第37話「想い出は夕張の空」(1988年6月26日)
タイトルにあるように、唐突に夕張でロケーション撮影が行われているが、これは、この年の7月に公開された劇場版第2弾も夕張が舞台なので、当然、同時に撮影しているのである。
観光の目玉として建設された「石炭の歴史村」と言うテーマパーク。
他にも「めろん城」など、のちのち膨大な赤字を出したことが想像できるハコモノが、誇らしげに映し出される。
さて、光太郎たち三人は(克美の)高校時代の友人・圭子の結婚式に招かれ、夕張にやってきていた。

市長「私たちの町・夕張市はかつて栄えた炭鉱の町からメロンと石炭の歴史村を擁する観光の町に生まれ変わりました。そして今日、この新しい町にふさわしいフレッシュなカップルが誕生いたしました……」
スピーチをしている夕張市の市長だが、これは当時の市長であった中田鉄治氏本人が演じている(クレジットには堂々と特別出演と書かれている)。
氏は、前述した劇場版にも本人役で出演している。観客にとってはちっとも嬉しくない特別出演であった。
で、夕張市はこれよりもっと前から財政が悪化していたが、氏がにぎにぎしく話しているように石炭から観光地へのダイナミックな転換を図り、その結果、ますます財政が悪化し続け、最後は自治体そのものが破綻すると言う事態となったのは記憶に新しい……と言いつつ、良く覚えてないのだが。

市長「
バリバリ夕張のバリバリカップルの前途を祝してカンパーイ!」
にこやかに乾杯の音頭を取る市長。
バリバリうるさいが、これは当時のキャッチフレーズのようなものだったのだろう。
……それにしても、市長のこのピンと立った小指を見た時点で、夕張市民は「あ、こりゃダメだ」と気付かねばならなかったのではないだろうか?(関係あるかっ)
その後、披露宴会場に移り、歓談タイムとなる。
杏子「大変なんでしょうね、市役所のお仕事って」 新郎の健一に話しかける杏子ちゃん。
これも、いかにも夕張市に気を使ってるような発言だ。
80年代ならともかく、今なら完全な「皮肉」にしか聞こえない……。

健一「いえ、全ては市民の為ですから!」
いかにも真面目そうな新郎を演じるのは、実は普段はバラオムを演じている高橋利道さんなのだ。

妹「でも、今日からは圭子さんの為もあるのよね、兄貴ぃ」
二人の間に割って入り、健一を冷やかすその妹。
名前すらない端役だが、演じるのは「フラッシュマン」のルーこと吉田真弓さん。
案の定と言うか、幸せそうなカップルを前にして、克美が信彦のことを思い出す。
あるいは、かつて二人で夕張を訪れたことがあるのかもしれない。

回想シーンの中で、楽しそうにじゃれる二人。
Q「くどいようだけど、俺って回想シーンにしか呼ばれないよね?」by信彦さん
A「そうですね……」by管理人さん
その後、ひとりになった克美が、信彦への思いをぶちまけていると、辺りが不穏な雰囲気に包まれる。

なんとなく不安な気持ちになる克美の前に現れたのは、ケラ怪人。
相変わらずキテる造型である。体表にびっしり生えている細かい毛とか……。

克美の悲鳴を耳にした光太郎、すぐに駆けつけ、BLACKに変身してケラ怪人と戦う。
いつものことだが、BLACKはアクションのひとつひとつが「絵」になるんだよね。

が、BLACKがケラ怪人と戦ってる隙に、コウモリ怪人に克美を連れ去られてしまう。
光太郎はコウモリ怪人が飛んで行ったと思われる札幌へバイクを飛ばす。

別ルートで札幌へ来た杏子ちゃんと圭子が、ホテルで光太郎と会うなり、「克美が東京で見付かった」と意外な報告をする。
圭子「収容された病院から私のところへ連絡が入ったの」
光太郎(病院に収容? そんな簡単に抜け出せる筈がない……と言うことは罠か? 一体何を企んでるんだ、ゴルゴムは?)
ゴルゴムの狙いが分からず、困惑する光太郎。

圭子「とにかく東京へ行きましょう。克美が心配だわ」
杏子「まさか、圭子さんも一緒に?」
圭子「主人も許してくれるわ、だから……光太郎さん!」
光太郎「よし、急ごう!」
挙式したばかりだというのに、圭子は克美の為に一緒に東京へ行くと言い出す。
だが、三人が東京の病院へ着いた時には、克美は病室から抜け出して行方が分からなくなっていた。
三人は手分けをして、病院の中を探し回る。

圭子「克美!」
病院の庭に出て、克美の姿を発見する圭子。
圭子を演じるのは東城美帆さん。眉毛は太いが、なかなかの美形である。

慌てて克美に駆け寄るが、彼女は既にゴルゴムによって催眠状態にあった。
克美「来てくれると思ったわ、圭子、嬉しいわ……さっ、一緒に南光太郎の息の根を止めてやりましょう」
圭子「なんですって、克美、一体何を?」
克美「圭子にも手伝って貰うわ」
克美、圭子の腕を取って無理矢理何処かへ連れて行こうとする。

光太郎、倉庫の中で2階部分に縛り上げられている圭子を発見するが、その背後に再びケラちゃんのおぞましくも愛くるしい姿が立つ。
光太郎、圭子のところまでジャンプして助けようとするが、ゴルゴムに操られている克美が襲ってくる。

光太郎「やめろ、克美さん、何をするんだ!」
無論、今回の事件の裏から糸を引いているのは、新生ゴルゴムを率いるシャドームーンさんであった。

シャドームーン「苦しめ、もがけ、南光太郎!」
シャドームーンこと信彦は、かつての婚約者に、兄弟同様に育った光太郎を殺させようとしている訳で、その冷酷さが際立つシチュエーションである。

光太郎、ケラ怪人と克美から挟撃されて苦戦する。
克美「むぅんっ、地獄に落ちろ、ブラックサン!」 光太郎の首を絞めながら、克美がシャドームーンの声で叫ぶ。
光太郎「うっ、その声は信彦?」
いいえ、てらそま昌紀さんです。 克美が相手では本気で戦えず、進退窮まる光太郎であったが、ちょうどそこへ杏子ちゃんが倉庫の扉を大きく開けて入ってくる。外から入ってくる光を受けて、ケラ怪人はおびえたように後退し、そのまま地中に潜って逃げて行く。
克美は圭子の手を取って、再び何処かへ走り去る。

杏子「一体、どうしちゃったの克美さん?」
光太郎「操られてるんだ、ゴルゴムに、いや、シャドームーンに」
杏子「ひどい、克美さんはお兄ちゃんを愛してるのよ! ひどすぎるわ」
怒りと悲しみに、顔を歪める杏子ちゃん。
その後、克美は圭子を連れて幼稚園の送迎バスに乗り込む。
圭子はその幼稚園で保母さんをやっていて、彼らが圭子まで攫ったのはその為だったのだ。

バスに乗った途端、バスジャックを敢行する克美。
運転手を放り出して、自分で運転してるのがなかなかカッコイイ。
無論、バスには「悪の組織」の大好物、園児たちも乗っている。
色々あって、克美は圭子と園児を人質に、再び薄暗い倉庫の一室に立て篭もる。
追ってきた光太郎が突入すると、克美が圭子と園児たちに迫りつつあった。同時に、地下からケラ怪人が出てきて、光太郎に襲い掛かる。
光太郎は、圭子たちの目があるにも拘らず、その場でBLACKに変身する。もっとも、克美に迫られている圭子たちには、それに気付く余裕はなかったようである。

BLACKとなった光太郎、ケラ怪人と戦っていると、その背後にいつの間にかシャドームーンが立っている。

シャドームーン「どうした仮面ライダー、いやブラックサンよ、お前の大好きな人間どもが哀れな声を上げてるではないか……助けてみろ、お前のその手で克美を倒して!」
BLACK「バカな、信彦、忘れたのか? 克美さんはお前の……」
シャドームーン「私はシャドームーン、過去はない。お前を葬り、ゴルゴム帝国の未来の為、栄光と共に甦った」
BLACK「違う、お前は信彦、秋月信彦だ。姿は変わろうとも、俺は忘れない。兄弟同様に育ったお前を、杏子ちゃんの兄貴だったお前を、そして克美さんの……」
往生際悪く、シャドームーンを説得しようとする光太郎。

シャドームーン「まだ分からないのか、この私がお前を地獄へと引きずり込む使者だと言うことを?」

ケラ怪人相手に梃子摺るBLACKの前に、今度は三大怪人も現れる。
ダロム「苦しいか、仮面ライダー、今すぐ楽にしてやるぞ、ケラ怪人、お前の爪で奴の腹を切り裂き、キングストーンを奪い取れぇっ」
新生ゴルゴムは、持てる戦力を総動員して敵に当たるのが、組織として優れたところである。
シャドームーンこそ戦いに参加していないが、ケラ怪人と三大怪人を相手に大苦戦の光太郎。
BLACK(ダメだ、このままではやられる。何か突破口はないのか?)
この時、BLACKの脳裏に、ケラ怪人が外光を極度に恐れる姿が浮かび上がる。
BLACK「光だ、奴は光に弱いんだ。キングストーンフラッシュ!」

必殺のキングストーンフラッシュが、狭い部屋を強烈な光で満たす。
それはケラ怪人や三大怪人はおろか、克美やシャドームーンまでたじろがせるほどの威力だった。
シャドームーン、あっさり退散する。
(あるいは、最初からただの立体映像だったのか?)
その後、BLACKがケラ怪人を倒して事件は一応解決する。

正気に戻った克美が、圭子、杏子ちゃんと感動の再会を果たす。

そして、ふと視線を向けると、遠くからBLACKから彼らを見守っていた。
克美たちがその正体を知っていることを思い合わせると、なかなかジンとくるシーンである。

が、さらにその後、ガチャガチャと音を立ててシャドームーンが再び登場。
シャドームーン「ブラックサンよ、今日のところはケラ怪人を倒し、我が作戦を破ったお前に免じてその首預けておく」
克美「信彦さん、もうあんなひどいことはやめて! 元の
ナンパ師だった信彦さんに戻って!」
杏子「お兄ちゃん、お願い!」
シャドームーン「私はシャドームーン、栄えあるゴルゴム帝国の次期創世王……ブラックサン、いずれお前のキングストーンを貰うぞ」
シャドームーンは杏子ちゃんの「お兄ちゃん!」攻撃にも心を動かさず、青白い光と共に姿を消す。
杏子「お兄ちゃん!」
克美「信彦さん!」
それにしても(今更ながら)親友であり婚約者であり兄であった男が、「悪の組織」のボスとなって主人公たちの前に現れると言うのは、実に魅力的な設定だよね。