第28話「影との対決 ハングマン散る!」(1982年12月24日)
かなりのスローペースでやってきた「ハングマン2」も、気がつけば最終回となりました。
振り返ってみると、やっぱり総合的な出来の良さでは「2」がシリーズで一番かなぁと思う訳です。
冒頭、一年前から行方不明だった河村と言う会社員の白骨死体が発見される。
ポケットに遺書めいた手紙があったことから、警察は自殺と判断するが……。

デジコン「(河村は)栄進開発と言う不動産会社の経理課長をしていた男だ」
オショウ「栄進開発?」
デジコン「一年前に土地ころがしでぼろ儲けをして国税庁の手入れを受けた札付きの不動産会社だ」
マイト「しかし、脱税容疑じゃ証拠不十分で立証できなかったんじゃないのか」
タミー「ちょうどその時に経理課長の河村が行方不明になったって訳ね」
デジコン「河村が社内の重要機密を知っていたとしても不思議はない。とすれば……」
ヨガ「消されたと言う可能性も……」
オショウ「そう考えるのが妥当だろうな」
久しぶりに顔出し出演のゴッドの命令は、河村の死の真相を調べ、栄進開発が土地ころがしで得た巨額の資金の行方を追うこと、であった。
今回はいつもと違い、

大室「得体の知れぬ男?」
栗田「例の一件を嗅ぎ回っているそうです。やはりハングマンが動き出したようです……」
早くもこの段階で、敵の黒幕が登場し、しかもハングマンの存在をも既に掴んでいることが示される。
大室はハングマンを「この際、徹底的に叩いておく」よう命じる。

そんなことは露知らず、ハングマンはいつものように事件の調査に取り掛かっていた。
問題の栄進開発のオフィスでは、ぶっ飛んだメイクの女性社員がひとりで「怪物くん」の9巻を読みながら、「にゃはははははっ」と笑い転げていた。

オショウ「あのう、栄進開発さんはこちらですよね」
OL「そう」
オショウ「あたし、土地を探してるもんなんですけどね」
OL「土地? なんのこと? にゃははははっ」
探りを入れに来たオショウともまるで話が通じず、とてもまともなOLとは思えない。本人も電話番をしてるだけだとうそぶく。しかも「ジュリー」から電話がかかってくるなどと言い出す。
……どうでもいいことだが、「怪物くん」の9巻ってそんなに大笑いするほど面白くないと思うが。
さすがのオショウも手を焼いて、何の成果もないまま引き揚げる。

だが、何処からか見張っていたのか、すぐにいかにもワルモノっぽい男が現れ、OLをびっくりさせる。
OL「あんた、誰ー?」
宮口「私が噂のジュリーよ」
名前が分からないので、とりあえず宮口と呼んでおく。
そういえば、宮口さん、後のシリーズでバリバリの女装マニアの役やってたなぁ……。

宮口は平然とそこから電話をかける。
OLはさして警戒もせず、その宮口に喉をこちょこちょされて喜んでいた。
こういうひたすら馬鹿っぽい女の子、それはそれで可愛い!(なんでもいいのかお前は)

オショウ、デジコンの車に乗り込む。
デジコン「栄進開発の関連会社を一通り当たってみたが現在は影も形も残ってないぜ」
オショウ「やっぱりな……本家の栄進開発のほうは目下休眠中だ。脱税騒ぎのすぐ後に店畳んだらしい」
その栄進開発の社長・篠崎に、栗田が、ハングマンの先手を打って接触し、当分身を隠すよう指示する。

一方、マイトとタミーはスナックを経営している夫婦モノを装い、河村の自宅に未亡人を訪ねる。
生前、河村に贔屓にして貰っていたので、線香を上げに来たと言う名目である。
マイトは「河村は自殺したのではない。栄進開発の社長によって口封じされたのではないか」と、自分の推理を告げ、未亡人から情報を引き出そうとする。
未亡人は詳しいことは知らないと言いつつ、社長の篠崎は、金に汚い小悪党ではあっても、人殺しなど大それたことをしそうな人物ではないと、マイトの推理を否定する。
マイト「第三の人物に心当たりありませんか?」
未亡人「そう言えば、脱税事件で騒がれていた頃、何度か電話が……主人は『先生』と呼んでました」

で、次のシーンで、銀座の高級クラブで、栗田と宮口が会い、
宮口「先生、見付けましたよ……事務所に探りを入れてくるところを」
栗田こそが、いわゆる「先生」だと言うことが早くも視聴者に明かされる。親切設計だね。
翌朝、既にオショウと夫婦同然の暮らしをしているよね子(三島ゆり子)が、オショウのスクーターを借りて何処かへ出掛けようとした瞬間、

いつの間にか仕掛けられていた爆弾が爆発し、よね子が重傷を負ってしまう。
今まで、完全にコメディリリーフだったよね子まで、こんな目に遭うことから、今回の敵が容易ならぬものであることが分かる。

デジコン「爆弾を仕掛けられた?」
オショウ「ああ、ひとつ間違えれば今頃あの世行きだ」
タミー「死んだの、よね子さん?」
オショウ「いや、幸い命は取りとめたが……それにしても一体何処のどいつがあんな真似しやがった?」
マイト「問題はそれだな、明らかにオショウの命を狙ったとすると、相手は只者じゃない」
デジコン「栄進開発の篠崎か?」
マイト「いや、奴はそんな大それたことの出来る男じゃないよ」
マイトは、事件の背後にはもっと別の大物が潜んでいるのではないかと睨む。
その大物、大室は、栗田に命じてさっさと篠崎社長を殺させる。殺すのが目的と言うより、それによってマイトたちをおびき出そうと言うのだ。
デジコンからそのニュースを聞いたマイトは、今度は河村未亡人が消されるのではないかと、コルベットで彼女のマンションへ急行する。
が、既に未亡人は無残にも殺されていた。しかも部屋に潜んでいたワルモノたちが、マイトも撃ち殺そうと襲ってくる。

マイト、窓を突き破ってベランダへ出て、そのまま路上へ飛び降りると言うスタントマンまがいの芸当を見せて、その場から逃走する。

敵は執拗にマイトを追ってくるが、最後は走行中の車の後ろに飛び乗って、なんとか逃げ切る。
マイトがこれほど危険に晒されたのは、1の最終回以来であった。
ちなみに最初の飛び降りは明らかにスタントマンだが、車に飛び乗るのは黒沢さん本人が演じている。

タミー「はい、タミーです」
マイト「タミー、急いでみんなを集めてくれ」
マイト、タミーがバニーをしている店に電話する。
悲しいことに、タミーのバニー姿はこれが見納めとなってしまう……。

デジコン「すると、河村の奥さんを殺したのは口封じと言うより俺たちをおびき寄せるのが目的だったって言うのか」
マイト「野郎、許せねえ」
オショウ「話はあべこべだよ、ハングマンが狙われるなんてなんてこったい」
タミー「しかも、相手は正体不明」
マイト「ひとつだけ言えることは今度の相手は我々より数倍でかい闇の組織と言うことだ」
マイトは、自分が囮になって敵を誘い出し、その正体を掴もうとする。
具体的には、後半はあまり出てこなくなった、マイトの経営しているカジノバーに行くのである。
敵は既にその店のことも知っている筈だから、必ず釣り出されると踏んだのだ。

さとみ「マスター、おかえりなさぁーい」
マイト「何か変わったことは」
さとみ「それがね、変な男の人が来てマスターの居所教えてくれって」
マイト「早速来たか」
さとみ「うん?」
さとみちゃん、いかにも80年代と言う服だね。
マイト「俺は今日限りこの店をやめることにした」
さとみ「やめる?」
マイト「知り合いに権利を譲ったんだ、心配要らないよ、今までどおり君はここで働いてていいから」

さとみ「そう、マスター、やめちゃうんですか」
突然の話に、さとみちゃんが眉を曇らせる。
マイト「いいか、良い男捜して、幸せになるんだぞ」
さとみ「……」
マイト「長い間、ありがとう」
と言う訳で、準レギュラーとして画面に潤いを与えてくれていたさとみちゃんとも、これでお別れ。
さとみ役の井筒さとみさんは、後のシリーズにも何度かゲスト出演し、すっかり大人の女性に成長したところを見せてくれました。
さて、店から出てきたマイトを、抜かりなく宮口が尾行する。

それをビルの屋上から監視しているオショウとタミー。
オショウ「あいつだ、サングラスの男、マイトをぴったりマークしてるぜ」
どうでもいいけど、襟、尖ってるなぁ……。
マイトは地下街へ降りて宮口たちをまく。そして反対にヨガが宮口をつけて、その雇い主・栗田に接触しているところをカメラに収めることに成功する。
マイト「こいつは栗田だ、政財界の怪物とか、影の総裁とか呼ばれてる大室寛治郎の第一秘書だよ」
オショウ「こいつは驚いたなぁ、まさかそんな大物まで繋がってるとはなぁ」
デジコン「栄進開発は大室の地下金脈だった訳か」
ヨガ「しかしそんな大物が何故俺たちを?」
マイト「ひょっとすると大室はもっとでかい金脈を掘り当てたのかもしれない。それを暴かれるのが怖くて先手を打って俺たちを……」
マイトは、大室が週に一度白金の料亭で開いている政財界の連中との密談の現場を狙おうと計画する。

タミー「私がやるわ、場所が料亭なら女のほうが接近しやすいわ」
デジコン「しかし相手が相手だ、どじを踏んだら命はないぞ」
タミー「任しといて……もしやられたら、香典はうんと弾んで貰いますからね!」
タミーのその言葉がジョークで済めば良かったのだが……。
さて、その会合の夜。
タミーはうまく仲居としてその料亭に潜り込み、大室たちの部屋に盗聴器を仕掛ける。それを外にいるデジコンが録音して、ハンギングの時に利用する……。
いつもの必勝パターンであったが、今回の敵は一味もふた味も違う。
話の途中で、栗田が盗聴探知機ですぐに盗聴器の存在に気付いてしまったのだ。
そしてたちまちタミーが掴まり、車に乗せられて何処かへ連れて行かれる。
しかも、先行して追跡していたバイクのヨガが敵の車にぶつけられ、こちらもあえなくキャプチャーされる。

ちなみにこちらが、縛られて後部座席に押し込められているタミーさんです。

二人は倉庫へ連れて行かれ、(ヨガだけ)ボコボコに殴られる。

宮口「さぁ吐け、ボスは誰だ、仲間は何処にいる?」
宮口はナイフでヨガの顔を切ったり、足に突き刺したりするが、

ヨガは痛覚がないかのように、まるで表情を変えない。ヨガの秘術のなせる業であろうか。
栗田「なまじの拷問では吐かんだろう、例の薬を使ってみるか」
彼らが薬の用意をしている隙に、タミーはやっと発信装置のスイッチを入れる。

ヨガも、密かに手首の間接を外していて、CIA御用達の自白剤を打たれそうになった瞬間、縄を解いて反撃に転じるが……、無情にも、宮口の撃った弾丸が背中を貫通する。
ヨガ「くっ、く……」
それでもなお宮口に向かっていくが、さらに数発の弾丸を体中に浴びる。

さしものヨガも、やがて膝をつき、しばしタミーと見詰め合ってから、うつ伏せに倒れる。
タミー「ヨガ!」

栗田たちは何事もなかったように、今度はタミーに注射を打とうとする。
その瞬間、タミーの取った行動は……、

ボタンに仕込んでいた毒薬を、素早く飲み込む!
慌てて宮口が薬を吐かせようとするが、タミーはあっという間に冷たくなる。
そう、秘密を喋らされる前に、自ら命を絶ったのだ。
いやー、ヨガの死はある程度予想していたが、まさかタミーが、それも自殺するとは……最初見た時は割とショックでした。
マイトたちが倉庫に駆けつけた時には、既に栗田たちの姿はなく、ヨガとタミーの死体だけが残されていた。

マイト「タミー、タミーっ!」
マイト、立ったまま死んでいるタミーの頬をめちゃくちゃに叩く。
(カットの後、夏樹さんが「も~、本気で痛い~」と叫んでいる姿が目に浮かぶ……)

マイト「あれを使ったんだ、俺たちを庇う為に……」
デジコン「……」
オショウ「……」
二人の死体を前に、さすがにデジコンもオショウも言葉を失う。
そして、堪えようとしても堪えきれない涙をこぼす。

いつの間にか、タミーが涙を流しているのが実に悲しくて良いんだよね。
……あるいは、叩かれて、めちゃくちゃ痛かったのかもしれないが。

それにしても、死に際の台詞すらない、実にリアルでハードボイルドな死に様であった。
必ず仲間に見守られながら、色んなことを喋り倒した挙句に逝く、大映ドラマの死に方とはえらい違いだ。
が、感傷に浸っているのも束の間、三人は時限爆弾の秒針に気付く。

三人は慌てて倉庫を飛び出し、間一髪で爆死を免れる。

で、この爆発がまた凄いんだよね。
アクション映画並みの大爆発で、唖然としてしまう。

別のカメラからもう一度。

その後、ゴッドは生き残った三人にパスポートと資金を渡し、ハングマンの解散を告げる。
ゴッド「君たちは身の安全だけを考えてくれ」
マイト「しかしこのまま放っておいたら、タミーやヨガは浮かばれません」
ゴッド「分かっている。今度のことは私の責任だ。後のことは私が考える。とにかくこの仕事は君たちの手を離れたんだ。長い間、ご苦労だった」
マイトは食い下がるが、ゴッドは有無を言わせぬ調子で言い切る。

マイトたちが一人一人去っていく姿に、1の主題歌「あ・れ・か・ら」をボーカル付きで被せるのが、心憎い選曲である。
少しずつ月日は流れこんなにも離れたけど~♪
伝えておくれあの人に まだ忘れちゃいないと~♪
だが! 無論、このまま引き下がるハングマンではない。

一週間後、再び料亭を訪れている大室に借りを返そうと、期せずしてマイト、デジコン、オショウが料亭の庭で顔を合わせる。
オショウ「考えるこたぁおんなじだな」
マイト「このまま黙ってられるか、奴らの座敷にこのニトロぶちこんでやる」
デジコン「ちょっと待てよ、そんな荒っぽい手を使わなくても俺がちゃんと仕掛けを作っておいたぜ」
デジコンがそう言うものだから、てっきり最後のハンギングを決行するのかと思ったが、

大室たちの乗った車を人気のない道路へ誘い込み、地中に埋めたニトロで木っ端微塵にするという、思いっきり荒っぽい方法だった。
うーん、さすがに殺したらまずいでしょう。
まぁ、今回は仲間を殺されているから、心情的には納得できる結末なのだが。
その事件を伝える新聞を読むゴッド。
それが誰の仕業か、考えるまでもないことだった。
事件解決後、回復したよね子がいそいそとオショウの寺にやってくるが、彼女を待っていたのはオショウとは似ても似つかない坊さんだった。

そのオショウ、街中で石焼いも売りに扮していた。
デジコンはサンタの衣装を着てショーウィンドウの飾りつけ、

そしてマイトはトリマーと言う、冗談は顔だけにしろ、と言うような似合わない職業に身をやつしていた。

マイト「飼い主が美しいと飼われている犬も美しいですな」
女「まぁなにいうてはるの、お上手やね~」
マイト「奥様、マニキュアはいかがいたしましょうか」
女「マリアンヌに?」
マイト「いいえ、奥様にです」
女「あらーっ、嬉しいわねっ」
ラストシーンに唐突に出てくるこの人、そう、大屋政子さんなのです。
なんでよりによって最終回のラストシーンにこの人が出てくるのか、それは人類永遠の謎なのである。
まぁ、若い人はまるっきり知らないと思うが……。
以上で、2のレビューは終わりであるが、ついでに、「新・ハングマン」の予告を書いておく。

キャストは、名高さん以外は総とっかえとなる。
ナレ「今、新たなる戦いに挑む戦士たち、炸裂するパワーアクション、度肝を脱ぐアイディア、ゴッド指令ナンバー1(中略)史上最強のハングマンたちの技が冴える。次回より登場、「新・ハングマン」にご期待下さい」
と言う訳で、「新・ハングマン」、近日レビュー開始予定なのだ。乞うご期待。