第30話「悲しき生と死の間に」(1977年9月14日)
悪の大組織ダッカーの首領L、キングボーを呼び出して叱咤している。
L「何をしているのだ、キングボー、ワクチンは早川の手で診療所の目と鼻の先まで行っておると言うではないか!」
キ「ご心配には及びません、首領L」
他の下部組織のボスと違い、キングボー、ゆったりとソファに腰掛けて首領と話している。

立ち上がって、「我がグレン団にはガラバー! がおります。早川は目指す診療所を目前にして、あわれ、ワクチンと共にぃ~」
「いやぁ~うう~、ばきゅうほっどぅっ!」 と、表記不能の叫び声を発しつつ、銃弾を浴びる早川を演じ、

「わっおう、苦しい~、うっ」

ここでパッと素に戻り、「……死ぬことになりましょう」と顔を上げる。
ほんの数秒のシーンだが、大泉滉の独壇場である。

さすがのLも、いつものハイテンション演技も忘れ、「そ、そうか」と、少し引いていた。(註・嘘です)

キングボーが信頼するだけあって、ガラバーは歴代用心棒の中でも最強クラス。執拗に早川のゆくてを遮る。
ガ「早川ぁ、わしの爆弾槍からは逃れられんぞ!」
ガラバー、杖の先から爆弾槍を連射して早川を追い詰める。
ガ「はははは、遊びはもうこれでおしまいぢゃっ」
ガラバーがトドメを刺そうとした時、彼らの背後から早川のギターが聞こえてくる。

驚いて振り向くと、高いビルの上に紛れもない、ギターを弾く早川の姿があった。
ガ「いつの間に? あの方がかえってやりやすいわ」
ガラバー、一瞬戸惑うが、ビルの上の早川に爆弾槍を放つ。
早川はそのまま真下に落下。

が、早川も、その様子を別の角度から見ていた。……と言うことは?
早川、ちょうど近くを通り掛かった東条(散髪したばかり)にワクチンを託すと、すぐニセ早川のところへ引き返す。
ニセ早川の顔にかぶさっていたウエスタンハットを恐る恐る取ると、

果たして、その下から、息も絶え絶えの美樹の姿が……。
早川「美樹さん!」
美樹「早川、さん」
早川「もう、心配は要りません」
美樹「私、お役に立てたんですね?」
早川「ええ、立ちましたとも。あなたが奴らの注意を反らしてくれたお陰です」
美樹「良かった……」
早川「美樹さん! 美樹さん!」
早川、冷たくなった美樹の体を建物の陰に運び、自分のベストを脱いでかけてやる。
ゲストキャラは数あれど、自らの身を犠牲にして早川を助けたのは、この美樹だけである。
……と思ったけど、よく考えたら4話の誠も死んでたっけ。
早川「美樹さん、この仇は、僕が必ず!」 いつも以上に、悪への怒りを込めて宙を睨む早川。

対照的に、あくまでマイペースを貫くキングボー。
ニセ早川が持っていたケースを部下が持ってくるのを見て喜色を浮かべる。
キ「おーっおおっ、待ぁち兼ねとったのよ!」
部下「早川めは爆死」
キ「はいはい」
部下「これがその時、屋根から落としたワクチンです」
キ「ご苦労さん、開けてみてよ」

だが、ケースの中にはワクチンではなく石ころが入っていた。
キ「えっ? はぁーっ!」
部下「こ、これは」
キ「どういうことですか、これは、早川死んだんじゃないんですか」
部下「確かに」
キ「このやろっ、とぼけんな、ひ、捻り潰してやる! けあーっ」
キングボー、部下に掴みかからんばかりの勢いだったが、そこへ、ズバットの乗るズバッカーが飛んでくる。

ズ「はははははっ」
キ「なんだ貴様はーっ」
ズ「ズバット参上、ズバット解決、人呼んでさすらいのヒーロー、快傑ズバァッッット!」 やっぱりズバットの決めポーズはカッコイイね。

キ「快傑、ズバット?」
思わずそのポーズを真似るキングボー。
ズ「悪行を重ね、非道の限りを尽くし、あまつさえ病原菌を用いて多くの人々をあやめたキングボー、許さん!」
雑魚を倒し、キングボーに迫るズバットの前に、ガラバーが現れる。
爆弾槍を乱射して攻撃するが、ズバットはその体にムチを巻きつけ、飛び掛かり、

そのカツラを剥がし、その素顔を暴く。そう、ガラバーは実は男だったのだ。
ズ「上手く化けたもんだぜ、美樹さんの仇だ!」
ここまで何の伏線も張ってなかったのに、この暴露はかなり唐突な印象を受けるが、この変身は、最後にガラバーがズバットにボコボコにされるのだが、いくら悪人でもお年寄りを一方的に暴行するのはテレビ的にまずいだろうという配慮と、激しいアクションはどうしても男性スタントが演じなければならず、その不自然さを解消する為だろう。

ズバット、一応、「二月二日、飛鳥五郎を殺したのはお前か?」とキングボーに訊ねる。キングボーは「ナポリにいた」と否定する。ズバットは彼をムチで投げ飛ばすが、その際も、
キ「強いのう、おう」
と、何か一言言わないと気が済まないのだった。
続いてムチで首を絞められた時も、「またかい?」と一言。最後はズバットアタックを受けてぶっ倒れる。

次の31話と32話が最終エピソードになるせいか、戦いの後の早川の述懐はいつもより念入りだ。
「飛鳥、この町にも犯人はいなかったよ。飛鳥……お前を殺した奴は、一体何処にいるんだ?」
さて、劇中では一切省略されているが、ワクチンは無事診療所に届けられ、みどりさんたちは全員助かる。
東条から娘のことを聞かされたのだろう、命を賭してワクチンを届けようとした娘の写真に「美樹、ご苦労だった」と、涙を堪えて語りかける乙部。
……って、これ、思いっきり女優の宣材写真じゃねえか! 乙部、感極まったように診療所から出て、会ったことのない早川に向かって「早川さーん、患者は治りましたぞぉー!」と叫ぶのだった。
折角、斑点メイクまでして熱演したみどりさんなのに、ワクチンで治るシーンがないのがかわいそう。