「吉宗評判記 暴れん坊将軍」傑作選 第87話

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　第87話「八百万石を狙う凶弾」（1979年11月17日）

　初代お庭番の助八が殉職する回である。

　個人的には、助八とおそののコンビが最高だと思うので、この降板はとても残念である。

　
　冒頭、江戸城のおおらかな合成画面をバックに、吉宗が数人の武士に襲われる。

　
　不意を衝かれた為か、いきなり流血する吉宗。

　
　だが、流血どころか一方的に切り刻まれ、最後は短筒（ピストル）で撃たれ、そのまま殺されてしまうのである！

　この辺で、これは誰かの見ている夢か、想像なのだと気付くが、それにしてもショッキングな映像である。シリーズを通して、吉宗がはっきり殺されるシーンはここだけだと思うが？

　顔面蒼白で布団の上に起き上がったのは、じいであった。

　じいは不吉な物を感じ、早朝にも拘らず登城して、吉宗に会おうとする。
　が、例によって吉宗は城を抜け出て、市中を徘徊していた。

　じい「おお、おその、上様は？」
　おその「いつものように街にお出掛けです。どうなされたのです？」
　じい「夢じゃ、夢を見たのじゃ」

　
　おその「夢？」
　（貼りたいだけ）

　じい「上様が短筒に撃たれて……」

　
　おその「でも、夢でございましょう？」
　（貼りたいだけ）

　じい「笑う奴があるか、正夢と言うこともある」

　じいは忠相に会い、吉宗の行方を尋ねると、吉宗は一昨夜、濠端で見掛けた殺人事件の探索に当たっているようで、彼もその所在を知らなかった。

　その後、吉宗が夜中にめ組を訪れ、町人姿になりたいから衣装を貸して欲しい、ついでに髪も結い直して欲しいと頼みに来たことが判明する。

　もっとも、今回の事件は複雑で、それに特に面白くはないので割愛する。
　要するに、吉宗は事件の捜査の為、渡り中間になりすまして、口入屋に潜り込んでいたのだ。

　そんな将軍がいるかぁーっ！

　……ハッ、今更のことながらつい叫んでしまった。

　ほどなく、吉宗は城に戻ってきて、無事な姿をじいに見せる。
　じい「やはり上様は、ここにこうしておられるのが一番、いやぁ、今度と言う今度はほんとに胆が縮みました」

　
　安堵の声を上げるじい。
　ここで珍しく、廊下に控えていた助八が言葉を重ねる。

　助八「上様、加納様のお気持ち、何卒お汲み取りを」
　吉宗「助八？」
　助八「上様のお気持ちのままにかなり無謀なお供も致して参りましたが、上様は我らと違います。我らはどうなろうと構いませぬが、上様はテンガ様！（註1）　それでは済みませぬ。出来るだけ無謀は御慎み頂きとう存じます」
　じい「そうじゃそうじゃその通りじゃ」
　吉宗「助八、お前には無理ばかり押し付けてきた、済まぬ。出来るだけそうするぞ！」

　助八の心からの諫言に、吉宗もそう約束するのであった（註2）。

　で、最後はワルモノたちの屋敷に乗り込む吉宗。これを「無謀」と言うのである。

　
　そして、じいが夢で見たように、短筒が吉宗に向けられる。
　助八「危ない！」

　助八は咄嗟に身を以てその弾を受け、吉宗を守る。

　怒りに燃える吉宗は、悪の元凶たちを自らの手で斬り殺す。

　
　そして、瀕死の助八の体を抱き起こす。
　吉宗「助八、助八、しっかりしろっ！」
　助八「上様、何卒、ご懸念なく……、こ、これで良いのです。上様のお身代わりになれて満足でございます。おその、上様を頼むぞ！」

　
　おその「助八殿！　助八殿！」
　同僚の死を目前にして、おそのも目に涙を浮かべてその名を叫ぶ。

　助八「上様、お別れ致します……」
　吉宗「助八！」
　助八は、吉宗から拝領の短刀を誇らしげに持ちながら、満足そうに笑みを浮かべてこときれる。

　うう、感動の場面である。

　シリーズで、いわゆる初の殉職者になると思うが。

　
　その後、助八の遺体の前に座り、手ずから供養する吉宗。
　その胸裏には、今まで苦楽を共にしてきた助八の在りし日の姿が、生き生きと甦っていた。

　ナレ「紀州以来吉宗の片腕として働いてきたお庭番頭・薮田助八がその役目に殉じた。常に吉宗の影にあってある時は走り、ある時は飛び、傷付き、血を流し、我と我が身を捨てて吉宗を支えてきた助八、その姿はもう二度と見られない……吉宗の悲しみは計り知れぬ物があった」

　で、これに懲りて、今後は自ら敵地に乗り込むような無茶はやめるかと思いきや、勿論そんなことは一切お構いなしなのだった。これじゃ助八も浮かばれまい。

　ちなみに、500回記念スペシャルでは、何事もなかったように助八が吉宗の前に元気な姿を見せている。

　（註1……男性用性欲処理アイテムの敬称ではない。天下様と書いて、将軍のことを意味する）
　（註2……無論、そんな約束を守るつもりはさらさらない）