第10話「信彦はどこに?」(1987年12月6日)
東堂先輩の運転する車で、みんなでピクニックに向かっていると言う、他ではあまり見られないのどかな場面からスタート。
東堂先輩(セント)は喫茶店キャピトラのオーナーなのだが、店は克美たちに任せっぱなしでスキューバダイビングに入れあげており、普段は滅多に顔を出さないのだ。
要するに、
ダメ人間なんですね(違います)。
光太郎「先輩、随分長い旅行でしたね」
東堂「店を君たちに任せたんで、つい帰る気がしなくなっちゃってさ」
杏子「ふふふ、海が俺を呼んでいる、だなんてカッコつけちゃって」
克美「暢気というか、無責任というか!」

東堂「これでも人を見る目はあるんだ、お陰で店は大繁盛!」
光太郎「先輩にはかないませんよ!」
大繁盛……してるの? いつもほとんど客いないけど。
と、二台の車がバッシングしながら彼らの車を追い越して行く。
東堂「なんちゅうやつらだ! ここは制限速度40キロだぞ」

杏子「おじさまって見掛けによらず、運転のマナー、きちんとしてるのよねー」

東堂「見掛けによらずとは、なんじゃっ!」
克美「怒らない、怒らない、誉めてるんだからー」
普段、そう言う「大人」と接する機会のない杏子ちゃんが、父親に甘えるように東堂をからかい、ペシッと額を叩かれるのがとても可愛いのである!

ゴルゴムとの戦いに明け暮れ、いつも眉間にシワを寄せて生きている光太郎も、ここではとてもリラックスして、幸せそうな歯並びを光らせている。
今更遅いが、東堂先輩をもっと頻繁に登場させて、こういう明るいシーンを積極的に取り入れるべきだったのではないかと思うことがある。
張り詰めてばかりいては、見ている方も疲れるし、明るいシーンがあるからこそ、深刻なシーンがより引き立つのである。
と、また別の車が二台、競走でもするように彼らの車を追い越して行く。
東堂「いい加減にしろ!」
案の定、その二台は別の対向車とぶつかりそうになって、衝突こそしなかったが、一台は派手にひっくり返ってしまう。

東堂「だから言わんこっちゃない」
光太郎「先輩、すぐ救急車を呼ばなくては」
東堂「そうだな。……あ?」
その時、遠くから、救急車のサイレンが聞こえてくる。
杏子「あら、もう救急車が来たわ」
克美「誰が呼んだのかしら?」
しかも、やって来たのは二台の救急車で、てきぱきと怪我人を担架で運んで行く。

杏子「頼もしい救急隊ね」
克美「ほんと!」

だが、精悍な顔立ちの隊長は、ドライバーの一人に近寄り、「水木君、良くやった、大丈夫か? あとでたっぷり礼がある筈だ」と、小声で囁きかけていた。
どうやらこの事故には何かからくりがあるらしい……。
救急車を見送ってから、
光太郎「変だなぁ、何故警察は来ないんだろう?」
東堂「それもそうだな……」
その救急車が入って行ったのは、東都大学附属総合病院であった。
そう、我らがターミネーター・黒松教授がいる病院ですね。

運びこまれた怪我人は、大部屋に一箇所に集められて治療を受けている。
黒松「杉山君、人材の供給は順調にいってるようだね」
杉山「はい、ニセ救急車と言うアイディアが当たりまして人材は十分です」
黒松「うん、足りなくなったら計画的にどんどん事故を起こしてくれればよい」
杉山「分かっております」
黒松の協力者・杉山を演じるのは中田譲治さん。そう、「フラッシュマン」の悪役サー・カウラーがカッコ良過ぎの人ですね。
今では売れっ子声優として活躍されていて、栗山千明が司会をしているBSプレミアム「幻解!超常ファイル」で、
「栗山さん、エラ削ったんですか?」としつこく尋ねるナレーターなんかもされてます。
黒松(後はこの若者たちをいかにしてゴルゴムの意志のままに動くテロリストに育て上げるか、だ)
ゴルゴム神殿で、今回の作戦について論評している三神官。
ダロム「計画的に仕組んだ交通事故の背後にニセの救急車を待機させるとは、なかなかのアイディア」
バラオム「次は一刻も早く、ゴルゴムの破壊工作員を作り、彼らを世界中に派遣し、
人間同士が相打ち、テロがテロを生み、世界戦争を続発させることだ」
ダロム「弱肉強食の世界戦争の結果、人類の大半は滅びる。我々が淘汰する手間が省ける訳だ」
ゴルゴムは若者たちをテロリストに育て上げ、世界各国に輸出して世界を戦乱の渦に巻き込もうとしているのだ。……って、わざわざそんなことしなくても、人間はずーっとそういうことやってますけどね。
さて、ゴルゴムのニセ救急車のことは既に警察にもバレていて、新聞にもデカデカ載っていた。

東堂「犯人の意図まったく掴めず……杏子ちゃん、ピクニックがダメになったって、ぼやいてるどころの騒ぎじゃないぜえ」
おにぎりを齧りながら、その事件についての新聞を読んでいる東堂先輩。
これは、あの事件のあった同じ日なのだろうか? ピクニックどころではなくなったので、店に戻ってお弁当を食べている……と言うところかな。
杏子「そうか、私たちニセ救急車事件のひとつにぶつかったって訳ね」
克美「だけど、負傷者を誘拐するなんて変ね」

彼らの会話をよそに、鷹のように鋭い目で前方を見据えつつ、回想モードに入る光太郎。
(あれは、僕と信彦の19歳の誕生日であった……)
そもそもの発端である二人の誕生日を祝う船上パーティーから、月影ゆかりの死、その後のいくつかの怪事件について振り返る。
これはまあ、この辺でもう一度ストーリーのおさらいをしておこうと言う番組的配慮であろう。
光太郎、ゴルゴムに協力していると思われる黒松や大宮たちのことを調べようと思い立ち、まず東都大学附属総合病院へ黒松を訪ねる。

医師「黒松教授はこの病院の院長を辞職されて先月の末に、アメリカの大学へ研修の為に出張されました。大宮コンツェルンの基金を得て……」
光太郎にそう説明する医者、演じているのは森篤夫さん。「超人機メタルダー」でクールギンの声をあててた人である。
黒部さんはもとより、中田譲治さん、森さんと、今回は特撮ファン的にはかなりの豪華キャストなのである。
……しかし、「辞職」したのに「出張」と言う表現も変だよね。
光太郎、今度は大宮コンツェルンへ向かうが、応対した会長の代理の男は、黒松が何処で研修を行っているのかすら知らないと言う。

男「金は出しても研究には口を出さない、学問の自由を尊重するというのが会長の持論です。当然、黒松教授の居所など追及しない訳です」

「大人の世界」に軽くあしらわれた感じで大宮コンツェルンのビルから出てくる光太郎。
黒松は、渡米などしておらず、日本に留まっていることは後に判明する。
光太郎の追及を先回りして、そう言う口実で姿をくらませたのだろう。
夜、光太郎は再びニセ救急車が怪我人を搬送しているところにでくわす。

追跡しようとするが、今回の怪人、トカゲ怪人が出てきて妨害する。
いやー、この造型、やり過ぎでしょ。
しかも、外見だけでなくその動きがいかにも爬虫類っぽく(?)て素敵なのである。

光太郎の腕に噛み付き中のトカゲ怪人様。
殺そうと言うより、「食べよう」としている感じが怖いのである。
さらに、

体を思いっきり捻って、長大な尻尾をムチのようにしならせて光太郎を弾き飛ばす。
まぁ、実際のトカゲはこんなことはしないと思うが、スーツアクターの仕事に敬意を払いたい。
光太郎、BLACKに変身して戦うが、トカゲ怪人はさっさと霧の中へ姿を消す。
翌日、昨夜の仕事ぶりについて杉山をねぎらう黒松教授。

妻「一家三人、交通事故による怪我を治して頂いた上に、事故で仕事を失った主人に仕事を世話までして頂いて……」
黒松「ああ、いやいやいやや……坊やもすぐ歩けるようになるからね」
杉山は、一家ぐるみで黒松教授の世話を受けているらしい。
もっとも、杉山の妻は夫が具体的に何をしているのかは知らされていない。
光太郎、本腰を入れてニセ救急車事件を調べようと、東堂先輩と組んでニセの交通事故をでっち上げると言う、思い切った手段に出る。

東堂先輩の車と衝突し、バイクから投げ出される光太郎。
東堂「おい、だいじょぶか、おい、南!」
東堂先輩、ほんとに光太郎が重傷を負ってしまったのではないかと心配する。
どうでもいいが、光太郎のことを「南」と苗字で呼ぶのは東堂先輩くらいだよね。

無論、改造人間である光太郎は、それくらいで死んだりはしない。
バイザーを上げてウィンクしてみせる。
東堂「冗談きついよ」
光太郎「だいじょうぶてす、早く逃げてください」
東堂、急いで車に乗り込み、その場を離れる。
今回の出番はこれで終わりだが、やっぱり東堂先輩のような「相棒」がいると、ストーリーも生き生きしてくることが実証されてるよね。
東堂先輩が通報したのか、ニセ救急車が出動してテキパキと光太郎を収容する。
……しかし、通報したのなら本物がきそうだし、通報してないのなら、ニセ救急車が出動する筈がない。そもそも彼らはあらかじめ事故を起きる(起こす)ことを知っていて近くに待機しているのだから、この光太郎の事故のくだりは、ちょっと辻褄が合わない気がする。

光太郎、ほんのかすり傷だったが、うまく他の若者たちと一緒に病院に潜り込むことに成功する。
若者「明日からいよいよ屋外でのリハビリテーションだなぁ」
若者「至れり尽くせりの病院じゃないか、みんな張り切っていこうぜ!」

黒松「ハイ皆さん、どうしたんですか、静かにベッドに入って!」
日本にいない筈の黒松教授が入ってきて、患者たちを注意する。
光太郎、慌てて背中を向けて黒松教授に顔を見られないようにする。
この辺は、まるっきり、修学旅行の宿泊先の男子部屋のひとコマですな。
この後、一部の患者たち(含む光太郎)が女子の病室へこっそり忍び込むと言うお約束の展開になる(なりません)。
翌日、

何と彼らは迷彩服を着させられ、バリバリの軍事教練を受けていた。
教官役は杉山である。
杉山「ここにいるものはみんな、事故による障害、あるいは貧困を黒松教授の援助によって救われたものばかりである。そこで、今日こうして立派な体に立ち直らせて頂いたことの幸せを噛み締め、これからは御恩返しのつもりで激しい訓練に耐えて貰いたい。分かったものは一歩前へ出ろ」
若者たち「はいっ」
入院先から、いきなり軍事訓練に参加させられたにも関わらず、若者たちは迷わず答えて前へ出る。
なんとなく不自然だが、この段階では、あくまでこれはリハビリの一環と考えていたのかも知れない。
光太郎(そうか、ゴルゴムめ、他人の弱味につけこみ、飼いならしていくつもりか)

訓練所から離れた丘の上には黒松教授もいて、彼らの訓練を見下ろしていた。
黒松(今度こそ成功させ、誰よりも早く怪人にして貰わなくては……)
黒松たちゴルゴムのシンパは、怪人に改造して貰って長生きしたいのでゴルゴムに協力しているのである。
前にも書いたけど、怪人になってまで長生きしたいか?
それはさておき、杉山の厳しい指導の下、若者たちは元気に実戦さながらのハードな訓練に従事する。
この杉山にしても、元々傭兵だった、と言う説明がある訳でもないので、急に歴戦の指揮官みたいにビシビシ若者たちをしごきだすのが、いささか唐突に感じられる。
何の経験もない若者たちが、実弾を使った射撃訓練をこなしちゃうのもね……。
7話のように事前にバッタワインのようなものを飲まされていたと言うのなら別だが。
訓練は次第にヒートアップして行き、

遂には手榴弾まで使われる。
……だが、さすがに初回からこのカリキュラムは80年代の軟弱な若者たちには過酷だった。
途中でみんな「やめさせてくれーっ」「もうやだーっ」と泣き言を言い始める。

杉山「静まれーっ!」
鬼教官になりきっている杉山、アサルトライフルを彼らの足元にぶっ放し、黙らせる。

杉山「抵抗する者は射殺するぞ」
光太郎「こんなバカな訓練はやめろ!」
杉山「貴様から血祭りに上げてやる」
光太郎「あんたにそんなことは出来ない!」
光太郎、何か確信でもあるように、無防備に杉山の銃口に身を晒して立っている。
これも、劇中では、光太郎が杉山のことについて何も知らないままなので、杉山の人間性について何故そんな確信が持てるのか、納得行かないのである。
そこへ、黒松教授もやってきて、若者たちに光太郎を殺せと命じる。

光太郎「みんな騙されるな、みんなが傷を負った交通事故も、全てあの黒松教授が仕組んだことだ」
光太郎のひとことで、杉山も含めてみんな目を覚まし、銃を放り投げる。

で、結局最後はトカゲ怪人様が登場。

ちゃんと眼球もグリグリ動くところをアピールする。
光太郎、みんなを逃がしてからBLACKに変身する。

黒松「あと、
もう一歩と言うところで!」
どこが? 今回の黒松の計画、根本的に間違ってたような気がするんだけどね。
わざわざ素人の若者を誘拐して一から兵士に仕立て上げなくても、自衛隊の隊員をさらって洗脳すれば簡単ではないか。

それはそれとして、

BLACKの腕に噛み付いて体を回転させ、腕を引き千切ろうとするトカゲ怪人の動きが素晴らしいのである。

が、BLACKがバルトホッパーで追いかけると、急に人間臭い動きになって逃げ回るのであった。
BLACK、多少苦戦するが、最後は、ライダーパンチ&キックでトカゲ怪人を仕留める。
こうして黒松教授の計画は頓挫する。
……まぁ、光太郎が介入しないでも、どうせ失敗していたと思うが。

事件解決後、新規やり直しの為に、引っ越しをすると言う杉山一家を見送る光太郎。
杉山「取り返しのつかないところを助けて頂いて、ほんとにありがとうございました」
光太郎「いやぁ、みんなほんとうに目が覚めてよかった」
杉山「もう一度、田舎に帰って出直します」

ナレ「南光太郎はゴルゴムの陰謀を砕くことが出来たが、信彦の手掛かりは依然として得られなかった。信彦よ、君は何処にいるのか? そのゆくえが分かるまで光太郎に安らかな日は訪れないのだ」
……と言う訳で、今回のサブタイトルは、どう考えてもストーリーと合ってないのだった。