第11話「ネバー・クライ」(1984年6月26日)
全世界待望、おアキの独演会が今始まる。
おアキ「私の生まれ育ったのは基地の街だよ。父親は物心ついたときからいなかったねえ。お袋は小さなバーをやっていたよ。と言っても来る客は暴力団関係者やアメリカ兵を相手にする娼婦ばかりさ。お袋はポーカーに凝っていて毎晩徹夜さ……」
哲也「すいません、その話、長いんですか?」 17才になって、おさだまりの不良少女になってカツアゲをしているおアキたち。

ただ、17才の女の子が、そんな札の数え方をしちゃダメだと思うの。おっさんか!
もっとも、盗んだ財布から1000円だけ抜き取って返すような、ぬるい不良であったが。

その頃、おアキの母親は「ポーカーに熱中するあまり覚醒剤を打つようになっていた」らしい。
ポーカーに熱中すると覚醒剤を打つようになるのか?
ま、とにかく暴力団とずぶずぶになっていたと言うことだろう。
必死でやめさせようとするおアキに、母親は「今日から客取りな!」と、(色んな意味で)恐ろしいことを言い放つ。

さすがにおアキ、実相寺的アングルでショックを受ける。
母親「17才にもなって、稼げないなんてこと言わせないよ。かあちゃんね、ポーカーの負けがこんでもうどうにもならないんだよ」
おアキ「あんた母親だろ、娘に売春させる母親なんかあるかよ!」
それまでの憤懣をまとめて母親を罵倒するおアキ。

話しながらぼろぼろと落涙するおアキ。
横で聞いていたヨシ坊も思わずえーやー貰い泣き。

神妙な顔で聞いている哲也と路泰だったが、
哲也(客取れって言われても……)
路泰(……取れなかっただろうなぁ)
と、内心思って……いません。
そんなおアキの前に別世界の人間のように現れたのが、モナリザこと葉子だったのだ。
おアキはモナリザとたちまち仲良くなる。
おアキはモナリザを自分の家へ連れてくるが、母親にたむろしている暴力団に売り飛ばされ、覚醒剤まで打たれそうになる。そこへもナリザが飛び込んできて、「カミソリマコ」の異名の由来である、カミソリを振り回してヤクザからおアキを助ける。

モナリザは、おアキ同様、売春させられている少女たちと共に、倉庫に身を隠す。
おアキ「あんた見付かったら殺されちまうよ」
モナリザ「私はいつ死んでも良いの、でも、あんたたちは違うわ。あんたたちはまだ胸の中に夢を住まわせている人たちだもの。その夢が粉々に砕ける前にここを出て、新しい生き方を見付けるのよ」
おアキはこの時、モナリザが常に数珠を握っていることに気付く……。
だが、その場所も暴力団に発見され、おアキたちが捕まる。

モナリザ「その子たちは放しなさい、その代わり、私があなたたちの言うことにすべて従うわ。客を取れと言うのなら、私が客を取ります」
毅然として言い放つモナリザ。
モナリザの台詞に、ついよからぬことを想像した人、手を上げて! ……あ、俺だけか。
暴力団員「おもしれえ、それならまず、こいつから始めて貰おうか」
男は覚醒剤の注射を見せびらかすが、
モナリザ「いいわ」
モナリザは平然と自ら腕をまくって、男たちのされるがままになる。
で、ほんとに注射を打たれてしまうのである。
ふらふらになるモナリザだったが、あの数珠を強く握り締めて正気を保ち、ナイフを奪って注射をした男のどてっぱらを深々とえぐる。
おアキ「信じられない光景だった。覚醒剤を打たれたら、誰だってぐったりして言いなりになっちまうのに」
警察に連行されるモナリザに、号泣しながら「あんたのことは一生忘れないよ」と叫ぶおアキたち。
モナリザは前を向いたまま、「みんな、体を売るような人生だけは送らないでね。体を売ったら心まで持って行かれちまうからね」
おアキ「他人の為に平然と命を投げ出せる人間に出会ったのはマコが初めてさ……」
同じ頃、モナリザも殺人の過去について同室の少女たちに告白し終えていた。

モナリザ「隠してた訳じゃないんだ、人を殺したなんて最低だからね」
ミドリが慰めるつもりで「あんたが悪かったんじゃないよ、私だってその場に居たらそいつらぶち殺してたよ」と言うが、
モナリザ「ナマ言ってんじゃないよ! 人を殺すってことがどういうことだか分かってんのかい?」 モナリザ「その瞬間、魂が物凄い音を立てて破裂するんだ。私はその時、砕けた魂の破片がカミソリの刃の様に私の体を突き抜けて、天空に飛び散っていくのを感じていた。人間らしい心も感情も、みんな粉々に砕けちまうんだ。私に残されているのは恨みだけさっ」
笙子はモナリザの独演会の後、無言で部屋を出て、
ナレ「殺人まで犯してしまったモナリザを救えるのは哲也しかいない。だとしたら、私は哲也さんを諦めよう。それは笙子にとってこの上もなく悲しく残酷な決断であった」
悲愴な覚悟を決めて涙するのであったが……、
笙子が今まで何度も「哲也さんから身を引こう」とか言っては、結局いつの間にかラブラブに戻っていることを思い合わせると、如何にも説得力がない。
その頃、入院していた麻里が病院から脱走する。
たまたまそれを知ったさと子が笙子に知らせ、麻里が笙子に復讐しに来るつもりではないかと警戒するが、
笙子「違うわ、麻里は朝男に会いに行ったのよ。麻里は朝男が好きで好きでしょうがないんだ」
同じ恋する乙女として、笙子は麻里が捕まる前に朝男と会えるがいいがと気遣っていた。
気遣うまでもなく、既に麻里は朝男と再会していた。だが、

朝男は包帯を巻いている麻里の顔を容赦なく引っ叩くと、
「バカヤローッ、流星会の副会長がなんてざまだ! 何処の誰ともわからねえハンパ者に病院に送られるとは情けねえぜ!」
朝男、基本的にはナイスガイなのだが、劇中での麻里に対する冷たい仕打ちは、見ていてあまり気持ちが良くない。ストーリー上の都合であるとは言っても、だ。

麻里「朝男、あたいはあんたに会いたかったんだよ!」
人の目も気にせず、そう叫んで朝男の胸に抱き付く麻里が実にいじらしい。
だが、朝男はあくまでつれなく、「やめろ、俺は命令に背く奴は許さねえ、お前はもう流星会の副会長でもなんでもねえ、ただのズベ公よ」と、その体を突き飛ばす。

麻里は仲間たちとバイクで走り去る朝男の背中に叫ぶ。
「あたいは朝男が好きなんだーっ、朝男が好きなんだよーっ、朝男ーっ!」 麻里と言うキャラを、笙子やモナリザに負けず劣らず強烈なものにした、比企さんの素晴らしい演技である。

さて、何かと暗い話題(誰も働こうとしない、とか)が多い久樹家。
今度は、葉山家から哲也と恭子の縁談を破談にすると言う正式な通知が内容証明で送られてきたと、信子の機嫌がますます悪くなる。
信子「これでおしまいです。久樹家は笙子と言う女と、葉子の為にめちゃくちゃですわよ。哲也、お前が、笙子なんて不良少女にうつつを抜かしさえしなければ……」
当然、最終的な怒りは哲也に向けられる。
哲也、全くその通りなので反論のしようがないのだった。
葉山家では葉山家で、両親の勝手な取り決めに激怒した恭子が家を出て行くなどと言い出して、悶着が起きていた。葉山家は、哲也の代わりに、男谷と恭子を結婚させたい腹らしい。
翌日(なんせ暇なもんで)路泰は、哲也を伴ってあるお墓へ参る。

その墓標に、「長沢真琴」と書かれてあるのを見て、哲也は驚く。
哲也「この方は?」
路泰「葉子の母親だ」
哲也「なんですって?」
路泰「恐らく葉子は、巡礼の旅の途中でこの寺を訪れ、長沢真琴が自分の真実の母であることを知ったんだろう。そして死の真実もな……」
路泰は、長沢真琴の21回目の命日にあわせて、関係者を集めて過去の経緯を全て話すと決意するのだった。