前回、いつやったのか全く思い出せないほど久しぶりの「はいからさん」の時間です。
以前、各話ごとに割と詳しくレビューしていたのだが、アニメのレビューするのがかなりきついことに気付いて、8話まで書いたところで挫折して、そのまま放置していたのだが、来年、「はいからさんが通る」が劇場版アニメになると知り、せめてそれが公開されるまでには再開したいと思い立ち、こうしてキーボードを叩いている訳である。
だが、従来までの方式でやっていくと、また中途挫折する可能性が高いので、9話以降は、一度にまとめて数話ずつ片付けていくことにした。
第9話「初めての胸のときめき」 作画監督 田中英二・岸義之
さて、引き続き、伊集院伯爵家で行儀見習い中の紅緒。

朝食の席を利用して、西洋式食事のマナーの勉強をさせられたりする。
今回は、タマプロが作画なのだが、監督・チーフ作画があの岸義之氏なので、ご覧の通りデッサンは最初から最後まで狂いまくりである。

紅緒が、思い描く豪華な朝食メニューに出てくる、豚の丸焼き。
……
あの、もう少し真面目に描いてね、スタッフさん。
その日は日曜だったので、紅緒には学校に行くという逃げ道もなく、その後も料理、生け花、果ては水引の掛け方など、伯爵家の奥方として必要な様々な指導を受ける羽目になる。

紅緒「あらー、わらひのお花が……」
折角完成した生け花だったのに、如月が床をドンと叩くとハラハラと落ちてしまい、茫然とする紅緒。
この「わらひ」と言う横沢啓子さん独特の言い方が、凄く萌えるのです!
それでも負けず嫌いの紅緒は、めげずに勉強に励む。

軍務から戻ってきた忍は、疲れてソファでうたた寝している紅緒を目にして、いとおしそうにそばに跪く。
……少尉、急にちっちゃくなってません? 洗濯して縮んだ?
忍「いじらしい、君のそのやつれた顔を見ていると僕の胸は張り裂けそうだ……」
忍は紅緒にささやきかけると、お姫様抱っこして2階の寝室へ運んで行く。
運ばれている途中、紅緒も目を覚まし、忍の胸の中で、今までになかった胸の高鳴りを感じるのだが……、

あの、もうちょっと乙女チックな表情に出来ませんか、作画スタッフさん?
紅緒、少しやつれた様子で登校し、久しぶりに親友の環と会う。
忍のことを密かに愛している環の為に、紅緒はわざと無作法に振る舞って自分から伯爵家から追い出されるつもりだと話しているのだ。

環「どう紅緒、うまくいってる? ほうら、花嫁修業追い出され作戦よ」
紅緒「うん、まあまあね……」
相変わらず、悪夢のような動きで並んで走る二人。

二人とも、全く同じ手足の動きなので、妙に可笑しいのだ。
紅緒、心配している父親やばあやの為に、手紙を書いて牛五郎に届けて貰う。

ここでも、背景と比べて妙に小さくなっちゃった花村少佐、ばあや、蘭丸、牛五郎が寄り集まっている悪夢のようなカットが拝めます。

その後、けなげに洗濯物をしていた紅緒であったが、女の着物を男の着物の上に干していたと言う理不尽な理由で、伊集院伯爵に、洗濯物を叩き落され、自分の着物を踏みにじられると言う屈辱を味わう。
我慢に我慢を重ねてきた紅緒の堪忍袋の緒が切れて、物干し竿を武器に、伯爵の槍と真剣勝負を挑む……と言うところで、10話へ続くのだった。
ちなみに今回の原作消化は、10ページほど。
第10話「召しませ愛の特効薬」 作画監督 田代和男
前回の続きから、紅緒と伯爵との真剣勝負の一騎打ちが行われ、紅緒が勝利を収める。

紅緒「あの、おじいさまのお怪我、どんな具合ですか?」
その場はカッとなって我をなくした紅緒だったが、当主をぶちのめしてしまったことを強く反省し、荷物をまとめて伯爵夫人に暇乞いを告げに来る。
だが、夫人も忍も、そのことを全然問題にしておらず、紅緒はそのまま伯爵家に残ることになる。

その後も色々とどうでもいいエピソードが続き、雨の降る夜、窓から外を見て物思いに耽る紅緒。
紅緒(お父様、元気かしら? ばあや、長雨が続くと神経痛が痛むのよね……蘭丸、どうしてるかしら)
なお今回の作画は、可もなく不可もなく、レベルをA、B、Cの三段階に分けると、B程度だろう。

紅緒は、伯爵がばあやと同じ神経痛を患っていると聞くと、如月に薬草などを用意させ、花村家秘伝の神経痛の薬を調合し、伯爵に飲ませる。
そして、いがみあっていても、根は優しい紅緒は徹夜で伯爵の看病を行うのだった。

翌朝、薬が効いて神経痛も改善した伯爵、紅緒の献身的看護を知って、感激するかと思いきや、
伯爵「情けない、このワシが旗本娘の情けなど受けて……」
紅緒「かーっ、あのね、おじいさま、旗本って言うけど、それは御一新前のことで、今は大正で……」
伯爵「それくらいわかっとるわ! ワシは旗本と言う言葉が大嫌いなんじゃーっ! それと言うのもばあさんがのう……ワシと結婚する前に旗本の男と恋をして」
紅緒「私の祖父に当たる人ですね?」
伯爵「そうじゃ、ばあさんはワシと一緒になってからも一向にその男を忘れてはくれなんだ……」
伯爵は、夫人が今も、遂に結ばれなかった紅緒の祖父のことを想い続けているのだと言い、その為に今でも旗本のことを毛嫌いしているのだと真情を吐露する。
だが、それを聞いていた夫人が「あの方とのことはただの美しい思い出、しかし、私は思い出に縋って生きてきたのではありません。御前が共にいて下さったからこそ……」と、涙ながらに告げ、伯爵は自分の思い違いに気付くのだった。
こうして、以前よりぐっと親密になった伯爵夫妻の姿を眺めつつ、紅緒は「あーあー、私にもあんなふうに愛し合える人が見付かると……良いな! 良いな!」とつぶやくのだった。
なお、今回の原作消化も10ページほど。話が進まねえ……。
第11話「ようこそ嘆きの園遊会へ」 作画監督 田中英二・水村十司
管理人にとってのオアシス、タマプロの水村氏(or西城氏)作画によるランクAの回である。

冒頭、ファンの女の子たちから逃げ惑うの蘭丸の顔を見るだけで、9話、10話とはレベルが違うことがお分かり頂けると思う。

蘭丸「ああー、やだやだ、うっかりお稽古にも出られやしないんだから。いやだなぁ、どうして女ってみんなああなのかしら……僕もう絶対、紅緒さん以外の女の子なんて……」
愛する紅緒の面影を思い浮かべ、うっとりと頬を染める蘭丸。

その後、道を歩いている牛五郎を見付け、嬉しくなって思わず飛びつく。
蘭丸「牛さん、なつかしいーっ! あっはっはっ」
牛五郎「よ、よせったら、往来でみっともねえ。
だいたい、毎日毎日会ってるじゃねえか」
蘭丸「でも、懐かしいのよ~」
牛五郎「よせよ、つられてその気になるじゃねえかよ」
蘭丸「はぁっ?」
このやりとり、原作では牛五郎の太字の部分の台詞はない。
アニメでは、原作とは違ってほとんど毎回のように牛五郎が蘭丸に紅緒の様子などを伝えに戻っているので、こんな言い訳めいた台詞が付け加えられたのだろう。
ちなみに原作では、牛五郎の着物の柄は
ゴキブリである。さすがにそれはないだろうと、アニメでは金魚に変えられている。
蘭丸は牛五郎に無理に頼んで、伯爵家に行って紅緒の様子を見に行ってくれるよう頼む。
(牛五郎は、紅緒の学校の送り迎え以外では、伯爵家には出入りできないのだ)
ちょうどその日、伯爵家では、忍が友人たちを集めて庭で園遊会を開く予定になっていた。

紅緒「園遊会ですって?」
忍「心配することはありませんよ、僕の友達ばかりの内輪のパーティーですからね」
紅緒「で、でもぉ」
忍「みんな僕の婚約者を見たいと言って楽しみにしていましたよ」
紅緒「そ、そんな困ります! 婚約者と言っても……あの、私はまだ結婚を承知した訳では……」
忍「そんなに堅苦しく考える必要はないんですよ、紅緒さん、はっはっはっはっはっ」
何事もさらりと笑って片付けて、結局自分の思うとおりに事を運んでしまう忍に、紅緒も「あ、あたしにだって立場ってモンがあんだかんね!」と、思わず抗議の声を上げるのだが、忍の耳には届かない。

やがて、忍の友人の軍人や文士たちがやってくる。
彼らは紅緒を見て、一様に意外そうな顔になる。見た目は環と同じようでも、劇中では、紅緒は「ちんくしゃ」と言う設定になっているのだ。
高屋敷「お前そう言う趣味だったのか。ロリータ・コンプレックスか……ロリータ・コンプレックスと言うのはすなわち少年愛に通じ……」
紅緒「しょっ、少年! くー、なんですって!」
思わず声を荒げる紅緒だったが、高屋敷は案に相違して「しーましぇん」とあっさり頭を下げる。

忍「紅緒さん、僕の親友で高屋敷です。口は悪いが良い奴なんですよ。文士崩れでね。あだなはライオン丸って言うんだ」
紅緒「ライオン? イ、イメージとして分かるような気がするわ」
高屋敷の横顔から、ライオンの鬣を思い浮かべて妙に納得する紅緒であった。
ちなみに原作では「ライオン丸」ではなく、「怪(快)傑ライオン丸」と、はっきりピープロの特撮番組の名前が使われている。
一方、園遊会の様子を牛五郎から聞かされた蘭丸、紅緒が何かヘマをしないかと気が気ではない。

そのうち、「任せといて、素晴らしいアイディアが閃いたの!」と目を輝かせる。

園遊会には、当然ながら、環も呼ばれていた。
環「紅緒さんもあれからいかがお過ごし?」
紅緒「な、なによ、その気取った挨拶?」
環「どうしたのよ、例の作戦?」
紅緒「ただいま実行中なるも、敵も手強し、我、苦戦なり」
環「そうなの……」
園遊会は和やかに進むが、

環は忍とふたりきりになるチャンスを掴み、
環「紅緒、あなたに向いてないわ。趣味も環境もあなたにはもっとぴったりした人がいる筈よ」
と、ストレートに恋敵を蹴落とそうとする。
環「紅緒だってかわいそう、慣れない公家の家で苦労して」
忍「公家の家か……そうだね、そして君も華族の生まれ……環さん、それなんだよ」
環「え」
忍「僕たちは偶然ここに生まれ合わせただけで華族と言う特権を持っている。それを振りかざして生きている。僕は逃れたいと思ってきた。いつもいつもこの奇妙な世界から……でも紅緒さんに会ってから、いつか僕もその垣根を越えることが出来るかもしれない、そう思うようになった。彼女は夢を見てその夢を現実にすることの出来る人なんだ。確かに僕も最初はおばあさまの為にと考えていた。でも今は違う……」
忍の話を聞いていた環は、激しいショックを受ける。
忍が、祖母への義理の為ではなく、真剣に紅緒のことを愛していることを悟ったからだ。

環「分かったわ、忍さんの気持ち……」
忍「環さん、君だって素晴らしいお嬢さんだよ、きっと素晴らしい相手が……」
環「もういいの、私、諦めた……」
環、拍子抜けするほど簡単に恋の勝負から降りてしまう。
この辺はいかにも華族のお嬢様らしい粘りのなさである。
(もっとも、原作では、「諦めた」とまでは言ってない)

その後、忍の愛犬、天丸と地丸が、しきりに高屋敷に向かって吠え立て、それをやめさせようとする忍と、続けさせようとする紅緒が対立するというオリジナルエピソードになる。
結局、高屋敷の背中にクマ蜂がとまっていたのを、犬が知らせようとしていただけだと判明する。
なお、あえてこんなエピソードを挿入したのは、アニメではもっと早い段階から登場して紅緒になついていた二匹の犬が、実は原作ではこの園遊会のシーンで初めて登場しているからである。
つまり、原作では、ここで初めて、忍以外になつかない犬が紅緒になついたということで、伯爵家の人々が驚くと言うくだりになっているのだ。

騒動の後、天丸と地丸が紅緒の顔を左右から舐めるアニメーションも素晴らしい。

最後に、蘭子と言う女中に成りすました蘭丸が、如月から紅緒に紹介される……と言うところで、終わり。
で、今回の原作消化も、きっちり10ページほどであった。
(C)大和和紀・講談社・日本アニメーション