第24話「これがウルトラの国だ!」(1973年9月14日)
いきなりだが、「タロウ」って、連続エピソードがやたら多い気がする。
連続エピソードが多いと言えば、同時期に放送されていた「仮面ライダーV3」もそうだったが、互いに張り合っていたのかもしれない。

ナレ「ヨーロッパのある国が人類終末兵器と言われるトロン爆弾の実験を、地球を離れること2億キロメートルのムルロア星で行った。放射能で地球が汚染されることを恐れての宇宙実験であった」
当時、フランスによって行われていたムルロア環礁での核実験を模したような出来事から物語は幕を開ける。
「ヨーロッパのある国」とぼかしてあるが、フランスのことを指しているのは言うまでもなく、この後に、フランスと言う国名も出てくる。
そのトロン爆弾の副作用によって、ムルロアにいた生物が突然変異を起こし、巨大な怪獣ムルロアとなって地球に復讐にやってくると言うのは、「ゴジラ」1作目から連綿と続く、特撮怪獣映画の黄金パターンのひとつである。
もっとも、このエピソードにおいては単に怪獣を登場させる為のお膳立てに過ぎず、「ウルトラセブン」の「超兵器R1号」に見られたような、核兵器開発競争に明け暮れる人類への痛烈な風刺、などと言うものはほとんど見られない。
ZAT本部。
残念パーマをかけた森山いずみ隊員が、「通信が入りました。フランスからのものです」と、荒垣に報告する。

荒垣「ムルロア星の実験に反対するフランスの宇宙船が実験区域外で原因不明の爆発を起こした。同船が最後に残した通話は『スペースモス』……詳細は調査中とのこと……」
北島「スペースモス、宇宙蛾……」
光太郎「実験との関連性はあるのかなぁ」
これだけの情報ではどうすることもできず、ひたすら雑談に耽る隊員たち。

森山「いやぁねえ、蛾って、ほら、ご飯食べようとしてるでしょ、窓から飛び込んじゃって麟粉を振りまいて……うわーっ、ゾッとする」
身振りをまじえて蛾への嫌悪感をあらわにする森山いずみ隊員。
一方、両手に買い物袋を抱えて道を歩いていたさおりに、走ってきた子供たちがぶつかって、道にたくさんの野菜や果物が散乱する。
さおり「あーっ、どうしよっ」

と、すぐ後ろを歩いていた子供たちが駆け寄り、品物を拾い集める。
一郎「おい、四郎、お前も手伝え」
四郎「僕が悪いんじゃないもん。僕を追いかけてきた二朗と三郎が悪いんだもん」
さおりにぶつかった子供だけ、ふてくされたようにそっぽを向いて手伝おうとしない。
そこへ光太郎も通り掛かる。
光太郎「よし、俺も手伝おう。あ、みんな通学グループだな」
光太郎はそう見当をつけるが、実は彼らは全員、兄弟だったのだ。
しかも、それぞれゾフィーからタロウまで、ウルトラ6兄弟になぞらえたニックネームを持つと言う、名物兄弟で、ランドセルには、該当するキャラクターのシールが貼られている。
一郎……ゾフィー
初子……ウルトラマン
次郎……セブン
三郎……新マン
四郎……エース
末子……タロウ
と言う構成である。

光太郎「えっ、一人、二人、あっはは、三人、四人……」
さおり「さ、もうみんないいわ、どうもありがとう」
それにしてもほんと、光太郎とさおり(後期型)はお似合いのカップルだね。

さおり「お父さんとお母さんを入れてウルトラ家族って訳ね」
健一「みんな仲が良いんだよ」
微笑ましい気持ちになって彼らを見送る三人。
その日の夜、みんな揃って夕食をとっている岩森家。

子供たちは、それぞれ該当するウルトラ戦士のイラスト入りの食器を使っている。
しかも、両親まで子供たちのことを「ウルトラマン」とか「新マン」とか呼ぶ、痛車ならぬ痛家であった。

ちなみに末っ子の末子を演じるのは宮原由美さん。
「V3」や「レオ」でも、そのぬいぐるみのような可愛らしさが目を惹いた子役である(この後、佐藤由美に改名)
食事の後、母親は子供たちを集めて話を始める。それが習慣なのか、テープレコーダーで録音しながら。
母親「ねえ、みんな、お父さんとお母さんが旅行へ行っている間、ゾフィー、あんたは年が一番上なんだから、みんなの面倒をちゃんと見て留守をしっかり頼むわよ」
一郎「はいっ」
そう、両親はこれから何処かへ旅行へ行くことになっていて、出掛ける前にひとりひとりに母親が一言ずつ言葉を掛けているのである。
一郎以下、みんな元気に答えているが、反抗期らしいエースこと四郎だけは「寝坊しちゃダメよ」などと言われても、ギロッと母親を睨んで返事もしない。

父親「おい、四郎、どうしたんだ?」
四郎「うるさいな、分かったよ」
母親「あらあら、すっかり反抗期ね……あなたたち兄弟6人が力をあわせれば大抵のことは出来る筈ですからね。お願いしますよ」
ちなみに父親を演じているのが、メインライターの一人、石堂淑朗さんなのである。ただし、このエピソードの脚本を書いている訳ではない。
二人はそれからすぐ空港へ向けて出立するが、四郎だけはろくに挨拶もしないままだった。
これが、両親との最後の別れとなるとも知らず……
そう、この後、二人の乗った旅客機が、地球に到達したムルロアによって墜落させられると言う悲劇が起きるのだ。
ちなみに二人の向かった先がフランスだったと言うのも皮肉である。
その夜、当直勤務だった光太郎は、怪獣が関わっているかも知れないと、コンドルで事故現場上空へ飛ぶ。
光太郎「今のところ怪獣事故であるとは思えません。ただいまより帰還します!!」 光太郎、航空写真を何枚か撮ると、そのまま基地へ帰っちゃうのである。
いくら管轄外だからって、救助作業の手伝いくらいしたら? と思ったのは私だけではあるまい。
もっとも、事故現場の様子はとても生存者がいそうな感じではなかったが……
基地に戻った光太郎、森山隊員から乗員名簿を見せられ、あのウルトラ6兄弟の両親らしき名前が載っているのを見て驚く。
その岩森家には、ハイエナも尻尾を巻いて逃げ出しそうな血に飢えたマスコミ連中が押し寄せ、遺族となった名物兄弟を取材しようと躍起になっていた。

突然、二親を喪い、悲しむと言うより、途方に暮れている6人は押し黙って居間に座っている。

相変わらず、お人形さんのように可愛い佐藤由美ちゃん。
ウルトラマンこと初子が、出掛ける直前に録音した母親とのやりとりを再生する。
声「さあみんな座って頂戴……ウルトラマンはお母さんの代わりに食事の支度をお願いね……任しといて……」
居間に流れる録音テープを聞く子供たちは、堪え切れずに号泣する。
それでも長男として責任を感じているゾフィーは「いいかい、みんな元気を出すんだ、母さんも言ってたじゃないか、みんなが力を合わせればどんなこともできるって!!」と涙を拭いて弟たちを励ます。
と、急に四郎が立ち上がり、夜だというのに家を飛び出してしまう。
花を持っておくやみに来た健一や光太郎も協力して、みんなで四郎の行方を探す。
操車場で四郎の名を呼んで探し回る光太郎たちであったが、彼らの手にした懐中電灯に黒くて大きな蛾が一杯寄って来る。見れば、隣接するコンビナートの灯りにも、たくさんの蛾が群れ集まっているではないか。
やがて、蛾に誘われるように、巨大な怪獣ムルロアの威容がコンビナートの真ん中に出現する。
タロウは急いで散らばっている子供たちを呼び集める。

ひとりで隠れて泣いていた四郎もやがて姿を見せる。
四郎「俺、父さんたちが出掛ける時、いってらっしゃい言わなかったんだ。だから、だからー」
四郎、おさなごころにそのことが気掛かりになっていたのだ。
ちなみに四郎を演じるのは現在、映画監督として活躍されている佐野伸寿さん。
「仮面ライダー」46話のスキー場で、舌足らずの可愛い子供を演じていた人だね。

やがて朝日が昇り始め、ムルロアのおぞましい姿を照らし出す。
怪獣は光を嫌っているようであったが……
やがてZATの戦闘機が出撃し、ムルロアに猛撃を加えるが、ムルロアの吐き出す強力な溶解液を浴び、次々と落とされて行く。
光太郎、ホエールが墜落しそうなのを見ると、タロウに変身し、そのまま前方に滑り込んでホエールの機体を地面スレスレでキャッチする。

ムルロアは戦闘中、体から真っ黒なガスを大量に噴射して、タロウの視界を奪う。
その最中、タロウは溶解液をまともに左腕に浴びてしまう。

黒煙の中、コンビナートで対峙する両者。
これだけ大量のスモークを焚いての撮影、並大抵の大変さではなかっただろうなぁ。
タロウ、一挙にエネルギーを失って、仰向けに倒れると、自ら変身を解いて姿を消す。

その特殊な煙は、それだけにとどまらず、東京、関東、日本、そして瞬く間に世界中の空を覆い尽くしてしまう。
この煙は「アトミックフォグ」と言うらしいが、全面核戦争後の「核の冬」をイメージしていることは言うまでもない。
常に煙がたちこめ、一日中暗闇に包まれている世界で、当然、人々は苦しい生活を強いられる。

とりわけ、両親を失ったばかりの岩森家の子供たちにとっては、二重三重の苦しみであった。
それはそれとして、タヌキのぬいぐるみを抱いている佐藤由美ちゃんが可愛いのである!!
傷付いた光太郎は操車場でうつ伏せに倒れていたが、闇に塗り潰された空を七色の光が槍のように切り裂いてその体に到達する。
例によって、ウルトラの母の温かいメッセージであった。
母「タロウ、起きなさい。この闇に覆われた地球を救えるのはあなただけしかいないのです。地球を闇から解放するためのもの、それはウルトラの国にあります。あなたがた兄弟力をあわせ、それを手に入れるのです」
光太郎は
「宅配便でお願いします」と言いたいのをぐっと堪え、その場でタロウに変身すると、ウルトラの国へ向かって飛び立つ。
タロウがウルトラの国に到着したところで、25話へ続くのだった。
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