第3話「謎の美少女」(1984年10月20日)
前回の続きから……、ラグビー部のコーチとして下級生たちを指導していた滝沢だったが、ある日、部を仕切る3年生たちに部室に呼び出され、クビを言い渡される。
滝沢「俺は辞めんぞ、ひとりでも俺のコーチを受けたいって奴がいる限りはな」
3年生「1年も2年も全員あんたをボイコットするってよ! なぁ、お前たちそう言ったよな?」
コワモテの3年生が、あからさまな威嚇を込めて、キョーツケしている下級生たちに確認する。
下級生たちも口々に「辞めて貰いたい」と滝沢追放に同意する。無論、本心ではない。

滝沢「森田、お前もか? お前ラグビーの楽しさが分かってきたってあんなに喜んでたじゃないか」
光男「あんたのやり方は基礎ばっかりで面白くねえよ!」
先輩たちをチラッと見てから、光男も、心にもない罵声を浴びせる。
滝沢「よし、分かった、今後お前たちがどんな練習をするか、お手並み拝見しよう」
さすがにトサカに来た滝沢、憤然と部室から出て行く。出たところで山崎加代に「辞めないで下さい。1年生や2年生はほんとは先生のコーチを受けたいんです。3年生に脅されて……」と、引き止められる。
滝沢「分かってる。しかし俺にも自尊心はある」
滝沢、加代を振り切って行ってしまう。

尾本「山崎ぃ、洗いモンだ」
加代「私はあんたたちの下女じゃないわ」
尾本「なにぃ」
加代「女はねえ、男らしい男の為なら何でもするわよ、だけど、あんたたちが男ぉ? 先生が辞めるなら私もマネージャー辞めさせて貰うわ!」
男勝りの加代、気持ちの良いタンカを切って押し付けられた洗濯物を尾本たちに叩き返す。
が、直後、部員の一人が「お前ひょっとして滝沢の奴に惚れてんじゃねーのかー?」と小学生みたいなことを口走る。

図星を指されて、ヴィダルサスーン的な動きでハッとして振り返る加代。
でも、セーラー服は着てるけど、岩崎さんこの時点で
23なんだよね。役の設定としても19才で、そんな乙女チックにドギマギされては、視聴者も目の遣り場に困るのである。
やけに色黒だし(関係ねえだろ)
滝沢、校長のところへ行き、コーチを辞める旨を報告する。
校長「君、ちょっとトイレに行かんか?」
滝沢「は?」
校長「ワシの癖でな、壁にぶちあたった時は、
なにはともあれトイレだよ!」
滝沢「……」
滝沢、ひょっとして自分はとんでもないところに赴任してきたのではないかと、少し怖くなるのだった。
滝沢が先に立って職員用のトイレのドアを開けようとすると、校長は「そっちじゃない、生徒用のに行こう」と向かい側にある生徒用トイレに入って行く。
まだここへ来て日の浅い滝沢、何気なく生徒用トイレの中に足を踏み入れ、一瞬言葉を失う。
そこは学校の施設と言うより、廃墟と言ったほうがふさわしいほど、めちゃくちゃに壊され、荒らされていたからである。……しかし、ここの荒み方はさすがに極端で、これじゃ不良たちだってまともに用を足すことが出来ず、往生こくだけだろう。

校長「君、
こう言う店はここは初めてかい?」
滝沢「ええ」
校長「ラグビー部の荒れ具合など学校全体に比べればほんの一部に過ぎん。君をうちの学校に引っ張って来たのは単にラグビーのコーチとしてじゃない、心のコーチとしてだ。荒み果てた子供たちの心を叩き直すんだ。君がコーチを辞めるのは自由だが、心のコーチを辞めて貰っては困る」
滝沢「しかし、学校改革など私ひとりの力では不可能です」
校長「いや、君一人じゃないよ、ここにもう一人いるじゃないか」
……しかし、そう言う校長だって今までトイレをこんな状態にさせたまま放置プレイしてたんだろ?
なんとなく、校長の言葉が嘘っぽく響いてくるのである。
次のシーンでは、手始めにまずその使い物にならなくなったトイレの修理・清掃から学校の建て直しを図っている……、
校長先生の姿があった。 校長(くそ、あの野郎、とっとと帰りやがった) 嘘です。画面の端にちゃんと滝沢の先生のお尻が映ってます

どうでもいいけど、業者呼べば?
その方がよりドラマらしいから教師自らやってるのだろうが、トイレの修繕なんて素人には無理だからね。
が、二人がせっせと働いているというのに、外からトイレの窓に石を投げつけてくるバカどもがいる。

滝沢の顔を見ると、「へっへーっ」と笑いながら逃げていく不良たち。
こいつら、マシンガンで皆殺しにしてやれば良いのに……などと思ってはいけないのである。
彼らを受け入れ、立ち直らせることこそが、真の教育者の務めなのである。
滝沢「ここは学校じゃない。戦場だ!」 劇場版のキャッチコピーに使われそうな台詞を放つ滝沢のアップから、OPへ。
(今だったら絶対映画化されてるよね)
ナレ「この物語は……(以下略)」
その夜、節子を相手に学校改革について、まず何から手を付ければ良いのかと思い悩んでいる滝沢。
と、「御飯よ」と節子に言われた娘のゆかりが、たくさんの人形やオモチャをてきぱきと片付けているのを驚きの目で見る。

滝沢「どうしたんだ、ゆかり、あの子、いくら俺が怒鳴り散らしても散らかし放題だったじゃないか、それがいつの間にか、自分できちんと片付けるようになってる……家庭の躾も学校の教育も基本的には同じなんだ。な、教えてくれ、どうやってゆかりを躾けたんだ?」
節子「あなたの参考にはならないと思うわ。私はただ約束しただけですもの」
節子の代わりに、当のゆかりが一生懸命父親に説明しようとする。
ゆかり「あのねー、ままはこうゆったの、ゆかりちゃん、ぱぱはがっこうでおしごと、ままはおうちのしごと、ゆかりちゃんはげんきにあそぶのがしごとでしょ、たったさんにんでもじぶんのやくめはちゃあんとしなくちゃっね、だからあそんだあとはかたづけるってやくそくしたんだ、ねーっ、ゆかりもうすぐぴかぴかのいちねんせいだもん、やくそくちゃあんとまもらなきゃね!」 滝沢(
これだ! 何言ってるのか良く分からなかったが……約束したことは守る、まずそれが出来なければ教育が、いや人間の暮らしそのものが成り立たないんだ!)
滝沢、ゆかりの言葉に学校改革のきっかけを見出していた。
このように、様々な局面で行き詰まった滝沢が、娘のゆかりの行動や言葉からヒントを得ると言うのが、このドラマのお約束のひとつである。
しかし、間下このみって、天才子役って呼ばれていたと思ったが、はっきり言って下手である。
(天才と言うより、バラエティ番組とかに出てたので、人気があったらしい)
翌日の職員会議で、滝沢は早速自分の考えた指導方針を披露する。
それは煎じ詰めれば、「校則をビシッと守らせよう」と言う基本的なことだった。
具体的には、毎朝校門の前に立ち、挨拶を交わしながら、登校する生徒たちの髪型や服装をチェックして行こうということだった。
野田「ははっ、もっと新しいアイディアかと思いましたよ」
滝沢「ええ、決して目新しい発想とは言えません。しかし、現在の生徒の服装の乱れは目に余るものがあります。あれが到底、高校生の姿とは……」
嘆かわしい目付きで、そんな生徒たちの姿を思い浮かべる滝沢。

確かに、とても高校生には見えん(註1)
(註1……一部、関係のない画像が混じっておりました。お詫びして訂正しません)
滝沢の元気溌剌な提案に対し、やさぐれた教師たちは大方消極的な態度を示す。

甘利先生だけは、「全面的に賛成です」と前置きしつつ、多くの仕事を抱える教師にはその余裕がないと現実的側面から結局反対する。
滝沢(糠喜びさせんなよ、カッポレ) 
尚も熱心に説得しようとする滝沢だったが、始業のチャイムを潮に、教師たちはさっさと職員室から出て行ってしまう。残ったのは校長と滝沢だけ。
校長「またトイレに行くか……滝沢君」
滝沢「孤立することは覚悟していました。私は明日からひとりでもやります!」
翌朝、滝沢は宣言どおりひとりで校門のそばに立ち、登校してくる生徒たちに「おはよう」と声を掛けつつ、服装や髪型の乱れをビシビシ指摘し、私服を着ているものには着替えに帰らせる。
突然始めたことなので、真面目な生徒たちさえろくに挨拶を返さないが、滝沢はめげずに声をかけ続ける。

内田にいたっては、着替えて来いと言われると「今日は学校は休むぜ!」とくるりと回れ右する始末。
滝沢(いや、その前にお前どう見てもおっさんだろ……) ここでちょっと悲しいお知らせです。宮田州さん、撮影時、
25才くらいだったようです。
実際、この2年後には「セーラー服反逆同盟」(第3話)で、暴力教師として山本理沙さんたちをシゴいていたくらいである。
また、不適切なもの、たとえばエロ本などを没収したりもする。

滝沢「なんだこの本は? これは先生が預っておく」
さすがにチラッとしか映らないが、SM系の雑誌らしい。
しかし、昔の高校生はこんなので頑張ってたんですね。当時の苦労がしのばれますねえ。
派手な格好をした、竹の子族のような女子三人組にも、ビシバシ指導する。
三人は歩き去りながら「厭味なセンコー」「血も涙もありゃしねえ」などと、聞こえよがしに文句を言う。

雨の日も、傘を差して声を掛け続ける滝沢。

すぐ近くにある新楽から、下田夫婦がその様子を見ている。
夕子「ほんま物好きやなぁ、あの先生、うるさがられるだけやのにな」
下田「うるせえ先生がいなくなったらおしめえよ、俺だって昔こっぴどく叱ってくれる先生がいたら、多分グレなかったろうよ」
翌日、滝沢は風邪気味であったが、いつものように校門の前に立つ。
内田の父親(坂上二郎)が来て、ひと悶着あった後、

甘利「僕も手伝いますよ」
滝沢「甘利先生!」
甘利「先生の姿を見てるうちに、なんだか教えられたような気がするんです。教師は単なる勉強の教え屋じゃいけないんだってこと」
滝沢「ありがとう、甘利先生……校長先生の言ったとおりだった。必ず志を同じにする人が現れるって」
甘利「僕ひとりじゃありません」

続いて、三上先生と柳先生もやってくる。
三上「私たちもやりますよ」
柳「教職員全体では僅かですが、力を合わせれば何かもっとマシな学校が出来る筈ですわ」
初めての仲間、同志の出現に既にウルウルしている滝沢であったが、

さっきの竹の子族三人組が、真面目な服装になって明るく「おはようございまーす」と挨拶してくるのを見て、たちまちダムが決壊する。
しかし、さすがに変わり身が早過ぎる気もするが、劇中では結構日数が経過しているのだろう。

甘利「どうしました?」
滝沢「本当にありがとうございます」
甘利「滝沢先生は鬼だとか、血も涙もないとか、もっぱらの評判だけどほんとは泣き虫なんですね」
滝沢「私は生徒の為だったら鬼にでも何にでもなります!」 滝沢、今年教師になったばかりの新米にしては、勤続20年のベテランみたいなことを言うのだった。
ナレ「それはひとつの奇跡であった。賢治が校門に立ち始めてから一ヶ月後には服装における校則違反は激減したのである。しかし……」
後編に続く。