第36話「いきかえったミイラ怪人エジプタス」(1971年12月4日)
ショッカーの作戦計画はだいたい素っ頓狂なものが多いが、今回は特にひどい。
なにしろ、4000年前のミイラ怪人を復活させて、トトメス三世が日本に送ったと言うエジプトの財宝(時価10億円)を発掘させようと言うのだから……。
そもそもなんでエジプトの王様が日本に財宝を送ったの? 仕送り?
そしてなんでそんなことを、ショッカーが知ってるの?
……などと言う管理人の抗議をよそに、ストーリーは始まってしまうのである。

ゾル「エジプタスへの生命移入手術を開始するんだ」
ピラミッドの中から発見され、日本へ運ばれてきたエジプタスに、給食当番みたいな格好をした科学者たちによって新たな命が吹き込まれる。

数日後、エジプタスが現代に蘇る。
首領「さあ立て、立ってお前の力を見せてくれ!」
エジ「パパラ、ポラポラ、ピパラ、パラパラ……」

奇妙な言葉(古代エジプト語)を話すエジやんは、いきなり、斜め後ろに立っていたヒラの戦闘員に炎を浴びせる。
不運な戦闘員は服だけ残してあっという間に消滅してしまう。
死体が燃えて、服だけ残ると言うのもなぁ……。
ゾル「見事! エジプタス、時価10億円の宝石類は日本の何処へ送られたのだ?」
エジ「パパラ、ポラポラ……」
ゾル「どうした、エジプタス、言え! 言うんだ」
だが、エジプタスは奇妙な言葉を発するだけで、ゾル大佐の質問に答えようとしない。戸惑うゾル。

科学者(手を上げて)「エジプタスは、日本語を聞くことは出来ても喋ることが出来ないのでは?」
ゾル「古代エジプト語か?」
まだ始まったばかりだが、突っ込みどころが多くてなかなか先へ進まない。
日本語は理解できるのに、喋れないって……どんなバイリンガルやねん。
そもそも、4000年前のミイラ怪人を復活させる技術って、たかが10億円の財宝よりよっぽど金になると思うんだけどね。
ゾル「コンピューター班、古代エジプト語を解読できる人物を選び出し、このアジトに至急連れてくるんだ」
それを受けて、ゾル大佐が新たな命令を下す。
ここも、普通は「コンピューターに解読させろ」じゃないの? しかも、コンピューター班は、人物を選出するだけじゃなく、連れてくるところまでやらなきゃいけないの?
それはともかく、次のシーンで早くも、夜の路上で、その人物、大野と言う男に、エジプタスと戦闘員が迫っている。
大野「紀元前1800年ごろ、エジプトにいたと言われる怪人!」
エジ「アバラ、ポラポラ~」

協力を拒んで逃げようとする大野に、エジプタスが「エバラッ」と、思わず「焼肉のたれ」と応じたくなるような掛け声と共に、炎を噴射する。
いちいち突っ込みを入れて恐縮だが、これだって、何もエジやん本人が出向く必要ないだろ。
人間の姿で穏当に接触すればいいのに、誰だってこんなのが来たら逃げ出すと言うものだ。
戦闘員「エジプタス、ゾル大佐の命令だ、殺すな」
エジ「エバラバラ! アバラバラバラ!」
戦闘員は大野の体を足でひっくり返し、「死んでいる」とつぶやき、さっさと帰宅する。
だが、大野は死んでいなかった。地面を這うようにして電話ボックスへ向かう。
大野「剛田君、エジプタスが蘇った」
剛田「なに、エジプタス?」
大野「俺はもうダメだ……西田博士をやったのもあいつだ」
剛田「何故私たちが狙われるんだ」
大野「わからん、次はたぶんお前だ、気をつけろーっ」
剛田「大野君!」

同業者の剛田の家に電話をして、警告をすると、さらに、ボックスの壁に赤いペンで力強く丁寧になにやら記号のような文字を書いていくその姿は、少なくとも
あと20年は死にそうにない感じだった。
さっきの戦闘員は、どこをどう判断して、「死んでいる」と断言したのだろう?
が、書き終わるとバッタリ倒れる。
ちょうどそこへ隼人がやってきて、(ショッカーの代わりに)大野の死を確認すると共に、その記号を目に止める。隼人は、その前の西田博士殺しも調べていて、その現場にも同じ記号が残されていたらしいのだ。
……と言うことは、西田の場合もちゃんと死んだのを確認しないで立ち去ったと言うことですね?

一方、ショッカーは残る剛田にも魔の手を伸ばし、まず息子の裕二(長谷川誉)をさらって、その様子をテレビに映して剛田に見せ付ける。
ゾル「裕二君の命は明日までと思って頂いて結構です。それまでに決めて頂きます」
……これもねえ、息子を誘拐されているのだから、大野は従うしかない訳で、何も一日待たずに、この場で解読をさせるべきだったろう。

さて、こちらは立花レーシングクラブ。
滝「古代エジプト文字で、火を吹く怪人エジプタスと言う意味らしい」
例の記号を示しながら、滝がみんなに説明している。
……いや、それを誰から教わったのだろう? 三人の他にも解読できる人がいるの?
隼人「4000年前の怪人をショッカーが見付けて生き返らせた」

マリ「4000年前の怪人、気が遠くなるような話だわ」
ユリ「だけど、なんだかロマンティックだわぁ」
最初に比べると、ユリもだいぶ色っぽくなったよね。ミニスカなのも良い。
ユリ「ひょっとしたら古代エジプトの謎が取り払われるかも……だけどダメかな、古代エジプト語なんかわかんないもんね」
隼人「そうか、エジプト文字、分かったぞ!」
隼人はおぼろげながらショッカーの意図を見抜き、西田、大野と並ぶ権威・剛田が次に狙われるのではないかと、滝と一緒に剛田邸へ。

レーシングクラブからそう遠くない剛田邸の前に、二人はバイクで乗りつける。
滝「ショッカーめ、まだ来ていないらしいな」
隼人「滝、あれを見ろ!」
言われて滝が見ると、

エジプタスと戦闘員が、剛田を連れて
ぞろぞろと門から出てくるところだった。
もうここまで来ると、
笑いを取りに来ているとしか思えない、ショッカーのトンチキぶりであった。
隼人は仮面ライダーに変身し、滝と一緒にショッカーと戦う。
ライダーは、なんとか剛田を助け出すが、エジプタスは車に乗って逃走する。
CM後、隼人が剛田博士に事情を話してくれるよう頼んでいる。

隼人「何故ショッカーに狙われたのか話して頂けませんか」
剛田「し、知らん、なんのことだか」
隼人「しかし現にさっきショッカーに連れ去られそうになったじゃありませんか」
剛田も、隼人にしつこく尋ねられて、息子がショッカーに掴まっていることを打ち明ける。
そこへ、裕二の手書きの救いを求める手紙がナイフに結び付けられて飛んでくる。
滝「その傷じゃ無理だ、俺が行く、博士を頼むぜ」
エジプタスの炎で負傷した隼人を残し、滝はバイクでショッカーの車を追いかける。

だが、その手紙はどちらかをおびき出すための罠で、滝の行く手には戦闘員がてぐすね引いて待ち構えていた。

路上にばらまかれた赤いマキビシを踏んでしまい、

滝「ああっ!」
思わず叫ぶ滝。
いや、マキビシを踏んだのはタイヤであって、あんたの足じゃないんだけどね……。
(一応、破裂音がしているので、足元で爆発したと言う設定らしい)

滝は戦闘員を相手に暴れるが、最後はボディに連打を食らってあえなくダウン。
おお、戦闘員ってこんなに強かったのかと目を見張るシーンであったが、冷静に考えたら今までの戦闘員が弱過ぎただけだった。
当然、彼らは滝を捕まえるだけで、その場で殺そうとはしない。

隼人、剛田博士の部屋にとどまり、博士の警護を続けている。

で、剛田は、すぐ後ろに立っている隼人宛の「一文字隼人君、大変心配してくれてありがとう。君には大変済まないと思うが、私は奴らのところへ行く……」と、置手紙をしたためていた。
普通、当の相手が後ろにいるのに、そんな手紙書くかね?
(突っ込みを入れるのに疲れた……)

と、突然、エジプタスと戦闘員が部屋の中に現れる。
隼人が戦っていると、彫像で隼人の頭を後ろから殴りつけたのは、他ならぬ剛田博士だった。
恐らく、彼にしかわからないエジプト語で、エジやんから「息子を助けたかったら隼人を殴れ」と命じられたのだろう。
しかし、隼人も、殴られた瞬間、発信装置を博士のポケットに忍ばせておいた。

エジプタスたちは剛田を連れて山村の石段を上がったところにあるお堂の前に立つと、
戦闘員「ショッカー、オープン!」
戦闘員の合言葉で扉がひとりでに開く。

お堂の下には、ショッカーのアジトがあり、裕二と滝が人質になっていた。
エジプタスは、すぐに
サインペンで紙に財宝の隠し場所を記す。
……まぁ、別に何で書いても良いんですけどね、折角、古代エジプトの由緒ある財宝の隠し場所なんだから、せめて鵞ペン(羽根ペン)を使って欲しかったな、と。

ゾル「さぁ、博士、通訳して頂こう」
しかし、番組開始から既に
18分経過……これから隠し場所が分かっても、掘り出す時間はもう残ってないんじゃないかなぁと、一抹の不安が……。
剛田「エジプト第18王朝、トトメス三世は金銀宝石類を遠く離れた北国の蝦夷民族に献上し、友好の意を表した……」
ゾル「ふっふふふふふ、時価10億円の宝石は北海道の蝦夷民族と一緒だったのか。博士、良くやってくれましたね」
ゾル大佐はそうねぎらうと同時に、博士をムチでぶとうとする。
剛田「ど、どういうことなんだ、これは?」
ゾル「いや、ご褒美のつもりですが……博士は
ドMじゃなかったんですか?」
剛田「ちゃうわっ!」 ……念の為、嘘です。
ゾル大佐は直ちにエジプタスたちに北海道へ飛ぶよう命じ、三人を縛り付けたままアジトを放棄する。
なんでそんなに急いで基地を捨てなきゃいけないのか? うーん、分からん。
それと、トトメス三世ははるばる日本まで財宝を運んで、それをまた北海道へ持っていったの?
一体なにを考えていたのだろうか?(註・たぶん何も考えてない)

三人の足元にはダイナマイトが置き土産として置いてあったが、間一髪でライダーが飛び込んできて、導火線を断ち切る。
ライダーはサイクロンを飛ばして、羽田空港へ向かっているエジプタスの車にすぐ追いつく。

もっとも、こいつらこのままの格好で羽田に行くつもりだったらしいなので、仮に羽田に着いていても、どうせ搭乗拒否されていただろうけどね。
後は贅言を費やす必要もあるまい。
ライダーが戦闘員とエジプタスを倒し、事件は解決となる。
(厳密に言えば、ゾル大佐は隠し場所を知っているのだから、後でこっそり掘り出しに行ったかもしれないのだが、どっちにしても、ショッカーが財宝を得たからと言って特に問題はないので気にすることはない)
エジプタス、折角4000年の眠りから覚めたというのに、ショッカーのしょうもない作戦に従事させられて異国の地で果てることになったとは気の毒なことだった。

帰っていく剛田親子を見送りながら、
隼人「良い親子だな、俺は改めて子を持つ父親の
偉大さを知らされたような気がする」
滝「お前って奴は変わってるな。何でも良い方良い方へ考えようとする」
ラストの隼人の述懐も、なんかピントが外れているような気がする。
剛田が、息子可愛さに隼人をぶん殴ったことを指しているのだろうが、あれを「偉大」と表現するのはどう考えてもおかしい。
最後までレビューしておいてアレだが、今回のシナリオ、はっきり言ってメチャクチャである!