「魔法少女ちゅうかなぱいぱい！」第5話 前編

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　第5話「初恋はお嬢様」（1989年2月12日）

　雨の商店街。ぱいはいは傘を片手に、いつもの中華料理屋の前で食品サンプルの棚を見詰めている。

　ぱいぱい（私の愛するレイモンド、私の為にラーメンにされてしまったレイモンド……）
　ぱいぱいの恋人レイモンドは、五目殿下の魔法でラーメンにされてしまったのだ。

　それはそれとして、ぱいぱいはお腹がぐ～と鳴ったので、店に入る。

　
　350円のラーメンを頼んで、いざ食べようとすると、ナルトが入っていない。
　ぱいぱい「ナルトが入ってない。レイモンド！　レイモンド！」

　レイモンドはラーメンにされた時、ナルトを落として行ったのだ。レイモンドの体の一部であるそのナルトは、ぱいぱいによってちゃんと保存されている。

　
　無論、そう簡単にレイモンドに会える筈もなく、単におばちゃんがナルトを入れ忘れただけなのだった。

　ぱいぱいは無言でラーメンを啜る。

　
　その晩、高山家。ぱいぱい特製のハンバーグが、三バカ兄弟の前に並べられる。
　だが、長男のアキラはボーっとして、料理には見向きもしない。

　
　アキラ「俺、初恋してるから要らない……」
　ぱいぱい「初恋？」

　アキラは不気味な笑みを浮かべると、スーッと立ち上がって勉強部屋に戻ってしまう。

　ぱいぱい「誰？　誰？」
　トオル「学校行く時に会う、私立の学校のいいとこのお嬢様……小学6年にもなって初恋だってさ。笑っちゃうよな」
　シンゴ「うん、笑っちゃう。へっへっへっへっ」

　ここで、登校中のお嬢様を遠くから眺めるだけのアキラの様子がイメージ的に回想される。

　
　そのお嬢様（役名なし）を演じるのが、そう、女優の小島聖さんなのだった。当時12才くらいか？

　……ま、小島聖さんってよく知らないんだけど。

　2月だというのに、アキラは窓を開けて夜空を見上げ、初恋のお嬢様の顔を思い描いてうっとりしていた。

　その情報を、ゴキブリに化けて台所に潜り込んでいたヌルハチがキャッチして、ぱいぱいを捕まえるのに利用しようと画策する。

　翌朝、ヌルハチとタクラマカンは、登校中のお嬢様を偽の工事現場で別の道に行かせる。

　
　その上で、ヌルハチが魔法でお嬢様（面倒なので、以下、聖とする）に化ける。
　聖「タクラマカン、綺麗か？」
　タ「綺麗……」

　思わずボーっとして抱きつこうとするタクラマカンをカバンで殴ってから、ヌルハチは作戦を開始する。

　
　まず、毎朝擦れ違うアキラたちの前でわざとノートを落とし、それをアキラに拾わせ、出会いのきっかけをつくる。
　トオル「ノート届けてきっかけ作る、きっかけ」
　アキラ「よし！」
　アキラはすぐ聖のあとを追いかける。

　その後、学校のトオルからぱいぱいに電話がかかる。3時間目になってもアキラが学校に来ないというのだ。

　
　ぱいぱい「きっかけ出来たんじゃないの、だいじょぶよ、今頃『小さな恋のメロディ』よ」

　ぱいぱいの予想通り、二人は公園でいい感じになっていた。

　
　ひたすら無言で見詰め合い、時折笑顔になるアキラと聖。少し離れたところでは、タクラマカンが中国風の音楽を奏で、雰囲気を盛り上げていた。

　だが、見詰め合っているうちに、知らず知らずのうちにアキラはヌルハチの催眠術にかかる。

　
　聖「私の言うことを何でも聞きますか？」
　アキラ「はい」
　聖「では、ぱいぱいを捕まえて来なさい」

　聖はそう言って、首と両手にはめる巨大な錠を渡す。アキラはそれを受け取り、走り去る。

　
　ぱいぱいはその頃、家事の合間にツインファミコンでゲーム（オバＱのアクションゲーム）に興じていた。

　ゲームに夢中になってる女の子って可愛いよね。

　
　アキラが無言で帰ってくる。
　ぱいぱいは気配で察して、「アキラ君、学校さぼっちゃったんですって？　初恋のお嬢様ときっかけ作れたんでしょう？」と、背中を向けたまま話しかける。

　
　ふと振り向いたぱいぱい、アキラが中華魔界の錠を持って迫ってくるのにギョッと身を竦める。

　
　聖（ヌルハチ）とタクラマカン、公園の東屋で好物の乾燥イモを食いながら待っていると、首尾よくアキラがぱいぱいを連れて戻ってくる。

　
　アキラ「お嬢様、ぱいぱいを連れてきました」
　聖「まぁ、天晴れ」
　ぱいぱい「何が天晴れ天晴れよ、あんたたちの正体はばれてるんだからね。アキラ君の初恋を利用して私を捕まえようとするなんて許せない！　お前たちには人を愛することがどんなに苦しいことか分からないの？」

　ぱいぱいはあっさり手錠と首かせを魔法の力で外し、逆に二人の身動きを奪う。二人はすたこらさっさと逃亡する。

　アキラは催眠状態から戻るが、ぱいぱいが離れている間に、ヌルハチが置いていった乾燥イモの食べかけの袋を見て、「お嬢様は乾燥イモが好きなのかも知れない」と、余計なことを思いつく。その足でファミリーマートへ行き、乾燥イモを購入する。

　店を出たところでぱいぱいに捕まる。まだ半分催眠状態にあるらしく、アキラは変な口調で、
　アキラ「お嬢様に上げるのです」
　ぱいぱい「乾燥イモ？　お嬢様ってこういうの喜ぶのかしら？」

　
　ぱいぱい「どちらかと言うと……」
　ぱいぱい、イモをプレゼントして聖にシバかれるアキラの姿を想像する。

　小沢なつきさん、「あすか組！」の頃と比べて格段に綺麗になった気がする……。

　ぱいぱいが想像している間に、アキラはさっさと行ってしまう。考えたら、聖の自宅も知らないのに何処に行こうとしていたのか、謎であるが。


　
　ぱいぱい、アキラを追って広場へ上がるが、ちょうどそこにいた三軒茶屋のババァが「理由は良くわかんないけどね、アキラ、行け、行くのじゃ！」と、ぱいぱいの邪魔をする。

　間の悪いことに、本物の聖が友達三人とアキラの目の前を通って行く。

　
　ぱいぱい「あれは本物のお嬢様、アキラ君行っちゃダメ！」
　ババァ「行け行け行けぇ」

　
　聖の前に立ち、畏れる色もなく「お嬢様、乾燥イモです、どうぞ」と差し出すアキラ。

　きっと想像したとおり、聖にシバかれるものとぱいぱいはハラハラするが、果たして結果は？

　後編に続く。