第12話「超マシン伝説誕生」(1987年12月20日)
ダム湖に面した道路を、ひとりバイクで走っている光太郎。
光太郎(ここは、僕たちが良く来たツーリングコースだった)

例によって、回想シーンにしか出して貰えない信彦と、光太郎の追憶の日々がありありと光太郎の瞼に甦る。
バイクを連ねて走り、缶コーヒーで乾杯した後、
信彦「嗚呼、台詞が欲っしーっ!」(信彦の魂の叫び)
光太郎(もう一度ナンパ、いや、ツーリングしたい、あいつと……)
その時、光太郎の常人離れした聴覚が、山奥から聞こえてくるバイクのエンジン音をキャッチする。

光太郎が音を頼りに山の中に入って行くと、果たして、開けた場所にモトクロスの練習コースが作られ、明らかに子供と思われるレーサーが見事なテクニックを駆使して、そのコースを周回していた。

その練習を厳しい顔付きで見守っている父親らしき人物がいた。
後に分かるが、世界的オートバイレーサーだった大門明(伊吹剛)である。

大門の指導ぶりは極めて厳しく、子供がジャンプに失敗して転んでも、眉ひとつ動かさない。
喜一「今度はもっと上手にやります!」
大門「よし、もう一度」
子供の喜一も、文句ひとつ言わずに改めて挑戦し、今度は見事に着地する。

光太郎、思わず駆け寄り、「上手いなぁ、凄いテクニックだ」と声を掛ける。
と、大門は、熊にでも遭ったように驚いて、何も言わずに子供を促して一目散に逃げ出すではないか。
その怯え方が気になった光太郎、彼らの後を追って再び山の中へ。

彼らの姿は見失うが、彼らが住んでいると思われる民家を発見し、そこで、現役時代の大門の写真を目にする。
光太郎「大門明、世界のトップレーサーだったのに、突然姿をくらました……確か昨年」
だが、その家を、木の陰から窺っているものがいた。コウモリ怪人である。
コウモリ怪人はすぐ三神官の下へ報告へ戻る。
ダロム「間違いない、大門明とその息子だ」
ビシュム「山奥に隠れ住んでいたのですね。見付からない筈です」
ダロム「大門明はその息子にオートバイを仕込んでいる。と言うことは……」
バラオム「ロードセクター!」

バラオムの声にあわせて、近未来的なマシンのシルエットが浮かび上がる。
ダロム「やはり完成されている」
ビシュム「南光太郎が何故、大門に接近してきたのでしょう」
バラオム「まさか、奴はロードセクターを手に入れるつもりでは?」
ダロム「それだけは阻止しなくてはならん」
バラオム「よし、カミキリ怪人よ、急げ!」

指名が入って張り切るカミキリ怪人。
今回、珍しく他の怪人たちの姿もいくつか見える。
……全員、出撃させれば勝てるのでは? BLACKには勝てないにしても、ロードセクターを奪取する助けにはなっただろう。
ゴルゴム、歴代の悪の組織にならって、毎回一体しか怪人を送り出さない(今回はコウモリ怪人も参加してるけど)。考えてみれば、ショッカーをはじめとする組織は、何年もの間、戦力の逐次投入と言う兵法上の誤りを冒し続けてきたことになる。ライダーにいつまで経っても勝てないのも道理だね。
光太郎、その後も山の中を駆け回って大門の名を呼んでいた。
前方の藪の中を、何かが動く気配がする。
光太郎「もしや、ゴルゴム?」 ……えっ、なんで? ま、確かにその通りなんだけど、さすがにそれだけでゴルゴムの仕業だと考えるのは、勘が鋭いというより、ほとんど妄想の域に達してるよね。
その大門、光太郎の呼び声を遠く聞きながら、洞窟の中で息子を抱いて息を潜めていた。
大門は、光太郎もゴルゴムの一味だと思い込んでいるのだ。
しかし、たちまちコウモリ怪人に見付かってしまい、洞窟の外へ飛び出す。

外にはカミキリ怪人が待ち構えており、前後から挟まれる形となる。
カミキリ「ロードセクターは何処だ?」
大門「息子には何の関係もないんだ。待ってくれ、案内する、ロードセクターの隠し場所に」
怪人は普通、喋らない(喋れない)のだが、今回は任務の必要上、おしゃべりしている。

その時、崖の上から光太郎の体が躍った。

そのまま怪人の体に体当たりする光太郎。
管理人、最初このシーンを見た時、編集ミスではないかと思ってしまった。
つまり、崖からジャンプした時点で、既に仮面ライダーに変身しているような錯覚に陥ったからである。
ジャンプしているのはスタントマンでスーツアクターの岡元さんだから、シルエットになると、まるっきりBLACKが飛んでいるようにしか見えないのである。それだけ、岡元さんのアクションが唯一無二の独特の美しさを持っていることでもあるのだが。
光太郎、二人を逃がしてから今度こそ本当にBLACKに変身する。
が、バラオムが現れ、怪人たちに即座に退却を命じる。
三神官たちは、光太郎にまずロードセクターを発見させてから、それを横から頂こうと言う作戦に出る。
その後、大門明は重い口をやっと開いて、光太郎に事情を打ち明ける。
大門明の父・大門洋一は「オートバイの神様」と呼ばれた工学博士であり、ゴルゴムの一員でもあった。
大門博士は、ゴルゴムからオートバイの設計を命じられる。

ダロム「このロードセクターの設計図は素晴らしい。良くやったぞ」
洋一「ありがとうございます」
ダロム「文明破壊用の戦闘バイクとしてこれを量産していくのだ。後は乗り手だ」
だが、洋一は、三神官がその乗り手に息子の明を選ぼうとしていることを知り、ゴルゴムを裏切る決意を固めたのだ。
今回、レビューしていて、ロードセクターが元々ゴルゴムが開発していたオートバイだと言うことを初めて知った迂闊な管理人であった。
なんだかんだかで、光太郎、ゴルゴムからキングストーン、バトルホッパー、ロードセクターと、色んなものを貰ってるんだよね。恩を仇で返すとはこのことだ!(違います)

洋一は長い年月を掛けてロードセクターを完成させる。
が、後にBLACKのセカンドマシンとなったロードセクターには、スパークリングアタック以外に、戦闘用バイクらしき装備は全く見られない。多分、三神官の言葉を危惧した洋一が、当初の設計とは違う、純粋に走る為のマシンに作り変えたのだろう。
ロードセクター完成後、洋一、明とその妻、息子の喜一で山に遊びに行ったが、そこでコウモリ怪人に襲われて、洋一と明の妻は無残に殺されてしまったのだと言う。
……しかし、ゴルゴムはロードセクターを実際に手に入れていないのに、なんでそんなに急いで博士を殺す必要があったのだろう?

大門「その時私は決心したんです。復讐してやる、ゴルゴムに」
光太郎「ロードセクターを使って?」
大門「でも、どうしても私には乗りこなせない」
光太郎「それで息子さんを特訓? あなたは間違ってる! 喜一君はまだ10歳じゃないですか。子供を復讐の道具に使うなんて」

大門「他に方法はない」
光太郎「ある! 僕も復讐の為に……」
大門「君も?」
光太郎「両親も殺され、育ての親も殺されました。その上、俺自身……」
光太郎、自分が改造人間であることを告白しそうになる。
光太郎「子供には子供の生活があります。ゴルゴムとの戦いは僕に任せて下さい!」
大門「……案内します。ロードセクターに会ってやって下さい」
大門明は、光太郎の真剣な眼差しを信じ、ロードセクターの隠し場所に案内する。
「尾行の名人」であるコウモリ怪人が三人をつけていたが、光太郎に気付かれ、あっさり撃退される。

バラオム「馬鹿め、しくじりおって」
ビシュム「このバカチンがぁっ!」(註1)
ダロム「この失敗をどうしてくれよう」
逃げ戻ってきたコウモリ怪人を、三神官がよってたかっていぢめる。

コウモリ怪人「すいません……」
穴があったら入りたいと言うように、翼で顔を隠すコウモリ怪人。
もっとも、これ以降もコウモリ怪人は普通に登場するので、特にお咎めはなかったらしい。
偵察要員として有用なコウモリ怪人を、処刑することは出来なかったのだろう。
(註1……正解は、たわけもの、でした)
光太郎は、危険なので、喜一を克美さんたちの店に預けることにする。

杏子「はい、ジュース、どんどん食べてね!」
喜一「うん!」
杏子(誰もタダとは言ってないけどね!) 
光太郎は、倉庫の地下に隠されていたロードセクターと遂に対面を果たす。
……
これに乗って都内を走っている自分の姿を想像した光太郎、つかつかと大門に歩み寄り、
「復讐、頑張って下さい」と笑顔で言うのだった(註・言いません)。

次のシーンでは、早くもいつものコンテナヤードでロードセクターの試運転をしようとしている二人の姿が映し出される。
光太郎「スタートします」

大門(あれ……ここまでどうやってバイクを運んで来たんだろう?)
倉庫からこの場所に来るまで、既にたっぷりロードセクターを走らせたんじゃないのかなぁと言う気がするのであったが、気付かないふりをしてあげるのが大人と言うものなのである。

とにかく光太郎はマシンを発進させる。
世界的レーサーの大門さえ乗りこなせなかったと言うのに、光太郎は軽々と走らせた上、即座にアタックシールドを展開させて、(標的はいないが)スパークリングアタックを出したりする。
大門、ほんとに世界的レーサーだったの?(疑惑の目)

続いて、

モニタースクリーンが(勝手に)三次元コンピューターグラフィックスに変わる。
光太郎「ぎゃーっ、前が見えないーっ!」 光太郎は超人的な運動神経で、なんとかバイクをぶつけずに止めることが出来たが、ぜーはーぜーはー荒い息をつきながら、(あの野郎、道理で自分で乗ろうとしなかった訳だ……)
光太郎、元の場所に戻ってくるなり大門に「殺す気かーっ!」と殴りかかるのだった。
……以上、いつもの嘘でした。
光太郎が無事試運転を終え、元のところに戻ってくると、再びカミキリ怪人が現れ、大門明を人質にしていた。光太郎、大門の目があるにも構わず、運転しながらBLACKに変身する。
大門を助け出し、カミキリ怪人と戦うBLACK。

マルチアイで敵の体を分析すると、
「こいつの弱点は頭だ!」と叫ぶ。
ま、大抵の動物の弱点は頭だと思いますけどね。

とにかく、その頭にライダーキックをお見舞いし、カミキリ怪人を撃破する。
その後、バラオムが出て来て喜一を人質にしてロードセクターを奪還しようとするが、結局失敗する。

戦いの後、大門明から正式にロードセクターを委ねられ、名実ともにロードセクターの持ち主となるBLACKであった。
今回、久しぶりに上原正三氏が脚本を書いているのだが、上原さんにしてはフックのない話だったなぁ。
……と言う訳で、前半に後戻りしての「落穂ひろい」はこれで終わり。次回は38話から再スタートです。