第3話「ビギン・ザ・ラブ」(1984年5月1日)
こちらは東京流星会の事務所。
下っ端の皆さんが、適当な音楽で適当に踊っていると、

朝男、ウンザリしたように音楽を止め、
朝男「麻里、お前、俺の命令ならなんでも聞くって言ったな」
麻里「物を考えないで済むからね、好きだよ命令は」 いかにも、刹那的に生きている麻里らしい台詞。
続く朝男の「じゃお前死ねって言ったら?」と言う言葉にも動じることなく、ナイフをもてあそびながら「いいよ、今ここでかい?」と、平然と応じる麻里。
朝男「死ぬよりは先にやってもらうことがある。お前、相模愛育女子学園に入れ」
麻里「なんだってえ?」
朝男「笙子と2年も会えないなんて我慢できねえ、どんなことしてもいい、笙子を外へ出せ」
麻里「朝男、あたいはあんたに惚れてんだよ! そのあたいに!」
朝男「これは俺の命令だ!」
朝男は冷たく言い捨てて部屋を出て行く。
麻里「会長命令なら仕方ねえさ、あたしが受けた命令は笙子を表に出せってことさ、
生かして出そうが、死体で出そうが、あたしの勝手だよ!」
物騒なことを言いながらも、朝男の命令には絶対従う麻里だった。
哲也は少年院から、今度は笙子の実家の神社へ行き、笙子の両親に会う。
そして、園長に言われた疑問「何故、笙子が不良になったのか」を、子供の使いのようにそのまま両親にぶつける。
笙子の父・聖一郎の語るところによれば……、
・神主の聖一郎は働くのがイヤで、副業をして収入を増やそうとしなかった。
・妻・美也子は貧乏がイヤで、夫に働け働けとガミガミ言い、夫婦喧嘩が絶えなかった。
割とクズ方面の夫婦である。 ・その為、高校生(?)の笙子は、色んなバイトを掛け持ちして健気に働き、家計を支えていた。

悪竜会時代以前の、健全明朗時代の笙子が、バイト代を握り締めて神社に帰ってくる。

横から見ると、背筋がピンと伸びてとても姿勢が良い。
ある日、弟から給食費が要ると言われた笙子、ちょうど知り合いから大量の昆布を貰ったので、それを行商して売りさばく。
だが、そんな笙子に目をつけたヤクザが、イチャモンをつけてその売り上げを巻き上げようとする。
セコいにもほどがある大人たちの図。 笙子は逃げ回り、岸壁に追い詰められると、そのまま海へダイブする。
ずぶ濡れになりながらも、弟の給食費を死守して戻ってくる笙子。
ちょうど、実家に帰っていた母親が帰っていて、例によって父親と口論していた。
聖一郎、カッとなって思わず妻を殴ってしまう。
その流れで、美也子が
「お前なんか産みたくなかった!」と言ってはならない一言を口にする。

笙子「お母さん……」
美也子「お前さえ産まなければ、あの人と離婚できていたのに……結婚して、約束が違うってすぐに分かった……あたし離婚しようと思ったの、そしたらあんたを身篭っていたわ。あんたさえ水に流していれば、こんな苦労はしないで済んだのよ! 笙子なんて産みたくなかったのよ!」
激しく傷付いた笙子は、土砂降りの雨に打たれながら、夜の線路を歩いている。
そのまま、電車に轢かれるつもりだったのかもしれないが、結局死ねず、代わりに相模悪竜会のリーダーとして恐れられる不良少女になってしまったのだ。
自分の心ない言葉を、涙ながら悔やむ母親。
聖一郎「私たちが自分たちの間違いに気付いた時には既に遅かったんです。哲也さん、あなたの笙子へのお気持ちは嬉しく思います。ですがあなたには、総務府の技官としてのお立場がある。笙子のことは忘れて下さい」
哲也「いや、今の話を聞いて、僕の気持ちはますます強くなりました。どうか僕に対するお心遣いはご無用に願います」
哲也は塀の向こうの笙子に手紙を出す。笙子はグラウンドの隅でそれを読む。

曰く「笙子さん元気ですか? 君の心は今何を見詰めていますか? 君と別れて以来、僕の心はずっと君を見詰めています。僕は君の過去を知ってしまいました。非行を重ねながら、君の心は泣いていた。一目会いたい、会って力の限り君を抱きしめてあげたい……でも、それの叶わぬ今、君にしてあげられることはただひとつしかない……
正式に君と結婚することです」
笙子「げっ、ストーカー?」 ……と言うのは嘘です(正しくは「結婚?」)が、まだキスすらしていない段階で、こんなことを言い出す男にはさすがに笙子も引いたのではないか。
まぁ、哲也としては形式的にでも結婚さえすれば、面会も可能になるだろうと言う腹もあったんだろうが。
普通なら「気持ちわりぃ」と手紙ごと焼き捨てるところ(管理人の偏見です)だが、これはドラマである。それもこてこての大映ドラマである。笙子は引くどころか「哲也さんあたし耐え抜きます、耐え抜いて見せます!」と感動の眼差しで、更生の決意を新たにするのだった。

その後、娯楽室でテレビを見ている3号室の面々。チェッカーズの「涙のリクエスト」にあわせて、狂ったように踊りまくるさと子。
このさと子のダンシングは、是非実際に動くところを見て頂きたい。なんとなく生きる気力が湧いてくる。
そこへ園長が入ってきて、園長室のテレビの調子が悪いからと言って、チャンネルを変えてしまう。

それは、雅楽の演奏の中継で、なんと、哲也もその中にいるではないか!
これが偶然だったらさすがに説得力はないが、この前哲也が訪れた時に、演奏会のチラシを(かなりわざとらしく)落としていったのだ。笙子もそれに気付いて、瞳を潤ませる。

無論、園長の密かな思いやりであった。
笙子、二人だけに分かるように小さく礼をするのだった。このシーン、好きだなぁ。
もっとも、哲也のアップが延々と続くのは、かなり不自然だったが……。
笙子も他のみんなも雅楽の演奏に見入っていたが、園長が退室すると、意地悪トキ子がテレビを消してしまう。さらに、「今出てたのが、どうやらこいつの色男らしいよ」と、ほとんど超能力者のような鋭い勘を発揮する。
笙子、トキ子を押しのけてテレビを見ようとするが、トキ子が思いっきり笙子の腹を蹴る。
笙子「半端モンが寝惚けた真似するんじゃねえよ。カタをつけてやるよ!」 内面的には既に更生している笙子だが、こういう場面ではたちまち悪竜会会長の顔になる。
トキ子も、飲みかけの牛乳瓶を割って身構えるが、「殺してやる」と言いながらじりじり迫る笙子に気圧され、「よしなよ、冗談だよ」とあっさり白旗を揚げる。

笙子「おらぁっ」
トキ子の胸倉を掴んで右手を振り上げる笙子、ここで、室長のモナリザがその手を止める。
モナリザ「あなたがいけないわ、今週のテレビのチャンネル権は娯楽部長のトキ子にあるのよ。文句があれば私が相手をするわ」
笑顔の底に強固な意志を秘めるモナリザ。笙子も、冷静さを取り戻し、トキ子の体を離す。
その頃、麻里が自分から警察署に出頭していた。
麻里「おらおら、何おたおたしてんだよぉ。暴行、傷害、恐喝で手配中の山吹麻里が自首してきたんだよぉっ……おらぁっお茶ぐらい出せバカヤロー!」 ここの麻里の台詞回しは絶品である。
触らぬ神に祟りなしで、刑事たちも近付こうとしない。
この後、数時間、麻里は延々とタンカを切り続け、酸欠になって病院に運び込まれた、と言うのは嘘である。
ラスト、夕陽を浴びながら、二人きりで対峙している笙子とモナリザの姿を映しつつ、「つづく」のだった。