第19話「運が悪けりゃターゲット」(1979年10月28日)
麻生探偵事務所を依頼人の井口設計事務所の平島と言う男が訪ねている。

それを、蟹江敬三さんが演じている。さすがに若くて肌がツヤツヤ!
仕事の内容は、伊豆の旅館に三日間宿泊して欲しいと言う、奇妙なものだった。
なんでも、彼らの取引先である建設会社が、年に一度下請け業者を南伊豆に招待する慣例になっているのだが、社長の井口も平島も、どうしても予定があって行けないらしいのだ。で、社長の代理として、誰か伊豆へ泊まりに行って欲しいと言うことらしい。
しかし、単なる代理なら誰でもいいわけで、何も報酬(15万円)を払ってまで探偵事務所に頼みに来ると言うのはいかにも説得力のない話である。
だが、三泊四日の接待旅行と言う、仕事とは思えないほど楽しい役得に目が眩んだか、それともここで疑うと話が止まってしまうからか、麻生は何の疑問抱かず、「私が行きましょう」と率先して仕事を受けてしまう。
ところが、平島は何故か、芹沢、つまりジュンを指名してくる。
ジュンは、建設会社の社員の運転する高級車(ビュイック)で南伊豆へ。
旅館に着くと、大勢の男性社員が出迎えてくれる。
ジュンの世話をする二人の男は、到着早々、良い釣り場があると、ジュンを釣りへ誘う。

暢気に釣り糸を垂らすジュンだったが、川の反対側の草むらの中から、ライフル銃で狙っている者がいた。
ジュン、魚を釣り上げて興奮するが、引き揚げた途端、銃で撃たれて顔から下が消し飛んでしまう。
ジュン「これ今確か、全部ついてましたよね?」
男「いえ、最初からこうでしたよ」
ジュン「えっ、変わった魚だな」
天然にも程があるジュン。自分が狙撃されたとは露ほども気付かない。

続いて、マイクロバスで移動中のジュンたち。ジュンがバスガイドごっこをしている。
ジュン「私、
マサカリクサオがバスガイドを務めさせて頂きます。右手、ご覧下さいませ」
ジュンが右手を示すと、同行する社員たちが一斉に右側を向く。ここで、コキコキッと首の関節の鳴るSEが入るのが笑える。
ジュン「東洋の神秘、世界の奇跡と騒がれました伊豆の山でございます」

ジュン「それでは移りまして、左手、ご覧下さいませ(ゴキッ)。東洋の神秘、世界の奇跡と騒がれました伊豆の海でございます。それではさらにさらに左手、ご覧下さいませ!(バキッ)皆様、だいぶ肩が凝っていらっしゃるようで……」
海岸をランニングした後、サイクリングを楽しむジュン。社員たちは、仏頂面でジュンの後に続く。
だが、山道を走っていたジュンの自転車のタイヤに、誰かが木の枝を突っ込み、転んだジュンは崖から落ちそうになる。岩にしがみついたジュンは、男たちに引っ張り上げられ、なんとか事なきを得る。

その晩、ジュンは経過報告の為、麻生に電話をかけてくる。
ジュン「空気は美味しいし、人々みな親切、南伊豆最高だぜ。これから宴会なんだけどさぁ……」
だが、ジュンが何気なく崖から落ちそうになったと話すと、麻生の顔が険しくなる。
ダーツ「落ちりゃ、遺体確認で」
ナビ「伊豆行けたのになーっ!」
麻生「うるさい」
ジュン「枯れ木が車輪に挟まっちゃってさ」
麻生「じゃあ枯れ木を踏んだのか?」
ジュン「いや、踏んだ覚え全然ないんだけどさ……」

電話を切った後、麻生は「依頼主を洗ってみよう」と言い出す。
麻生「ジュンを指名してきたのがどうも引っ掛かってたんだ」
ダーツ「そりゃああいつは普段から可愛ぶってるもんねー」
ナビ「指名があるの当たり前よねー」
ダーツ「俺たち可愛くないもんにー」
麻生「崖から落ちそうになったというのも引っ掛かるぞ」
ナビ「引っ掛かるんだったら落ちっこないじゃん、にー?」
麻生「じゃやらんのか」
ダーツ&ナビ「やらんやらん!」
麻生「なんちゅう友達甲斐のない奴らだ」
今回、特に会話の面白さが絶品である。
麻生は井口設計事務所を調べるが、やはりと言うか、そんな事務所自体、存在しないことが判明する。

事務所に来ていた久美子、平島の置いていった名刺を睨みながら、必死で何かを思い出そうとしていた。

やがて「あーっ!」と大声を上げ、麻生たちを驚かす。
ダーツ「動物園じゃねえんだから、変な声出すなよ」
久美子「思い出したのよ、井口純一郎って名前……確か、響組の組長だった」
三人「ってことは、8933!」
久美子「なにそれ」
三人「ヤクザさん!」

一方、ジュンは、相変わらず社員たちのもてなしを受けて、ご機嫌であった。
川の中にある温泉に浸かっていると、外壁から二人の殺し屋風の男が近付き、銃口をジュンに向ける。
しかし、超天然のジュンは、それに気付くどころか、水道の蛇口だと思って引っ張ったり撫で回したりする始末。それでも銃弾が発射されると、さすがに驚いて逃げようとする。しかし社員たちに宥められ、無理矢理に宿泊を続けることになる。
麻生とダーツは、響組の事務所を監視する。と、事務所の中に、平島と名乗ったあの男がいるではないか。しかも、近くの路上には、新妻署の刑事が張り込んでいる姿も見られた。

今回は嬉しいことに管理人イチオシの準レギュラー、谷村女史が大活躍するのである。
麻生からの電話を受けるも、「こっちは機嫌が悪いのよ、無能編集者がいるからね!」と、とりつく島もない。ところが、ジュンの名前を聞いた途端、態度がコロッと変わってしまう。
慌てて事務所へ向かいながら、過去の出演シーンをまじえつつ、谷村女史が朗々と歌い上げるモノローグがこれまた絶品。
「ジュンちゃん、私のジュン、愛しのジュン、過ぎ去りしあの日、あの夜、あの笑顔、あの怯え顔、あんときジュンちゃん、あなた、ギョーザライスが食いたいと言った。あたしはそんなのやめて生牡蠣の酢漬けが食いてえー。いや、食べたいと言ってしまった。(中略)ギョーザライスを食べさせて上げれば良かった。命短し食わせよ、ギョーザ、
君死にたもうことなかれーっ! 私、伊豆の海に向かって岸壁に立ち、母は来ました、今日も来た~、大盛りのギョーザを胸に、ジューン、カンバック、ジューン! ジューン、カンバック、ジューン!(エコー)」
結城美栄子さん、やりたい放題!

で、事務所に来た谷村女子、響組についての情報を提供する。
響組と敵対している紅興業は、響組に戦争を仕掛ける準備をしているらしい。
谷村女史は、ジュンを危ない目に合わせている麻生の責任を追及し、それを庇い立てするユーコと激しい火花を散らす。と、久美子が週刊誌を広げて麻生に見せる。

そこには、ジュンそっくりの井口と、平島が並んで葬儀に参列している写真が掲載されていた。
麻生「ジュンじゃない、目の横に傷がある」
谷村「まずいよそりゃ、だってさ、対立する紅興業とすれば、組長を殺すのが響組をやっつける最高の策じゃない」
ユーコ「それに気付いた響組が、ジュンを身代わりに……」
ナビ「だけど安全じゃないの? 響組はジュンを守るんだろう?」
谷村「あっそっか

」
麻生「違うな、それじゃジュンをわざわざ連れて行った意味がない」

麻生、いつになく名探偵の顔になり、推理を披露する。
麻生「考えられることはオンリーワンだ。井口の身代わりであるジュンを紅興業に狙わせる。そしてそれを口実にして紅興業を叩き潰す。その為に狙いやすいようにジュンをわざわざ南伊豆まで連れて行った!」
谷村「ジュンちゃんが、危ないよ……」
ジュンのことを心配する谷村女史が可愛いのである! (また始まったか……)
ユーコ「どうするの? ジュンが危ないわ」
麻生「……俺はヤクザが嫌いでね。叩き潰す!」
後編につづく。