第8話「父が歌う手まり唄」(1981年3月28日)
冒頭、原宿のショップで、父・嵐山長官のネクタイを見立てている美佐。
美佐「こっちの方が若々しいわね、これ頂くわ」
店員「はい、毎度ありがとうございます」

次の店へ移動中の嵐山親子、そしてお付のバルパンサーこと朝夫を、カフェの窓際の席から見下ろしているのは、そう、ゼロガールズたち。

相変わらずお綺麗ですね、北川さん。
美佐「ね、ね、見て貰いたいものがあるの」
ネクタイを買ったあと、美佐はひとりでさっさとお目当てのショップへ足を向ける。

朝夫「(嵐山長官は)幸せだなぁ、実に親孝行な娘だ」
朝夫が感心すると、嵐山はにやりと笑って、
嵐山「エビタイだよ」
朝夫「エビタイ?」
嵐山「エビで鯛を釣るの!」
朝夫「どう言うことですぅ?」

美佐「ね、このワンピース、どう?」
朝夫「いいねー、美佐ちゃんにピッタリだ」
美佐「そう」
嵐山「ええっ?」
美佐「わっ、嬉しいーっ、お父さん大好き!」
嵐山「お、おい……」
美佐、勝手に買って貰うのだと決めると、さっさと店の中へ入って行く。
仕方なく、財布を取り出して紙幣を数える嵐山。
安いネクタイを餌にして、それよりはるかに高いワンピースをゲットしようと言う美佐のクレバーな作戦だった。
嵐山長官、表面上はちょっと困ったような顔をしているが、娘にねだられて内心は嬉しそうであった。
岸田さん、実際、美佐の根本さんを娘のように可愛がっていたらしいから、撮影していても楽しかったのではないだろうか?
店員「とっても良くお似合いですわよ」
美佐「でも、ちょっと大きめかなぁ」
店員「あ、じゃああのね、試着室へどうぞ」
美佐、すすめられるまま、試着室へ。
嵐山の「安い方で良かったぁ」と言う情けない言葉を聞きながら、店員が不気味な笑いを浮かべる。

果たして、試着室の鏡に、木彫りのような質感がユニークな、ムゲンモンガーが現れ、美佐を驚かす。
……ここは是非、美佐が服を脱いでから襲い掛かって欲しかった。

悲鳴を聞きつけてカーテンを開くと、既に美佐の姿は消えていた。
嵐山、鏡に映る店員が笑っているのに気付き、それがダークQであることを察知する。
ダークQは、パンサーに変身した朝夫に倒される。
試着室から秘密の通路が続いていて、パンサーはその中に入り、ムゲンモンガーを追いかける。
公園に出たところで、美佐を抱いて逃走中のムゲンモンガーを発見し、美佐を取り戻そうとするが、結局逃げられてしまう。
直後、公衆電話にゼロワンから連絡が入る。
嵐山「娘をどうするつもりだ?」
ゼロワン「そのことについて折り入って相談したい」
嵐山たちが指定されたオープンカフェに出向くと、ゼロガールズたちが勢揃いで待っていた。

相変わらず、いちいち絵になるゼロワンお姉様、。

他の三人も普通の格好をしていたが、何故かゼロスリーだけ、「電子戦隊デンジマン」で、桃井あきらがよく着ていたのと同じ服を着ていた。
同じ服でもこんなに違うんですね。

ゼロワン「おかけになって」
ゼロツー「どうぞ」
物腰だけは丁寧に嵐山たちを出迎える4人。
ここでも、何故かゼロスリーだけ、なんとなく申し訳なさそうに小さくお辞儀をしている。
「自分だけ場違いな格好でサーセン!!」と言う気持ちが動作に表れたのだろう。

嵐山「用件を聞こう」
ゼロワン「あなたの娘とジャガーバルカンを交換したい」
嵐山「ジャガーバルカンと? 冗談も休み休み言いたまえ。はっはっはっはっはっ」
ゼロワン「娘が死んでもそうやって笑うのか」
嵐山「娘を人質にすれば親は泣き喚き、なんでも言いなりになる。ジャガーバルカンだって差し出すに違いない。いかにも機械帝国が、メカ人間どもが考えそうなことだ」
嵐山はさも軽蔑したように言い放つが、ゼロスリーが立ち上がり、
ゼロスリー「娘の命はどうなってもいいのか?」
龍介「卑怯だぞ! お前たち」
ゼロフォー「これは戦略よ。立派なね」
嵐山「では、はっきり言おう、美佐は私の娘だ。だが、太陽戦隊の隊員でもある」
ゼロツー「犠牲もやむ得ないと?」
嵐山「……」
ゼロワン「1時間だけ待ってやる」
ゼロガールズは先に席を立って去って行く。
嵐山たちも、一旦基地に戻る。
朝夫「奴ら、ほんとに殺しますよ、なんとかしなくちゃ!」
嵐山「ジャガーバルカンを渡せというのか」
朝夫「だって美佐ちゃんの命の方が大切でしょう」
嵐山「巨大空母ジャガーバルカンは人類の守り神だ。渡す訳にはいかん」
朝夫「死んじまってもいいって言うんですか」
そこへ美佐から電話が掛かる。
美佐は、廃墟のようなところからゼロガールズたちに命じられて電話をしているのだ。
嵐山「美佐か」
美佐「はい、私はどうなっても構いません。言いなりにならないで!」
特撮ヒロインの作法どおりの台詞を叫ぶ美佐の横っ面をゼロスリーが引っ叩く。

ゼロワン「答えを聞こう」
嵐山「……」
ゼロワン「どうした? 答えろ」
嵐山「ノーだ!」
ゼロワン「後30分待つ……」
朝夫「冷たい人だ。美佐ちゃん、かわいそうだよ」
朝夫たちは、嵐山長官の冷淡な態度に反感を抱く。
だが、嵐山は、龍介に録音させた今のやりとりの背後に、消防車のサイレンが混じっていることを知り、それを手掛かりにその場所を割り出すことに成功する。
サンバルカンが直ちに急行するが、ゼロガールズたちも抜け目なく、美佐そっくりの人形(爆弾付き)をその場に残して遁走していた。

その後も普段と変わらぬ様子で、子供たちとだるま落としに興じている嵐山長官。
まり「美佐姉ちゃんは?」
嵐山「あ、ちょっと、用があってな」
まり「そう」
そこへ龍介たちが暗い顔で戻ってくる。美佐奪還作戦が失敗したと知り、嵐山は無言で頷く。
無論、嵐山とて美佐のことが心配でない訳がない。
ひとりで長官室へ行くと、床にゴムマリが転がっているのを見て、手に取る。

そのマリの中に、「あんたがさどこさ~♪」と、手まり唄を歌いながらマリを突いている幼い頃の美佐の姿を、夕陽を逆光にして映し出すのが優れた映像センスである。

笑いかける、幼い頃の美佐。
この子役も、現在の美佐に雰囲気が似てる。

嵐山「美佐……」
ブラックマグマは、嵐山が絶対に取引に応じないと見て、作戦の修正を迫られる。
ゼロワン「嵐山長官に脅しは通用しません。娘が死んでも涙ひとつこぼさないでしょ」
ヘドリアン「親子の情を断ち切ってまで信念を通すとは、ううー、なんという男じゃ!」
忌々しそうに言いながら、ヘドリアン女王は嵐山長官の鉄石心を密かに嘆賞しているようでもあった。
で、ゼロワンが再び嵐山に電話して、今度は美佐を解放すると伝える。
ただし、嵐山長官ひとりで迎えに来ることが条件だと言う。
今度は、嵐山はあっさりその取引に応じる。
欣也「行けば殺されます。ジャガーバルカンが奪えないんで、それで長官を」
龍介「うん、行くべきじゃない」
嵐山「いや、私は行く。美佐を迎えにな」
龍介「長官を見殺しにする訳には行きませんよ」
嵐山「ひとりで来いと言っている、だから私はひとりで行く」
嵐山、有無を言わさず、そう決断する。
そしてとあるオフィスビルの地下に作られたアジトへ向かう。手に、あのマリを持って。
嵐山「娘の手毬だ」
モンガー「爆発物ではない」
ゼロワン「嵐山長官、死んで貰おう!」
容赦のないゼロワン、即座に戦闘員たちに嵐山を射殺させようとする。

嵐山「娘を釈放しろ」
ゼロワン「かわいそうだが、一緒に死んで貰う」
嵐山「やはりそうか……覚悟は出来ている。死ぬ前にひとつ頼みがある。私は手まり唄が好きだ。娘が小さい頃、良く一緒に遊んだものだ。どうだ、この世の別れに手毬を突かせてはくれまいか?」
ゼロワン、隣のゼロツーとごにょごにょ話してから、「良かろう、30秒経ったら処刑する」と、30秒の猶予を与えるが、その甘さが、重大な蹉跌を生むことになる。
娘のそばへ行き、猿轡を取ってやる嵐山。
美佐「お父さん、どうして、どうして? 来るなと言ったのに、どうして……」
嵐山「……」
嵐山、黙って娘の体を抱き締める。

そして、実際にその場で「あんたがたどこさ~ひごさ~ひごどこさ~熊本さ~♪」と、マリを突きながら唄い始める。
ゼロワンは律儀に腕時計(セイコーのマリンマスタープロフェッショナル)で時間を数える。
30秒経つと、ゼロワンは躊躇なく「撃て」と命じる。
戦闘員たちが弾丸の雨を浴びせるが、

弾丸はすべて長官の持つマリの中に吸い寄せられてしまう。
嵐山「ちょっとばかり細工をさせて貰った。この手毬は強力な磁力を発する。突いているうちにな!」
どういう仕組みになっているのか不明だが、そんなからくりが隠されていたのだ。
ゼロワン「おのれーっ!」 両手を握り締めて悔しがるゼロワンが可愛い。
後は、サンバルカンが突入して来て、マジンモンガーと戦って事件解決。

美佐、改めてあのワンピースを父親に買って貰い、ご機嫌であった。
嵐山「なかなか似合うじゃないか」
朝夫「ほんとほんと、太陽戦隊の隊員には勿体無いよ」
ナレ「父と子の強い信頼関係が地球の平和を守ったのである……」
……と言う訳で、今回は嵐山長官の一人舞台だったなぁ。
ゼロガールズたちの作戦も決して悪くはなかったのだが。
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