第11話「美しき暗殺者」(1973年9月12日)
冒頭、真理が自宅マンションで鏡台に向かって念入りにお化粧している。

いかにも夏らしいワンピースで、剥き出しの背中の日焼けあとがなかなかにエロティックであったが、牧さんは貧乳なので、こういう胸の開いた服は、正直似合わないと思う。
真理が支度を済ませて部屋から出ると、そこへ赤いバラの花束を持った大助とヨシ子が来る。
真理「あら、大助君」
大助「これ、真理姉ちゃんにって頼まれたんです」
真理「私に? へーっ、ハッピーバースデー……どうもありがとう。これ、大作兄ちゃんから? それとも健かしら?」
大助「違うよ、よそのおじちゃんだった」
真理「誰でも良いわ、嬉しい~」
誰でも良くはないと思うが、誕生日と言うことで舞い上がっている真理は気にせず、届けてくれたお礼に大助の頬にキスしてやるのだった。
大助「わー、俺、幸せー、参ったなー」(棒読み)
大人の女性にそんなことをされてガチで緊張したのか、普段はもっと上手い筈の子役はやや棒読み口調になって言うと、その場から走り出す。

真理「大助君、エレベーターに乗ってかないの?」
ヨシ子「何よ、でれでれしちゃって、ふんっ!!」
ヨシ子も、可愛い焼餅を焼いて大助を追いかけたので、真理は一人でエレベーターに乗り込む。
しかし、以前レビューした時はノーマークだったが、この女の子、なかなか男前の顔しとるな。
真理、箱の中でバラの花の香りを嗅ごうと顔を近づけるが、その拍子に、バラの中に仕込まれていた鋭い針に唇の下を刺されてしまう。

真理「針だわ!! うっ……」
真理、急にめまいを覚えて、壁にもたれるようにして床に座り込む。
鉄腕アンクルの声「ふふふふ、気分はいかがかなお嬢さん?」
真理「誰、誰なの?」
鉄腕アンクルの声「鉄腕アンクル、お前に紅健を暗殺させる為にやってきた。お前の血液内にはバラの棘を通して、鉄面党が科学力を結集して開発した、超ミクロ電磁波受信装置ブラッドトロンが注入された。お前はもはや私の意のままに動くだけだ」
と、エレベーターが一階に着いたので、真理は急いで箱から飛び出すが、

鉄腕アンクル「待てい!!」
エントランスから出て来た真理に向かって、再びさっきの声が飛んでくる。

見れば、マンションの前に停めた車に怪しげな男がいて、こちらに先端のイボイボが割りと気持ち悪い金属製の義手を向けてくる。
鉄腕アンクル「さ、こっちへ来るんだ」
真理(この男は鉄面党、言いなりになっちゃダメ!!)
真理、心の中で必死に抵抗しようとするが、その義手から発せられる電波に吸い寄せられるように歩き出す。
もし管理人が鉄腕おじさんこと鉄腕アンクルだったら、これからたっぷり2時間くらいかけて、とてもここには書けないような下品なことを真理にやらせるのだが、悪の人は基本的に真面目なので、鉄腕アンクルは真理を自由に出来るというのに、デビラーに命令されたことしかしないのだった。
意気地なし!!
一方、普通の民家の二階部分にある、芝生を敷き詰めたテラスのような空間で、SSIと熊野警部が誕生パーティーの準備を万端整えて真理の来るのを待っていたが、主賓の真理がなかなか到着しない。

大作「遅いなぁ、真理の奴は、何やってんだ、ほんとにもう……腹減ったよ、俺は」
哲也「大作!!」
子供のように身を捩じらせていた大作が、我慢できずにご馳走に手を伸ばそうとするのを哲也がピシャリと叩く。
熊野「真理ちゃんだってヤングレディーだ、まして本日の主役ともなれば身支度に時間が掛かろうってもんだよ」
ほどなく、真理が、あの鉄腕アンクルの車に乗ってやってくる。
螺旋階段を上がって健たちの前に立ち、ニコニコしている健の顔をじっと見詰めていたが、

いきなりドスを抜いて、健に斬りかかってくる。
健「真理、やめろ!!」
うーん、よりによってなんでそんな確実性の低い武器を持たせたのか?
ピストルを持たせておけば、確実に健を仕留められただろう。
もっと言えば、真理の体に高性能爆弾をつけておき、テラスに立った瞬間に起爆させれば、SSIを一瞬で全滅させられただろう。
ま、そんなことをされては番組が終わってしまうので、しょうがないんだけどね。

それでも不意を突いたので健の左腕を切ることに成功するが、その際、健の腕の動脈から鮮血が勢い良く噴き出るという、特撮ドラマではちょっと見たことのない過激なスプラッター描写が見られる。

さらに、真理がなおも健に斬りかかろうとするのをスローモーションで映すことで、ほとんどヤクザ映画のクライマックスのようなスリリングで臨場感のあるシーンとなっている。
と、ボスが下の道路に怪しい男がいるのに気付き、哲也と大作に追跡を命じる。
男の車が走り出すと同時に、真理の操り人形状態が解けて正気に返る。
よろめく真理の体を支えると、

ボス「真理、しっかりしろ!!」
真理「……はっ、ボス、どうしたのかしら、私?」
ボス「急に襲いかかったんだ、お前が」
真理「えっ、私が? どうして?」
ボス「それは俺が聞きたいよ」
真理「はぁっ……健!!」
自分が飛んでもないことをしてしまったことに気付いて、愕然とする真理であった。
一方、鉄腕アンクルは逃走しつつ、ガルニゾンエースと言う戦闘ロボットを出撃させ、哲也と大作を踏み潰させようとする。
ここで、

哲也のジープと大作のバイクが、踏みつけてくるガルニゾンエースの巨大な足の間をぎりぎりですり抜けるという、神業的な合成ショットが炸裂する。
これがCGなしで作られているとは信じられない。
ついで、健がレッドバロンに乗って飛んできて、ガルニゾンエースとのバトル開始。
ガルニゾンエースは攻撃力はさほどではないが、とにかく頑丈なボディーの持ち主で、バロンパンチもバロンミサイルも通じない。
ボス「健、ガルニゾンエースの弱点は耳だ、そこに光波レーダーがセットしてある」
健「了解!!」
健、耳を狙って必殺エレクトリッガーを放つが、ガルニゾンエースは素早く上空に飛び上がってかわし、結局逃げられてしまう。

その後、当然ながらひどく落ち込んでいる真理。
ボス「鉄面党は真理を使って健を倒し、レッドバロンを封じ込めるつもりなんだ」
健「ちきしょう、なんてきたねえ手を使うんだ」
SSIが調べても、真理の体内のブラッドトロンを発見することは出来ず、どうやって真理が操られたのか分からずじまいであった。
しかし、真理は最初に鉄腕アンクルからブラッドトロンのことを聞かされているので、真理自身には分かってる筈なんだけどね。
ま、催眠状態にされたせいで、その記憶も飛んでしまったのだろう。
真理「警部、私を逮捕して下さい、また健を襲いそうで、自分が怖いんです!!」
不安に駆られた真理は、悲鳴のような叫び声を上げて熊野にお願いするが、
熊野「そう言われてもな……」
健「真理、そんなに自分を責めちゃいけないよ」
ボス「そうだ、しばらく仕事を離れて休むといい」
さすがにそこまでは出来ず、ボスはひとまず真理に休暇を与え、ついでに熊野に護衛を頼む。

その夜、ベッドですやすや眠っている真理。
子供みたいにでかいぬいぐるみと一緒と言うのがめっちゃ萌えるが、

熊野「戸締りは万全、アリ一匹入れやしないぞ」
お前も泊まるんかいっ!! いくら熊野警部が真理の父親ほどの年齢だとしても、ひとり暮らしの若い女性の部屋に泊まるというのは、さすがに問題なのでは?
それに、鉄腕アンクルを近づけさせない為には、部屋の中より外で見張った方が良いと思うんだけどね。
案の定、熊野警部が安心しきって夜食のサンドイッチをハムスターのようにむしゃむしゃ食べていると、マンションの外にいる鉄腕アンクルが義手から電波を送って真理を目覚めさせる。
再び操り人形と化した真理は音もなくベランダに出てきて、鉄腕アンクルの指示を聞く。

鉄腕アンクル「デビラー総統からの指令を伝える。レッドバロンの操縦席を爆破し、使用不能にしてしまうのだ、爆破には、この高性能時限爆弾を使え」
真理「……」
鉄腕アンクルはそう言うと、真っ赤なバラの形をしたコサージュを投げ、真理のパジャマの胸にくっつける。
翌日、真理は、私服でSSI本部を訪ねる。
そして、ボスに辞表と書かれた封筒を手渡す。

真理「今日限りやめさせていただきます」
ボス「辞める?」

真理「仲間を殺そうとしたのに、SSI隊員の資格はありません」
大作「お前、ほんとにやめんのかよ」
哲也「真理、もう一度一緒にやろうよ、鉄面党と戦おうじゃないか」
当然、哲也たちは慰留するが、顔の割りに淡白なボスは、辞表持って来た奴はとりあえず「バキヤロウ!! それでも刑事かっ!!」と殴ることにしている大門と違い、
ボス「やめろ、真理も良く考えてのことだろう、この辞表は俺が預かる」
拍子抜けするくらいあっさり辞表を受理する。
真理「お世話になりました……」
ぺこりと頭を下げる真理だったが、その胸にはあのコサージュが飾られていた。
つまり、この辞表提出自体、鉄腕アンクルから与えられた任務を果たす為に、操り人形と化した真理が行っていることなのだろう。
ただ、催眠状態になった真理が、鉄腕アンクルの指示通りにしか動けないのか、その忠実な部下になったように自分で判断して行動しているのか、その辺がいまひとつ曖昧なんだよね。
まあ、この後の真理の言動を見る限り、後者のように思えるが……
次の場面では、真理がレッドバロンの操縦席に座り、健との別れを惜しんでいる。

健「本気なのかい、SSIをやめるって」
真理「私には資格がないわ。あなたを殺そうとしたんですもの」
健「君は操られていたんじゃないか」
真理「でも……」
まさか今も操られているとは知らず、君に責任はないと慰める健であったが、真理に上目遣いで見られると、それ以上引き止めることはできず、
健「そうだな、SSIは厳しいんだよ、君は小鳥を飼っていた方がお似合いかもしれないな」
真理「うふっ」
健「真理がいなくなって寂しいけど、その分頑張るよ、俺が」
ボスと同じく、割りとあっさりその現実を受け入れる。
真理「健、さようなら」
健「さようなら」
なにしろちびっ子向けドラマなので、別れのキスは勿論、抱き合うこともなく、優等生的に手を握るだけの二人であった。
真理「レッドバロン、さよなら」
真理、レッドバロンから立ち去りがたい風情を見せつつ、さりげなくあのコサージュ型爆弾を壁に仕掛けておくのだった。

レッドバロンの体内のエレベーターで、何食わぬ顔で健と一緒に降下する真理。
二人がレッドバロンから出たところで、コックピットから爆発音が鳴り響く。
二人は再びコックピットに上がるが、

真理「壊れてないわ」
健「ブロックウォールだ、一瞬の異常に反応して計器盤を守る装置だ。さすが兄さんが作ったロボットだ」
特殊な防護壁によって、コックピットはほぼ無傷だった。
このシステム自体は先進的で思わず感心させられたが、どうせなら、体内に爆発が持ち込まれたら即座に反応するセンサーもつけておくべきだったろう。
今回は、真理が深く考えずに設置したせいで助かったが、もし計器盤のど真ん中で爆発していたら、いくら防護壁があっても無意味だったからだ。
と、モニターに、こちらに向かっているガルニゾンエースの姿が映し出される。
健「真理、表へ出ろ!!」
健の言葉に即座に従う真理。
おそらく、今は鉄腕アンクルの催眠電波が送られていないので、本来の人格に戻っているのだろう。
しかし、だとすれば、それまでの記憶も飛んでる筈なのだが、さっきのように戸惑った様子がないのは解せないなぁ。
前述したように、ブラッドトロンの機能・効果についての詳細が分からず、見ていてなんとなくすっきりしないんだよね。
ともあれ、レッドバロンとガルニゾンエースのバトルとなるが、

健「はっ、防御装置がしてある。くっそぉ~っ!!」
良く見れば、ガルニゾンエースの弱点である光波レーダーが、レッドバロンの防護壁と同じように、透明なカプセルで覆われているではないか。
健にとっては憎たらしいことではあったが、ちゃっかりカプセルをつけてる姿が、人間臭くて妙に可愛いんだよね。
しかも、健がレバーをいくら動かしてもバロンパンチもバロンミサイルも発射されない。
健「しまった、アタック回路がやられている」
良く見れば、爆発の起きたところが焼け焦げていて、武器系統の回路が故障していることが分かる。
それにしても、コックピットを破壊するつもりで設置した爆弾が、その程度のダメージしか与えていないと言うのは、鉄腕アンクルがコックピットの強度を見誤ったとしか思えない。
そもそも、当初の計画は健の命を奪うことだったのだから、初志貫徹して、油断している健に毒でも刺すとか、それこそブラッドトロンを注入するとか、もっとスマートな方法があったと思うんだけどね。
武器が使えず一方的に痛めつけられるレッドバロン。
SSIは、鉄腕アンクルの居所を突き止めて包囲するが、そこにふらりとあらわれたのが真理であった。

鉄腕アンクル「松原真理、来い!!」
再び鉄腕アンクルの操り人形となった真理、薄ら笑いさえ浮かべて、鉄腕アンクルに向かっていく。

鉄腕アンクル「武器を捨てて出て来い」
真理をすぐそばまで引き寄せると、鉄腕アンクルはSSIに降伏勧告する。
基本、ヒーローと言うのはフェミニストなので、ボスたちは一もニもなく銃を投げ捨てる。
管理人、てっきり真理が操られているふりをしていて、ここで鉄腕アンクルの腕を掴んで投げ飛ばすのかと思ったのだが、特にそう言うことはなく、土壇場のピンチを救ったのは伏兵の熊野警部だった。
茂みの中からローブを飛ばして鉄腕アンクルの手から銃をもぎ取り、そこをボスが躍りかかってボコボコにする。
ここは、散々(性的な意味ではなく)なぶりものにされた真理が、鉄腕アンクルにお返しして欲しかったところだが、真理が正常に戻る描写もなしにそうするのは、ちょっと乱暴か。
たとえば、本編と異なり、真理が爆弾をセットしようとしたらレッドバロンの防御装置が働いて真理の体に電流を流し、そのショックでブラッドトロンが無効になるとかね。
本編の解決法では、最初から最後まで真理がほんとにただのお人形さん状態なので、ドラマとしてもあんまり面白くないんだよね。
ともあれ、鉄腕アンクルがあの金属製の義手と共に爆死すると同時に、真理がやっと正気に返る。
ガルニゾンエースは、左腕に回転ノコギリ、右腕にトンカチに変えて、無抵抗のレッドバロンを解体しようとするが、ここでやっと健が回路を繋ぎ終え、
健「フルパワーオン!!」
座ったままのパンチで、ガルニゾンエースの体を吹っ飛ばす。

レッドバロンが立ち上がると、その体から凄まじいエネルギーが放出される。
ナレ「バロンフルパワーは、レッドバロンの全エネルギーを集中させて戦う戦法である。応急処置で動力回路と直結してあるため、そのエネルギーは一分間しか続かないのである」
と言うことで、ガルニゾンエースに猛攻を仕掛けるのは良いのだが、

戦いの途中、何食わぬ顔でアームミサイルを発射したのには、思わず首を傾げてしまった。
何故なら、レッドバロンのアタック回路が壊れたので、応急処置として回路をいじってバロンフルパワーを使い、そのパワーで一気にケリをつけようとしているのに、普通に武器を使ったのでは、話の前提が崩れてしまうではないか。
実際、そのフルパワーを生かしてガルニゾンエースの外殻を拳で撃ち抜き、腕や頭をもぎ取って勝利しているので、このアームミサイルは明らかなミスだったと思う。
こうして鉄面党の策略は潰え去るのであったが、実はまだ真理の体にはブラッドトロンが残っていて、しかもSSIはその事実さえ知らないのだから、今後も同様のメカで真理が操り人形になる可能性も考えられるわけで、この宙ぶらりんの状態を事件解決と言っていいものやら、いささか躊躇を覚える管理人であった。
それはそれとして、エピローグ、あのガーデンテラスで改めて真理の誕生パーティーが行われている。

真理「私はこれからもSSIの一員として鉄面党と徹底的に戦うことを誓います」
それは同時に、真理の再入隊の儀式でもあった。
インディアンのように右手を挙げて誓う真理に、

ボス「よし、真理、これはこうするぞ」
ボスは預かっていた辞表を取り出し、目の前で破いて見せるのだった。
乾杯した後、
真理「健、本当にごめんね」
健「俺もレッドバロンも不死身さ」
改めて健に詫びる真面目な真理であったが、健は包帯を巻いた腕を叩いて笑い飛ばす。

真理「うふっ」
ああ、かわええ……
と、そこへ大助とヨシ子が来て、真理にあるものをプレゼントするが、それが、あの事件を想起させる毒々しいほど真っ赤なバラの花束だったので、思わず警戒する真理。
真理「私に?」
熊野「はははは、ワシからのプレゼントだ、心配要らんよ」
続いて熊野があらわれ、いささか人の悪い悪戯だったと明かす。

真理「まあ、警部!! うんっ!!」
口を「ム」の字にしてむくれて見せる真理。
ああ、かわええ……
以上、真理のメイン回でありながら、真理の見せ場があまりない、変なエピソードであった。
前述したように、真理が主体的に何かするわけではなく、ひたすら鉄面党の道具として使われているだけなので、いまひとつドラマとしての盛り上がりに欠けているようである。
なにより、パンチラがゼロなのが残念だ(言うと思った)
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