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「スーパーロボット レッドバロン」セレクション第39話

 第39話「機械じかけの明日」(1974年3月27日)

 長らくお送りしてきた「レッドバロン」もいよいよ最終回。
 しかし、この最終回、今までの盛り上がりからすると、いかにもバタバタとしていて、不満である。打ち切りに近い形で終了を余儀なくされたせいもあろうが……。

 前回からの続き、度重なる反逆行為に、健太郎が自分の息子である健に銃をつきつけているところから。

 1発だけ弾を込めたリボルバーを健の額に向けて引き金を引く健太郎。健も死を覚悟するが、寸前で処刑をやめさせたのは、意外にも総統のギラスQであった。

 ギ「紅博士、紅健の銃殺を中止せよ」
 健太郎「しかし健は、惑星ミサイル計画の秘密を地球に漏らしました」
 ギ「いやそれより、紅健とレッドバロンを宇宙鉄面党の戦力として残す方が得策じゃ」
 健太郎「ハッ、総統の仰せの通りに致します」

 あくまで健とレッドバロンを自分たちの仲間に引き入れようとするギラスQの色気が、宇宙鉄面党を破滅に追い込むことになる。

 ちなみにギラスQの声はいかにもコンピューターと言う感じに処理されている。と言うか、ほぼポール星人と同じである。

 PDVD_001.jpg
 と、急に健太郎が胸を押さえて倒れ込む。すぐ医者がやってきて治療するが、健はそこで、健太郎の体が脳以外がサイボーグであることを知る。

 このドクドクと脈打つ人工心臓のビジュアルはなかなかグロい。

 健太郎は治療の後、健の手錠を外す。ここがちょっと納得いかないのだが、健はそのまま基地を出て、レッドバロンに乗り込んでしまうのである。いくらなんでも自由に振舞いさせ過ぎであろう。

 健は地球に帰れないまでも、惑星ミサイル・フォボスの推進装置を破壊してやろうとするが、エネルギーがゼロになっていた。
 健「誰かが原子炉を抜き取っている。これじゃ歩くことすらできん」

 原子炉を抜き取るって……。

 その頃、地球のSSIメンバーは、電送移動装置捜索中に行方不明になった熊野警部を探しに、宇宙線研究所へ突入していた。何で熊野がそこにいるのを知ったのか、謎であるが。

 真理たちはすぐ縛られている熊野を発見して近寄ろうとするが、無論、鉄面党が罠を仕掛けていて、全員、捕まってしまう。

 ここでも、すぐ殺せばいいのに、火星のギラスQの命令で、全員火星に転送させられる。彼らをフォボスの操縦席に座らせ、地球に激突させようと言うのだが、これまた意味不明の命令である。

 PDVD_004.jpg
 とにかく、真理たちは電送室に入れられ、一瞬で健のいる部屋に現れる。

 健太郎が温容を湛えて入ってきて、「ようこそ火星へ、健、皆さんにコーヒーでも差し上げてはどうかね」

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 次のシーンでは青い砂浜に椅子を並べてお茶を飲んでいる健たちの姿が映し出される。

 真理「博士、素敵なお部屋ですね」
 熊野「これで波の音が聞こえれば、地球の海岸と全く同じだ」
 健太郎「これはアドバルス方式による立体スクリーンを壁にあしらってみたんですよ」
 熊野「さすが紅博士。科学技術の極限の姿ですな」
 真理「健、良かったわね、お父様、お元気そうじゃない?」
 何も知らない真理たちは、和やかに健太郎と話していたが、健はひとり無言を貫き、立ち上がってみなに背を向ける。

 健「……」
 健太郎「はっきり言うと良い、私が宇宙鉄面党技術パートの最高幹部であることをな!」
 健太郎はシャツをはだけ、あの人工心臓を真理たちに見せ付ける。息を飲む真理たち。

 健「惑星ミサイルも父が地球へ送り込もうとしてるんだ!」
 三神「あなたのような優れた科学者が、どうして?」
 健太郎「永遠の命は人間の夢です。私は部品を取り替えるだけで、半永久的に生きられるのです」

 三神は、健太郎がイヤホンのようなものを付けているのを見て、「博士は誰かに頭脳を操られてる」と健に耳打ちする。が、次の瞬間、健と健太郎を除く全員が、かき消すようにいなくなる。

 健太郎「彼らはもうフォボス惑星ミサイルに乗り込んでいる」
 健太郎がテーブルのスイッチを入れると、空にスクリーンが表示され、座席に強制的に座らされている真理たち4人の姿が映し出される。

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 健太郎「もうすぐ彼らは故郷へ向けて出発する」
 健「やめろ、やめてくれ父さん! 宇宙鉄面党は地球を侵略したいんだろう? 地球を爆発してしまっては何にもならないじゃないか!」
 健太郎「…………………………あ、そうか」
 健「ジジイ!」

 じゃなくて、
 健太郎「宇宙鉄面党を甘く見るなよ。我らにとって地球は1個のテスト場に過ぎん。惑星ミサイルが成功したら鉄面党はいよいよ宇宙征服に乗り出す。広大無辺の大宇宙を我ら鉄面党が支配する!」

 支配してどうするの?(素朴な疑問)

 健は健太郎の銃を奪って突きつけ、発射をやめさせようとする。揉み合っているうちに誤って引き金を引いてしまい、父親を撃ってしまう。同時に、早くもフォボスが地球へ向けて発射される。

 健は素手でメカロボの大軍を倒しながら基地の中心部へ進み、遂にギラスQと対面する。
 それは巨大な人工知能であった。

 ギラスQ「宇宙は最早このギラスQ様の物じゃ」
 健(バン! バン!)

 情けないほどあっさり破壊されるギラスQ。いくら(番組の)時間がないと言っても、弱過ぎだろ。

 ギラスQの死によって、健太郎も元通りの人格を取り戻す。
 だが、健太郎によれば、たった5分で自動的に二代目のギラスQが誕生する仕組みになっていると言う。

 自動修復装置を備えている訳だが、当時の発想としては、かなり尖っていると思う。

 健は、健太郎から渡された原子力エネルギーカプセルを手に、再びレッドバロンの元へ。

 しつこくデイモスZが戦いを挑んでくるが、健太郎がデイモスZの瞬間移動装置(電送移動装置?)を切った為、遂にレッドバロンが勝利を収める。

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 健太郎の乗るスペースバスが、レッドバロンに合体して推進装置となり、火星を飛び立つ。

 レッドバロンは地球に接近していたフォボスに着陸し、真理たちを救出すると共に、その進路を180度変える。
 自ら作り出した惑星ミサイルを前に、宇宙鉄面党はあまりに無力であった。

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 ギラスQ2号「惑星ミサイルを止めろ、誰か止めてくれー誰か止めてくれー!」

 な、情けない……。

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 こうして宇宙鉄面党本部は(どう見ても火星ごと)壊滅するのだった。

 最期こそ醜態であったが、結局彼らが誰に作られたのか、全く分からないまま終わってしまったのは、結果的に不気味な余韻を残して正解だったと思う。

 終わってみれば、健太郎を含め、一人の犠牲者も出さずに帰還するSSIメンバー。

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 平和の訪れた地球。
 富士山をバックに、野点をしている風雅なSSIメンバー。

 健太郎は、「レッドバロンを操縦させてくれないか」と息子に頼む。

 根性の捻じ曲がっている管理人、てっきりまだ健太郎の洗脳が解けてなくて、レッドバロンに乗り込んでまた何かやらかすのでは? と勘繰ったものだが、全然そんなことはなく、純粋にレッドバロンに乗りたいだけなのだった。

 健太郎の人工心臓が急に狂い出す。地球と火星では気圧が異なるからなのだ。

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 健は父親をおぶって、レッドバロンのところへ向かう。

 健太郎「私は人間より優れたロボットを作ろうと努力しました。でも無理でした。人間はロボットになることが出来ても、ロボットは人間にはなれないからです。私は間違っていた。富士山が雪化粧するように、草や木が春に芽を吹き、秋に枯れるように人の命も時の流れゆくままに生まれ育ち、時を重ねてやがては大地に戻るべきなのです。滅びない命など……滅びない……」
 健太郎の言葉が途切れ、下駄が片方落ちる。

 健「父さん……」

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 健はまだ温もりの残る健太郎の遺体をレッドバロンの操縦席に座らせ、望みどおり、レッドバロンを動かして見せるのだった。

 哲也「すぐ病院に運ぶべきだった。そうすれば助かったかも知れない」
 熊野「いや、紅博士は機械に頼って生きるのが嫌だったんだ。機械じかけの明日を拒否されたんだ。自らの意思で……」
 真理「機械じかけの明日……」
 これが真理の最後の台詞となる。

 レッドバロンを動かしながら、心の中で父親に語りかける健。
 (安心して下さい、父さん、いくら科学が発達しても、科学の奴隷にだけはなりません、絶対に!)

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 熊野「さあ自由にしてやりなさい」

 熊野警部に言われ、子供たちが野鳥を空へ放つ。

 これだけではさっぱり意味が分からないが、38話で子供たちが野鳥を捕まえ、それを見た熊野警部が「命は大切にしなきゃダメだ」と嘆くというシーンがあり、それを踏まえてのことなのだ。それにしても、唐突な感じは否めない。

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 太陽を背に、最後の雄姿を見せるレッドバロン、これがラストカットとなる。

 と言う訳で、「スーパーロボット レッドバロン」のレビューはこれにて幕。


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コメント

この最終回、Bパートの展開が性急ですが、最終3部作としてはかなり見応えがありました。
「父と息子」「機械と人間」というテーマは上原脚本に多いですね。
父親の最後のメッセージは胸に来ますね。
「惰性で生きるな」という叱咤もある気がします。

「レッドバロン」レンタルで全話観て
上原氏の脚本は前後篇が多くて、展開も捻りがあり、かなり面白かったのに対して
藤川氏と伊上氏のがイマイチだったなぁ・・・
しかし、キャスト・アクション・メカデザイン・シナリオ・特撮と高水準・好バランスでした。
「名作」ですよね・・・

レヴューを見させていただいて、その魅力を再発見できました。
ありがとうございました。

Re[1]:「スーパーロボット レッドバロン」セレクション第39話(09/17)  

影の王子様

>しかし、キャスト・アクション・メカデザイン・シナリオ・特撮と高水準・好バランスでした。
>「名作」ですよね・・・

全く仰るとおりですね。
とにかく、スタッフ、キャストの本気度が伝わってくる熱さでした。
それに、やっぱり牧れいさんの存在が大きいです。

>レヴューを見させていただいて、その魅力を再発見できました。
>ありがとうございました。

いーえ、お粗末なレビューでございました。

レッドバロン第39話(最終回)の『機械じかけの明日』について。  

初めまして。私は『牢屋壮一』と言うハンドルネームを使用してインターネット上で『評論(表現)活動』を展開している者です(もちろん『本名』ではありません)。
 実は私も『レッドバロン』のDVDを持っています。本当にこの『レッドバロン』の最終回の『機械じかけの明日』と言う話は考えさせられる話だと私(牢屋壮一)は思います。人工心臓の話ですが、2017年現在では未だ完全な人工心臓は完成していませんが、心臓手術を行っている最中に補助的に使用する『人工心肺装置』は既に実用化されています。遠い未来のいつの日か人類は完全な人工心臓を完成させる時代がやって来るに違いありません。
 そして『人工知能』ですが、人間が作った人工知能に逆に人間が支配されると言う恐ろしい時代がやって来るに違いありません。完全な『人工心臓』はともかく人間(人類)が作り出した『人工知能』に逆に人間(人類)が支配されると言う倒錯した本末転倒の恐ろしい時代の到来を断じて許してはなりません。このレッドバロンの最終回の『機械じかけの明日』と言う話はこのよう問題に対する警告であり警鐘を鳴らす話だと私(牢屋壮一)は思います。
以上です。

Re:レッドバロン第39話(最終回)の『機械じかけの明日』について。(09/17)  

牢屋壮一(評論家)。様
はじめまして、ご丁寧なご挨拶、痛み入ります。

>このレッドバロンの最終回の『機械じかけの明日』と言う話はこのよう問題に対する警告であり警鐘を鳴らす話だと私(牢屋壮一)は思います。

そうですね。当時はまだSF的な話でしたが、今では現実の問題になってますもんね。同時に、40年以上も前からそんな警鐘を鳴らしていた本作の先見性には驚かされます。

盛り上がりに欠ける

確かにこれまでの(良い意味での)テンションが下がってしまった最終回でしたね😅タイトルの機械仕掛けの明日が💮だっただけに残念でしたね😑

Re: 盛り上がりに欠ける

なかなかハードですけどね。

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