第6話「メイ・ストーム」(1984年5月22日)
母親に言われ、仕方なく、再び葉山家を訪ねる哲也。

哲也の心が自分から離れていると分かっていても、その顔を見るとやはり嬉しい恭子。綺麗だね。

哲也、恭子を車椅子に乗せ、入り江の見える公園へ連れて行く。
哲也「少し、砂浜を歩いてみましょうか」
恭子「でも、私、歩けるかしら?」
哲也「かしら、じゃねえ、歩くんだよ!」(註・言ってません)
哲也は(早く恭子から解放されたいので)やや強引に、恭子に歩行訓練をさせようとする。が、恭子は(いつまでも哲也を引き止めておきたいので)「ダメ、出来ないわ」と、すぐ諦めてしまう。
そこへ、いつも暇な男谷弁護士が血相変えてやってくる。
哲也は、男谷から、笙子が哲也会いたさに脱走としたと聞かされる。
哲也「しかし、何故急に?」
男谷「お前、笙子さんとの約束果たさなかったそうじゃないか」
哲也「でもそのことは手紙で」
男谷「その手紙が笙子さんに渡ってなかったんだよ」
哲也「なんだってぇーっ!」(MMR風)
哲也、矢も盾もたまらず、男谷に恭子を押し付けて、すぐ笙子を探しに行こうとするが、

恭子に必死に引き止められる。
恭子「笙子さんのところへは行かないで、行ったら私、
死にます!」
いつの間にかすげー面倒臭い女になっちゃった恭子さん。引くよね。
恭子、子供のように哲也にすがりつく。そんな二人の様子を、男谷が複雑な顔で見ていた。そう、男谷は実は……
哲也のことが。
男谷は悩んだ末、笙子さんは俺が探すと言って、走り去る。

さて、その夜、悪竜会の幹部で、笙子の親友だった晴子が小さなクラブハウスで歌手として「鮮烈デビュー」を果たしていた。
晴子「齧りかけのレモンが~♪」
と、例によってしょうもない(失礼)歌を客前で気持ち良さそうに歌っている晴子。
しかし、それにしても、デビューが早過ぎないか? ついこの間まで悪竜会でぶいぶい言わせてたのに。

そこへ、剛に伴われて、笙子が姿を見せる。既に来ていた善子たちと合流する。
笙子たちを見て、晴子は歌いながら涙を流していた。
晴子「みんなありがとう。今日はあたいの初めてのライブに昔の仲間がこんなに集まってくれてほんとに感激だよ。それに今日はあたいの、いえ、私の親友まで駆け付けてくれたんだ」
その言葉を合図に、笙子がステージに上がり、持参した花束を渡す。
笙子も涙ぐみながら、「おハル、素敵!」
晴子「みんな、あたしは次の曲を親友に捧げるよ」
そしてまた、しょうもない歌(失礼)を気持ち良さそうに歌いだす。

笙子が席に戻ると、どうやって嗅ぎつけたのか、朝男たちも店に入ってくる。
笙子「騒ぎは起こさないでよ、今日はおハルの晴れの日なんだ」
朝男「分かった、その代わりライブが済んだら付き合って貰うぜ」
笙子「いいわ」
晴子、歌いながらイヤリングに触れたり、肘を叩いたり、変な動きを見せる。それを見て、笙子たちは心得顔に頷く。朝男は何も気付かず暢気にステージを見ている。
やがて暗転し、晴子だけをスポットライトが照らす演出。そして再び明るくなると、いつの間にか笙子たちの姿が忽然と消えていた。

その深夜、笙子たちはある美容院に場所を移していた。善子が見習いとして働いている店だった。
善子「まさかこのブロックサインがだよ、『逃げろ』の合図だとは流星会の奴らも知らなかっただろう」
晴子がステージで見せた仕草は、仲間内だけで通じるサインだったのだ。

せがまれて、笙子は哲也との愛の証とも言える婚姻届Ver2.0を取り出して見せる。
女の子(名前が分からない)「なんだ、まだ判、押してないの」
笙子「私は、私が哲也さんの相手としてふさわしい人間になれたと思った時に判を押すつもりだった」
女の子(名前が分からない)「かったるいよ、そんなの、判押しちゃいなよ、あたいが市役所に届けて来るからさ!」
笙子「それはダメよ、私は哲也さんに会って(気持ちを)確かめなければならない」
剛「笙子、哲也と会う段取りは俺たちがつける。それまでは、警察にも流星会にも笙子は渡しゃしねえよ」
玉子「笙子おネエ、ここはヨッコの勤めてる店だからね。奴らには分かんないよ」
この、玉子(玉岡加奈子)の「笙子おネエ」って言い方が可愛いのだ。
笙子、善子が本気で美容師になることを決意したと聞くと、彼女に迷惑が掛かるからとすぐ店から出て行こうとする。

笙子「これ以上、迷惑かけられない」
善子「何言ってんだよー、あたい……、私さ、笙子に勤めてる店を見て欲しかったというのもあるけど、それ以上にね、笙子の頭をセットしたいんだ。そんな頭じゃ、哲也さんに会えないじゃないか」
笙子「ヨッコ!」
善子「いいから、いいから、
腕はまだ半人前だけど」
笙子「あ、じゃあ、いい」(註・嘘です)
善子は笙子の手を引っ張って連れて行く。
笙子は善子に洗髪されながら、感動の涙を浮かべ、善子は善子で泣きながら笙子の髪をごしごし洗うのだった。

その頃、モナリザは笙子脱走の室長としての責任で、独房に入れられていた。

隣の独房には、対照的な麻里の姿があった。
園長は、モナリザの部屋の前でわざと彼女に聞かせるように、甥のダメケイに「久樹哲也に会って来い」と指示する。その名前を聞いて、またモナリザの顔色が変わる。

一方、哲也は、妹の、つまりモナリザの写真に熱心に語りかけていた。
「葉子、お前は今、何処で何をしてるんだ。兄さんは今切羽詰っている。恭子さんが
僕の為に死のうとしたり、そして今度は笙子さんが
僕の為に脱走した。正直言って、兄さんはどうして良いか分からない。こんな兄さんをお前は許してくれないだろうな」
恭子の自宅で割と大きな声で独白している哲也であった。
哲也は、葉山と一緒に車で出掛けるが、門の前で待っていた剛たちが窓を叩き、「笙子と会ってくれ」と訴える。哲也は思わず運転手に車を止めるよう言うが、葉山は許さず、そのまま走り去ってしまう。

剛たちは今度は男谷の事務所に押しかけ、哲也を笙子のところへ連れて来いと強要する。
男谷は口では「責任を持って連れて行く」と約束するが、心中、(恭子さんをこれ以上苦しめる訳にはいかん)と、悲愴な決意を固めていた。

笙子はとある港の倉庫に隠れていた。
仲間が買い揃えてくれた可愛い衣装をまとっている。
仕事のある善子や晴子と入れ違いに、剛が、哲也と会えると言う吉報を持ってやってくる。
笙子、ひとりで(仲間は気を利かせて席を外している)待っていると、階段を降りてくる足音が……。
遂に哲也に会えるんだと、期待に胸を膨らませる笙子。

だが、それは哲也ではなく男谷自身だった。
つづく。