「不良少女とよばれて」第5話 前編

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　第5話「ラブ・スクランブル」（1984年5月15日）

　冒頭、弾む足取りでジョーズにやってきたのは、「毎日が夏休み」的な生活を送っている哲也。

　
　ちょうど、笙子から封書が届いていた。哲也宛の手紙は、このジョーズ気付で送られるようにしているのだ。
　おアキ、早く読みたくて辛抱たまらん哲也を焦らし、なかなか渡そうとしない。

　
　なんのかんのやってると、悪竜会のメンバーがあっという間に湧く。ダニかお前らは。

　剛「ごちゃごちゃ言ってないで渡しなよー」
　おアキ「ラブレターって言うのはね、凄く焦れてから読んだ方が凄く味があるんだよ」

　
　ようやくおアキの手から手紙をもぎとり、テーブルについて中身を取り出す哲也。

　剛たちは、その背後から手紙を覗き込もうとする。

　どいつもこいつも暇だなぁ……。

　哲也、彼らの視線から手紙を隠しながら、文面に目を通す。
　簡単に言うと、舞楽の指導に少年院に来てくれないかと言うことだった。ダメケイや瀬戸先生の提案で、笙子がみんなの前で舞楽を披露したらどうかと言う話になったらしい。

　園長「この学園にいる女の子たちは自分達はダメな人間だ、何の能力もない人間だと思い込んでいるんだが、何かひとつ打ち込むものがあったら良いんじゃないかと言う例として、君が舞楽を見せてくれれば、なによりの励みになるんじゃないかと思うんだがね」

　笙子は未熟だからと辞退しようとしたが、哲也に一日だけ稽古に来て貰ったら良いと、引き受けることにしたのだ。で、稽古に来れる日があれば、手紙で知らせて欲しいと言うのが笙子のお願いだった。

　気の早いおアキは、すぐハガキとペンを哲也に差し出す。
　さらに、哲也の後ろで手拍子を打ちながらはやしたてる剛たち。

　
　一同「書いて！　書いて！　さぁ早く！　ヨヨイのヨイ！」
　哲也（うぜぇ……）（註・管理人の妄想です）

　だが、哲也がそんな暢気なことをしている正にその時、元婚約者の恭子が睡眠薬自殺を図り、救急車で搬送されていたのだった。

　哲也、郵便ポストに返事を書いた手紙を出し、またジョーズに戻ってくると、店の入り口で血相変えた男谷弁護士と会う。
　男谷「哲也！　驚くなよ、恭子さんが昨夜、睡眠薬自殺を図った」
　哲也「なにぃ？」

　二人はその足で恭子が治療を受けている病院へ向かう。
　父親の葉山は割と落ち着いていたが、母親の多賀子は「帰って！　恭子にもしものことがあったらあなたが殺したのよ！　あなたが笙子などと言う娘に迷わなければ、恭子は自殺しようなどとは……この人がここにいることが我慢できないのよーっ！」と、半狂乱で哲也を責めるのだった。

　哲也、言葉すくなに一旦その場から立ち去る。

　
　哲也「恭子さんにもしものことがあったら……何もかもおしまいだ。俺と笙子さんの愛も」
　男谷「それはどういう意味だ？」
　哲也「人一人を犠牲にして俺と笙子さんが一緒になったところで幸せになれるだろうか？　いや、なれる道理がない。恭子さんの自殺と言う暗い影が一生付きまとうんだからな。俺は決めた！　恭子さんに万一のことがあったら、俺は笙子さんと別れる！　それが俺が恭子さんに出来るただ一つの償いだ」

　立派な覚悟を決める哲也、ここでやめとけばいいのに、

　
　哲也「恭子さん、生きていてくれよ……（俺と笙子さんの幸せの為だけに！）」
　と、余計なことを言わすから、哲也がひたすら自分のことしか考えてないクソ野郎に見えてしまうのだ。
　（カッコ内は管理人の親切な補足です）

　無論、そんなことが起きているとは知りようもない笙子は、体育館で舞楽の稽古をしていた。

　
　景子「へーっ、あれが舞楽って言うの」
　さと子「ディスコダンスとはえらい違いじゃん」
　五月「チークタイムっぽいんじゃん！」

　そこへ麻里とその仲間がやってきて、彼らが稽古に夢中になっているのを確かめると、茶室に入り込み、掛軸や茶釜など、手当たり次第に備品を壊したり投げたりして、めちゃくちゃにしてしまう。

　
　一通り踊った後、汗を拭きながら、
　「見掛けより体力使うのよねえ、タイマンの方が楽なくらい！」と、スケバンジョークをかます笙子であった。

　そこへモナリザがやってきて、不気味なほどにこやかに哲也の手紙を渡す。
　笙子の場合も、周りが読んで聞かせろとうるさい。このドラマには、「通信の秘密」などと言う概念はないのである。手紙には、来週の月曜の午後1時に行くとだけ書いてあった。

　笙子「『全てはその時話しましょう。二人っきりで……』」
　弥生「二人っきりで？　許せないーっ」
　五月「この野郎、みんなフクロにしちまえ！」

　はしゃぐ仲間たちに追い掛け回され、もみくちゃにされる笙子。
　が、そんな様子を見詰めるモナリザの眼差しは異様に険しいものだった。

　そこへ大磯と江田が来て、笙子をめちゃくちゃに荒らされた茶室へ連れて行く。
　無論、笙子は自分ではないと否定するが、麻里が「むしゃくしゃするから一緒に暴れようって無理矢理誘われて……」と証言した為、無理矢理犯人にされてしまう。

　
　麻里と一緒に、やってもいない狼藉の後始末をさせられる笙子。
　笙子「どういうつもりさ？」
　麻里「笙子、あんたこの学園に来て何かを失ったとは思わないかい」
　笙子「ないね、新しく覚えたことはあっても」
　麻里「違うねー、あんた失くしてるよ、熱い心を！　下らない世間に逆らう、火のような魂をさ！　思い出してみな、好きなように暴れまわってた頃をさ」

　麻里に言われ、回想モードに入る笙子。素直ですね。

　回想シーンも時系列で描かれていて、今度は、（前回）晴子たちのグループを吸収した笙子が、初めて剛に会うところ。

　剛は善子の中学の同級生で、10人相手にひとりで喧嘩を吹っかけてズタボロになっているところを、ジョーズに運ばれる。

　
　笙子（中森明菜風）「あんた、どうしてそんなムチャしたの？」
　剛「今朝、お袋が出て行った……」

　その言葉に、笙子、「回想シーンの中で回想シーンに入る」と言う妙技を見せる。

　笙子の母も、貧乏な暮らしに嫌気が差し、一時実家に戻っていたことがあるのだ。

　
　不良化する前のおさげの笙子。

　母親の美也子が帰ってくるが、笙子は「出て行って！　この一ヶ月、私はみんなを食べさせて来た。人殺し以外はなんでもやって……」

　一体何をやってきたのか、大変興味があります。いやらしい意味じゃなく。

　笙子「一体お母さん、何してくれた？　もう顔も見たくないわ！」

　
　回想シーンから抜けると、剛がみんなから手当てを受けていた。
　笙子、つと立ち上がると、カウンターのウオツカの瓶を取り、いきなりそれを傷だらけの剛の顔にぶちまけるのだった。ムチャしよんなぁ。

　剛「うぎゃーっ！」
　笙子「叫びたいだけ叫べばいいのさっ、体の中が空っぽになるまで叫びなよ、叫んで叫んで悲しみを全部追っ払いちゃいな！　ヨッコ、剛をやったのは、どこのどいつだい？」
　善子「……あ、死んでる」（註・死んでません）

　つづく。