第2話「先生の秘密」(1980年4月9日)

冒頭から、元気に怪獣ギコギラーが飛んで来て、都市を破壊している。
ナレ「5年ぶりに怪獣は大攻勢を掛けてきた。地球上に満ち渡る醜い心や悪い心、汚れた気持ち、憎しみ、疑い、楽太郎などを吸収して強大なエネルギーを蓄えていた」
さて、中学教師とUGM隊員と言う二足のわらじを履いているウルトラマン80こと、矢的猛は、自分のアパートでテストの採点をしていたが、怪獣出現の緊急連絡を受けてすぐにUGMへ向かう。
劇中で、猛がオオヤマ以外の隊員と顔を合わせるのはこれが初めてであるが、既に自己紹介などは終わっている様子で、初対面の挨拶などと言うものはない。

地球防衛軍極東基地から飛び立つUGMのスカイハイヤー。
この夜間の出撃シーンが実に見事で、実際の基地で撮影しているのかと見紛うばかりのリアルさである。
ミニチュアなどは過去のウルトラシリーズに引けをとらない出来映えだが、

戦闘機のビームなどの作画は、いかにもデジタルっぽくでいまひとつ。
スカイハイヤー、シルバーガルは猛攻撃を加えるが、ギコギラーは空を飛んで逃げ去ってしまう。
それにしても、ギコギラーって……、なんちゅうネーミングだ。
猛は80に変身して追いかけたかったが、彼には「変身するところを地球人に見られた永久追放」と言う、誰が決めたのかしらないが、厳しいルールが課せられており、断念する。
翌朝、今度は中学教師として出勤してきた猛、塚本と言う男子生徒がいわゆる登校拒否だと知り、明日自分が迎えに行くと他の生徒たちに宣言する。ついでに、もし遅刻したら、逆立ちして学校へ入ってくると余計な約束をさせられる。
放課後、早速塚本の家を訪ねる。
母親の話によれば、小学校の仲良し三人組で同じ私立中学に入るつもりが、塚本だけ落ちてしまい、それで学校に行きたがらないらしい。

猛「友達と別れちまったのはそりゃつらいよな、でも、人間てさあ、出会いがあるだろ。別れもあるけど、また出会いもある。そっちの方、見ていかなくちゃ、新しい友達つくりゃいいんだよ!」
幸夫「……」
猛は、塚本幸夫を公園に連れ出し、あれこれと話しかけて励まそうとする。

猛「なぁ、塚本、難しいことじゃない。こっちから好きになれば良い、お前が嫌ってたら相手だって嫌うよ。でもさぁ、好きになれば向こうだっていつか好いてくれるさっ」
幸夫「先生は、僕を好きだって言うの?」
猛「好きだ」
幸夫「嘘だ」
猛「嘘じゃない、大好きだ」
幸夫「嫌いだよ、僕は」
猛「あ、そうか……でも今に好きになるさ、こっちが好きだって言ってるんだもん、そっちだって好きにならない訳ないさっ……明日から毎朝迎えに行くぞ、いいな」
新米教師らしく、あくまで前向きに秋晴れの空のように爽やかに生徒に接する猛であった。
翌朝、約束どおり幸夫を迎えに行き、一緒に途中まで行くが、ちょっと目を離した隙に幸夫がいなくなってしまう。慌てて幸夫の自宅へ行ってみるが、家にも戻ってないと言う。

あちこち駆け回っているうちに結局遅刻してしまい、これも約束どおり、逆立ちして校庭を横切る猛。

生徒たちの歓声の中、割と良い旅夢気分で逆立ち歩行する猛であったが、障害物にぶつかる。
なんだろうと、顔を起こすと、

怖い教頭先生が仁王立ちして睨み付けていた。
教頭「なんですか、その格好は」
猛「いや、地球を持ち上げてるんですよ、重いなぁ、地球は……」
教頭「そんなことで生徒たちの信用を得られると思ってるんですかっ?」
猛「あ、ああ、ああっ」
猛、その場にひっくり返る。

幸夫は、当然、学校にも来ていなかった。
猛「ごめん、明日こそ連れてくる、遅刻もしない。一番乗りする」
落語「毎度バカバカしいお噺を一席って感じだよなぁ」
猛「いや、明日こそ絶対だ」
ファッション「じゃあ、もしみんなより一歩でも遅れたら?」
スーパー「まぁた逆立ちするんですかぁ?」
関係ないが、スーパーの後ろの女の子がちょっと可愛いと思いました。
猛はまた逆立ちすると言うが、生徒たちは承服しない。
博士「教師としての存在を懸けるべきです」
猛「存在? 先生を辞めろって言うのか」
生徒たち「そうでぇーすっ!」
猛「ようし、存在を賭けよう」
猛、遂には教師と言う職を賭ける羽目になる。
それにしても、80の中学生たちはどうしてこんなにエラソーなんだろうか?
猛、事務員のノンちゃんが女子生徒たちから相談をされているのを見て、

猛「ノンちゃんて、生徒たちから信用があるんだね」
ノンちゃん「はぁ?」
くー、可愛いのう。

夕陽を浴びながら、青春ドラマでお馴染みの土手の上を歩いている猛。
猛(生徒たちに信用されるっていうことは、ノンちゃんみたいに自然にしか出来ないんだなぁ。信頼されたい、信頼されたいって心がかえって良くないんだなぁ)
が、そこへUGMから緊急の呼び出しがかかる。
猛、学校だけじゃなくて、UGMでも遅刻の常習犯であった。

猛「遅れてすいません」
オオヤマ「今、怪獣は、どうやら月の裏側に居るらしい。再び攻撃を仕掛けてくることは十分考えられる、今から24時間、特別警戒態勢に入る」
隊員たち「はいっ」
元気良く返事をしてから、猛は
(あれ、俺っていつ休めばいいの?)と素朴な疑問を抱くのだった。

翌朝、再び幸夫と一緒に学校へ向かっている猛。
猛「今日は逃げるなよ、俺、お前と一番乗りしないと先生辞めなきゃいけないんだからさ」
幸夫「……」
猛「おい、どうした?」
幸夫「嘘つきなんか嫌いだぁっ」
猛「嘘つきぃ?」
幸夫「僕を好きだなんてさーっ」
猛「嘘じゃない、好きだ。友達なんだから」
幸夫「好きでも、僕ひとりを置いていっちゃうんだもんねーっ」
猛「お前が先に逃げたんじゃないか」
幸夫「本当の友達ならさー、見付かるまで探してくれる筈だろ。遅刻を気にしてさー、ひとりで飛んでちゃった癖に……陰でずっと見てたんだ」
猛「甘ったれんなーっ!」 ぐじぐじと文句ばかり言う幸夫に、温厚な猛も声を荒げる。

怒鳴られた幸夫、驚いたように猛を見返す。
やがてポロポロ涙をこぼすと、「先生のバカッ」と叫んで反対の方角へ走り去ってしまう。
猛(あれ、おっかしいなぁ……)
70年代の学園ドラマなら、ここで生徒は教師の胸に飛び込んできて事件解決になる筈なのだが……。
猛、幸夫を追いかけて走り出すが、

ちょうど彼らの前方にギコギラーが現れる。
ご覧頂くと分かるように、80年代のスカートは明らかに70年代より長くなっている。
だから、70年代と比べて、80年代のドラマは極端にパン チラ出現頻度が低いのだ。
ギコギラーは翼を大きく動かして、台風のような強風を巻き起こす。
看板が倒れてくるが、猛は身を持って幸夫を守り、避難させる。

強風によって屋根瓦が吹き飛ぶ特撮、これも素晴らしい。
また、怪獣に倒された電柱がいちいちスパークしたり、芸が細かい。
すぐにUGMの戦闘機が出撃し、レーザービームを浴びせる。

猛、上手い具合に人目のない場所まで飛ばされたので、ここで「エイティーッ!」と変身ポーズを決める。
後は、ウルトラマン80になってギコギラーを倒すだけ。
地上からそれを見上げている幸夫の目には、80の雄姿に猛の姿が重なって見える。
幸夫「先生ーっ!」
幸夫には直感で、その正体が猛だと分かったのだろう。
80、ほどよく苦戦してから、攻勢に転じる。

まずは、強力なドロップキック!
ウルトラ戦士の戦いで、これほど気合の入った蹴り技は珍しい。
ウルトラマンレオでも、ここまで派手な演出は見られなかったと思う。
物理的に仮面ライダーのライダーキックの数百倍の威力があるだろう。
続けて錐揉みキックを怪獣の背中に叩き込んでから、

仕上げは、必殺のサクシウム光線。
命中の瞬間はスパークが起きるが、怪獣は爆発せず、そのまま倒れている。
まぁ、元々、爆発するのが不自然だったんだけどね。
怪獣の死体の始末、大変だろうなぁ。

幸夫は学校へ行くと、自分を守ってくれた猛を、今度は自分が守る為に、生徒たちを教室に入らせまいと立ちはだかる。
幸夫「ダメだ、入んな、入るなら僕を倒してから入れ」
生徒「どうしちゃったの、お前」
幸夫「僕は知ってるんだ、君らより一歩でも遅れたら先生を辞めなきゃいけないんだろう」
博士「なんだ、先生を庇ってんのか」
ファッション「いいじゃない、あんな先生」
幸夫「先生は良い人だ、先生はウルトラマンなんだ!」
幸夫は思わず80の正体をばらしてしまうが、無論、信じて貰えず、
ファッション「あんた頭がおかしいんじゃない?」
博士「誇大妄想って言うんだよ、そういうの」
と、ボロクソに言われる。
スーパー「先生がウルトラマンなら、
大根だってウルトラマンになれらぁー」
生徒たち「……は、はははははははっ」
(クソつまんねえけど、話の流れ上、お情けで笑ってやるか) 幸夫「黙れ、先生は僕の友達だ。悪口は許さない!」
一方、80から人間の姿に戻った猛、急いで学校へ向かっていたが、門の前で始業チャイムを聞いてしまう。

教師を辞めなくてはならないのかと諦めつつ門を潜るが、驚いたことに、目の前に、生徒たちが並んで待ってくれていた。
これぞ、青春学園ドラマの王道シーンだよね。
スーパー「聞いたよ、全部」
ファッション「ありがとう、先生」
落語「先生が一番乗りだよ」
博士「まだ誰も教室に入ってないんですから」
猛「君たち……」
幸夫「さぁ先生、教室へ入りましょう」
猛「よおし、みんな待っててくれたのか」
みんなで、砂埃を上げながら教室へ走っていく。
しかし、彼らの口ぶりでは猛が80だと言うことが全員に知れ渡ってしまったようでもあるが……?
恐らく、80のことはともかく、猛が自分の体を犠牲にして幸夫を救ってくれたと知って、生徒たちも態度を改めたのだろう。
ちなみに少なくとも幸夫には正体がばれてしまった訳だが、変身するところを見られさえしなければ、セーフらしい。割といい加減なルールである。

京子「矢的先生がどういう先生か、生徒たちのほうが先に分かったんですね」
校長「うん、生徒たちに信頼され慕われる素敵な先生がだねえ、ひとり誕生した」
と言う訳で、かなり正統派の学園青春ドラマ風ストーリーであった。
こんな感じで1年間やって欲しかったところだ。