第10話「待ちぶせ毒ぐも館」(1981年4月11日)
新たに誕生したクモモンガーは、クモ型のロボットを使って、各種制御コンピューターを狂わせる能力を持っている。その能力を駆使して、化学プラント工場を爆発させたり、電力網や交通網を狂わせて交通事故や鉄道事故を多発させたりと甚大な被害を社会にもたらす。
サンバルカンがモンガーを倒すべく出動するが、クモモンガーは恐ろしく身軽な上、クモの糸のようなロープを自在に操り、彼らを手玉に取る。
はっきり言って、このまま同様の破壊工作を続けさせれば、ブラックマグマ始まって以来の大戦果を上げることが出来たと思うのだが、何故かここで、ヘルサターン総統は、モンガーたちを全く別の作戦に移行させる。
それは、可愛い女の子を囮にしてバルパンサーこと豹朝夫をおびきだして抹殺しようと言うもので、冒頭の破壊活動とは何の関係もないし、急いで実行する必要もない、かなりピントの外れた作戦であった。
たとえば、クモモンガーがパンサーを苦手にしている……とかだったらまだ分かるんだけどね。
とにかく、現代風の女の子と朝夫を絡ませたいと言う脚本家の願望だけが強引にねじこまれたようないびつな構成であった。
前置きが長くなった。

帰宅中の女子高生の集団。駅の前で、その中のひとり、俊子が手を振ってみんなと別れる。
実に良い感じにもっさりしてるね。
ほっぺの赤い俊子は家に帰ろうともせず、喫茶店のトイレで真っ赤なつなぎに着替えて出てくる。
こうやって、毎日繁華街をうろついているのだろう。

地下道から出てきたところで、パンダの着ぐるみからチラシを貰う。
俊子「コンピューターで恋人? ふたりでヨーロッパ旅行かぁ」
特に予定もないので、俊子はそのチラシに書いてある建物へ足を運ぶ。
俊子「あ、ここかぁ」
文章では伝わらないが、この「ここかぁ」と言う喋り方が、めっちゃ可愛いのである。

無論、それはブラックマグマの仕掛けた偽のイベント会場で、受付嬢は全員ゼロガールズたちが扮している。
ゼロフォー「このデータ用紙にお客様のあらゆるデータをお答え下さい。正直にお願いしますよ。コンピューターが正確な判断をする為にね」
俊子「ほんとにヨーロッパに行けんの~?」
ゼロフォー「行けますとも~、ただし、マイコンの審査に合格すること、それからマイコンの選んだボーイフレンドのハートを射止めることが必要です」
俊子「へーっ、なるほどねえ」

ゼロワン「クモモンガー!」
が、隣のコンピューター室にはコンピューターなどなく、ゼロワンとクモモンガーが待機していて、覗き穴から、集まってきた女の子たちを観察できるようになっていた。

俊子「年は15の春で、住所……」
他の参加者に混じって、用紙に個人データを記入している俊子。
彼女を一目見た途端、
ゼロワン「あれこそパンサーにぴったり!」 クモモンガー「ぴったり!」
……って、クモモンガーが選ぶんじゃねえのかよ。
コンピューターを操る能力を持っているのだから、それで彼女たちの中からパンサーに最もふさわしい女の子を選び出すのかと思ったのだが。
それにしても、北川さん、いつになく楽しそうだ。
ゼロワンはすぐドアを開けて、満面の笑みを浮かべて俊子がコンピューターによって選ばれたと嘘をつく。

俊子「えーっ!」
ゼロワン「次はボーイフレンドへのアタックよ」
あらかじめ用意していた朝夫の写真を見せると、俊子は「えーっ、こんな人ぉ?」と露骨に嫌そうな顔をする。他の女の子たちも朝夫の間の抜けた顔を見て笑い声を上げる。
その頃、「こんな人」はいつものようにサファリで、マスター自慢の特製カレーをわんこそばのように次々と口の中に放り込んでいた。

やがて、ヘッドフォンをつけた俊子があまり気の進まない様子で店に入ってくる。
美佐「何なさいます?」
俊子「チョチョチョチョ」(と、人差し指を動かして美佐を近くに呼ぶ)
美佐「えっ、なんですか」
俊子「この人なんだけど、良くこの店に来るんだって?」
美佐「豹?」

豹と聞いて、カウンターの面々も一斉に振り向く。
欣也に抱かれているシーシー(喋るロボット犬)が可愛い……
美佐「豹さん、お客様よ」
朝夫「うん、僕?」
美佐「隅に置けないわ、ね!」
物好きにも朝夫に気があるのか、あからさまに嫉妬の炎を燃やす美佐。
朝夫、全く見知らぬ女の子の訪問に戸惑いながら、彼女の前に立つ。

俊子「あんたが豹さん? 私、大木俊子、よろしくね」
朝夫「はぁ? ご用件は?」
俊子「そうなの、付き合って頂こうと思って!」
指を絡ませてちょっと照れ臭そうに切り出す俊子がめっちゃ可愛いのです!
言い忘れていたが、俊子を演じるのは志茂由佳さん。
朝夫「付き合うー?」
朝夫、驚いて思わず口に含んだ水を吹き出す。

俊子「オッケイ、いいわね。あ、ちょっと待ってね、あたしにもカレー一丁」
とにかく強引な、マイペースな女の子で、朝夫の返事も待たずに決めてしまう。

嵐山「はぁい、まいどあり~」
可愛い女の子を前にして、嵐山も弾んだ声で応じる。これも可愛い。
美佐(まぁ、お父さんまで!)
美佐、朝夫を懲らしめてやろうとシーシーを欣也から取り上げて朝夫の足元へ行かせる。
朝夫は犬が苦手なのだ。

俊子「きゃーっ、犬こわ~い」
朝夫「シッシッ、あっち行け、シーシー」
だが、俊子も同じく犬嫌いだったので、美佐の目論見に反してこんなことになる。
嵐山「お似合いじゃないか、なぁ?」
それでも、我に返るとお互いパッと体を離し、もじもじしているのが初々しい。
朝夫「折角ですけど、僕、お付き合いできません」
俊子「えー、そんなー、コンピューターが私たちはぴったりだと選んでくれたんですよーっ!」
朝夫「コンピューター? 関係ないよ」
朝夫、迫る俊子を突き飛ばして店から飛び出してしまう。
だが、なんとしてもヨーロッパ旅行に行きたい俊子は、しつこく追いかけてくる。
嵐山「コンピューター?」

俊子から逃げて公園の茂みの中に隠れていた朝夫、その前にスーツ姿になった嵐山が現れる。
朝夫「長官!」
嵐山「付き合ってみろ、これは敵の罠かも知れん」

嵐山長官に言われ、朝夫は一転、俊子と楽しくデートすることになる。

俊子「指令その2、ボーイフレンドを演奏会に誘う、か」
俊子は、細かいデートプランまで渡されていたようで、街をぶらついた後は、「天才ギタリストの特別演奏会」に朝夫を誘う。
例によって強引な俊子は、朝夫の返事も待たずにタクシー(初乗り380円)を止めて乗り込む。

俊子「どうしたの、体の調子でも悪いの?」
朝夫「い、いや、なんともないよ」
俊子「あ、そう、なんともないの……」
ヘッドフォンをつけながら、俊子は(変な人、将来中年太りのタイプかなぁ?)と心の中でつぶやくのだった。
俊子によると、変な人は、中年太りになるらしい。
これは、小林朝夫さんの父親が小林亜星さんと言うことからの連想かなぁ?
二人を、龍介と欣也が尾行していたのだが、ブラックマグマに勘付かれて邪魔され、見失ってしまう。
その後、いろいろあって、演奏会の開かれている洋館で、朝夫はクモモンガーに捕まる。
毒蜘蛛に刺されそうになるが、間一髪でイーグルとシャークが飛び込んできて、朝夫を救出する。
クモモンガーたちは俊子を人質にして逃走し、サンバルカンも追跡する。

ジープの後ろにクモモンガーと一緒に乗ってる俊子が綺麗なので貼りました。
クモモンガー、俊子の体を抱えてジャンプし、崖の間に張ったロープにぶらさがり、滑空する。

続いて、ゼロスリー、ゼロフォーもロープを伝って移動する。
どちらも男性スタントによる代役なのだが、タイツのゼロスリーはまだしも、スカートのゼロフォーは、当然スカートが全開になって、男物のトランクスっぽいパンツが丸見えになるのがちょっと悲しい。
リアリティーを追求するなら、是非、ゼロフォーのパンティーを履いて演じて欲しかったところだ。

ゼロスリー「動くな」
ゼロフォー「命はないぞ」
俊子「助けてーっ! いやーっ!」
思わず飛び出そうとするパンサーを、イーグルが慌てて止める。
その後、乱戦となり、ひとりで勝手に崖から落ちそうになった俊子を、パンサーが必死に掴まえる。

結局斜面を転がり落ちるのだが、パンサーは身を以て俊子を庇い、俊子は無事だった。
パンサー「大丈夫か」
俊子「ありがとう」
パンサー「ひょひょっ!」
俊子「ひょひょっ?」
つい、朝夫の口癖が出てしまい、俊子は首を傾げる。
後は、いつもの戦闘ルーティンに移行。
こうして、クモモンガーは、様々な優れた能力を十分発揮することもなく、意味のない作戦に投入された末にサンバルカンに撃破されるのだった。合掌。
事件解決後、サンバルカンは俊子を家の近くまで送ってやる。

俊子「ありがとう、サンバルカン、豹さんと言う人に伝えて欲しいことがあるんだけど」
パンサー「え、なんでしょう」
俊子「カレーばっかり食べてると今に黄色くなっちゃうよ、って伝えてね」

パンサー「ひょひょう!」
俊子の言葉に、思わず顔に手をやるパンサー。
すかさず俊子も「ひょひょうっ!」と真似をする。
無論、彼女はパンサーの正体が朝夫だと気付いているのだ。
パンサー「分かりました。伝えときましょう」
俊子「頼んだわよ」
パンサー「さようなら!」

走り去るサンバルカンを見送る俊子。
口が動いて「じゃ、またね」と言っているようだが、声は聞こえない。

今回は、ラストも、俊子が街を元気に歩きながら、「ひょひょうっ!」と可愛く飛び跳ねるカットで幕となっている。一回きりのゲストにしてはかなりの扱いであったが、スタッフからも気に入られたのだろう。
それにしても、こういう女の子、今となっては貴重だよね。
実のところ、それほど美人ではないのだが、溢れる若さのエネルギーがそれを補って余りある魅力を彼女に与えている。永遠に色褪せない青春の輝きだね。
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