそれっきり離れ離れとしまったのである。

ゲン「アストラ!!」
思わず右手を突き出し、弟の名を叫ぶゲン。
そして、その手を、自らの無力さを噛み締めるように見詰める。
と、背後にダンが立つ。
以前のダンだったら、何も言わずに杖でゲンを殴り殺し、その死体を川に捨てているところだが、だいぶ丸くなったダンはさして怒色も見せず、ゲンの横に腰を下ろす。

ダン「今病院へ行ってきた、アスカ君はあの小さな体で必死に戦っていたよ」
ゲン「隊長」
ダン「お前はあの兄弟の中に自分を見たんだろう。しかしそのために本来のお前を見失ってしまったんだ。お前とアストラの間にどんなことがあったか俺は知らない。だが、何時までも昔の思い出に囚われていてはいけない」
ゲン「でも、僕は、弟を助けることが出来なかったんです」
ダン「ゲン、お前たち兄弟を引き裂いた、宇宙人や怪獣を憎いと思うか?」
ゲン「……」
ダン「見てみろ、この平和な地球が奴らがあらわれるたびに荒らされていくんだ」
ゲン「ま、人間のほうがよっぽど荒らしてますけどね」 ダン「屁理屈を言うなーっ!!」 ダンは屁理屈とソガの口笛が死ぬほど嫌いなのである。
じゃなくて、
ダン「そして今度こそ我々の第二の故郷も終わりを迎えることになるかも知れん」
ゲン「……」
ダン「私の力はもう彼らには通用しない。MACは今や全滅寸前だ」
しかし、正直、ガロン&リットルって、今までの敵と比べても特に強いわけでもないのに、MACがそこまで追い詰められるというのは、なんか釈然としない。
つーか、MACもいい加減V7とかV9とかの超兵器を開発したら?
これだけ向上心のない怪獣やっつけ隊は初めてである。
ダンの言葉にゲンもやっと迷いを吹っ切ったように立ち上がり、
ダン「僕も地球を愛してる気持ちは変わりません」
その目に爛々と闘志の炎を燃やす。
で、再び怪獣が出現し、ゲンは勇躍レオに変身して雪辱を期すが、
やっぱりダメだった。 ま、気合だけで勝てりゃ世話ないってことですね。
ちゃんと作戦や対策を立てなきゃ……
絶体絶命のピンチの中、

不意に、空から赤い球体が飛んでくる。

大村「きっと怪獣ですよ、これでもうレオは駄目だろうな」
ダン「……」
まだ自転車に乗って走り回っていた大村は、それを見て、新手の怪獣に違いないと決め付け、絶望する。
だが、

地面に激突した球体からあらわれたのは、敵ではなく、死んだと思われていたアストラその人であった。
大村「あ、レオの弟だ、これでもうレオは大丈夫ですよ!!」
こうなればもう勝負は決まったも同然。

二人同時にヤクザキックを放ってから、二人のエネルギーを合わせてビームを浴びせ、二匹まとめて粉砕する。
あれだけ思い入れのあるアストラと再会したので、さぞや積もる話があるだろうと思いきや、

手を握り合うだけで、さっさとアストラは帰って行くのだった。
まあ、余人には分からないが、手を触れ合えば、それだけで互いの気持ちは十分通じ合ったのだろう。
そう思ったのも束の間、
ナレ「アストラはどうして生きていたのか、何処から来たのか、そしてまた何処へ行くのか、それは誰も知らない」 知らんのかいっ!! いや、せめて実兄には連絡先くらい教えとこうよー。法事の時とか困るよ。
嬉しいことに、最後に再び百子さんが登場する。
誕生パーティーのやり直しをしているのだ。

一同「ハッピバースデー、ディア百子さん~♪」
みんなからバースデーソングを捧げられ、少し恥ずかしそうに微笑む百子タン。
うう、可愛い……
やがて大村が花束を手に駆けつける。

大村「いやー、すまんすまん、遅くなっちゃってなぁー」
ゲン「遅いですよ」
大村「これ、百子ちゃんにプレゼントだ」
百子「わー、綺麗なバラ、ありがとうございます」
どうでもいいが、仮にもパーティーにそんな格好で来るなよ。
ちなみに最初のシーンと比べると、百子さんだけ違う服を着ているが、これも変だよなぁ。
多分、同じ日の出来事と言う設定なんだろうが、ゲンは一度MACの制服に着替えているのだから、それが同じ服と言うのはねえ……
カオル「大村さんにも良いとこあんのね」
カオルがませた口調で大村を褒めるが、

猛「あれえ、モロボシさんからじゃありませんか」
大村「あ……」
ゲン「う、うん」
気まずい顔になる大村を、ゲンが非難するようにじろりと睨む。
大村「実はそうなんだよ、隊長さんに頼まれてね。せっかくの百子ちゃんのパーティーにおおとりくんをかり出して申し訳なかったって、そう言ってた」
トオル「そんなことだと思った」
大村「そりゃないだろ、君!!」
おどけた声を上げる大村に、みんながどっと笑う。
百子「隊長さんって優しい方なんですね」
ゲン「…………とってもね」
百子(今、一瞬反応が遅れたのはどうしてかしら?) また、レオとアスカが元気になったと知らされ、安堵の笑みを浮かべるゲン。

今回は珍しく、最後にそのレオとアスカが再登場し、ゲンから差し入れのバースデーケーキが届くという粋な計らいが描かれる。
……
でもねえ、まるでハッピーエンドみたいだけど、二人の両親がぶっ殺された事実は変わらないので、これから二人がどうやってこの社会の荒波で生きていくのか、とても暢気に笑ってられるような状況ではないと思うのだが。
以上、二人の幼い兄弟の苦難に、アストラ復活のエピソードを織り交ぜた力作であった。
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