「仮面ライダーBLACK」 第42話「東京―怪人大集合」 前編

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　第42話「東京－怪人大集合」（1988年7月31日）

　今日も今日とて地底深くの神殿から、繁栄を極める現代文明に呪いの言葉を浴びせているゴルゴムの皆さん。

　
　シャドームーン「人間どもが作り上げた愚かな文明の象徴と言うべき街、東京、そしてその東京も、いまや政治、経済、文化の中心として世界の運命を握っている！」

　……

　まぁ、バブル景気の真っ最中ですからねえ。

　一時的なものにせよ、そんな台詞を脚本家に書かせてしまう勢いが当時の日本にはあったと言うことか。

　シャドームーン「二度と立ち上がれぬよう、一挙に東京を廃墟と嫁すため、多くの怪人を同時に送り込む！」
　ビシュム「しかし、愛しい怪人たちは仮面ライダーにことごとく倒され、新たな誕生を待たねばなりません」

　
　シャドームーン「え、そうなの？」

　前任者からの引継ぎがうまくいってなかったようで、シャドームーンさんは自分たちの戦力すら満足に把握できていなかった。

　シャドームーン「では、今日は予定を変えてビンゴ大会を行う」
　三大怪人「きゃっほうっ！」

　……じゃなくて、

　シャドームーン「その必要はない。仮面ライダーによって無念に散った魂を呼び戻すのだ。いでよ、ハエ怪人！」

　
　シャドームーンに指名されて、ぶぶぶぶぶぶと鳴きながら登場したハエ怪人、過去の怪人と比べても異彩を放つ造形である。

　さらに、

　
　巨大な複眼の下にはスーツアクターの目玉までしっかり見えていて、ただでさえ不気味な姿に一層のおぞましさを付け加えている。
　（スーツの覗き穴が少しずれているので、左目が一部隠れる形になり、ますます異形さが際立っている）

　おまけに、口や腕から絶えずネトネトした粘液を分泌しているのだから、ゴルゴム怪人として行くところまで行っちゃった感がある。

　シャドームーン「バラオム、ハエ怪人が滅んだ怪人を蘇らせる為、亡霊世界へ行く道案内が出来る霊能力者を探せ」

　特撮ヒーローものの恒例「一度死んだ怪人の霊を呼び戻して戦わせる」作戦なのだが、ハエ怪人だけではそれが出来ず、最初から外部の力を借りなくてはならない、と言う時点で一抹の不安がよぎるのだった。

　さて、東城大学付属の「超心理学研究所」と言うめちゃくちゃうさんくさい施設から、ユウキとマコトの幼い兄弟が脱走するシーンからドラマは始まる。

　鉄柵を乗り越えた二人だったが、顔見知りらしい近所の子供たちがそのゆくてを遮り、彼らに「また脱走してきたのかよー、宇宙人！」と、いちゃもんをつけてくる。

　路上で取っ組み合いをしている子供たちを、霊能力者探しをしているバラオムとハエ怪人が屋上から見下ろしていた。

　
　バラオム「あの少年と波長があったか、よし、早速……」

　この両者が並ぶと、かなり威圧感があるビジュアルになる。

　
　が、案の定と言うべきか、たまたま通りがかった光太郎たちが子供たちの仲裁に入った為、バラオムたちはすぐに身を隠す。

　子供「宇宙人の味方をするのか？」
　杏子「宇宙人？」
　子供「ビームでやられちゃうんだぜー」
　光太郎「馬鹿言うな、大勢で卑怯だぞ」
　子供「行くぞー」

　いじめっ子たちはさっさとその場から走り去る。

　克美「ひどい子供たちねー」

　
　弟のマコトは、子供たちに小突かれて腕に怪我をしていた。

　と、兄のユウキがその傷に右手をかざすと、青白い光が照射され、一瞬で拭ったように治ってしまう。

　当然、光太郎たちは驚いて息を飲む。

　光太郎「今のは……」
　ユウキ「お兄ちゃんたちも僕のことを宇宙人だと思うんだね？　マコト、行くぞ！」
　マコト「あ、待って……」

　光太郎たちにも不信の眼差しを向けると、ユウキは走り出す。マコトも兄についていこうとするが、転び、そうこうしているうちに研究所の所長が来たので、ユウキは弟を残して何処かへ行ってしまう。

　
　光太郎たちはマコトと一緒に研究室へ行き、所長から詳しい話を聞く。

　ちなみにこの所長、てっきり長沢大さんかと思ったら、若尾義昭さんだった。

　光太郎「すると怪我を治したのは霊的エネルギーと仰るんですか」
　所長「ええ、一種の超能力のようなものです」
　杏子「じゃあ、マコト君のお兄さんは霊能力者ってことですか」
　所長「強いか弱いかの違いだけで霊的エネルギーは誰にでもあると考えています」

　光太郎が見たところ、所長は別に兄弟の力を私利私欲の為に利用しようとしている訳ではなく、真面目な研究者のようであった。

　ただ、背後の本棚に「ムー」のバックナンバーが並んでいるのが少し気になったが……（嘘です）。

　所長「しかし、二人は研究には非協力的で、いつも逃げられましてね」
　マコト「お兄ちゃんは宇宙人なんかじゃないよー！」（以下、マコトの台詞は全て棒読み）

　所長によると、実際には弟のマコトのほうが強い力を秘めているらしい。

　そのお兄ちゃんは、人気のない林の中で、自分たちを異端視する者たちに対し、暗い怒りを募らせていた。

　
　そこへハエ怪人とバラオムが現れ、ユウキを誘い込む。

　バラオム「お前と心が解け合うのは大いなる自然だけだ。愚かな人間など捨て、自然との調和を理想とするゴルゴムに協力するのだ」
　ユウキ「はい」
　バラオム「え、即答？　即答しちゃうの？　最近の子供ってみんなこうなの？」
　ハエ怪人「みたいですね」

　途中から嘘です……って言わなくても分かるか。

　
　バラオム「お前の霊能力と、ハエ怪人の呪術を合わせ、怪人たちの魂を呼び戻せ！」
　ユウキ「レエガミヨチタンジイカ……レエガミヨチタンジイカ……」

　ハエ怪人に乗り移られたダーク・ユウキ（メイクが悪人っぽくなる）は、呪文を唱えて霊界から10体前後の怪人たちを召喚することに成功する。

　ちなみに、呪文をひっくり返すと、「ヨミガエレカイジンタチ」、すなわち「蘇れ、怪人たち」になります。

　ユウキの行方を捜していた光太郎は、早速警察署を襲撃している三体の亡霊怪人と遭遇する。
　（そこに出てくるのが婦警さん一人だけと言うのがちょっと悲しい）

　
　光太郎「ゴルゴムの怪人……変身！」

　この辺になると、倉田さんもすっかりアクション俳優の顔になって、変身までのシーンは全て自分でこなしている。

　
　だが、お約束として、亡霊怪人たちにはどんな攻撃も通用しない。その癖、攻撃される方ははダメージをしっかり受けるのだから、割と矛盾である。

　「BLACK」のいいところは、過去の怪人の動きもおざなりではなく、ちゃんと固有の能力を使うことである。

　
　ここでは、クワゴ怪人が白いガスを噴射し、

　
　それを浴びたBLACKが、壮絶に不器用なワタアメ職人のように、全身を絹糸に絡め取られる演出が見られる。

　
　近くの建物の屋上には、ダーク・ユウキもいて、

　「仮面ライダーBLACKよ、亡霊怪人たちの復讐をたっぷりと受けるが良い！」

　弟の子役と違って、こちらの子役はなかなか演技が上手い。

　BLACK「ユウキ君！　もしかしたら……マルチアイ！」

　BLACKはマルチアイでユウキを見て、彼がハエ怪人に憑依されていることを知る。

　BLACK「君は弟のマコト君まで、滅ぼすつもりなのか！」

　BLACKが苦し紛れに叫ぶと、ダーク・ユウキは急に狼狽し、退却する。同時に亡霊怪人たちもパッと消える。

　後編に続く。