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「天河伝説殺人事件」DVD(2011817)


 ★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
 市川崑/1991年

 懐かしい。

 この間、ケーブルテレビか何かでやっていたので思い出して見てみたら、これがだいぶ良い感じだったので、DVDをレンタルしたのだった。買うほどじゃないんだよね。

 だいぶ昔に、テレビで見た時は、「犯人が一発でわかる」「内容がない」という投げやりな感想しか浮かばなかったが、年月が経って、虚心坦懐に鑑賞すると、これがなかなか良かった。

 とにかくテンポが良く、音楽が効果的で、ついつい引き込まれてしまう。飽きさせないような工夫があちこちに見られる。映像も、黒の使い方がたくみで、非常に締まった感じがして、いささか現代的なシーンでは違和感があるけど、舞台である吉野や、格式のある屋敷などの場面ではとても雰囲気があってグッドである。

 これが、後の「八つ墓村」「どら平太」になると、その黒が滲むと言うか、ぼんやりした感じになって、市川崑の衰えがそっくり反映されている感じがしてくるのだ。




 しかし、これ、ほとんど「悪魔の手毬歌」なんだよなぁ。あるいは「犬神」や「女王蜂」もまじってるかもしれない。原作の「天河伝説殺人事件」、読んだことはあるが、内容はぜんぜん覚えていないので、映画と原作の差異がどんなものなのか指摘できないのがもどかしいが、たぶん、かなり脚色されていると思うんだけどね。

 犯人が[誤って自分の子供を殺してしまう]ところなんかは、まんま「手毬歌」なんだよね。キャストも同じだし。

 要するに、市川崑がミステリー映画を作ると、全部こんな感じになっちゃうんだろう。なんでも器用に撮れてしまう凡庸な監督よりも、よっぽど個性があっていいことだとは思うが、ここまで一緒だと、もういっそのこと金田一耕助出せば良かったんじゃないのかとも。

 ミステリーとしてのスケール感の小ささを除けば、「金田一耕助シリーズ」との決定的な違いは、「浅見光彦」と「金田一耕助」というそれぞれのキャラクターの魅力だろうな。浅見光彦も好きだけど、改めて映画として見ると、やっぱりテレビドラマどまりのキャラだなぁという感じが凄くする。

 


 原作のチョイスにしても、「天河」は内田康夫の作品の中でもあまり出来が良くなかったと思うんだけどね。たぶん、内容以前に、タイトルが映画としてさまになるかどうか、というのがあったんじゃないかと。「シーラカンス殺人事件」とか「長崎殺人事件」じゃあ、客は来ないだろうからなぁ。

 キャストも、金田一シリーズのレギュラーがだいたい揃ってしまう。わはは。いっそのこと、加藤武の役名を等々力警部にしてしまえ。
 実際は、警部でも仙波という名前であるが、これは、「八つ墓村」での時計屋のおやじの苗字でもあり、監督のお気に入りなのかな。あるいは原作にある名前なのかも。比較のためにも原作も読んでおきたいところだが。

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 エクトプラズムではなく、粉薬をまきちらすといういつものパターン。当然「よし、わかった」も連発している。

 映像テクもほぼ一緒で、

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 右見て、

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 左見て、

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 ハイもう一度正面。

 細かい編集でつないでいる、いつものあれである。さすがにモノクロにはならないが。



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 兵ちゃんも出てます。



 あ、映画の説明を全然していなかったが、えーっと、能の家元争いを中心にして、あんにゃもんにゃがあって、そこそこ人が死ぬという話である。浅見光彦はひょんなことから関わるが、気が付いたら、犯人が勝手に自殺していて、全員を集めて事件の解説すらしないので、はっきりいって、いてもいなくても同じである。

 浅見光彦の描き方は、テレビドラマとはだいぶ違い、市川崑の好きな、「天使」あるいは「神様」に近い。母親は出てこないし、家にも戻らないし、フリーライターとして「旅と歴史」には書いているようだが、実際に編集部などには行かない。そのかわりに、先輩の伊東四郎のところにはちょくちょく顔を出す。お約束の、「刑事局長の弟」という「葵の印籠」も、だいぶ話が進んでから、申し訳程度に触れられているくらいで、まあ、監督のキャラクター認識としては、当然だろう。

 ほか、岸恵子、日下武史や財前直見、岸部一徳、岸田今日子、神山繁、奈良岡朋子など、地味だが、重厚なキャスティングも渋い。渋いが、いささか渋すぎる気もする。財前なんかは、もっとパッと派手な感じの女優さんの方が良かったかな。

 そうそう、物語の後半に、探偵が遠方に行き、重要な証言を取ってくるというのも、金田一耕助シリーズにそっくりで、本作では奈良岡朋子だったけど、いっそのこと白石加代子にすればよかったのだ。



 公開時は、どんな評価だったのか知らないが、続編が作られなかったので、多分あまりヒットしなかったのだろう。実際、見ても、あまり面白くはないんだけどね。

 で、ラストに、

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 こういうのが出るのだが、2号は結局なかったことを思うと、なんか切なくなる。

 しかし、一本きりの予定だった(市川崑の)「金田一」が計7作作られたのに、最初からシリーズ化を目論んでいたであろう、この作品がこれっきりだったのが、いかにも皮肉である。

 ただ、「矢島美容室」とか「はやく起きた朝は」、あるいは「こち亀」などの、なんで映画になるんだろうという素材がぽんぽん映画になっているのに、「天河」以来20年以上も、1本も浅見光彦作品が映画になっていないと言うのが、かなり不思議である。

 固定ファンとかたくさんいるだろうから、作っても良さそうなものだが……。


 で、DVDには、丁寧に字幕がついていて、特に能のシーンでは重宝する。

 予告編や、メイキングも収録されていてお徳だ。メイキングは15分にも満たないものだけど、撮影の合間で榎木と石坂浩二が談笑していると言う、なかなか貴重なシーンもある。


 とにかく、市川崑節を堪能できるので、それだけで価値がある一本だ。


 DVDは買わないけど、サントラは欲しいなぁと思っているのだった。


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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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