第15話「運が悪けりゃ劇的最期」(1979年9月2日)
久しぶりの「俺天」の時間です。
この15話、管理人の一番好きなエピソードである。また、自分が(ファミリー劇場で)初めて見た「俺天」がこれだったので、特に印象深い。でも、第一印象って大事だよね。最初に見たのが他の面白くないエピソードだったら、3万円も出してDVD-BOXを買ったりしなかっただろう。
……その後、半額くらいでブルーレイが出やがった。ちくしょう。
さて、いつものように暇を持て余している麻生探偵事務所。麻生とユーコが、テレビのトーク番組を眺めている。
麻生「売れてるな、この劇画家、描くもの描くもの大ヒットだ」
ユーコ「やることなすことすべてお金にならない何処かの事務所とは大変な違い」
小さなテレビ画面の中で得意そうに話しているのは、劇画家・比留間翼(山田吾一)。
劇画と言うのは、最近は使われないが、要するに大人向けのリアルタッチの漫画のことである。
と、そこでチャイムが鳴り、待望の依頼人が入ってくる。青葉社で劇画雑誌の編集長をしているという男性である。編集長は、ちょうどテレビに映っていた比留間を見て、素っ頓狂な声を上げる。
編集長「あっ、これビデオでしてねえ、1週間前に撮ったんです。この比留間さんが、得体の知れぬ連中に命を狙われてまして……」
編集長は比留間のボディーガードを頼みに来たのだ。

編集長「この頃は良かったんですがねえ。近頃は外へ出れば車道に突き飛ばされ、車に襲われ、工事場を歩くと鉄材が降ってくるという具合で……それで先生、すっかりノイローゼ気味でしてね。前後編の後編が出来て来ないんですよ!」
麻生「はあー、それでボディーガードの依頼をね。今月の私のスケジュールはどうなってるかな」
麻生に調子を合わせ、ユーコは真っ白なスケジュール帳を開いて、「2ヶ月はいっぱいだわ」と嘘を言う。
もっとも、今回は編集長は最初から麻生に依頼するつもりで来たのだから、そんな見栄は必要なかったのだが……。
編集長「とりあえず20万、期間は1週間。特別料金も考えておりますが」
編集長はその場で金の入った封筒を取り出す。

ユーコ「私、劇画の大フアンなんです。青葉社のヤジウマ、いつも素敵な編集ですわねえ」
麻生「ううん、そっ、豪華で素敵! はいっ」
管理人、沖雅也のドラマをじっくり見たのはこれが最初だったと思うが、もうこのとろけるような笑顔一発で逝っちゃいました(逝くなよ)。

麻生、メンバーを集めて、その劇画誌「ヤジウマ」(なんちゅうタイトルだ)の最新号を見せながら、比留間の作品「暁の死闘」の説明をしている。

実際問題として、劇画の内容についてまで彼らが知る必要はないのだが、ストーリー上、粗筋を視聴者に伝えておく作業が必要になるのだ。
麻生「要するに、暴力団抗争の話だ」
ジュン「要するにこのタッチが良いんだ。スカッと、俺大ファン」
ダーツ「エース興業とキング会の激突!」
キング会の鉄砲玉・須川が、パンの中に仕込んだ爆弾でエース会の組長の息子を殺す。
そして、エース会の大原が組長の命を受け、鉄砲玉の須川を刺し殺す……と言うところで、前編は終わり。
ダーツ「あっと驚くどんでん返し、乞う御期待」
ジュン「いいな、いいな、このタッチ、この続き知りたいな」
で、メンバーがひとりずつ、半日交代で比留間のマンションでガードをすることになる。1番手はジュン。
一方、比留間本人は、いかにもボディーガードの存在が煙たそうだった。

マンションのチャイムが鳴り、どっからどう見てもパン屋に間違いない格好をした男が、「注文のパンをお届けに参りました」と、大きなパンを応対に出たジュンに渡す。
が、比留間からパンなど頼んでないと言われたジュン、ついさっき読んだ劇画に、パンの中に爆弾を仕込むシーンがあった為、てっきり爆弾入りのパンだと思い込み、

流しで、パンにジャージャー水をかける。
考えたら、パンに水をかけるというビジュアルなんて、まず出てこないよね。
ほどなく、さっきのパン屋が配達先を間違えたと言って戻ってくる。ジュンはどろどろになったパンの残骸を突き返すのだった。
比留間、ジュンを遠ざけた後、いかにも人目を憚る風に電話をかける。

向こうは、狭いアパート住まいの若い男だった。
早瀬「あ、先生」
比留間「早くしてくれよ! どうなんだ、原稿の進み具合は」
早瀬「申し訳ありません。ちょっと風邪気味で」
比留間「週刊ガッツの分と、『暁の死闘』の後編、これは絶対今日中に何とかしてくれよ」
早瀬「分かってます。週刊ガッツは明日渡しますけど、後編の方は3日待って下さい」
比留間「明々後日だな? 両方ともほんとにそれがギリギリの線なんだ。確実に上げろよ」
そう、比留間は今流行りの(流行ってねえよ)ゴーストライターを使っていたのだ。

早瀬は電話を切った後、「アホ、そんなもんとっくに上がってんだ」と、机の上に視線を走らせる。
そこには既に完成した後編の原稿が置いてあった。
比留間のマンションにダーツもやってくる。
比留間は、「どうもね、気が向かないんだね。こういう時はパーッと発散させなくっちゃ」と、外出しようとする。ダーツは「発散だったら僕、得意!」と、ジュンが止めるのも聞かず、比留間を自分がバイトしているディスコへ連れて行く。

ノリノリで踊る比留間とダーツ。柴田さん、若いなぁ……。
比留間「しかしねえ、君の踊り方は古いよー、今の時代はねえ、教えてあげるから見てなさい。レフト、レフト、ライト! バック、バック!」
ダーツ「気ぃ張っちゃってもう……阿波踊りのほうがマシ」

ダーツ、やっと比留間から解放され、へろへろになって事務所に戻ってくる。
ダーツ「もう、レフト、ライト、レフト、ライト……冗談じゃない、柴田はセンターだっつんだ。でもあの先生、ほんとに命狙われてるのかね?」
ユーコ「いーじゃない、遊んでお金になるんだから」
ダーツ「当たってるだけに、きつい」
「柴田はセンター~」の柴田は、当時まだ現役だった柴田勲のことだろう(か?)。
翌日、ナビさんを助手席に乗せて、空き地で車を派手に乗り回す比留間。確かに、ノイローゼとは縁遠い能天気ぶりである。

午後、一巡して再びジュンが比留間のガードをしていると、背後に怪しい人影が……。
ジュン、手に唾してその不審者の正体を確かめようとするが、

ジュン「わーっ!」
谷村「ああーっ!」
それは、ばかでかいサングラスをかけたトップ屋の谷村女史(結城美栄子)だった。

谷村「なんだぁ、ジュンだったのぉ。だったらもっと抱き締めて貰えばよかった……」
無論、管理人が谷村女史を見たのはこれが初めてだったが、ひとめで(年食ってるけど)その愛らしさの虜になってしまった。谷村女史は準レギュラーで、ジュンを一方的に気に入っているのだ。

麻生「谷村女史が比留間翼を探っているか……」
ユーコ「ジュンちゃんの報告によると、比留間先生、どう見ても怯えてるって感じじゃないんですって」
麻生「すると、ノイローゼで筆が進まないというのは嘘になるかな」
ダーツ「締め切り延ばしの口実じゃないの」
麻生「どうも秘密がありそうだな。比留間翼……」
麻生が指をピラピラさせると、ユーコとダーツも同じ動きをする。
つづく。