第3話「泣くな初恋怪獣」(1980年4月16日)
の続きです。
その後、いろいろあって、

ストーリーとは関係ないが、悪いタイミングで校長室にやってきたノンちゃんが可愛いのであった。
出っ放しになっているタン(タンって言うな)が特にね。
真一はそれからもずーっと暗い恨みの念を温めていたが、ある夜、そのマイナスエネルギーが凝縮・分離して、もうひとりの真一の姿になる。

そして遂に、悪魔のような姿形の「ホー」と言う怪獣が出現する。
……しかし、いくらホーホー鳴くからって、「ホー」と言うネーミングはないだろうと思う。
もっとも、ホーは、相変わらず悲しそうに鳴いて突っ立っているだけで、何か悪さをする訳でもない。
それでもUGMが出撃し、攻撃を加える。
以前から、真一のことが気になっていた猛は、ひとり真一の自宅へ向かい、ベランダに真一の分身が立っているのを見て、怪獣が真一の歪んだ心が作り出したものだと確信する。

猛、オオヤマに攻撃を中止するよう頼んでから、真一の家に上がり込んで、うなされていた真一を揺さぶり起こす。そしてすぐ真一に着替えさせると、彼の手を引っ張って怪獣の前まで連れて行く。

猛「真一、聞こえるか、お前の心の声だ」
真一「ああっ」
真一、いかにも悩ましげな怪獣の声に、耐えられないように自分の耳をふさぐ。
猛「お前が夢の中で作ってしまった怪獣だ。憎しみや悲しみ、マイナスの感情を吸収してあそこで泣いてるんだ。……愛してるから愛されたい、愛されなければ腹が立つ! でも、ほんとの愛ってそんなにちっぽけなものなのか?」
それにしても、巨大な怪獣を目の前にして、大真面目に恋愛についてウルトラ戦士が語り合う……なんてシーンは、前代未聞だよね。

猛「人のお返しを期待する愛なんて、ニセモンじゃないかなぁ? 思う人には思われず……よくあることだぞ!」
でも、矢的先生、2話では、「こっちが好きになったら向こうも好きになってくれるさっ!」って、力強く断言してませんでした?

真一「先生も?」
猛「うん、故郷にいた頃、本当に好きな女の子がいてな……その子、楽器を欲しがってたんだ、先生、どうして買ってあげたくなってさぁ、必死になってバイトした! だけどなぁ、2ヶ月目にやっと手に入れたときはもう遅かったよ。その子には新しい恋人が出来ていたんだ。悲しかった、悔しかった、憎かったよ。だけどなぁ、先生、そのままプレゼントしたよ。その楽器が先生のほんとの心を鳴らしてくれると思ったんだ」
自分の経験を真一に語る猛。
彼のいう「故郷」とはM78星雲のことなのだろうか?
でも、ウルトラの星でもバイトとかってあるの?
あるいは、猛が地球に来てからの出来事なのかも知れない。猛がいつ地球に来て、どんな生活を送ってきたのかさっぱり分からないので、推測するしかないのだが。
だが、猛の説得の功を奏さず、逆に真一は怪獣に向かって「俺、憎いんだ、悔しいんだーっ!」と叫んでしまう。それに呼応するように、鳴くだけだったホーが急に凶暴になり、ビルを破壊し始める。
猛の言葉にも耳を貸さず、ふらふらと怪獣に向かって歩き出す真一。

ここで、上側の特撮部分の強いフラッシュが、下側の実景部分にまで及ぶのが、素晴らしい合成である。
そのうち、真一を庇った猛が、建物の破片で傷を負う。

真一「先生、僕の為に!」
猛「そんなことよりあれを見ろ、奴はミドリの家のほうへ向かってる。お前の潜在意識が怪獣をミドリのところへ行かせるんだ……お前はほんとにミドリが憎いのか? いいのかそれで、ほんとうにそれでいいのか?」
猛の真剣な問いかけに、唇を噛んでいた真一だったが、決然と立ち上がると、「消えろ!」と叫ぶ。
だが、とき既に遅し、ホーは真一から独立して、一個の怪獣になってしまっていた。
人々が逃げ惑う混乱の中、真一は塀ぎわに蹲って動けなくなっているミドリを見付け、助け起こす。

真一「逃げろ、ミドリちゃん!」

向こう側からコンクリート塀が崩れ落ちる。
こういう特撮シーンも、あまり見たことがないなぁ。

コンクリートブロックに埋もれながら、
真一「お前なんか消えろ、お前なんか俺の心じゃない、消えろーっ!」
迫り来るホーに向かって吼える真一。
この合成も実に自然である。

猛「真一! エイティーッ!」
真一のピンチに、走りながら変身する。
80、そこそこ苦戦してから、

最後は、必殺技バックルビームを放ち、

ホーを黒焦げにして、跡形もなく消し去るのだった。

翌朝、京子先生の歩いて来るのを、本を読むふりをしながら、何食わぬ顔でバス停で待っている猛がとても可愛いのである。

京子「矢的先生」
猛「やぁ、奇遇ですねえ、日曜日だと言うのに……散歩しませんか、天気もいいことだし」

ちなみにここでもヤケクソに風が強く、ヘアメイクさんが嘆き悲しむ事態となっている。
これだと、前半のシーンと同じ日に撮ってるのがバレバレだね。

猛「公園に行って、爽やかな空気をたくさん吸い込んで、映画を見て、食事して……」
今日こそベッドイン! と張り切る猛であったが、そこへまたあのお邪魔虫・北川が現れる。

北川「相原先生、ドライブしませんか」
京子「ごめんなさい、今日はちょっと……」
北川「残念だなぁ。じゃあ、また次の機会に是非!」
北川はあっさり引き下がる。

猛「先生! 行きましょう!」
京子「今日は水泳の教室があるんです」
猛「水泳教室? あ、ぼく、水泳が得意なんですよ、行きましょう!」
京子「うっふふ、女の人だけなんですけど……」
猛「は、女性だけですか……」
京子「ごめんなさい」
ライバルに勝ったと思ったのも束の間、再びふられる猛であった。
それにしても、京子先生、当時やたら水泳に凝っていたと思われる。

その一部始終を、斜面に座った真一が見ていた。
真一「先生、同じだね、僕と」
猛「あっはは、だけどな、男は失恋して失恋して良い顔になっていくんだ」
真一「俺、ミドリちゃんたちに会ったよ」
猛「そうか……笑っておはようって言えたか」
真一「うん」
猛「そうか、うん、お前良い顔してるぞ!」
互いに傷を舐めあって走り出す二匹の負け犬……じゃなくて、互いを誉め合って元気に走り出す青春真っ只中の猛と真一でありました。
こんな先生ばっかりだったら、日本の未来も明るいのだが……って前にも言ったか。