第5話「ラブ・スクランブル」(1984年5月15日)
引き続き笙子の不良時代の回想シーン。
笙子、剛をボコボコにした不良たちと埠頭で睨み合う。そのボスは……、
ちいちゃかった。 靖雄「おめえかよ、俺とタイマン張ろうってのは?」
そう、後の悪竜会の副会長(だっけ?)、平塚靖雄であった。
靖雄は
「女相手にタイマン張れるかよ、みんなに笑われちまうぜ」と余裕たっぷりだったが、無言で近付いてきた笙子に木刀で滅多打ちにされ、
みんなに笑われる。 
笙子、靖雄の手下を睨みつけ、たじろがせる。
こうして、次々と小グループを吸収して行って、相模悪竜会と言う巨大組織を作り上げていったのだろう。つまり、靖雄たちは外様大名みたいなもので、笙子とはそれほど深い結びつきはないのだ。だから、笙子が少年院に入れられた後は、ジョーズに顔を出すこともしなくなる。
麻里の声「あれがほんとの曽我笙子さ、思い出してご覧、腕一本で仲間を増やしてのし上がった頃をさ」

伊勢崎町を、仲間を引き連れ闊歩する笙子。
擦れ違った牛乳配達の牛乳をかっぱらっていきがる晴子たち。
牛乳かっぱらってもねえ……。 逞しく成長したいのか?

長い回想シーンが終わる。
麻里「あんた、こんなところで燻ってるの勿体無いよ。もう一花咲かせたらどうなんだよ。脱走しようよあたいとさ。その気なら手筈は出来てるんだ。シャバに戻ろうよ、えー」
親切ごかしに持ちかける麻里に、鋭い視線を向ける笙子。
窓際に行き、外を見ると、ちょうど園長が女の子たちの散髪をしてやっているところだった。
髪を切られていた女の子が急にせぐりあげる。

女の子「あたいさぁ、ちっちゃいとき死んだ父ちゃんに良くこんな風に髪を切って貰ってたのを思い出しちゃってさ……」
園長「そうかぁ、散髪する度に聞かされてるけどな」 じゃなくて、
園長「そうかぁ、父ちゃんほど上手くは出来ないけどな」
麻里「気になるのかい、脱走したらあの山猿が怒るだろうって」
笙子「怒られるのは平気さ、ただ、悲しまれるのだけがたまんないんだ」 麻里「じゃあ断るって言うのかよ。折角あたいがあんたの為を思って……」
麻里の言葉に振り返ると、
笙子「何が私の為だい? ざけんじゃないよ、あんたが来たのは東京流星会の西村の差し金だろう?」
麻里、図星を指され、思わず目を伏せる。
笙子「行きな、今の話は聞かなかったことにしとく」
麻里「シャバに出さえすれば、レコにも気軽に会えるってのによー」
捨て台詞を残して部屋を出て行く。
一方、恭子の容態は好転せず、両親は担当医から「明日まで持つかどうか」と絶望的なことを言われる。
駆けつけた哲也とその両親に対し、葉山は、「娘にしてやれることは何一つありません。私も諦めました」と、力なく告げる。
けれど、哲也には、どうしても恭子が生きていてくれないと困る事情(註1)があった。

そこで、一度だけ会ったことのある、名医と名高い泉博士のところへ出向き、強引に恭子を診てくれるよう頼むのだった。
車に乗ろうとする博士のカバンを奪い、「来て頂けない限り、絶対にお返ししません!」
ほとんど小学生の発想であるが、博士はその熱意に折れて、恭子のいる病院へ来てくれる。

そして、移動式のAEDを持ち込み、電気ショック一発で恭子さんの命を助けるのだった(病院にはその設備がなかった)。
それにしても、控え目な脱がせ方だなぁ。もっとこう、ガバァーッと……。

娘を救ってくれて、両親は感謝感激雨あられだったが、博士は、このままでは恭子はいわゆる「植物人間」になるだろうと衝撃の事実を伝える。
博士は、最先端の医学でも彼女を治す方法はないと断ってから、医者も諦めた脳性麻痺の男の子を両親が懸命に看病し、奇跡的に意識が戻ったという逸話を紹介する。
博士「人の真心は時に奇跡を起こすのは確かなんです。
患者の最も愛する人がそばにいればね」
哲也「僕の役です! 僕が恭子さんのそばに……」 「患者
を最も愛する人」ならまだしも、「患者
が最も愛する人」と言われて、ためらわず一歩前に出る哲也のその図々しさ、ステキです。
博士「通り一遍の看護じゃダメなんだよ。恭子さんが完全に立ち直るまで付き添っていなければならない。それだけの、覚悟があるんだね」
哲也「分かりました」
葉山「頼む、総務府には私から休暇届を出しておく」
ま、休暇届なんか出さなくても、哲也はいつも働いてないのだが。

こうして、哲也の献身的な看護が始まる。
ま、看護と言っても、その枕元にずーっと座り、たまに手を握ったりするだけの、簡単なお仕事です。いや、可愛い恭子さんの寝顔を誰憚ることなく見ていられるのだから、管理人が代わって貰いたいくらいです。
で、わざとらしく無精ヒゲを生やしている哲也。
さすがに、ヒゲを剃る時間くらいあると思うが、これは両親に対する不眠不休アピールだろう。前漢を簒奪した王莽も、世評を高める為に伯父の看病の際、風呂にも入らずヒゲも剃らなかったと言う(知るか)。
それでも哲也、僅かな時間を利用して、笙子へ事情があって稽古に行けなくなったと断りの手紙を書く。

だが、それを検閲したのが大磯と江田だったので、
大磯「笙子にはラブレターが来過ぎますな」
江田「風紀上問題ですわ。それに、先日の物品破損の懲罰もありますし、これは当分ここに……」
と、勝手に判断して手紙を保管してしまうのである。その内容を知らせようともしない。
園長、不良少女たちの教育の前に、まずこいつらの人間性を叩き直した方が良いと思うのだが? ちなみに江田先生、話しながら手紙を封筒に戻そうとするが、なかなか入らないので困っておられる。
それを廊下から麻里が見てニンマリする。麻里が備品破損の罪を笙子になすりつけたのは、こういう事態になるのを見越しての布石だったのだ。
つづく。
(註1……恭子さんが死ぬと、笙子と心置きなく楽しい結婚生活を送れなくなる)