「魔法少女ちゅうかなぱいぱい！」第7話 前編

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　第7話「七色の恐竜」（1989年2月26日）

　買い物カゴを提げて街中を慌しく走っているぱいぱい。

　
　と、三軒茶屋のババァと鉢合わせする。

　ババァ「ぱいぱい、そんなに急いで何処へ行くんだね」
　ぱいぱい「学校です。今日はシンゴ君の授業参観なんです」
　ババァ「授業参観ー？」

　ババァ、視線を上下させてぱいぱいのいでたちをとっくりと眺めてから、
　ババァ「こんな普段着で？　あんたねぇ、参観日ってのは母親たちが服を見せ合う為にあるのよ！　学校ってところは、なんでも普通にしとかないと顰蹙買うんだから……、スーツに着替えて行きなさいスーツに！」

　親戚の年長者らしく忠告する。ババァも、最初の頃と比べると、普通に会話が成り立つほど大人しくなってしまったなぁ。

　ぱいぱいのスーツ姿、是非見たい管理人であったが、「もう時間ないんで」と、ババァを置いて走り出す。

　
　シンゴの教室では既に図工の授業が行われていた。
　着飾った母親たちの列に加わるぱいぱい、明らかに浮いていたが、元気にシンゴに合図を送る。

　シンゴも後ろを向いてホッとしたような笑顔になる。

　
　ちなみに担任の若い女の先生だが、最初見た時、どこかで見た顔だなぁと思ったが思い出せず、一瞬、小高恵美さんかと思って、だったら「花のあすか組！」の名コンビの再来かと興奮しかけたが、無論、全然別人であり、「長七郎江戸日記2」で、お光を演じていた速川明子さんだった。

　
　床に大根などを落として拾い集めているぱいぱいに、「お下品ねえ、どなた、これ？」と冷ややかな目を向けるマダム吉尾、演じるのは現在もバリバリ活躍中の三谷悦代さん。

　友人の母親が「ほら、高山さんの……」と耳打ちする。

　
　授業では、子供たちに恐竜の絵を描かせるという課題が行われていた。

　最後に、先生がみんなの絵を集め、「特にこの絵は素敵です。まるで写真に撮ったようですね」と誉める。
　それは、マダム吉尾の息子ひでまさが描いたものだった。

　晴れがましい舞台での息子の活躍に、当然マダム吉尾は誇らしげに笑み崩れる。

　だが、

　
　先生「でも皆さん、先生が一番素晴らしいと思ったのはシンゴ君のこの絵です。七色の恐竜、水玉模様の恐竜、縞模様の恐竜、先生、こんなに楽しい夢のある恐竜の絵、はじめて見ました。シンゴ君、最高よ！」
　シンゴ「うん！」

　最高の栄冠は意外にもシンゴの上に輝く。ぱいぱいも盛んに拍手を送って讃える。
　一方、マダム吉尾やひでまさは、シンゴに憎しみの目を注ぐ。

　で、シンゴのその絵が学年（1年生）全体のトップ、金賞に選ばれて廊下に貼り出される。
　鼻高々のシンゴは、兄たちを引き連れてその絵を見せに来るが、

　
　ちょうど先生がシンゴの絵と、ひでまさの絵を取り替えているところだった。
　シンゴ「僕の絵どうなるのー？」
　先生「ごめんなさい、あなたの金賞取り消しになったの」
　シンゴ「ええっ」
　先生「実はね、ひでまさ君の絵が金賞になったの。シンゴ君、恐竜の肌の色はこういう色してるのよ。はい、この絵返します」
　シンゴ「先生、こないだ僕の絵誉めてくれたのに、なのに、どうしてー」

　理不尽な仕打ちに、早くも半べそになるシンゴ。

　
　先生もその様子を悲しそうに見詰めていたが、「ごめんなさいね」と何度も謝りながら行ってしまう。

　残念ながら、速川さんの出番はこれだけであった。

　
　アキラもトオルも、訳が分からず首を傾げていると、クソ生意気なひでまさが現れ、「うちのママが校長先生のところへ行っただけさ」と、むしろ誇らしげに内幕を暴露する。

　
　校長のところへ押しかけてクレームをつけているマダム吉尾の図。
　「七色だの水玉模様だのの恐竜がいた訳じゃなし、でたらめを描くシンゴって子は問題児ざます！　それにぱいぱいとか言う母親代わりの女も参観日にお大根抱えてやってくるんざますからね～！　金賞取り消して下さい！」

　ドスの利いた台詞回しが素晴らしい悦代さん。
　こんなＳっぽい熟女が「お大根」などと言うフレーズを口にしているのを見るとついコーフンしてしまうと言うあなた、今日から立派な変態の仲間入りです。

　さすがのシンゴも頭に来てひでまさに掴みかかろうとするが、大勢の手下が現れ、三人を威嚇する。
　アキラ「あいつのうちはこの辺の有力者だからな、6年生の子分も一杯いるんだ。相手が悪いよ」

　情けなくも退却する三バカ兄弟であった。

　
　その日の高山家の夕食。珍しくババァも一緒にぱいぱいの手料理を味わっている。

　ひとりあの絵を見詰めて落ち込んでいるシンゴを、ぱいぱいは気の毒そうに見ていた。

　ババァは料理を真っ先に平らげると、
　ババァ「だから言ったじゃないのぱいぱい、参観日に普段着で行ったり、変な恐竜の絵なんて描いたり、普通じゃないことをすると、とかく世間じゃ睨まれるんもんなんだよ」
　さりげなく鋭い指摘をするババァ。

　
　ぱいぱい「すいません……でも」
　ババァ「でも、なんだい？」
　ぱいぱい「あのー、世間世間て、そんなに世間に気兼ねして、いざ困った時、世間は助けてくれるものですか？」
　ぱいぱいも、負けじと反論する。

　
　ババァ「理屈はおよし！　この日本は普通じゃない人間は生きていけない国なの！」

　大胆にも言い切るババァ。ま、そう言うババァ自身が一番普通じゃないんだけどね。

　ぱいぱいは納得できない顔でそれでも「はい」とババァの顔を立てて頷く。
　ババァ「分かればいいの。さてと、そろそろ私は帰りますからね。みんなしっかりするんですよ」
　行男「はい」

　ババァが部屋を出るや否や、「ババァやっと帰ったな、二度と来んじゃねえあんなもん」などと悪口を言う行男。しかし、仮にも自分の実の姉なんだけどね。

　ババァ、ひょっこり顔を覗かせ「行男さん、頼みましたよ。仮にも一家の主なんですからね」と念を押す。
　行男、たちまち態度を変えて「かしこまりました」と一礼する。

　「食った食った腹一杯でぇーい」と喚きながら玄関へ向かうババァ。
　行男「信じらんない！」

　シンゴはその間もずーっと落ち込んでいた。
　ぱいぱいはその横に座り込んで、「シンゴ君、元気出してご飯食べよ！」
　シンゴ「ぱいぱい、僕、水玉模様と七色の恐竜がほんとにいたって気がするんだよ」
　ぱいぱい「そうよね、きっといたわよ」

　突然、行男が宙を睨んで「七色の恐竜はいた！」と叫ぶ。
　行男「その証拠を見せてやる、ぱいぱい、君も来なさい」

　行男はぱいぱいと一緒に吉尾家を訪問する。

　
　行男「奥さん、この恐竜の絵がでたらめのこんこんちきだと仰ったそうですな」
　吉尾「ええ全くふざけた絵ですわ」

　行男は持参したブロントザウルスの尾てい骨だと言う大きな化石を取り出してマダム吉尾に見せる。

　行男「かけらですが、本物ですぞ」
　吉尾「だからなんなんですの？」
　行男「全世界でこういう恐竜の骨が発見されているんです。しかしながら恐竜の皮膚が色がついたまま出土された例はひとつもないのです」

　ぱいぱい、行男の言葉を引き取って、「つまり恐竜がどんな色をしてたかまるっきり分からないんです。だから七色の恐竜がいたとしても決して不思議じゃないんですよ！　それでもシンゴ君の絵はでたらめだって言うんですか？」と、問い詰める。

　理屈で責められ、有効な反撃が出来ないマダム吉尾。怒りのあまり席を立ち、背中を向けて体を震わせている。

　
　勝利を確信するぱいぱいが可愛いのである！

　後編に続くのである！