第17話「幻のグラウンド」(1989年5月7日)
アキラたち三バカを含めた子供たちが、放課後、学校のグラウンドでサッカーをして元気に遊んでいる。
校内放送が「放課後、校庭で遊ぶことは禁止されています。すぐに帰りましょう……」と告げるが、アキラは無視して遊び続けようとする。

今度は、以前にも登場した口やかましい校長がやってきて、「規則は規則なんだから」と、子供たちの声には耳を貸さず、追い払うように帰らせてしまう。
その晩、高山の晩御飯の時間にも、そのことが話題に上る。

行男「そいつはひどいな、私が子供の頃は夕方まで校庭で遊べたもんだ」
ぱいぱい「もし事故が起きた時、誰が責任取るかってことで、最近は放課後はダメなんですって」
アキラ「だけど、困るのは俺たち子供だよな」
シンゴ「うん、この辺にはろくな遊び場がないしさー」
などと言ってると、玄関のチャイムが鳴る。
時ならぬ来客は、アキラたちが一緒に遊んでいた子供の母親たちだった。
彼女たちは行男に「放課後の校庭解放を実現する会」の代表に就任して欲しいと相談に来たのだ。

行男はまんざらでもない顔であったが、そばにいたぱいぱいがすかさず、
「絶対引き受けちゃダメですよ、先生は人をまとめたことがない人なんですから」と釘を差す。

行男「代表でしたら、皆さんのご主人の方が……」
母親「主人達は仕事仕事でダメなんです。
死に絶えたも同じだと思って下さい」
行男「あっ?」
母親「高山さんでしたら探検業ですし、比較的お暇だと……」
行男「いっ?」
母親「それに週休五日くらいって伺ってますけど」
行男「うっ?」
母親「高山さんは男の中の男、と聞いています」
行男「ええ……」

母親たちにおだてられているうちに、すっかりその気になった行男はぱいぱいの忠告も忘れてあっさりその任を引き受けてしまう。
ぱいぱい「先生!」
行男「だまらっしゃい、私が人妻に囲まれるなんて滅多にないんですから」
翌日、早速行男は主婦たちを引き連れ、小学校へ勇ましく乗り込む。
行男の代表就任には反対したものの、会の趣旨自体には賛成しているぱいぱいも一緒である。
校長は保護者に怒鳴り込まれてしどろもどろに言い訳していたが、彼よりえらい教育委員長(二瓶鮫一)が出て来て、毅然と応対する。
行男「あの通り、グラウンドは空いてるじゃないですか」
教育長「なるほど、場所は空いてます。しかし、問題は時間ですよ」

ぱいぱい「時間?」
教育長「今の子供たちに遊んでいる時間がありますか。塾や習い事に追いまくられてね、そうさせているのはあなたたち親じゃないですか。だから校庭などを開放しても無意味なんです」
行男はなおも校庭開放を訴えるが、急に教育長が顔を近づけ、「うちの家内がよろしく言ってましたよ」と意味ありげに笑いかける。

そう言われて、行男は、ある金持ちから探検費用として三百万を借りていて、もし返せない場合は今彼らが住んでいる家を明け渡さなくていけない契約を結んでいることを思い出す(第7話参照)。
つまり、その金持ちの主人と言うのがこの教育長だったのだ。
無論、行男はあれからまだ借金を返済していない。
行男「そうだ、大和民族トルコ起源説と言うのがあったんだ。その真偽を確かめる為にイスタンブールまで行かなくちゃ……ぱいぱい、頼んだよ」
行男は旗色が悪くなると、そう言ってさっさとトンズラする。
ぱいぱい「ほんっっっとに頼りないんだから」
リーダーを失った母親たちも「教育長に逆らったら子供の成績に響くかも……」と急に弱気になり、行男と同じようにさっさと逃げ出す始末。

教育長「あなたひとりじゃどうしようもないでしょ。校庭開放を実現する会の旗など降ろしたらどうです」
ぱいぱい「いいえ、私ひとりでもやるわ、今に見てて!」
ぱいぱいはそう宣言すると、校長室を後にする。
一方、アキラたちは校庭開放の望みがなさそうのを見て、公園でゲートボールをしたりするが、本来のプレーヤーである年寄りたちに追い立てられてしまう。

その後、繁華街へ出て、ハンバーガーを食べたり、ピンク映画の看板をボーッと眺めたりする三バカたち。

特にすることもなくぶらぶらしていると、
ヌルハチ「だったら君たち、面白いところがあるよ」
タクラマカン「ちょっと寄ってかない?」
客引きをしているヌルハチとタクラマカンにつかまり、無理矢理ゲームセンターに連れ込まれる。
ゲームセンターで、しばらくは夢中になって遊ぶアキラたちだったが、サッカーと違ってここでは遊ぶのに金がかかる。彼らの乏しい小遣いは瞬く間にスロットに吸い込まれて底を尽く。金がなくなった途端、ヌルハチたちは手の平を返すように冷たくなり、すぐに店から追い払われる。
アキラたちは、遊ぶ金を作ろうと、蟹を紐で縛って神社の賽銭箱に入れて、蟹のハサミで硬貨や紙幣を釣上げようと、虚しい努力に時間を費やす。

教育長「どうだ、今日の売り上げは?」
タクラマカン「社長、こんなにありますよ!」
一方のゲームセンターでは、稼いだ金を前に教育長がご満悦の表情を浮かべていた。
そう、彼はこの店のオーナーであったのだ。

ぱいぱい「これで分かったわ」
教育長「ぱいぱいさん!」
ふと見れば、いつの間にかぱいぱいが目の前に立っていた。
ぱいぱい「あなたは陰でゲームセンターを経営している。もし校庭が開放されれば子供たちがここに来なくなるんで困るって訳ね。あなたにとって子供は金儲けの種なのよ!」
教育長「教育委員は大抵紳士だそうだが、わしゃ違うぞ、女を放り出せ!」
ヌルハチたちは命じられるままぱいぱいを店の外の歩道橋の上まで連れて行く。
ぱいぱい「あんたたちどうしてあんなとこで働いてるのよー」
ヌルハチ「しょうがねんですよ、食えねえもんだから」
タクラマカン「ぱいぱい様、中華魔界にお帰りを!」
この際だからと、二人はぱいぱいを捕まえて本来の彼らの任務を果たそうとする。

ぱいぱい、素早く体をかわすと、魔法の力で二人を操り、歩道橋の上から下を通るトラックの荷台に落とす。
ぱいぱい、賽銭泥棒をしているアキラたちを見付け、盗んだ金を賽銭箱の中に戻させる。

ぱいぱい「こんなことまでしてゲームで遊びたいの?」
アキラ「だってしょうがないじゃないか、放課後校庭で遊んじゃいけない、家でゴロゴロしてたら外へ行け、俺たち子供、何処へいきゃいいんだよ! ゲームセンターくらいしかないじゃないか」
子供「俺たち本当はゲームよりサッカーが好きなんだ」
子供たちの本音を聞いて、ぱいぱいも心を打たれる。

ぱいぱい「そんなにやりたかったら、サッカーしたら? 校庭で」
シンゴ「だって、遊ぶの禁止だよーっ」
ぱいぱい「やりなさいよ、私が責任持つ!」
ぱいぱいに言われ、アキラたちは元気良く走り出す。
道々、友達に声をかけながら、大挙して無人のグラウンドへ雪崩れ込み、思う存分サッカーを楽しむ。
当然、校長と教育長がそれをやめさせようと校庭に降りてくる。

と、その前に中華魔女の姿になったぱいぱいが立ちはだかる。
ぱいぱい「子供に帰れ!」
ぱいぱいが特殊な光線を浴びせると、煮詰まったオヤジふたりがたちまち発狂、いや、童心を取り戻す。

校長「ははははっ、僕たちも、子供だーっ!」
教育長「なんだか僕たちも遊びたくなったね!」
二人はアキラたちの輪に加わって、夢中でボールを追い掛け回す。

母親たちはその様子を見て、校庭開放問題もこれで解決したと安堵するが、
ぱいぱい「いいえ違います、これは夢です」
母親「夢ぇ?」
ぱいぱい「あの人たちは一時子供心に帰ってるだけなんです。童心光線の効き目は30分、もうすぐ切れます」
ぱいぱいの予言どおり、光線の効き目が切れると二人はハッと我に返り、すぐ元の口うるさい大人になってアキラたちを邪険に追い払ってしまう。

ぱいぱい「皆さん、子供たちの為にもう一度夢を見ませんか。そして自分たちの手で現実を変えていくんです。どんな苦労をしても自分たちの力で校庭開放を実現する。そこには魔法の力も及ばない、人間の素晴らしさがある! 私はそう信じます」
魔女が、人間の中には魔法よりも素晴らしい力が眠っているのだと力強く訴える異例の展開。
母親たちもすぐその気になって、もう一度校庭開放運動に立ち上がるのだった。
やや説教臭いが、なかなか感動的な結末である。
ただひとつ、子供たちにゲーセンで金を使わせる為に校庭開放を拒んでいた教育長に対する罰が、忘れられているような気がするのだが……。
とにかくラスト、街中で校庭開放を訴えるビラを撒いて道行く人たちにアピールする主婦たち。
正直、あまり意味のない行為だとは思うが、

ヌルハチたちとチンドン屋に扮してビラを撒くぱいぱいがめちゃくちゃ可愛いのでありました!