第8話「愛すればこそ」(1984年11月24日)
の続きです。
試合前夜、加代が滝沢のアパートで、節子と一緒にユニフォームに背番号をつける仕事をしている。

滝沢は、番号の書かれた駒を選手に見立てて、明日の試合の組み立てを一心不乱になって考えている。
加代はその邪魔をしないようにそーっと帰っていく。
だが、現在のチームの実力不足は誰が見ても明らかで、滝沢がどんなに知恵を絞って戦術を考えたところで、打開策が生まれる筈もなかった。

節子は、頭をかきむしって苦悩する夫にウイスキーを出しながら、
「大丈夫よ、子供たち、きっとあなたの期待に応えてくれるわ」と、全く心のこもってない言葉をかける。
滝沢「……節子、お前、ラグビーに興味ないだろ?」 節子(笑顔で)「ないわよ」 ……言うまでもありませんが、嘘です。
試合当日、観客席には甘利先生たちや、滝沢の家族、内田親子と尾本、下田夫妻、さらには前回退部した星の姿なども見受けられた。

大木も清美たちにまとわりつかれながら現れる。
そして、親戚の家に預けられている筈の圭子も、そこを抜け出して観戦に来ていた。
もっとも、そばには父親の部下らしき男(剣持伴紀)もぴったりくっついている。
試合開始時刻が迫り、選手たちがグラウンドに出てくると、観客たちもいよいよヒートアップする。
夕子「光男~、相手ちょろいぞー、いてまえ、いてまえ、いてまえーっ!」 「……ええ、生きてる心地がしませんでした」(談・夫婦の隣に座っていた男性)
滝沢は「気合負けしないでタックルしろ」とだけアドバイスして、光男たちを戦場へ送り出す。
試合開始のホイッスルが鳴るが、なんと、川浜は一度もボールに触れられないまま、トライを決められてしまう。
滝沢の悪い予感は見事過ぎるくらい的中し、その後も川浜は相模一高の鍛え抜かれたラグビーに圧倒され、文字通り手も足も出ないと言った状況になる。

前半、53対0(!)となったところで、清美たちは近日中に、自分たちの小指とお別れしなくてはならなくなったことを悟る。
明子「どうしよう」
清美「どうしっ……」
大木「諦めな、ひと眠りだ」
後半になっても、一方的な試合運びは変わらず、川浜の応援席にはおもっ苦しい空気が垂れ込める。

試合中、へばって大の字に倒れてしまう光男(留年)。

圭子「私、帰ります」
部下「もういいんですか」
圭子もいたたまれなくなって、途中で席を立つ。
振り返って、
(光男さんじゃない、あれは私が愛した本当の光男さんじゃない!)と、心の中で叫ぶ。
圭子さん、現実を直視しましょう。あれが正真正銘掛け値なしの森田光男と言う男です。
あんな男のことなんかさっぱり忘れて、(大木のような)もっと良い男を見付けましょうとアドバイスしたくなる管理人であった。
さて、涙もろい夕子などは、悲惨な試合展開に涙ぐんでいたが、隣に座る夫がじっとグラウンドを見詰めているのに気付き、
夕子「あんた、よう見てられんなぁ。うちはもうつろうてつろうて」
下田「先生の奥さん見ろ」

節子は、周りの観客の、滝沢に対する罵声を聞きながら、静かに試合を見ていた。
下田「奥さんはどんなにつらくても最後まで見届けなさるつもりだ。俺たちも最後まで見ようぜ」
夕子「せやな、先生はもっとつらいやろうなぁ」

つらいのはベンチの加代も同じで、ひたすら相手側の得点をスコアに書き込んでいるうちに、ぼろぼろと涙がこぼれてくる。
補欠のイソップも、とめどなく流れる涙を拭こうともせず試合を見詰めている。

滝沢(もうたくさんだ、これ以上あんな奴らに付き合ってられるか!)
じっと耐えてきた滝沢も、さすがに我慢できなくなってその場から立ち去ろうとする。
すかさず加代が
「先生、今日の打ち上げ何処でやりますか?」と、尋ねる。
滝沢「新楽に決まってるだろう!」 ……じゃなくて、
加代「先生! みんなどういう気持ちで戦ってるんでしょうね」
滝沢「……」
加代「悔しいでしょうね、情けないでしょうね」

滝沢(そうだ、俺はお前たちになにをしてやったんだ? なにひとつしてやってない。このざまはお前たちのせいじゃない。
シャレの通じない相模一高のせいだ。俺が悪かったんだ、俺が悪かったんだ……)
滝沢は加代の言葉に、逆に自分のふがいなさを責め、選手たちに心の中で詫びるのだった。
そして、試合終了のホイッスルが鳴り、滝沢たちにとって地獄の数十分がようやく終わる。

滝沢、ふとスコアボードを見ると、109対0と言う、今だったらツイッターであっという間に拡散されるであろう、凄まじい数字が刻まれていた。
これが現実の試合だったら、「もう笑うしかねーな」となるところである。
予想外の大敗に、観客たちは暗い顔で帰っていく(よく試合終了まで居たな)。
甘利先生たち関係者は、あまりのショックに(シャレ)しばしその場から動けない。
そして清美と明子は、自分の小指を見詰めて、「あーっははーっ!」と、違う意味で号泣するのだった。
滝沢はそれでも、自分よりもつらかったであろう選手たちを「ごくろうさん」「怪我なかったか」「宿題しろよ」「歯ぁ磨けよ」などと温かくベンチに迎えて入れてやろうとするが、

光男「やれやれ、やっと終わってくれたぜ」
選手「あーしんどー」
選手「帰りましょ帰りましょ」
予想に反して、光男たちはサバサバした様子で、しかもほとんどユニフォームが汚れていないではないか。
滝沢(なんてことだ、この子たちは試合の間中、投げやりに過ごしたんだ!) いや、まぁ、それって試合を見ていれば分かったと思いますけどね……。
悔し涙ひとつ見せず、清々した顔で水分を補給している選手たちを見ているうちに、滝沢の心の中に、番組始まって以来の、凄まじい怒りが込み上げてくる。
滝沢「おいっ、お前たち、俺って良く見たら和田アキ子に似てないか?」 選手たち「いや、それほどでも……」
……え、真面目にやらんと殺す? 分かりました。
そしてここから伝説の大説教シーンとなります。

滝沢「お前たち、俺がどうして怒ってるのかまだ分からんのか、試合に負けたからじゃない。どうでもいいやというお前たちの心根が許せんからだ!」
選手「いい加減にしてくんねえかな」
光男「あーあー」
この期に及んでまだ不貞腐れている光男。
くどいようですが、圭子さん、こんな男でほんっとーに良いんですか?
滝沢「真面目に聞け! お前たちがやったことは裏切りだ。いいか、早朝練習に出るお前たちの為に毎朝早く起きてご飯を作ってくれたお母さんたち、汚れたジャージを毎日毎日洗ってくれた山崎くん、仕事を休んでまで応援に駆けつけてくれた人々、そういう陰で支えてくれた大勢の人々の信頼をお前田は手ひどく踏みにじったんだ!」
長くなりそうなので、廊下で聞いていた甘利先生が、校長先生を誘って相模一高の控え室へ行く。

そこでも、監督の勝又がえらい激怒していた。
勝又「お前たちは後半、明らかに手を抜いた。(バコッ)たとえ勝ちが見えていても、手を抜くのは相手に無礼だ!(ビシッ)」
後半の得点が前半より少なかったと言って、勝又が選手たちをバキバキに殴っているのである。
……いや、どう考えてやり過ぎだろ。
そもそも、今回はこれだけ大差がついているのだから、むしろ後半も全力で鬼のように点を取りに行くことのほうが相手に対して失礼じゃないのかと思うのである。
それに、「体罰」って言えば不思議なことに許されるけど、冷静に考えたらただの暴力行為だもんね。

が、川浜の教師たちはむしろその厳しさに感銘を受けている様子だった。
甘利「手を抜かれなかったら、一体何点取られたでしょう?」 甘利先生、そういうことじゃなくて……
それにいくら他校のこととは言え、以前、滝沢が水原を殴った時はあれだけ大騒ぎしていたのに、非暴力主義者の校長が何も言わないのも引っ掛かる。
体罰が許容されると言う、「殴っても信頼関係が壊れないと確信した時」なのかも知れないが、「確信した時ならいつでも殴っても良い」と言うことではないと思うんだけどね。
どうでもいいが、管理人が中学の時は、教師が全力で生徒をボコボコにしてましたけどね……。
その3へ続く。