第17話「運が悪けりゃ誘拐犯」(1979年10月14日)

普段の「俺天」とはガラッと雰囲気の違う幕開け。
麻生とユーコが結婚式を挙げている。ただし、列席者はジュン、金沢、ゴリラと言う変な組み合わせの三人だけ。

障子をぶち抜いた大広間の手前から、紋付袴のダーツが厳かな面持ちで三々九度の杯を運んで行く。
ダーツ「これより麻生、藤波家の結婚式を執り行います」
三人「よろしく! おたのもうします」
まぁ、この辺でこれは多分ユーコの見ている夢なんだろうと言うことは察しがつく。

ダーツ「まずは新郎から……」
ダーツが麻生の杯を満たすと、チャルメラの笛の音が響き、麻生、目を白黒させつつも、作法どおり杯に口をつける。ダーツ、麻生を押しのけると、ユーコにも杯を渡し、三々九度の杯は無事終了。

さらに、初夜の床に臨むユーコの姿まで描かれる。
ユーコ「あの、不束者ではございますが、よろしくお願いします」

だが、ユーコを待っていたのは麻生ではなくナビさんだったと言うオチ。
「悪夢」にうなされて寝言を言っているユーコを、麻生が起こす。
どんな夢を見ていたのか聞かれ、ユーコが言いよどんでいると、タイミングよくチャイムが鳴って、来客を知らせる。

が、現れたのは意外にもランドセルを背負った小学生の女の子だった。
めぐみ「私、こういうものです」
麻生「あ、お名刺、私立西青山学園初等部5年B組、堀内めぐみ……、はぁ、どうぞよろしく」
麻生、自分の名刺を出して小さな依頼人に差し出す。

OP後、ダーツたちが物凄い勢いで事務所へ駆け込んでくる。
麻生が、カールの袋を片手に事情を説明する。
麻生「依頼内容があまりに突飛過ぎて手に負えそうもない、そこでみんなに集まって貰った」
ダーツ「なにその、突飛な話って?」
ユーコ「それが、彼女自身を誘拐してくれって言うの」
ダーツ「あん、ゆ、誘拐?」
麻生「そうだ」
ナビ「からかわれてるんじゃないの」
ジュン「最近のワルガキって知恵が良く回るんだからぁ」
ダーツ「ほんとに、キャプテン?」
麻生「イカにもタコにも」

麻生、椅子に座って知恵の輪で遊んでいるめぐみのところへ行く。
前回もかなり暑そうだったが、今回はご覧の通り、衣装が前も後ろも汗でびしょ濡れになるくらい猛烈に暑かったらしい。空調設備のない過酷なスタジオだったと、DVDボックスの特典ディスクの中で多岐川さんが回想しておられる。

ジュン「誘拐して欲しいってほんと?」
ダーツ「誘拐じゃなくて誘惑じゃないの?」
めぐみ「誘惑だったらもっとハンサムな人選ぶわ」
めぐみのこまっちゃくれた一言にずっこける三人。
めぐみ「私の家はパパがいなくてママと二人きりなの」
ナビ「ママは幾つ?」
めぐみ「32才」
ナビ「綺麗?」
めぐみ「私を見れば分かるでしょ」
ナビ「失礼しました」
三人の人気俳優に囲まれながら堂々とした演技を見せるのは、有馬加奈子さん。
めぐみの母親は宝石商を営んでいるが、めぐみによれば宝石の密輸に手を染めているらしい。
めぐみ「いつか『太陽にほえろ』でやってたわ。密輸をやった犯人が私の好きな殿下に逮捕されるのよ」 三人「で、殿下!」
無論、今回のエピソードで重要な役を務める藤波弁護士を、小野寺昭氏が演じていることに引っ掛けての台詞である。
めぐみは、母親の悪事をやめさせたいと、自分の身代金として密輸ダイヤを母親から取り上げたいと言うのだ。
麻生「1.5キャラットのダイヤが10個。時価にして1億、その中から報酬として1個くれるそうだ」
ダーツ「余談ですけど、残りの9000万円、どうなっちゃうんでしょうね?」

めぐみ「銀行の隠し金庫にしまっとくわ。私が、お、大人になったら(噛んだ)好きなように使うのよ」
三人「しっかりしてはるで!」
めぐみ「ね、やってくれるの、誘拐?」
麻生「うん、いや、少々お待ち頂けますか」
麻生、再び別室で仲間と額を突き合わせて相談する。
報酬が莫大なので、ダーツたちは割と乗り気だったが、麻生の「この依頼はあまりにやばすぎる」との一声で結局断ることに決まる。
麻生、愛車でめぐみを自宅前まで送り届ける。
麻生「素晴らしいおうちだ。さ、帰りなさい。それからねえ、よそのおじさんにも絶対にこんなこと言っちゃいけないよ。誘拐ってのは悪いことなんだから」
麻生、しっかり言い聞かせてから、めぐみを降ろす。
めぐみが帰宅すると、母親の律子(松本留美)は、12年ぶりに旧友に会うんだと言ってめかしこんでいた。
麻生が事務所に戻ると、ユーコが2年前の新聞の切抜きを見せる。それには、めぐみの母親の宝石商が密輸容疑で家宅捜索されたものの、明確な証拠がなく、捜査が打ち切られたと記してあった。
ダーツ「あの子の話、ほんとだったみたいね」
ジュン「キャプテン、こりゃ誘拐なんて引き受けないで正解だぜ。こういう場合は、バックに怖いお兄さんがいるのがパターンだ」

麻生「どうだみんな、俺の言うことに間違いはなかったな」
ナビ「さすがキャプテン」
麻生「さ、一件落着、ツンツクツクツツクツン」
麻生の音頭で、喜びのポーズ(仮称)を取る一同。

その頃、いつになくウキウキした様子の藤波が、マンションから車で出掛けようとしていた。
藤波「時間になったら帰っていいよ、僕もう戻らないから」
久美子「分かりましたー」
対照的に、見送る久美子はご機嫌斜め。

久美子が事務所でヤケになったようにカップ麺をすすっていると、ダーツが遊びに来る。
久美子「ねえ、私って魅力ない?」
ダーツ「なぬ?」
久美子「女としての魅力よ」
ダーツ「……それは」
久美子「あるの、ないの?」
ダーツ「そ、それはさ」
久美子「ねえ、私のこと可愛いと思ったことある?」
ダーツ「う、うん、時々」
久美子「私の夢なんか見たりする?」
ダーツ「昨日うなされた、俺」
久美子「ふんっ」

んで、久美子の嫉妬する藤波の久しぶりに会う相手が、律子だったという分かりやすい展開。
やや照れ臭そうに挨拶し、互いの近況を話したり、旧交を温めた後、
藤波「ところで、僕に頼みって何?」
律子「どうしようかな、会ったら頼みにくくなっちゃった……、やっぱりやめるわ、今夜はこうして飲みましょう」
律子はダイヤ密輸のことで藤波に相談したかったらしいが、結局切り出せずに終わる。
翌日、律子が出掛けた後、めぐみは自分で切り貼りして作った誘拐の脅迫状をポストに入れると、スキップを踏みながら何処かへ向かう。

律子は、新妻署に呼ばれ、最近出回っている密輸ダイヤについて金沢たちに任意で取り調べられていた。
律子の背後に見えるのは、
妙に存在感のある背後霊ではなく、律子に密輸をやらせている潮会の幹部・中尾(田口計)である。
ゴリラ「あんたみたいな人がどうしてこんな奴と手を組んでるんだ。身の破滅だぞ!」
金沢「奥さん!」
律子「このダイヤはうちで扱ったものじゃありません」
律子はそう言って、取調室を出て行く。
つづく。