第15話「運が悪けりゃ劇的最期」(1979年9月2日)
の続きです。
とある喫茶店の2階の席に、麻生が人待ち顔で座っていると、いそいそと谷村女史が階段を昇ってくる。
が、麻生の顔を見るなり、「なぁんだっ、キャプテンか」と、露骨にがっかりする。
麻生「傷付くよ、それは」
谷村「探偵社の人だって聞くからさ、ジュンかと思ったのよ」

谷村「私がどうして比留間翼を尾行してるかって件でしょう?」
麻生「おっ、鋭い」
谷村「ルポライターのネタをね、横取りする気?」
麻生「この次からは、ちゃんとジュンを寄越しますから」
谷村「うっふふふふふ、その言葉弱い!」
結城美栄子さんのゼスチャーたっぷりのキュートな演技は、是非実際に映像で味わってほしい。
谷村、麻生の差し出したタバコを取りながら、
「比留間翼ってのはね、ゴーストライターを使ってるんじゃないって思うのよ」

麻生「ゴーストライター?」
谷村の言葉に顔色を変え、両手でライターを持っているような真似をする麻生。

谷村も、そこにライターの火があるような感じで、タバコを麻生の手の中に差し入れる。

と、タバコの先に火が付いているではないか。目を見開いて驚く谷村。

慌てて麻生の手を開くが、中にはライターもマッチも仕込まれていない。これぞ正しく「ゴーストライター」。
このくだり、ストーリー上何の意味もないシーンだが、好きだなぁ。
麻生「それから?」
谷村(気を取り直して)「いや、知ってる人は少ないと思うけどね、彼、昔、少女漫画(家)だったのよね」
ウェイトレス「いらっしゃいませ」
谷村「宇治金時ちょうだい

それがさ、ぜんぜんタッチの変わった劇画になったでしょう、この4、5年」
麻生「するとあの『暁の死闘』はゴーストライターが?」
谷村「それにね、その劇画の人物は、本当の暴力団の誰かにそっくり!」
麻生「誰に?」
谷村「わかんない、噂だから!」
麻生「すると、現実の先取りではなくて、現実をそのまま頂いちゃった訳か、ゴーストライター君は」

その「暁の死闘」の一場面、エース興業の組長と大原。

それに、現実の登場人物が重なる。そう、潮興業の会長と、三代目社長の大森(睦五郎)である。
大森「二代目がやられなすってから、もうじき1年……早く全快して頂かないと、あっしじゃ若いもんの押さえが利きやせん」
組長「大丈夫だ大森、お前なら潮興業を背負って立てる」
大森「会長!」
大森は神妙な顔で頭を深々と下げる。

その晩、舎弟たちと枝豆を肴に飲んでいる大森。
舎弟「会長が大森さんを信頼するのは当たり前ですよ。二代目の仇は取ったし、紅会は関東から追っ払ったし……」
舎弟「そう、この話も全く同じなんすよ」
大森「バカヤロウ、漫画と一緒にするな」
舎弟「けど、ほんとそっくりなんすよ、事件だけじゃねえ、会長の顔から、兄貴の顔までそっくりなんすよ。そういや、枝豆(が好物と言うこと)までそっくりですよ」

舎弟の言葉に、慌ててその雑誌をひったくて目を通す大森。
大森「おいっ、後編を見せろ、今すぐだ」
舎弟「後編は来月号です……」
お分かり頂けただろうか?(by政宗一成)
すぐ後ろの窓から、ゴーストライターの早瀬が室内を覗いているのである。……気付けよ。

比留間は喫茶店で早瀬と会う。
比留間の護衛をしていた麻生は眠ったふりをして比留間を油断させ、こっそり近くの席から二人のやり取りを盗み聞きする。
比留間は週刊ガッツの原稿を受け取り、代わりに金を渡す。
比留間「『暁の死闘』の後編、明後日だな。間違いないな」
早瀬「はい、じゃっ」
麻生(決まり! まさしくゴーストライター)
ひとりでマンションに帰ってきた比留間、待ち受けていたダーツをなんとか追い払おうとするが、ダーツはしつこく部屋まで付いて来る。
ところが、部屋に入ってみると、中は空き巣に入られたようにめちゃくちゃに荒らされていた。しかも、荒らした張本人、潮興業の組員……大森の部下たちがまだ残っていて、二人をぶん殴った後、さっき比留間が早瀬から受け取った週刊ガッツの原稿を奪う。が、それが「暁の死闘」の後編でないことを知ると、放り投げて出て行ってしまう。

ダーツ、麻生に電話で報告する。
ダーツ「殺し屋風、日本マフィア風なのが二人現れて、負けちゃった。もしかすっとさぁ、襲われたって話、本当かもしれないよ」

麻生は弁護士の藤原に知恵を借りに行く。
藤原「うーん、面白いな」
麻生「面白がってないで、何か気がつくことありませんかね?」
藤原「うん、1年前の潮興業と紅会の抗争、覚えてるだろ」
麻生「あの時は、潮興業の二代目社長が殺された」
藤原「犯人の紅会の鉄砲玉は、潮興業のチンピラに殺され紅会は大きく後退して幕を閉じてる」
麻生「その二代目の後を継いだのが、大幹部の大森……ああ、こっちの劇画じゃ大原か」
藤原「会長は寝たっきりで、実権は大森が握ったのもそっくりだ」
麻生「ちょっと気になってたんですがね、結局この事件で一番得をしたのは、三代目社長になった大原、つまり大森……」
藤原「その劇画の作者が襲われたとなると……」
二人は、「暁の死闘」後編の惹句「あっと驚くどんでん返し」と言うのは、後編で大森(大原)の不利になるようなことが暴露されることを意味しているのではないかと推理する。
麻生はジュンに大森の調査をさせると同時に、自らマンションへ出向き、比留間から話を聞こうとする。
比留間「命を狙われる理由は私には……」
麻生「いや、どうやらあるらしいですね」

その頃、向かいのビルの屋上から、昨日の大森の部下が、ライフルで比留間を狙撃しようとしていた。
……しかし、なんで昨日の時点で比留間を始末しなかったのだろう? ダーツがいたからかな?
麻生「何か心当たりはないんですか」
比留間「ないないないないないないない……」
麻生「じゃあ伺いますが、『暁の死闘』の後編ってのは、どういう展開になってるんですか」
比留間「そ、そんなことは君、これはマル秘だよ、企業秘密だよ。そんなこと事前に公表できるものじゃないじゃないか」
麻生(どうやらこの先生、何も御存じないらしい。と言うことは……)
二人があれこれ話していると、狙撃手が引き金を引く。が、狙いは外れ、ダーツの飲んでいたジュースの瓶に命中する。

比留間「ぼ、ぼぼぼぼぼぼ、ねねねねねねね、ききききききき」
麻生「何を言ってるんだ?」
ダーツ「僕が狙われた、警察を呼べ」
潮興業の事務所。狙撃が失敗したことを聞いた大森、麻生たちも一緒に殺してしまえと吠える。

で、大森が苛立たしげに投げ捨てたマッチを「マッチ1本、火事の元」と拾い上げるのが、女装して事務所に潜入しているジュンなのだった。
新妻署の金沢たちがマンションに来て狙撃事件の捜査をするが、比留間は本当に何も知らないし、麻生も何食わぬ顔で黙り込む。
ユーコから比留間を狙わせたのが大森だと聞かされた麻生、ダーツを連れてさっさと退散する。
麻生は事務所にみんなを集め、事件の絵解きをする。
つづく。