第6話「メイ・ストーム」(1984年5月22日)
前回からの続き。麻里の協力で愛育女子学園の塀を乗り越え、脱走に成功した笙子の前に、朝男たち東京流星会のバイクや車が現れる。
朝男「笙子ぉ、俺と来い、お前にふさわしい男は俺だ」
朝男に険しい視線を向ける笙子。と、その時、塀の上にいた麻里の後ろからロープが飛んできて、麻里の首をひっかけ、少年院の庭に引き下ろしてしまう。
同時に、「笙子、逃げな」と声がして、

頭上からたくさんの木材が降ってきて、朝男たちの動きを止める。
時代劇じゃないんだから……。

一瞬だけその姿が見えるが、木材を投げたのは赤ずきんちゃんのような格好をしたモナリザたちであった。
笙子はすぐ反対側に向かって走り出す。

障害物を排除して、朝男たちも追いかける。
ちなみにこの時、クラッカーの紙テープのようなものが舞っている。どうやら、モナリザたちがクラッカーも鳴らしたようなのだが、それらしいSEは一切聞こえない。現場では、クラッカーを鳴らすシーンを撮ったが、編集の際に、「クラッカーはさすがに変じゃないか」と言うことになって、カットされたのではないだろうか?

走る笙子の前方から、一台のバイクがやってきて、Uターンする。
剛「笙子、乗れ!」
笙子、躊躇わずバイクの尻に尻をちょこんと乗せる。バイクはウィリー走行で猛然と発進する。
しかし、こんな都合の良いタイミングで剛が現れるというのは、少し不自然である。彼らはいつ麻里が笙子を逃がすのか、知らないのだからね。ま、ずっと朝男たちの動きをマークしていたのだろう。
朝男たちは、急いで車のところへ引き返す。

途中、外へ出て来た大磯と遭遇するが、
大磯、踏み潰される。 と言うより、朝男には大磯など眼中にないのだ。

バイクに乗る剛と笙子の顔が映し出されるが、ヘルメットの中の顔は、どう見ても剛じゃない。
笙子(哲也さん、会いたいの、一目だけで良い……)
二人は首尾よく朝男たちの追跡を逃れる。
当然、少年院では緊急点呼が取られ、笙子ひとりが脱走、麻里が脱走しようとして失敗したことが明らかになる。江田は、直ちに警察に連絡して、笙子の捜索を依頼する。
園長は、園長室に麻里と、笙子のいた3組の生徒たちを呼んで事情を聞く。

麻里「あたいは笙子に脅かされてバックれる手伝いしただけだよ」
園長「人に脅かされて何かをする人間かね、君は?」
麻里「ふっ、さすが園長先生鋭いね~、ほんとはあたいもバックれる気だったんだけどさぁ、笙子ってのは最悪だね、あの女、あたいを塀の上から突き飛ばしたんだよ」
園長「それじゃ君はどうして木に縛られていたんだ?」
麻里「はっ、そいつはあたいの方で聞きたいねぇ、この少年院には魔物でも住んでんじゃないの~、だけどあたいはその魔物を突き止めて、かぁならず叩きのめしてやる!」
園長相手に貫禄たっぷりの麻里。良く動く表情と言い、台詞回しと言い、比企さんの演技が素晴らしい。
大磯「バカモォン! いつまでいきがってんだ、ああ、独房に入って頭を冷やして来いーっ!」 踏み潰された悔しさを、か弱い女の子にぶつける大磯、カッコ悪い。
頭を強く押された麻里、「いてぇな、ちくしょう!」と捨て台詞を吐いて部屋を出て行く。
続いて、モナリザたちが尋問される。彼女たちは口々に事件への関与を否定する。
大磯「同室の者の脱走は連帯責任だ」
モナリザ「責任は私が取ります」
大磯「貴様も独房だーっ! 他の者は今夜一晩廊下に正座して反省しろ」
竹刀を手に声を荒げる大磯。
しかし、連帯責任だってのに、何をどう反省すりゃいいんだよ?
園長は、江田に哲也から笙子への手紙を持って来させ、音読する。舞楽の稽古に、よんどころない事情が出来て行けなくなったと言う内容だった。

園長、ふとモナリザが、その封書の宛名(久樹哲也)を食い入るように凝視しているのに気付く。モナリザも園長の視線に気付いてハッとする。

園長「この手紙を、笙子君に渡してさえいれば……」
江田「園長!」
園長「いや、君の責任だと言ってる訳じゃない」 園長、ここははっきり、
君の責任だ! と言うべきだったと思うんだけどね。今後の為にも。

ダメケイ「笙子君は、哲也君に裏切られたと思って……そうなんですね?」
園長「メイ・ストーム!」 突然、全体攻撃呪文を唱える園長。
一同「ぐわーっ!」 じゃなくて、
ダメケイ「メイ・ストーム……、春の嵐、それがどうしたんですか?」
園長「いや、言ってみただけ」 一同「ジジイ!」 でもなくて、
園長「今、笙子君の体の中を春の嵐が吹き荒れている。その嵐が収まらない限り、ここへは戻ってこんよ」
江田「園長、園長がそんなのんきなこと言って……」
園長「わしは笙子君を信じている!」
江田「なぁにを信じてるというんですか」
園長「恋する乙女を走らせた春の嵐、わしは青春とは命懸けで生きなきゃ輝かないものと思ってる。学問、スポーツ、恋、
スロット、なんでもいい、ただひたぶりに生きる時だけ、青春はその輝きを見せるのだ!」
気がつけば、園長の長話が始まっていた。
今夜は正座で過ごさねばならない少女たち、げんなりする。

園長「時にはそれは身を滅ぼす危険な情熱かもしれない(以下略)笙子君は自分の意思で必ずここへ戻ってくる!」
それにつけても、弥生(百瀬まなみ)は可愛いな、と。

一方、ジョーズには、いつものように笙子の仲間が顔を集めていた。
剛から電話があり、おアキが「遅いじゃないの」と応じていることから、毎晩、剛か誰かが交代で少年院の付近を見張って、定時連絡をしていたものと思われる。
おアキたちは笙子の脱走を知らされ、驚く。

ちょうどそこへ石山雄大率いる刑事たちが現れる。
おアキ「警察の目もうるさいの、分かったでしょー」
おアキはそれとなく剛にジョーズには近寄るなと警告する。
刑事から笙子が脱走したと聞き、わざとらしく驚いてみせるおアキたち。
刑事は、笙子から連絡があったらすぐ知らせろと言うが、無論、彼らにその気はない。
脱走のニュースは、当然、笙子の家族にも伝えられる。

姉の脱走を聞いて、驚きを隠せない弟妹たち。それにしても全然(笙子に)似てねえ。
笙子の両親は、哲也に知らせようと家に電話するが、それを受けたのが哲也の母・信子だったので、すぐ切られる。信子は、なんとしても哲也と恭子を結婚させたいと願っているのだ。
信子は何食わぬ顔で哲也に、今日から恭子の家へ泊まって引き続き恭子の世話をしてやれと勧める。恭子は既に退院して、自宅で療養しているのだ。
信子に「恭子さん、また自殺を図りますよ」と言われると、彼女と結婚する気はないが、従うしかない哲也だった。
つづく。