第16話「運が良ければキャンピング」(1979年9月23日)

麻生は早速、青山支店の支店長と会って話す。
支店長によれば、ユリ子に銀行の金5000万を持ち逃げされたらしい。
支店長「出来ることなら内輪で収めたいんです。なにしろ銀行は信用が看板ですから」
麻生「ほう、それだけの理由で?」
支店長「察して下さいなー、これが公になれば支店長の責任問題です。とにかく金が無事に戻れば、彼女の出来心は許してやってもいいんです」
麻生「随分と寛大ですね……。私は探偵ですから正式な依頼があれば5000万も彼女もそりゃ探しますよ。ただし、成功報酬は頂きますよ」
麻生、支店長の態度に不審を抱きつつ、5000万を取り戻した暁にはその1割、500万を報酬として受け取ると言う、破格の条件で仕事を受ける。

ジュンとダーツは、ナビさんのところへ行き、ユリ子と5000万を回収しようとするが、そこにはナビさんひとりが落ち込んでいた。
ユリ子は置き手紙をして姿を消してしまったのだ。
ダーツ(手紙を読む)「優しいあなたとの不思議な出会い。お金を持つより夢を持つことの大切さを知りました。ナビさん、モンテカルロの切符、プレゼントします……」
ジュン「これがモンテカルロの切符だい! なんと!」
ダーツ「超デラックス!」
ナビさんの抱いている5000万入りのアタッシェケースを前に興奮を隠し切れない二人。
反対にナビさんは、ユリ子が5000万持ち逃げしたのだと聞かされ、ショックを受ける。

とりあえず、事務所に戻ってきた三人。ケースを開け、札束の山を見て、改めて歓声を上げる面々。
ダーツ「ワンダフル! 5000万! これが真実だ!」
ジュン「ド迫力!」
麻生「うん、依頼された物件は実に速やかに手に入った。よしこの金を支店長に渡せば契約業務は完了する」
ユーコ「成功報酬500万、もう手にしたのと同じだわ」
ダーツとジュンは欲の皮を突っ張らせて、5000万をそっくりネコババしちゃおうと不埒なことを言い出す。
ダーツ&ジュン「悪知恵! 悪知恵、悪知恵、ワルジェの戦い!」(註1)
だが、ユーコは反対し、麻生も探偵仁義に悖ると、その悪計を却下する。
ちょうどそこへ支店長から電話があり、麻生は5000万を取り戻したことを報告する。麻生はすぐ銀行へ届けましょうと言うが、支店長は現在関西に出張しているので、今晩一晩預って欲しいと頼む。
二人はせめて先に500万を貰っちゃおうと言い出し、それには麻生も賛成する。

事務所経費としてユーコが100万を取った上で、400万を5等分、80万円ずつ分配する麻生。
ずーっと落ち込んでいるナビさんは金など眼中にないと言う風情だったが、結局きっちり受け取る。
麻生「自然だ」
80万の現金を手にして、さすがにみんな嬉しそうに金の使い道にバラ色の想像を巡らすのだった。

さてその夜、麻生ひとり、事務所でケースを枕にして眠っている。
そこへ、潮金融の差し向けたチンピラが忍び込んできて、ケースを盗み取ろうとする。
支店長は、500万支払うのが惜しくて、わざと一晩ケースを麻生に預けたのだ。
無論、麻生もそれを予想していて寝たふりをして待ち構えていたのだ。
近くのおでんの屋台で飲んでいたナビさんも駆けつけ、乱闘になるが、

ナビさんが吹き矢のように吹いた串が、間違って麻生の目に刺さってしまう。
その隙に、チンピラたちはケースを奪って逃げてしまう。
大変なことをしてしまったと青褪めるナビさんだったが、それは麻生の芝居だった。
それに、麻生は最初から新聞紙を詰めたニセモノを、これみよがしに枕にしていたので、本物のケースは無事だった。

だが、騒ぎを聞きつけた大家の娘のみや子(田坂都)が、ゴリラを連れて突入してくる。
みや子、準レギュラーと言うほど出番はないが、なかなか可愛いのである。
ゴリラ、暴力行為の現行犯だと、強引に二人を逮捕、連行してしまう。
新妻所で取調べを受ける二人。が、逆に金沢から、支店長が潮金融の影のオーナーで、潮会に不正融資をして不当な利益をむさぼっている疑いがあると言う貴重な情報を得る。
元刑事の麻生を先輩として慕っている金沢、どうしても彼らに甘くなるのだ。
その後、いろいろあって、麻生は潮金融のチンピラたちと大乱闘を演じる。チンピラたちは警察に捕まり、麻生はその場を抜け出して、銀行へ、支店長のところへ急ぐ。
支店長が逮捕される前に、4500万を渡して取引を無事終了させたいのだ。
が、タッチの差で、金沢に支店長を逮捕され、麻生の目論みも潰える。

で、折角手に入れた500万も(証拠として)返却しなければならなくなる。
泣く泣く80万を差し出すダーツたち。
ジュン「昨日どう使おうか計算機の電池なくなるまで考えたら寝ちゃったの」
ダーツ「俺なんか一睡もしないでにらめっこしてたら、夜が明けちゃったよぉ!」
麻生「はははははっ」
だが、一番堅実なナビさんが、20万少ない60万円を置いて逃げるように出て行ってしまう。

その後、公衆電話から麻生に事情を説明するナビさん。
ナビ「すまねえな迷惑かけちまって。実は20万、同業の探偵社にある人間探してくれって頼んでよ、払っちまったんだ」
麻生「一体誰を探してる?」
ナビ「笑ってくれよ、消えちまったユリ子さんなんだよ。俺どうしてもさぁ、あの人ほっとけなくてよ」
麻生「分かった、いいから戻って来い」
ナビ「優しいこと言ってくれるよなぁ、みんなに合わせる顔がねえよ。キャプテン、おいらよ、長えわらじ、履かせて貰うぜ」
麻生「バカなこと言ってるんじゃない。早く戻って来い!」
麻生の言葉に感極まって嗚咽するナビさん。

麻生たちがナビさんを連れ戻しに行こうとした時、自動車整備会社の社長がやってくる。
社長「俺からも頼む、あいつを探し出してやってくれ。これは謝礼金の一部だ」
麻生「社長!」
社長「いやぁ、あいつがいないと寂しくてな……」
ジュンが封筒の中を改めると、ちょうど、ナビさんが使ってしまった20万円が入っていた。
思わず喜びのポーズを取る麻生たち。

その頃、ナビさん、また最初の海岸でキャンプを張ってぼんやりしていたが、最初の出会いと同じように、忽然とユリ子がその前に現れる。
ナビ「ユリちゃん!」
ユリ子「ナビ!」
ナビ「探したぜユリちゃん」
ユリ子「あたし、何処へも行くところなかったの……ずっとずっと寂しかったの」
ナビ「分かるよその気持ち、東京にいくら人間がいたってさ、寂しいって気持ち骨身に沁みるんだ」
ユリ子「あたし、バカだった。お金があれば幸せになれると思って……あのお金、どうせ不正融資のお金だと思って取ってきたの。今から、警察へ自首するわ」

そこへ、麻生たちも姿を見せる。
ナビ「ユリちゃん、仲間だ」
ユリ子「あたし、生まれ変わった気持ちでやり直します。ご迷惑をお掛けしました」
麻生たち、漁船に乗って海岸を離れる(ナビさんの車は?)。ユリ子に手を振りながら。
500万はなんとか都合したが、結局今回もタダ働きに終わってしまった麻生事務所。だが、仲間との絆を再認識したせいか、今回のラストはみんな明るい。

麻生「せーのっ! 俺たちは」

全員「天使だ!」

ポーズを決めた後、船が揺れておどけた表情になる面々。
いかにも、心底楽しんでドラマを作っていると言う雰囲気が滲み出ている。
(註1……昭和のギャグ。「アルジェの戦い」のもじりと思われる)