第31話「君の瞳はゲッツーコース!~野球大会殺人事件」(2004年8月1日)
柴田が、二郎のグラブにウラリのボトルが嵌め込まれているのを発見して飛んでくる。
せっかちな高村はすぐ二郎を逮捕しようとするが、泪は乱闘の時、二郎がグラブを外していたと証言する。

その後、事件について話し合う三人。
泪「誰か、二郎さんに罪をなすりつけようとしていたのかもしれない」
高村「乱闘の時じゃないとすると、小松は何処で誰に塗られたんだろうね?」
泪「塗られた? 柴田さん、小松さんが試合中に触ったものを全部調べて下さい」
柴田が行った後、
泪「さっきからなにやってるんですかー」
高村「クサカリだよ、クサカリ!」
泪「……」
鑑識の結果、小松が触ったものからはウラリは検出されなかった。泪は、宇野に打たれたボールをまだ調べていないと場外へ行くが、球場のすぐ外は川で、ボールは流されてしまっていた。
泪は、ならば宇野が使ったバットも調べてみようと言う。果たしてそのバットの芯の部分から、線を引いたようなウラリの反応が検出される。
やはり、あの三回目のホームランボールに毒が塗ってあったらしい。

観客席で三人が話していると、
野村「頭使わなきゃ」
高村「あんた、その登場の仕方好きですね」
泪「て言うか、いつからいたんですか」
野村「疑われるってことはね、なんか疑われるようなことをしたの」
泪「なんて身のない意見……」

泪は、その野村も容疑者の一人だと告げる。
泪「(宇野の打席で)三回目だけなんです、新しいボールにチェンジしたのは。その新しいボールを取り出したのは柴田さん、そしてそのボールを小松さんに返球したのは……野村さん、あなたです」
野村は黙って聞いていたが、「あほやね、あんた、毒のついたボールどうやって返球できるんだよ。俺だって死んじゃうじゃないか。だいだいその短い間に、どうやってボールに毒を塗れるってんだよ、あほかっ」と、反論して立ち去る。
泪は、謎を解く為、当時の状況を自分たちで再現してみることにする。
泪がキャッチャー、柴田がバッター、そして高村がピッチャー。

高村は、泪たちの目の前で剛速球を投げ、二人をびっくりさせる。試合に出ろよ……。

高村の剛球を恐れて、柴田の陰に隠れる泪が可愛いのである!
そして、膝で動く度に、モキュモキュと言うような効果音が入るのがこれまた可愛いのである!

泪、「柴田さん、もっとこっち来て下さいよ」と言いながら、右手で自分の太腿を何度も叩く。
高村「へー、いきなり高度なボール要求するね、よっしゃあ」
何を勘違いしたのか、高村はボールを投げる。それは柴田の手前で落ち、その足に命中する。
控え室で、泪が柴田の足に湿布を貼っている。
窓から差す光は既にオレンジ色で、さりげなく時間経過を描いているのが心憎い。
高村、泪のサインを見て投げたのだと弁解する。
高村「ロスでやってた時と同じサインだったからさ」

泪「高村さん、代打で打席に立った時、野村さんとなんか話してましたよね」
高村「ああ、あれは例の、野村のぼやき戦法だよ」
野村は、高村に初球は外角のカーブだと教えてくれたらしい。だが、実際に飛んで来たのは内角のストレートだった為、高村はデッドボールを喰らってしまったのだ。

泪「さっきのは、柴田さんのサインに当てろってサインだったんですか」
高村「いや、フォークのサインだと思ったらフォークを投げた」
泪「フォーク投げたんですかー」
高村の言葉に素っ頓狂な声を出す泪。

高村「……君の考えてること分かるけど、このフォークじゃないよ。いいかい、こうやって握ると、バッターの前でボールが落ちる」
高村の握りを見ていた泪、会心の笑みを浮かべる。

泪「そうか、謎は解けたよ、ワトソン君!」
こうやって、三人が頭を寄せ合い、徐々に事件の真相に近付いて行くと言うのは、このシリーズではありそうでなかなかないミステリーの王道的演出で、見ていてとても面白いのである。
そしていよいよ謎解き。
何故か、夜のグラウンドに残り、照明をつけて一郎たちに意味不明の説教を垂れている野村。その顔に、水滴が落ち、いつもの泪のお仕置が発動。

泪「野村さん、犯人は、あなたです、あなたはボールに糸で毒をつけたんです。ユニフォームの生地の糸です。あなたはあらかじめ、一本の糸に毒を塗り、ほつれのように外に出していた」
そして、柴田に新しいボールを要求し、ボールを拭くふりをして糸を巻き付けたのだ。
泪「バットに残っていたウラリが直線だったのはその為です」
野村「毒のついたボールを投げたら、俺の手にも毒がつく危険性があるだろう?」
野村、何とか立ち上がってさっきと同じ反論をする。

泪「その通りです、だからあなたはボールに糸を巻き付けた後、こういう握り方をしたんです」
野村がフォークボールを投げた為、あの時小松はボールを取り損ねたのだと泪は指摘する。
さらに、野村は過去2回宇野に痛打されているコースを、わざと小松に要求し、証拠となるボールをホームランにして証拠隠滅を図ったのだ。
また、野村はわざと高村に嘘のコースを教えてボールをぶつけ、乱闘騒ぎを起こし、小松の近くに立った二郎を犯人に仕立てようとしたのだ。
ボールを拭く仕草とか、返球を取り損ねたとか、サインに首を振っていたとか、高村のデッドボールとか、いちいち全てのエピソードが伏線として明らかにされるのが上質のミステリーの醍醐味である。
野村はなお、肝心の糸がないと抗弁するが、

泪はそれもお見通しだった。
泪「それは、ここです」
泪がホームベースを剥がすと、その裏に糸が張り付いていた。
泪「乱闘でマウンドに一番に行く筈のあなたはその場に残り、みんなの視線がマウンド上に集まった隙に……」
野村も遂に観念し、罪を認める。小松に、顧客の金を使い込んでいたのを知られ、脅迫されていたのが動機だったと言う。

事件解決後、
泪「このサイン分かります。お寿司ですよお寿司、私にお寿司おごりなさいのサインでぇす」
高村「全く、もう、君にはかなわないよ」

泪「あ、しゃぶしゃぶのサインもありますよ~」
と言う訳で、ストーリーの面白さに加え、泪の可愛らしさが心行くまで堪能できる傑作であった。
これで「泪」のレビューは終わります。さようなら。