第33話「変身!邪悪の少女サキ」(1986年7月31日)

「鎌倉の老人」の庵に、雲水のような風体の男が現れる。
鎌倉「鬼界坊、下界の様子はどうぢゃ? 恭志郎の奴、ワシに警察とマスコミを抑えさせて何のわるだくみぞ」
鬼界坊「どうやら日本全国の学生を統括なさるおつもりのようですなぁ。ただ、それに立ち塞がらんとする組織がございます。お館様、驚かれなさるな、その手先のスケバン刑事こそが、鉄仮面少女・五代陽子、本名、早乙女志織!」
鬼界坊の言葉に、老人、墨をすっていた手をピタと止める。
鎌倉「まことか? 面白い、誰の仕組んだ座興かの……で、鉄仮面はまだつけたままなのかえ?」
鬼界坊「いや、もはや」
老人、鬼界坊に、志織がどこまで鉄仮面の秘密を知っているか確かめに行けと命じる。
聞き出した後は「もう用はない、殺せ」とも。
西脇、青狼会に唆された連中が日本各地の学園を支配化に収めていく「ウルフレボリューション」の本格的な発動の映像を、サキに見せている。続いて、ひとりの凛とした女子高生の映像を見せつつ、
西脇「麗心女学園、生徒会長・工藤美紀。関東を仕切る伊集院要と同じく、近畿に巨大な指導力を持った傑物だ。青狼会は、この美紀に接触を図ろうとする筈だ」
西脇の命令は、美紀を説得して仲間にすること、だったが、サキは西脇の言葉など上の空で、

サキ「うちはもうたまらんちゃ、影の総統、あの男とうちの関係はどないなっちょるんか、もしかして総統とうちは兄妹? うちは一刻も早く出生の秘密を……」
西脇「言った筈だ、闇の敵と戦うことが、お前の出生の秘密を説く唯一の方法だと……」
サキ「ええ加減にしいや、いつまでその台詞でうちを利用するんじゃ、おまんはほんまにどこまでしっちょるんじゃ、まずはそれをはっきりしいや、でなきゃ、うちは二度とおまんの指令では動かんぞね! うちを舐めたらいかんぜよ!」
さすがのサキも、西脇の秘密主義に飽き飽きして、ストライキを宣言。
同じ頃、総統も、ペンダントを見詰めながらサキのことを考えていた。総統の方は、かなりはっきりした記憶があるようで、幼い頃、サキの母親から、サキと一緒にそのペンダントを貰った時のことを鮮明に思い出していた。
総統(志織、よりによってお前と戦いあわねばならんとは……それが俺たち二人の運命なのか? それともこれには鎌倉の思惑が絡んでいるのか?)
ノックをして、部下の黒田が入ってくる。
総統が、ウルフレボリューションの障害になりうる三人の大物について注意を促すと、黒田はそれぞれに使者を放つ予定であること、工藤美紀については自身が説得工作に当たるつもりであることを説明する。
総統「よかろう」
黒田「総統、麻宮サキのことでございますが……工藤美紀説得工作に利用したいと存じます」
総統「どのように?」
黒田「ナメラを用います」

黒田、そう言うと、背後の扉に向かって腕を突き出す。

すると、扉が強風に吹かれたようにバタンと開き、その向こうの空間に巨大な女の顔が浮かび上がる。
女は牙を剥き出し、猫のような鳴き声を発する。
常人なら
「ば、化け猫だぁ~」と腰を抜かすところだが、さすが総統、軽く驚いて腰を浮かすだけだった。

次の瞬間、総統の背後に着地しているナメラさん。
ナメラ「ナメラ参上!」
黒田「奥信州の古い一族、猫目の最後の生き残り、ナメラでございます」
総統「……」
総統「ごめん、やっぱ俺、ウルフレボリューションやめるわ」 シャレの分かる総統も、さすがについていけなくなったらしい。
……と言うのは嘘で、総統、「猫目一族と言えば、人操りの術で知られた……」と普通に応じる。
黒田「ある毒草から採取した毒を義歯に仕込み、首筋に噛み付いて注入いたします、その上で独特の高周波の笛を吹けば、相手は催眠効果によって操られます」

二人の会話中、ずっと威嚇ポーズを取っているナメラさん。
やがてジャンプして部屋を横切り、廊下へ転がって行く。
普通に帰れ、普通に。 総統「サキはその後、どうなる?」
黒田「は、ナメラの毒は恐ろしい神経毒でございます。どんな人間であれ、一週間で廃人に……」
それを聞いて、総統、作戦をストップさせたい衝動に駆られるが、かろうじて堪え、背中を向けて「面白い、よし、やれ」とゴーサインを出してしまう。
そのサキが学校から自分の部屋に戻ってくると、

こうじ&てつ「サキちゃん!」

要&たい子「サキ!」
と、意外な、懐かしい面々が出迎える。お京と雪乃も当然いる。
サキ「おまんら一体?」
お京「みんな学園をのっとられて来たんだってさ」
雪乃「遂に始まったのですわ」
しかし、関東の大物と称される伊集院要まであっさり自分の学園を征服されてしまったと言うのは、いささか情けない気もする。
彼らは、梁山高校を反撃拠点とし、サキにリーダーとして自分達を率いて欲しいと熱望するが、何故かサキは俯いて即答せず、「うちは疲れた、バイクで走ってくる」と部屋を出て行ってしまう。

お京「どうしたんだよ」
雪乃「皆さん、折角サキさんを頼ってらしたのに」
サキ「お京、雪乃さん、やっぱりうちらが手を結んだのは間違いじゃった。うちの戦いとおまんらの戦いではあまりに意味が違い過ぎる。おまんらは青狼会を敵と見なして正義を戦い抜けばいい、けんどうちにはある恐ろしい予感がある。うちは明らかにあの総統と子供の頃の知り合いじゃ、それも、ちょっとやそっとの関係じゃない。自分が誰か分からんちゅうことが、こんなに苦しいもんとは」
お京「考え過ぎだぜ」
サキ「おまんなんぞに何が分かる!」
お京「なんだとーっ」
雪乃「私たちは真の友ではありませんか」
サキ「いいや、所詮うちはひとりぼっちじゃ。うちはひとりで生きてきた。これから先もひとりじゃ。この麻宮サキに今度一切お構い無用、ええな?」 台詞が長くて泣きそうになっている管理人でした。

サキ、バイクにまたがる。バイクにまたがると、急にサキの体格がおっさんっぽくなる。
雪乃、それでも手製のブローチのお守りをサキの胸につけようとするが、サキは拒否するように急発進して走り去ってしまう。
お京「勝手にしやがれ!」
サキ、バイクを飛ばして、森の中を進んでいたが、突然空からマントのようなのが降ってきて視界を遮る。
サキ、それを払い除け、バイクから捨てて飛び降りる。
しばしの静寂の後、女の嘲るような笑い声がこだましたかと思うと、

ナメラさんが元気一杯に飛び掛かってくる! うう、やだなぁ。
つづく。