第18話「影のカラテキッド 三姉妹最大のピンチ」(1987年3月12日)
大変長らくお待たせしました。一ヶ月以上ぶりのスケバン刑事のお時間です。
成南高校の空手部道場に、道着姿の生徒がひとりで座っている。

顧問らしい教師がつかつかとやってきて、
教師「連道武昭、貴様は全国高校空手道連盟から永久追放処分と決定した。お前と言う奴は学生空手界の恥だ。重傷を負わされたものの痛みを考えてみろ!」
連道「真の強さを究めなくて、何の空手道でしょうか? 先生、自分は……」
教師「バカモン、さっさと出て行け。二度と当クラブの敷居を跨ぐことは許さん」
教師は連道の言葉に耳を貸さず、荒々しい足取りで去って行く。
連道「ふぬけどもめ、何故俺の空手道にかける真心を理解せんのだーっ! ええーいっ!」
抑えきれない憤りを、サンドバックや積み重ねられた瓦にぶつける連道。
と、何処からか真言密教の呪文のような声が聞こえてくる。そして、ひとりの忍者が姿を見せる。

連道「また現れやがったか、忍者ども!」
忍者「世紀末は近い、連道武昭、草としての宿命にこたえよ。その鍛えぬいた空手技を我らの為に使え」
連道「しつこい! 俺が草だとか、忍者としての宿命だとか、そんな寝言なぞ、聞く耳持たん!」
「草」と言うのは普段は普通の暮らしをしているが、一旦緩急あれば「影」の下っ端として活動する忍びのことである。
あくまで自分の力は自分の為に使うと断言する連道を力尽くで従わせようと数人の忍びが襲い掛かるが、連道、言うだけのことはあってとても強く、木っ端忍者など全く寄せ付けない。
だが、首領格の忍者が放った「屍毒」を目に受けて、悶え苦しみながら道場を飛び出す。

一方、こちらは進級試験を間近に冷えた星流学園。
番長グループが屋上で追い込みの勉強をしている。
ゴロウ「1789年には何が起こったでしょう?」
由真「1789年でしょ? ひなわくすぶる……だから、あ、種子島に鉄砲伝来」
ヒデ「だめだなぁ、ひなわくすぶるバスチーユ、フランス革命に決まってんじゃないですか」
ゴロウ「375年は?」
由真「375年……みな、皆殺し、ハンパな野郎は皆殺し!
隣町のスケバングループとの果し合いの年!」
ヒデ「ブーッ!」
ゴロウ「あの、ゲルマン民族の大移動なんすけどね」
唯「ほんと、由真姉ちゃんのおつむは勉強向きに出来ておらんとやね」
横で由真の珍回答を聞いていた唯が、しみじみと感想をつぶやく。
……しかし、ゲルマン民族の年を覚えて、いったい何になるんだろう?

由真「お前にだけは言われたくないんだよ!」

ごもっともの怒りを込めて、唯の頭を叩く時の由真が妙に綺麗なので貼りました。

いつものように二人が姉妹喧嘩をおっぱじめるのを、年長者の落ち着きで見守っている結花とクマ。
クマ「年度末の進級試験が明日だってのに、姉御、さぞやご心配でしょうね」
結花「私が卒業したら、ちゃんと二人で星流を仕切っていけるのかしらね」
二人は三年生なので、順当に行けば4月からこの学校からいなくなってしまうことになる……。

明日が試験だと言う折も折、般若から三人に呼び出しがかかる。
無論、任務はあの連道に関するものだった。
般若「天才と言われる空手家だが、他校の空手部へ道場破りをして、数人に重傷を負わせ、空手界を永久追放された。その連道に影が接触したらしい」
礼亜「しかも、連道は街で狂ったように暴れています」 ケーサツ呼べ、ケーサツを。
般若は、連道を取り押さえ、影に利用されることを防げと命じる。
由真と唯はホイホイ立ち上がって出掛けようとするが、結花が鋭い声で止める。

結花「お待ち! この指令、明日まで待って貰えないかしら? 明日は進級試験、この二人はそれでもなくとも危ないの……勉強させなくちゃならないのよ。落第なんてさせられない。明日まで待って頂戴!」
凛然と要求する結花であったが、

般若「それは出来ん。結花、こうしてる間にも影たちは着々と世界を覆っていこうとしているのだ。それと戦うのはお前たちの宿命! 試験と任務、両立させてこそ、風魔の子であろう」
結花「そんな……」
般若「甘いぞ結花! 逆を返せばたかがこの二つを両立させることもできないで、影の陰謀を防げると思うか? 元より甘えの許されない修羅の道、ゆけえっ! そして使命を果たせ!」 と、キレ気味にむちゃくちゃな理屈を押し付けられ、結花はいかにも納得いかない顔付きで出動するのだった。
なんでもかんでも宿命で片付けようとするのもどうかと思うし、高校の試験と、影による世界の破滅を並べて論じるのも相当に「???」である。
それに、もっと重大な任務ならともかく、連道を確保する仕事なんて、別に三姉妹じゃなくても般若の部下でも十分務まる仕事だろう。
……もっとも、般若としては三人をこのまま高校生にしておく方が、何かと都合が良いので、わざわざこの時期を選んで任務を与えたとも考えられる。

連道は、空手着のまま、街中で狂ったように暴れていた。
三姉妹が彼を取り押さえようとするが、連道は大変強く、素手の戦いでは勝負にならない。

だが、連道の動きを冷静に観察していた唯は、連道が犬や子供にぶつかりそうになると、明らかに意識的に避けているのに気付く。
結局、あの忍者たちによる妨害もあって、三人は連道を取り逃がしてしまう。

結花「この任務これまでよ! 連道は手強いわ、それに影の忍びたちも彼を追ってる。明日の為の試験勉強どころか、試験そのものも受けられるかどうか……」
唯「じゃけえ、般若が言うちょったやろ、試験と任務を……」
結花「般若は所詮他人よ! 影と戦うのが私たちの宿命と言うけど、その前に私たちは高校生なのよ。進学問題や、将来の夢だってあるわ。
私は大学へ進みたいの」
いや、「大学へ進みたい」って、もう3月なんですけど……。
結花は、指令は中断して試験勉強すること! と強く妹たちに指示するが、唯は聞かない。
唯「わちは見たんじゃ、連道は子犬を踏み潰すまいとし、ちっちゃな子供を庇いよった。あいつが暴れちょるのには何か訳があるんじゃ。放っておくわけに行かん。姉ちゃん、勘弁ね」
唯、姉の言葉に逆らって連道の後を追う。
任務が大事と言うより、連道と言う人間のことが気にかかるのだろう。

その夜、由真のほうは姉に従って家に戻り、一応、試験勉強に励んでいる。
まだ唯は戻っていない。
結花「私、これから探しに行くわ」
由真「これからー?」
結花「唯も私の妹よ、みすみす落第するのを黙って見ている訳には行かないわ」
由真「だって、それじゃあ姉貴が勉強できないじゃん」
結花「私はあなたたちと違うの」
要するに、
「お前ら馬鹿と違って私は賢い」と言ってる訳である。
一日中探し回った挙句、唯は倉庫の片隅に身を潜めている連道をやっと見付ける。
唯「あんた具合悪いんじゃろう、分かった、水持ってきちゃる」

同じ頃、あの忍者、兵歩の左源太(漢字は適当)は、翔の前に畏まっていた。
翔「左源太、たかが草ごとき一匹、思うままに操れいで、お主、それでも忍びか!」

オトヒ「如何にその天才が惜しかろうと言え、影星の宿命に従わぬとは」
ミヨズ「連道武昭、許しておかぬぞ」
お、久しぶりにミヨズさんが登場

翔も、一度背いた草は抹殺せよと非情の命令を下す。
CM後、
唯がどこからか汲んできた水を差し出すが、手負いの獣のように人を信じられなくなっている連道は、それを振り払うと、唯の腹に拳を叩き込む。
連道「お前が影ではないと言う証はない。油断させて俺に近付き、倒そうとしてるんだろう」
唯「そんなに人が信用できんのか」
連道「草の宿命などに負けぬ為だ! 自分の才能で世を渡り、望むものを掴む。その為には他人は信用せん! 頼れるのは己ひとりだーっ!」

唯「さびしか男やね、あんた……」
連道「うるせえーっ!」
連道、さらに正拳突きを放つが、唯の顔の前で止める。
連道「何故よけん?」
唯「あんたは無闇に人を殴る人じゃなか」

唯は、連道が「屍毒」なるものを浴びていることを知ると、学校の図書館の忍者ルームへ行き、その解毒法を調べる。
唯「ネズミやイタチ、たぬきなどの死体を腐らせ、その体液を採集して……きたなかぁ、解毒剤はただひとつ、カッパノミソギ草……」
唯は真夜中にも拘らず、池の周りを駆けずり回ってその草を見付け出す。

連道のところへ戻ってくると、その場で葉っぱを煎じて、解毒剤を作る。
唯「さ、飲んでみない」
連道「……うっ」

唯「ひひ、おもしりぃ顔! そげに苦い?」
あまりの苦さに顔をしかめる連道を、唯が屈託のない笑顔でからかい、自らも口に含んで見せる。
唯のしかめっ面を見て、つい、野獣のような連道も笑みをこぼす。

唯「うふーっ、笑った! ああ、照れちょる照れちょる、笑うと結構可愛いの……はい、最後までちゃんとのまにゃいかんとよ」
実際は年下なのに、お姉さんぶった口調で注意する唯が可愛いのである!

薬を飲み干した連道が振り向くと、一日中探し疲れた唯はすやすやと眠っていた。
と、一部始終を見ていた結花が出てきて、「唯は連れて帰るわ」と話しかける。
結花「あなたを守ってあげられないのはつらいけど明日の試験には私たちの進級がかかってるの」
連道(こっちは命がかかってるんですけど……) 結花は眠りこけている唯の体を抱き上げる。
連道「その子の名前、教えてくれないか」
結花「風間唯」
連道「天使だな、その子……俺は自分のことしか考えなかったのかも知れん。もしこの命、長らえることが出来たら友達になってくれるか?」
翌日、恐らくあれから徹夜で詰め込み勉強していたのだろう、肝心のテスト中に居眠りをしてしまう唯であった。
その頭をゴツンと殴り、
依田「進級試験ですよ、よしなに……」

勉強しなくても余裕で試験をパスできる学力を持つ結花は、普段と変わらぬ様子で試験を受けていたが、ふと脳裏に、連道の「俺は自分のことしか考えなかったのかも知れん」と言う言葉がリフレインする。
結花(なのに私は……)
自分のことしか考えていないのは、自分も同じではないかと胸を突かれる思いを抱く。

急に連道のことが気になりだした結花、テストをほっぽりだして教室を飛び出そうとする。
小坂「何処行くんですか、風間結花さん!」
結花「人の命と、自分の進学を天秤にかけたりして……失礼します」

クマ「姉御!」
小坂「山田君! 山田君!」
結花に続いてクマもテストを放棄して行ってしまう。
久しぶりの小坂先生(松香ふたみ)の登場なのに、大きく映してくれず、悔しいです!
果たして、連道は隠れ場所を左源太たちに見付かり、窮地に陥っていた。

そこへ結花が飛び込んできて、一緒に戦う(クマは?)。
このシーンに大西結花さんの「シャドウハンター」が凛々しく流れます。
結花、そこそこ苦戦するが、最後は左源太を倒す。
般若もなんだかんだで心配だったのだろう、姿を見せ、結花を気遣う。
般若「結花、試験は気の毒だったな」
結花「唯に負けたわ、あの子は天性の何かを持っている。それに触れてこの人は……私、恥ずかしかった。これで良かったのよ」
留年をサバサバした表情で受け入れる結花。
もっとも、番組的に、まだ結花に卒業されては困るので、何らかの形でこうなることは最初から分かりきっていたのだけれど。

それでも、試験の結果が出て、自分たちの名前が留年決定者として麗々しく貼り出されているのを見ては、結花もクマもかなりのショックを受けるのだった。
使命と引き換えの結花はともかく、クマなんて、結花を追いかけて街をうろうろしてただけだもんね。

気丈な結花も、さすがに涙をこぼす。
成績優秀だっただけに、この屈辱は相当の痛手だったと思われる。
それでもすぐ涙を拭いて、なんとか進級できた妹たちを逆に励ます。
結花「落第ぎりぎりなんだから、気を抜いちゃダメよ」
唯「わちゃだいじょぶなんじゃけど、由真姉ちゃんがなぁ」
由真「なんだとぉー」
結花「由真、これからは同じ3年生よ、頑張ろうね」

そこへ般若、いや依田先生が現れ、
依田「連道からの伝言です。傷が良くなったら共に影と戦おうと……彼は我々の組織の病院へ運びました。完治すれば心強い味方になりますよ」
その言葉どおり、終盤、連道は風魔の一員として唯たちの前に姿を現すことになる。ま、その時に
死んじゃうんだけどね。