第36話「風雲の宇宙海にイガ戦士団Z旗あがる」(1983年11月11日)
地球に向かう一隻の宇宙船があった。地球周辺の宙域管制もしている電は交信を試みるが、船は何の応答も寄越さないまま、飛び続ける。
同じ頃、マドーもその船の存在に気付くが、彼らのところには暗黒銀河シンジケートからの情報が届いており、それがベル姉弟と言う宇宙戦士のものだと承知していた。魔王サイコはガイラーに抹殺を命じる。

少し遅れて、電のところへも、マドーと戦っている宇宙戦士で、電とも面識のあるリタからメッセージが入る。
リタ「シャリバン、ベル姉弟が地球に向かったわ。ベル姉弟はマドーに恨みを抱いていてね、マドーに復讐する為に地球に向かったのよ。とにかく向こう見ずの姉弟だから何をしでかすか分からないわ。お願いシャリバン、二人を保護して欲しいの」
そう言えば、この間、シャーロット・ケイト・フォックス主演で「名探偵キャサリン」が放送されたが、同じ「花の棺」を原作にした「京都殺人案内1」(1979年)で、キャサリンを演じていたのが、このリタ役のシェリーさんだったんだよね。
二人のスペースボートは山の中に着陸していた。既にガイラー将軍が大軍(10人ほど)を率いて取り囲んでいる。だが二人は恐れる色もなく宇宙船から出て走り出す。
戦闘機やファイトローから一斉に攻撃されるが、二人は難なくそれをかわして逃げることに成功。

だが、そんな二人の前にマドーより怖いお兄さんが立ちはだかる。
電「ベル姉妹だな」
ビリー「誰だお前は」
電「宇宙刑事シャリバン!」
ヘレン「リタに聞いたことがあるわ、マドーと戦ってる宇宙刑事がいるって……」
電「そのリタからメッセージが届いたんだ。保護してくれってね」
ビリー「お節介なオバサンだぜ」
電はマドーの強大さを説くが、自信過剰の二人は聞く耳を持たず、電を置いて行ってしまう。

ガイラー、二人を取り逃がしてすごすごと城に戻ってくる。
ガイラー「とんだ失敗で面目次第もございません」

と、レイダーがいつものようにスーッと床を滑るように現れる。
レイダー「私が片付けて来よう」
自信満々に名乗り出るレイダーだったが、
サイコ「レイダーはシャリバン討伐に失敗した。当分謹慎を命じる」
レイダー「承知した」

物凄く恥ずかしい場面に直面したレイダーであったが、贅言は費やさず、ガイラーとポルターの間をズズズズと突き進んでさっさと退場する。
ガイラーもポルターもその威風堂々とした態度に(どてらい奴だ)と感心する(註・しません)。
もっともシャリバン討伐に失敗するたびに謹慎していたら、大幹部は常に欠席することになる。

サイコ「ポルター、レイダーに代わり再び実戦部隊の指揮を取れ」
ポルター「はっ!」
目をキラキラさせて答えるポルター。仕事に燃えている女性は美しい。
一方、ベル姉妹は使われていない倉庫に潜んでいたが、電が入ってくる。

電「どうしてそんなにマドーを恨むんだ?」
ヘレン「あなたには関係ないことよ」
電「人間なんてひとりで生きられるもんじゃない。お互いに信じ合い、助け合い……」
ヘレン「甘い! 私たちは誰も信じないわ。信じたら裏切られるだけ!」
電はもっと安全な隠れ家を探してくるから、ここを動くなと命じて、その場を離れる。
わざわざ隠れ家を探さなくても、グランドバースに乗せてやれば良いのでは?
ビリーは電をマドーのスパイではないかと疑うが、ヘレンは電に好意を寄せていた。
と、マドーもすぐに彼らの居場所を嗅ぎ付け、猛撃を加える。
二人は砲撃をかいくぐりながら逃走し、川の近くに身を潜める。
ビリー「隠れ家を探してくるなんてぬかしやがって!」
ビリーは、電が自分たちの居場所を教えたのだと思い込み、悪態をつく。
そこへ、魔怪獣ブンリビーストが現れ、襲ってくる。ブンリビーストは、ミイラ怪獣ドドンゴのように、二人のスーツアクターが入って動かすキャラで、しかも状況に応じて上半身と下半身が分かれて、二対に分離できる、特殊な魔怪獣であった。つまり、実質2体分の着ぐるみが使われている訳で、制作サイドの気合の程が伝わってくる。
さすがの二人も魔怪獣相手では歯が立たない。
倉庫に食糧を持って戻ってきた電は、二人の姿がないのに驚く。だが、何故か彼らの助けを求める声がテレパシーとなって電に届く。
電はジープで急行して二人を助けるが、その際、ビリーが怪我をしてしまう。
電は二人を海辺の洞窟の中に匿う。
電から手当てを受け、ビリーはつらそうに目を反らす。
ビリー「俺、シャリバンのこと疑ってた、マドーのスパイじゃないかって……ごめん、俺間違ってた」

やがて、ヘレンがぽつぽつと身の上話を始める。
ヘレン「私が10才、弟が5才の時に両親が殺されたの。他の惑星を旅行中にマドーの戦闘艇に遭遇してしまったの。武器も装備していない連絡船にミサイルを浴びせて撃墜したのよ、マドーは……私たちを育ててくれたのが宇宙戦士だったの」
電「それで君たちも宇宙戦士に……」
ヘレン「いつかマドーに復讐してやろうと惑星から惑星を渡り歩き腕を磨いたわ。戦いに明け暮れるゲリラの毎日、密告、裏切り、いつか人間を信じないようになってしまったの」
ビリー「でも俺、シャリバンは信じる、これからずっと!」

ふと電は、ビリーが胸に下げている奇妙な形の彫刻に気付く。
それは、イガ星の守り神、イガ獅子をかたどったものだった。
電「これは?」
ビリー「お守りだよ」
ヘレン「私も持っているわ」
電「君たちはイガ星の末裔では?」
ヘレン「イガ星? パパに聞いたことがあるわ。イガ星はマドーに滅ぼされたって」

電「そうだよ、俺もイガ星の末裔なんだ!」
ヘレン「シャリバンも?」
電「ああ、俺の使命はイガ星を再興すること。その為にマドーと戦ってるんだ。俺たちは同じ星の人間なんだ」
電の言葉に、三人は手を重ね合わせ、潤んだ瞳を見交わす。
電「銀河の果てにもいたとはな、同志が!」 ベル姉弟、いまさらそのお守りがイガ星跡地で買った修学旅行のお土産だとは言い出せないのだった。 思わぬ巡り合わせに感激を隠せない電だったが、水を汲みに洞窟から出た僅かな隙に、二人をまたしてもマドーに連れ去られてしまう。

さらに、洞窟に仕掛けられた爆弾に気付いて飛び出す電。
そして、

ガイラーの剣から放たれた衝撃波がビリーを直撃する!
ビリーはこれが元で死んでしまうのだが、ひょっとして、ガイラー将軍が劇中で立てた唯一具体的な手柄だったかも知れない。
怒りに燃える電、「赤射」する。
ブンリビーストの分離攻撃に苦戦するが、何とか撃破する。

戦いの後、ビリーは姉の胸の中で息を引き取る。電を「兄貴」と呼び、お守りを託しながら……。

ビリーの墓の前に立つ電とヘレン。
電「連れて行ってやりたかった。イガ星へ」
ヘレン「ビリーは満足だったわ。いつも言ってたの、兄さんが欲しいって……地球に来て、ほんとに良かった」
気丈にも笑顔を見せるヘレン。
電「これ以上無茶はしないでくれ、ビリーに頼まれたんだ」
ヘレン「私は戦う、マドーと。でも今の私の実力で歯が立たない。鍛えなきゃ、もっともっと! シャリバンの足手まといにならないように!」
ヘレンと言う新しい同志を得て、電の瞳は希望に燃えるのだった。